★青空の果てしなきこと二月なる 正子
澄み切った青空がどこまでも広がっている二月、暦の上では春とは言え冷え冷えとした二月が詠まれています。また春遠からじの思いも伝わります。 (黒谷光子)
○今日の俳句
鐘の音に児ら寄ってくる春の夕 黒谷 光子
春の夕べ、まだ外で遊んでいた幼い子たちが鐘の音に不思議そうに、もの珍しげに寄ってくる。鐘を撞く人と幼い子のほのぼのとした世界が童画を見るようだ。(高橋正子)
○菊咲き一華(キクザキイチゲ)

[菊咲き一華/横浜・四季の森公園]
★うちとけて一輪草の中にゐる/古館曹人
★一輪草強気な色を投げらるゝ/鈴木早春
★山の日は一輪草に届かざる/田中かつ子
★一華咲く春の確かな陽の中へ/高橋信之
★うす青き沼の光りに一華咲く/高橋正子
キクザキイチゲ(菊咲一華、学名:Anemone pseudoaltaica)はキンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。キクザキイチリンソウ(菊咲一輪草)とも呼ばれる。本州近畿地方以北~北海道に分布し、落葉広葉樹林の林床などに生育する。高さ10~30cm。花期は3~5月で、白色~紫色の花を一輪つける。キクに似た花を一輪つけることからこの名がついた。春先に花を咲かせ、落葉広葉樹林の若葉が広がる頃には地上部は枯れてなくなり、その後は翌春まで地中の地下茎で過ごすスプリング・エフェメラルの一種。山梨県など複数の都道府県で、レッドリストの絶滅危惧種(絶滅危惧I類)や絶滅危惧II類などに指定されている。近縁種は、アズマイチゲ(東一華、学名:Anemone raddeana)、ユキワリイチゲ(雪割一華、学名:Anemone keiskeana)。
イチリンソウ属(イチリンソウぞく、学名:Anemone )は、キンポウゲ科の属の一つ。日本の種にシュウメイギク(帰化)、ユキワリイチゲ、キクザキイチゲ、イチリンソウ、ニリンソウ、サンリンソウ等がある。
◇生活する花たち「紅梅・赤花満作・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)

横浜港
★港湾の動きに満ちて春浅し 正子
春浅く風もまだ冷たい海辺ですが、すでに動き出している港の活気が伝わってきます。荷揚げクレーンの動き、タグボートの音や人の声も聞こえてくるようです。「動きに満ちて」の措辞から港中の多くの動きが活き活きと見えてまいります。(河野啓一)
○今日の俳句
水音して箕面連山春浅し/河野啓一
「水音して・・春浅し」の感覚がいい。箕面連山を行くと、ころころと水音が絶えずしている。自然に身を入れると、確かに春が来ている。(高橋正子)
○雪割一華(ユキワリイチゲ)

[ユキワリイチゲの花/東京白金台・自然教育園]
★雪割一華へ浅春の陽が燦々と/高橋信之
★一華咲く春の確かな陽の中へ/高橋信之
四季の森公園で初めて「キクザキイチゲ」を見た。去年3月22日のこと。「イチゲ」とは、どんな字を書くのだろうと名札のカタカナを見ながら思った。「一華」である。一茎に一つ花を咲かせる。
先日2月14日に小石川植物園に行った。園内を巡り、売店で柚子茶を飲んでもう帰ろうかと思ったところ植物園で作業をしている男性に出会って立ち話を少々した。一旦別れ、歩いているとまた出会って「下にユキワリイチゲの蕾がちょうど出たところだよ。神社の下の小さい池がある辺り。」と東北訛りで教えてくれた。神社は太郎神社、小さな沼池は榛の木が生えているところと見当がついた。危うく見逃すところだったが、言われた所に行くと、榛の木の生えている少し上に名札が立ててあるのに気付いた。近づくと、紫がかった三つ葉の葉に似た叢に小さな白い蕾が見える。名札がなければ、発見は難しいところだった。一輪だけが咲きかけていた。白い小さな蕾が葉に浮くように、どれも向こうを向くか横向きであった。沼に足を滑らせないように気をつけて、写真を撮った。
★うす青き沼の光りに一華咲く/高橋正子
★榛の木の根方一華の蕾みたり/高橋正子
雪割一華(ユキワリイチゲ、学名:Anemone keiskeana)はキンポウゲ科イチリンソウ属の多年草である。日本固有種である。本州の滋賀県から九州にかけて分布し、林の中や渓流沿いなどに生える。「雪割」は早春植物を意味し、「一華」は一茎に一輪の花を咲かせるという意味である。草丈は20から30センチくらいである。根際から生える葉は3小葉からなる。小葉は三角状の卵形でミツバの葉に似ていて、裏面は紫色を帯びる。茎につく葉は茎先に3枚が輪のようになって生える(輪生)。開花時期は3月から4月である。花の色は白く、淡い紫色を帯びている。花びらは8枚から12枚くらいである。ただし、花弁のように見えるのは萼片である。花の後にできる実はそう果(熟しても裂開せず、種子は1つで全体が種子のように見えるもの)である。花言葉は「幸せになる」である。属名の Anemone はギリシャ語の「anemos(風)」からきている。種小名の keiskeana は明治初期の植物学者「伊藤圭介さんの」という意味である。圭介はオランダ商館のシーボルトのもとで植物学を学んだ。(花図鑑、©龍&華凛)
◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)
慶大日吉キャンパス
★煙る銀杏芽吹く気配を一心に 正子
慶応大学日吉キャンパスの銀杏を詠まれた御句。前途有望な学生が集まる学舎にふさわしい、銀杏の芽吹きの清々しさが伝わってきます。銀杏の芽はやがて青葉となり、学生たちの成長を静かに見守るのでしょう。(小川和子)
○今日の俳句
二月の陽を反射させつつバス来たる/小川和子
バスを待っていると、向こうから陽を反射させながらバスがやって来た。光は、早くも明るい二月の光。二月の光を連れて来たバスである。(高橋正子)
○榛の木(ハンノキ)の花

[榛の木の雄花)/東大・小石川植物園] [榛の木の雄花と雌花/国立自然教育園]
★はんの木のそれでも花のつもりかな 一茶
★渓声に山羊啼き榛の花垂りぬ/飯田蛇笏
★空ふかく夜風わたりて榛の花/飯田龍太
★はんの木の花咲く窓や明日は発つ/高野素十
★榛咲けり溝には去(こ)年(ぞ)の水さびて/川島彷徨子
★百姓の忙しくなる榛咲けり/樋口玉蹊子
★榛の花いつかは人の中で死ぬ/岩尾美義
★空深し榛の花とは垂るる花/高橋正子
ハンノキの花は単性で雄花と雌花は別々につく。雄花穂は、枝先に5cmぐらいの長さで尾状に下垂し、雌花穂は、雄花穂の付け根の近くの葉腋に高さ2cmほどの小さな楕円状になって直立する。両花穂とも小さな花の集合体で、目立つような花弁もなく、よく注意をしないと花とは気がつきにくい。
ハンノキ(榛の木、学名:Alnus japonica)は、カバノキ科ハンノキ属の落葉高木。日本、朝鮮半島、ウスリー、満州に分布する。日本では全国の山野の低地や湿地、沼に自生する。樹高は15~20m、直径60cmほど。湿原のような過湿地において森林を形成する数少ない樹木。花期は冬の12-2月頃で、葉に先だって単性花をつける。雄花穂は黒褐色の円柱形で尾状に垂れ、雌花穂は楕円形で紅紫色を帯び雄花穂の下部につける。花はあまり目立たない。果実は松かさ状で10月頃熟す。葉は有柄で長さ5~13cmの長楕円形。縁に細鋸歯がある。良質の木炭の材料となるために、以前にはさかんに伐採された。材に油分が含まれ生木でもよく燃えるため、北陸地方では火葬の薪に使用された。近年では水田耕作放棄地に繁殖する例が多く見られる。
◇生活する花たち「満作①・満作②・蝋梅」(大船フラワーセンター)

★さきがけて咲く菜の花が風のまま 正子
一番先に咲いた菜の花が風に揺れている。その景色の周囲を連想するとその中にいるようで嬉しくなります。(祝 恵子)
○今日の俳句
もてなさる一つに椀のあさり汁/祝 恵子
もてなしの料理が並ぶなかの一つの椀があさり汁である。春らしい一椀に、ほっと気持ちが解きほぐされ、主客ともに春をいただく気持ちが湧く。(高橋正子)
○満作

[ニシキマンサク/東大・小石川植物園] [アテツマンサク/東大・小石川植物園]
★まんさくに水激しくて村静か/飯田龍太
★満作咲く丘の麓の空晴れて/高橋信之
★満作のひらひら咲くや寒波来て/高橋正子
★森に咲く満作の枝横伸びに/高橋句美子
ニシキマンサク(錦満作、学名:Hamamelis japonica var. obtusata forma flavo-purpurascens)は、マンサク科 マンサク属の落葉小高木。分布:北海道の西南部、本州の東北地方から鳥取県の日本海側、樹高:5~6m、花期:2~3月仲間:マンサク、シナマンサク、マルバマンサク、アカバナマンサク、アテツマンサク等、同科トキワマンサク属:ベニバナトキワマンサク。多雪地の山地に生える日本在来種マルバマンサクの変種で、日本海側の山地に自生する。前年枝の葉腋から花柄を伸ばし黄色い花を咲かせる。他のマンサクの仲間と同様に、葉の展開より先に開花する。冬芽の表面は、褐色の毛で覆われている。葉は単葉で互生し、葉身は菱形状円形または広卵形で基部は左右の形がちがう。長さ5~11cm。葉縁の先端側に粗い波状の鋸歯があり、基部側は全縁。果実は果で、毛が生えた直径1cmほどの卵状球形、熟すと2つに裂け、光沢のある黒い種子を2個はじき出す。黄色い花弁の基部が、煤けたような、黒ずんだ赤色を帯びる。花弁は4枚あり、長さ1~1.5cm。
アテツマンサク(阿哲満作、学名:Hamamelis japonica var. glauca)は、マンサク科 マンサク属の落葉小高木。アテツマンサクは中国地方から四国・九州に分布する落葉の小高木。暖帯の中・上部からブナ帯にかけての急傾斜地に生育する。雪の消えた頃から咲き始め、場所によっては2月の中頃から落葉樹林の中で、黄色い花を咲かせて、春の訪れを知らせている。花はおもしろい形であり、4枚のリボン状の花弁がよれて広がっている。アテツは最初に発見された岡山県阿哲地方を意味しており、マンサクは最初に咲くので、「まず咲く」であるともいうが、どうであろうか。満作とか、万作などの漢字をあてると、豊作を期待させるイメージになる。基本種であるマンサクは関東以西から九州に広く分布し、若葉の星状毛は早期に脱落するが、アテツマンサクは褐色の毛が残る点で区別される。
◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)

東海道53次川崎宿
★下萌えの六郷川の水青し 正子
春の訪れに、種々の草が緑の芽を出し陽に輝いています。そばを流れる川の水も青く輝き、草の緑と川の青が呼応し明るい世界が広がっています。(井上治代)
○今日の俳句
早も咲ける菜の花の丈低かりし/井上 治代
春も暦ばかりと思えるのに、早も菜の花が咲いて黄色い光を返している。先駆けの菜の花らしく「丈低かりし」であって、実在感がある花となっている。(高橋正子)
○浅蜊
★浅蜊に水いっぱい張って熟睡す/菖蒲あや
淡水の多少混じった砂泥の浅海に埋没して棲息する二枚貝。潮干狩の最たる獲物である。川が流れ込む砂浜で、浅蜊はよく取れる。今は春に限らず、養殖の浅蜊が手に入り、砂出しの必要もないものが多くなった。我が家でもよく食べる貝で、一番好きなのは浅蜊のお汁。食べた後の殻はきれいに洗って乾かし、小布でくるんで遊んだことがある。中学生のときに、多摩美大から教生の先生が来られて、貝殻をデザインする授業だったが、熱心に描いた。教頭先生のご子息で、詰襟姿で教壇に立たれたが、本当の美術って、こんなのかなと中学生に思わせてくれた。
小学2,3年の頃だったと思う。近所の人たちが数キロ先に浮かぶ無人島に浅蜊掘りに行くのに誘われた。この島は源平合戦のとき、義経が矢を放って浮き流れているのを射とめてその位置にとどまったという島で「矢の島」と呼ばれて、お椀を伏せたようなごく小さい島である。無人島なので、もちろん桟橋や舟着き場などない。小舟を砂浜に寄せて海水を歩いて島に上がる。子供の私には浅蜊はほとんど採れなかったと思うが、それはまだよい。帰るときその島に独りおいてきぼりにされかかったのだ。誰かが気付いて舟に乗せてくれた。海の水の緑ふかい青さと島の緑が異様に恐ろしく思えた。
松山にいたころは、海辺に出かけて何気なく砂を掘ると小さな浅蜊を見つけることがあった。少し拾って、夜は申し訳程度の浅蜊汁にしたが、けっこう楽しいことである。
○ヘレボルス(クリスマスローズ)

[ヘレボルス/横浜日吉本町]
★クリスマスローズ咲かせる窪の家/松崎鉄之介
★クリスマスローズ仰向くことのなく/椋本一子
★クリスマスローズかかへて友を訪ふ/坂本知子
ヘレボルスとは、キンポウゲ科(Ranunculaceae)ヘレボルス(属)(helleborus)の植物。『ヘレボルス』というと、なんだか聞きなれない名前だが『クリスマスローズ』と言えばご存知の方も多いのではないか。実は、クリスマスローズとは通称で、本名はヘレボルスと言う。ヘレボルスの中の一種である『ニゲル』という原種がイギリスのクリスマス時期に咲くことからクリスマスローズと名付けられた。しかしほとんどのヘレボルスはクリスマスの時期には咲かず2月ごろからの開花となる。
『クリスマスローズ』はローズと言ってもバラではなく、キンポウゲ科の多年草で、ギリシャ語の、殺す「helein」と食べ物「bore」が合わさって出来た名前だそうである。この植物には毒性があって狩などにつかわれていたという話もある。最近では、スーパーの花屋でも買い求めることができるほど人気がでてきたクリスマスローズ。花(本当はガク)の色がカラフルで、株分けやクローンでないかぎり2つとして同じものはないというのも魅力のひとつで、うつむき加減がしおらしい、日本人好みの花。
◇生活する花たち「福寿草・菜の花・紅梅」(横浜日吉本町)
★下萌えは大樹の太る根もとより 正子
早春になると、冬枯れの大地よりあちこちに草の芽が萌え始めます。大樹の太る根もとは落葉などで土が温かく、また朽た葉が肥料にもなり下萌えが早いのでしょうか。大樹の根もとに若芽の淡い緑の姿が見え春の到来に嬉しくなります。御句より広々とした公園を想像致しますが、辺りも次第に春の色合いが増す事でしょう。(佃 康水)
○今日の俳句
まんさくの丘へ親子の声弾む/佃 康水
まんさくは、「先ず咲く」の訛りとも言われる。春が兆したばかりの丘に、母と子が声を弾ませ、楽しそうである。春が来たと思う光景だ。(高橋正子)
○赤花満作

[赤花満作/横浜・四季の森公園]
★満作咲く丘の麓の空晴れて/高橋信之
★満作のひらひら咲くや寒波来て/高橋正子
★森に咲く満作の枝横伸びに/高橋句美子
★作紅し森の階段森奥へ/高橋句美子
アカバナマンサク(赤花満作、学名:Hamamelis japonica var.obtusata)は、マンサク科 マンサク属の落葉小高木。別名はベニバナマンサク(紅花満作)だが、あまり使われない。花弁が赤色のマンサクだが、外国種や交配種の赤花もアカバナマンサクという名前で表示されていたり、売られていたりする。分類的には、本来の”アカバナマンサク”は在来の”マンサクの変種のマルバマンサクの一つの品種”のことを指す。外国種や交配種には別の学名がつけられている。分布:本州の日本海側、樹高:3~8m、花期:2~3月、果期:9月
落葉の小高木で落葉樹の多いところに生えている。マルバマンサクの品種で花弁全体が暗い赤色を帯びる。枯れ葉が枝に残っていることがある。葉は単葉で互生し、長さ5~11cm。幅3~7cm。葉の先が半円形の菱形状円形または広卵形で基部は左右の形がちがう。葉縁は先半分に波状の鋸歯があり、基部半分は全縁。果は直径1cmほどの卵状球形。熟すと2つに裂けて光沢のある黒い種子を2個はじきとばす。葉の展開に先立って花を咲かせ、花弁は4枚、煤けたような暗い赤色で、鮮やかな赤色ではない。黄色い縁取りがあり、長さ1~1.5cm。萼片も4枚ある。花は良い香りはせず、生臭い香りがかすかにする。
◇生活する花たち「満満作①・満作②・蝋梅」(大船フラワーセンター)

★梅の花いつもきれいな青空に 正子
梅の花が咲き、ようやく暖かさを感じさせるようになった春の空の輝き。その大きな喜びが「いつもきれいな」に籠められて、私たちの心にも伝わってきます。(小西 宏)
○今日の俳句
枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
枝に止まった鳥が、枝移りをするのか枝が揺れる。それを見ていると、光も揺らしているのだ。枝を張る陽光に満ちた木、枝移りする鳥が、なんと早春らしいことよ。(高橋正子)
○ネット短信
■ネット短信No.178/2013年2月11日発信
□発信者:高橋正子(花冠代表)
□電話:045-534-3290
■□花冠4月号校正!
各自ご自分の俳句や原稿をご確認ください。訂正がありましたら、下記ブログの
<コメント>にお書き込みください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan12/
■□迫田和代句集『遠い日』/近日刊行 new!
下記アドレスの迫田和代さんのブログに句集原稿のファイルがリンクされていますので、
お読みください。書籍の句集は、花冠俳句叢書第30巻で、3月29日発行の予定です。
http://blog.goo.ne.jp/suien15/
■□第21回(立春)フェイスブック句会入賞発表
【金賞】
★枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
枝に止まった鳥が、枝移りをするのか枝が揺れる。それを見ていると、光も揺らしている
のだ。枝を張る陽光に満ちた木、枝移りする鳥が、なんと早春らしいことよ。(高橋正子)
その他の入省作品は下記アドレスのブログを御覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d/
■□高橋正子の俳句日記(ブログ)
以下の方の句をご紹介していますので、ご確認ください。
河野啓一(2/17)小川和子(2/16)祝恵子(2/15)佃康水(2/13)
http://blog.goo.ne.jp/kakan02/
●花冠創刊30周年事業案内句集出版など
http://blog.goo.ne.jp/suien60/
●花冠同人ブログ集
http://suien.ne.jp/0003/blog/haikublog.htm
●インターネット俳句センター
http://kakan.info/
○紅梅

[紅梅/横浜・四季の森公園]
★紅梅や見ぬ恋つくる玉すだれ 芭蕉
★紅梅や入日の襲ふ松かしは 蕪村
★紅梅や照日降日の中一日 暁台
★紅梅や大きな弥陀に光さす 太祇
★紅梅にほしておくなり洗ひ猫 一茶
★紅梅や雨のふりたるぬり盥 成美
★梅の中に紅梅咲くや上根岸 子規
★紅梅や文箱差出す高蒔絵 漱石
★紅梅や日和の影を雲の上/長谷川櫂
★坂下はすぐに汀や薄紅梅/小澤克己
★紅梅や湯上りの香の厨ごと/岡本眸
★紅梅に空あをくなれ青くなれ/林翔
★紅梅や庭に富士見の丘築き/宮津昭彦
★紅梅のつめたき枝をさしかはし/高田正子
四季の森公園へ行った帰り道、辛夷が無数に蕾を付ける街路樹のある歩道を脇に入ったところ。紅梅の匂いがした。紅梅のあることを知らなかった場所にこれも無数の蕾を付けた紅梅の木が立っている。二本。ふくよかな匂いがする。かすかに薔薇のような匂いがする。まじまじと見れば童女のようにあどけない。
★おしばなの紅梅円形にて匂う/高橋正子
日記帳にひそかに挟み、忘れたころに見つかる。押し花になってもいい匂いがする。自分の、誰に見せるわけでもない小さな宝物である。
★紅梅咲く隣家に黒衣の人出入り/高橋正子
うららかな紅梅日和、法事があるのだろう。黒衣が日にきらめいていた。
梅 (うめ、学名:Prunus mume)は、薔薇(ばら)科。開花時期は、1月中旬頃から咲き出すもの、3月中旬頃から咲き出すものなど、さまざま。漢名でもある「梅」の字音の「め」が変化して「うめ」になった。中国原産。奈良時代の遣隋使(けんずいし)または遣唐使(けんとうし)が中国から持ち帰ったらしい。「万葉集」の頃は白梅が、平安時代になると紅梅がもてはやされた。万葉集では梅について百首以上が詠まれており、植物の中では「萩」に次いで多い。別名は「好文木」(こうぶんぼく)、「木の花」(このはな)、「春告草」(はるつげぐさ)、「風待草」(かぜまちぐさ)。1月1日、2月3日の誕生花。花言葉は「厳しい美しさ、あでやかさ」
ウメにまつわる言葉
「桜伐(き)る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」 春先に咲く代表的な花である桜と梅のふたつを対比しつつ、栽培上の注意を示したもの。桜はむやみに伐ると切り口から腐敗しがちであり、剪定には注意が必要。一方、梅の樹は剪定に強く、むしろかなり切り詰めないと徒枝が伸びて樹形が雑然となって台無しになるばかりでなく、実の付き方も悪くなる。花芽は年々枝先へと移動する結果、実が付く枝は通常数年で枯れ込んでしまう。実の収穫を目的とするのであれば、定期的に枝の更新を図る必要があるからである。 「東風(こち)吹かば にほひおこせよ梅の花 主なしとて 春な忘れそ」 菅原道真が大宰府に左遷されるとき、道真の愛した庭の梅の花に別れを惜しんで詠んだ歌。後に庭の梅木が道真を追って大宰府に飛んできた、という「飛梅伝説」がある。 「桃栗三年、柿八年、柚(ゆず)の馬鹿野郎十八年、梅はすいすい十六年」 種を植えてから実を収穫できるまでの期間を指す俚謡。本来は「桃栗三年柿八年」で一つの諺。「物事は簡単にうまくいくものではなく、一人前になるには地道な努力と忍耐が必要だ」という教訓である。
◇生活する花たち「さんしゅゆの花蕾・節分草・雪割草」(横浜・四季の森公園)

★菜の花に蛇行の川の青かりし 正子
蛇行している川に沿い、菜の花が群れ咲いています。菜の花の黄色と川の水の青色が、とても鮮やかで春の穏やかな美しい景が広がっています。また、微風に揺れる菜の花、静かな川の流れ、春の音も聞こえてくるようです。(藤田裕子)
○今日の俳句
まんまるい蕾もろとも花菜漬け/藤田裕子
まんまるい、黄色も少し見える蕾もろとも漬物に付け込むには、心意気がいる。日常生活が身の丈で表現された句。(高橋正子)
○芽柳

[芽柳/横浜・四季の森公園(2012年1月26日)]_[芽柳/横浜・四季の森公園(2012年3月22日)]
★古川にこびて芽を張る柳かな 芭蕉
★ほつかりと黄ばみ出でたり柳の芽 暁台
★芽柳のおのれを包みはじめたる/後藤比奈夫
★芽柳や鶏飼ふ艀菜をきざむ/皆川盤水
★芽柳の色となりつゝ風と合ふ/稲畑汀子
★芽柳や傘さし上げてすれ違ふ/満田春日
★退屈なガソリンガール柳の芽/富安風生
★芽柳や声やはらかく遊びをり/遠藤千鶴羽
★東京の石神井恋し柳の芽/清水淑子
めやなぎ(芽柳)とは、早春、芽の出始めた柳。芽吹き柳。芽張り柳。[季]春。《―の奥たのもしき風情かな/鬼貫》(三省堂 大辞林)
ヤナギ(柳、英語: Willow)は、ヤナギ科 Salicaceae ヤナギ属 Salix の樹木の総称。世界に約350種あり、主に北半球に分布する。日本では、柳と言えば一般にシダレヤナギを指すことが多い。落葉性の木本であり、高木から低木、ごく背が低く、這うものまである。葉は互生、まれに対生。托葉を持ち、葉柄は短い。葉身は単葉で線形、披針形、卵形など変化が多い。雌雄異株で、花は尾状花序、つまり、小さい花が集まった穂になり、枯れるときには花序全体がぽろりと落ちる。冬芽は1枚のカバーのような鱗片に包まれ、これがすっぽりと取れたり、片方に割れ目を生じてはずれたりする特徴がある。これは、本来は2枚の鱗片であったものが融合したものと考えられる。果実はさく果で、種子は小さく柳絮(りゅうじょ)と呼ばれ、綿毛を持っており風に乗って散布される。 なお、中国において5月頃の風物詩となっており、古くから漢詩等によく詠み込まれる柳絮だが、日本には目立つほど綿毛を形成しない種が多い。
日本では、柳といえば、街路樹、公園樹のシダレヤナギが代表的であるが、生け花では幹がくねったウンリュウヤナギや冬芽から顔を出す花穂が銀白色の毛で目立つネコヤナギがよく知られている。
◇生活する花たち「満作・赤花満作・犬ふぐり」(横浜・四季の森公園)

★梅の香を息に吸い込みあるきけり 正子
梅が開き始めました。春が来るのとあい前後して開き始め、春の進展に伴って花の数を増していく梅は早春を代表する花です。香りも素晴らしく、その春の息吹といえる香を吸い込んで歩けば、いきいきとしてきます。 (多田有花)
○今日の俳句
沖よりも甍の光り春めけり/多田有花
海の沖を眺めると、冬の沖とは違って春めいて思えるだが、それよりも手前に眺める甍の光りの方が強く、遥かに春めいているのだ。日本の甍は、その季節、その日の光りを偽ることなく反射させる。今、春めいた陽光を反射させている。(高橋正子)
○菜の花

[菜の花/伊豆河津(2011年2月22日)] [菜の花/横浜日吉本町(2013年2月3日)]
★菜の花や月は東に日は西に/与謝蕪村
★菜の花の遥かに黄なり筑後川/夏目漱石
★家々や菜の花いろの灯をともし/木下夕爾
★菜の花の暮れてなほある水明り/長谷川素逝
★菜の花に汐さし上る小川かな/河東碧梧桐
★寝足りたる旅の朝の花菜漬/稲畑汀子
★咳こもごも流転身一つ菜種梅雨/目迫秩父
★白鷺の飛びちがへるに菜種刈る/木村蕪城
★菜殻火に刻々消ゆる高嶺かな/野見山朱鳥
★うしろから山風来るや菜種蒔く/岡本癖三酔
菜の花(なのはな、英語:Tenderstem broccoli)は、アブラナまたはセイヨウアブラナの別名のほか、アブラナ科アブラナ属の花を指す。食用、観賞用、修景用に用いられる。アブラナ属以外のアブラナ科の植物には白や紫の花を咲かせるものがあるが、これを指して「白い菜の花」「ダイコンの菜の花」ということもある。
菜とは食用の意味であり、菜の花とは食用の花の意味である。在来種アブラナや、セイヨウアブラナの花序や若芽が利用され、最近はコウタイサイなど中国野菜由来の新品種も登場している。食用生産が多いのは香川県、高知県、千葉県、三重県など。大別して、蕾の目立つ頭頂部をまとめたタイプと、掻き取った脇芽(蕾が無い)を袋詰めにしたタイプが主流となっており、前者は在来種アブラナ系、後者がセイヨウアブラナ系とされる。セイヨウアブラナは固く筋っぽくなりやすい反面、在来種より苦みが少なく甘みが強い特徴がある。野菜としては足が早いほうなので、保存する場合は加熱してから冷蔵するのが望ましい。 ビタミンCやミネラルが豊富な緑黄色野菜であり、アク(シュウ酸)はホウレンソウの20分の1以下なので、調理にあたっては茹ですぎないことがポイント。2~3月だけ出回る旬を残す野菜だったが、近年は予冷技術により出荷時期が延びてきている。また、寒咲花菜のように初冬から出荷されるものもある。
春、一面に広がる菜の花畑は壮観で、代表的な春の風物詩でもある。現代の日本では、菜種油採取用のアブラナ畑はあまり見られなくなったが、その他のアブラナ属の野菜も黄色い「菜の花」を咲かせるため、その種子採取用の畑が菜の花畑として親しまれている。このため、栽培されている作物はまちまちで、千葉県では早春のアブラナのほかに野菜類(カブやハクサイ)が、青森県横浜町では油用のセイヨウアブラナ、信州の菜の花畑はノザワナがそれぞれ5月に開花する。主産地の広大な菜の花畑は観光資源となっていて、例えば飯山市では連休中に見ごろとなるよう、ノザワナの播種日を調整している。切り花用として利用されるものは、チリメンハクサイや改良品種で、葉が白っぽく縮れている。ただしこれは食用にも利用されるため、栽培時期や方法の違いによって出荷先が変わるだけともいえる。セイヨウカラシナは、丈夫で川原や荒れた土地にも繁茂するため、河川敷や堤防、空き地に播種し、菜の花畑を作るケースがある。
◇生活する花たち「福寿草・菜の花・紅梅」(横浜日吉本町)
★春浅し立ちたる草の鳴りづめに 正子
未だ冬の気配の残る春の初め、風のやや冷たさにも、「鳴りづめ」の草の音を通して誘われる快さがあります。風に鳴る草々の有りように、浅春の季節感が感じ取れます。(藤田洋子)
○今日の俳句
街筋の昼月ほっと梅開く/藤田洋子
街筋の空を見上げれば、白く透明感のある昼の月が浮かんでいる。昼月を遠く梅が開いて、昼月と梅との美しい出会いがある。(高橋正子)
○八朔
八朔は、晩柑類の代表といってもよかったが、最近は伊予柑におされてあまり人気はないようだ。食べた後、ほんの少し苦みが残るが、果汁が少なめで、果肉がしっかりして手を汚さず食べやすいのが取り柄。
子供のころ庭に一本八朔の木があって、ひと冬、家族、主には子供のおやつとして食べるだけ十分あった。驚くべくたくさんの実がついた。収穫した八朔は、りんご箱にもみ殻を入れたなかに保存し、蔵に入れられた。土蔵の冷暗所に保存されていたわけだ。もみ殻がつかないように、セーターの袖をたくし上げ箱に腕を入れて掴み出す。お菓子がほとんどない時代。(チョコレートは高校生になって友だちにもらって初めて食べたくらいです。)遊んでいる途中、喉がかわくと家に帰って八朔を持ち出し、友達と食べたりした。よその家には伊予柑に似た私たちが「だいだい」と呼んでいた果物があったので、友達が家から持ち出してきて食べた。これはどこの親たちにも内緒のことであったが。ところがある日、あれほど実を付けて元気だったのに、突然にこの八朔の木が枯れた。その一日で枯れたわけではないだろうが、「ある日突然に」という印象だった。根もとから掘り起こされて燃やされたが、家の没落がいよいよ目に見えて始まるかのようだった。八朔の味のように、いまだにかすかな苦さを覚える。
★八朔を蔵より出せば日が当たる/高橋正子
○黄水仙

[黄水仙/横浜日吉本町] [ラッパ水仙/横浜日吉本町]
★突風や算を乱して黄水仙/中村汀女
★横濱の方にある日や黄水仙/三橋敏雄
黄水仙(きずいせん、学名:Narcissus jonquilla L.)は、ユリ科 スイセン属で新エングラー体系ではヒガンバナ科の多年草。南ヨーロッパ原産。石灰岩地の丘陵や草地などに生え、高さは10~30センチになる。葉は深緑色で細い。春に花茎を立てて、香りのよい黄色の花を横向きにつける。江戸時代に渡来して観賞植物として栽培される。学名からジョンキル水仙とよぶ場合もある。
白い水仙は冬の季語、黄水仙は春の季語。おなじ水仙と呼ばれても咲く季節が違う。有名なワーズワースの詩の「ラッファディル」は、ラッパ水仙。春が来ると一面に群れ咲くラッパズイセンを子どものころは、異国への憧れとしてよく想像したものだ。父が若かったころ、私たが子どもであったころ、庭にラッパ水仙が咲いた。戦後のことであるが、このラッパ水仙が咲くのが非常に嬉しかった。今になって思えば、父は花が好きであったようだ。ペチュニアを「つくばね朝顔」と言っていたころ、ほどんど誰もそれを植えていないころペチュニアが咲いていた。糸水仙というのもあった。青葡萄の棚もあったし、種なし葡萄のデラウエアも門先のポールに昇らせていた。そういう思い出と共に蘇る生家のラッパ水仙である。
★父は若しラッパ水仙咲かせいて/高橋正子
◇生活する花たち「福寿草・菜の花・紅梅」(横浜日吉本町)