★松林に白百合まばら富士裾野 正子
富士の裾野なので、松林も広々としたところなのでしょう。その広々としたところにまばらに咲く白百合。大きな自然と小さな自然の共生がそこにあると感じます。(高橋秀之)
○今日の俳句
せせらぎの木陰のめだか動かずに/高橋秀之
せせらぎの木陰はすずしそうだ。涼しさを喜んで、目高が活発に泳ぐかと思えばそうではない。じっとして、木陰の水の涼しさを体で享受しているようだ。(高橋正子)
○夾竹桃

[夾竹桃/横浜日吉本町] [夾竹桃/大船植物園]
★引き寄せし記憶夾竹桃咲きぬ/稲畑汀子
★安房の海夾竹桃の燃ゆる上に/瀧春一
★何か炒める音して夾竹桃咲けり/岡本眸
★夾竹桃散る三叉路に雀の子/松崎鉄之介
★夾竹桃爆風めける風受けて/片山由美子
★持ち前の強さ明るさ夾竹桃/小澤克己
★夾竹桃高きに白し仰ぎ見る/高橋信之
じりじりとした暑さがやってくる。海を見ればどぼんと飛び込んで泳ぎたくなる。ちりんちりんと鐘を鳴らしてアイスキャンデー売りが自転車にアイスボックスを載せてやってくる。ボンネットバスが埃を巻きあげて通る。夏休みに精一杯遊んでいると、夾竹桃が校庭の隅で赤い花を咲かせる。ブランコの鎖の鉄の匂いが汗ばんだ手に移る。そうこうするうちに原爆忌やお盆が来る。戦没兵士の慰霊祭が校庭でとり行われる。夾竹桃はそのころ必ず咲いている。6月ごろからぽつぽつ咲き始め、9月、夏休みの宿題を抱えて登校するころまで咲く。 その葉で笹舟のように舟をつくったこともあるが、水に浮くわけではない。一花一花は可愛いが、強靭な花である。夾竹桃と言えば、暑さときらめく海と戦死者たちを思うのが私の常だ。
★わたくしのぶらんこ夾竹桃にふれ/高橋正子
キョウチクトウ(夾竹桃、学名: Nerium oleander var. indicum)とは、キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑低木もしくは常緑小高木である。和名は、葉がタケに似ていること、花がモモに似ていることから。インド原産。日本へは、中国を経て江戸時代中期に伝来したという。葉は長楕円形で、両端がとがった形。やや薄くて固い。葉の裏面には細かいくぼみがあり、気孔はその内側に開く。花は、およそ6月より残暑の頃である9月まで開花する。花弁は基部が筒状、その先端で平らに開いて五弁に分かれ、それぞれがややプロペラ状に曲がる。ピンク、黄色、白など多数の園芸品種があり、八重咲き種もある。日本では適切な花粉媒介者がいなかったり、挿し木で繁殖したクローンばかりということもあって、受粉に成功して果実が実ることはあまりないが、ごくまれに果実が実る。果実は細長いツノ状で、熟すると縦に割れ、中からは長い褐色の綿毛を持った種子が出てくる。
◇生活する花たち「のうぜんかづら・月見草・百日紅」(横浜・四季の森公園)

箱根湿性花園
★雲はれて日光黄菅の野にひかる 正子
フェイスブック画面にて正子先生撮影のお写真も見せて頂きました。野に咲く日光黄菅にはっとさせられます。「雲はれて」が一句をつらぬいていて野の風情も大らかに伝わってくるようです。(小川和子)
○今日の俳句
声透る夏うぐいすに森深し/小川和子
森深く入ると、夏うぐいすも、森の深さに比例するかのように声が澄んでくる。鶯の声のよさは、夏うぐいすが一番であろう。(高橋正子)
○布袋草(布袋葵)

[布袋草/フラワーセンター大船植物園]
★布袋草美ししばし舟とめよ/富安風生
★旅果てを土佐の津にあり布袋草/鍵和田秞子
★汐入の水門しまり布袋草/田川夏帆
★たらちねの母の乳房や布袋草/加藤雅兄
ホテイアオイは、南アメリカ原産ということだが、ずっと昔から身近で見たきた。たとえば、瀬戸内は雨が少ないので、田圃の隅に野井戸がある。野井戸は子どもにとっては、危険だが、そこにもびっしりと浮いていたし、大きな池にも浮いて薄紫の涼しそうな花をつけていた。ぷくっと膨れた葉柄が面白い。ぷちっと押しつぶしたりして遊んだが、ホテイアオイが水に浮くのは、このぷくっと膨らんだ葉柄のせいだと思っていたが、そういう訳でもないだろう。
松山市内のマンションで暮らしたとき、目の前に池が見えた。ポプラの木立がまばらにあって、その向こう側が池になっていたが、ここにホテイアオイが浮いていた。住み始めたころは、わずかだったが、4,5年経つと、池を覆うほど広がった。我が家を訪ねる人の中には、そのホテイアオイを池からとって家に持ち帰るという人も現れた。一つ水に浮かべれば、すずしい景色になる。
★水遣りの水がかかりし布袋草/高橋正子
ホテイアオイ(布袋葵、学名 Eichhornia crassipes (Martius) Solms-Laubach)は、単子葉植物ミズアオイ科に属する水草である。南アメリカ原産で、水面に浮かんで生育する。花が青く美しいので観賞用に栽培される。別名ホテイソウ、ウォーターヒヤシンス。池などの流れの少ない水面に浮かんで生育する水草。葉は水面から立ち上がる。葉そのものは丸っぽく、艶がある。変わった特徴は、葉柄が膨らんで浮き袋のようになることで、浮き袋の半ばまでが水の中にある。茎はごく短く、葉はロゼット状につく。つまり、タンポポのような草が根元まで水に浸かっている形である。水中には根が伸びる。根はひげ根状のものがバラバラと水中に広がり、それぞれの根からはたくさんの根毛が出るので、試験管洗いのブラシのようである。これは重りとして機能して、浮袋状の葉柄など空隙に富んだ水上部とバランスを取って水面での姿勢を保っている。夏に花が咲く。花茎が葉の間から高く伸び、大きな花を数個~十数個つける。花は青紫で、花びらは六枚、上に向いた花びらが幅広く、真ん中に黄色の斑紋があり、周りを紫の模様が囲んでいる。花が咲き終わると花茎は曲がって先端を水中につっこむ形となり、果実は水中で成長する。熟した果実は水中で裂開し、水中に種子をばら撒く。種子から発芽した実生は最初から浮き草状の生活型をとるのではなく、浅い水中や水辺の泥の上で土中に根を下ろして成長し、株が大きくなると葉柄に浮袋を生じて水面に生活の場を広げていく。また、茎から水平に枝を伸ばし、その先端に芽が生じて新しい株を作る。これによって素早く数を増やし、大きな集団になる。集団がさらに大きくなり、水面を埋め尽くすようになると、互いにより掛かり合って背が高くなり、分厚い緑の絨毯を水面に作り上げる。
◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)
