★枯蓮となりつつ水に傾ぎゆき 正子
つんと伸びていた大きな蓮の葉や茎が枯れながら折れ、水に傾いている。寂しい蓮の姿があります。 (祝恵子)
○今日の俳句
大根の白さを今日もまな板に/祝恵子
冬の間の食材として欠かせない大根の白が、目にみずみずしい。また今日の新しい白となって刻まれる。日々の新しさがさわやか。(高橋正子)
○冬薔薇(ふゆばら、ふゆそうび)

[冬薔薇/横浜いずみ野/カフェ・ド・ダラ]
★フランスの一輪ざしや冬の薔薇/正岡子規
★築地行けば垣根の薔薇や冬の花//正岡子規
★思はずもヒヨコ生れぬ冬薔薇/河東碧梧桐
★冬ばらの蕾の日数重ねをり/星野立子
★冬の薔薇すさまじきまで向うむき/加藤楸邨
★冬薔薇金環蝕ののち開く/黒田杏子
★冬薔薇や海に向け置く椅子二つ/舘岡沙緻
★冬薔薇やっぱり君は君のまま/SUNAO
★見るうちに薔薇たわたわと散り積る 虚子
★手の薔薇に蜂来れば我王の如し 草田男
★ばら薫るマーブルの碑に哀詩あり 久女
★愁ひつつ岡にのぼれば花いばら 蕪村
★花茨白花は楽の通ひ易く 草田男
★花いばら ここの土とならうよ 山頭火
★夕日の中の冬ばらの赤明らかに/高橋信之
冬薔薇といえば、たいていは、花屋から買ってくるものだ。花瓶に開きかけたものや蕾を挿して開くのを待つのだが、開きかけたものはまだしも、蕾は固く結んで、いよいよ色が濃くなって咲かないうちに枯れてしまう。何とか、蕾を咲かそうと苦心するのが常だ。たまにそよの庭に一、二輪咲いているのを見る。
十一月八日、横浜市いずみ野にある、千坪はあるというガーデンに出かけた。立冬を過ぎたばかりのこの日は、心地よい風が少しあって、空は晴れ渡っていた。ガーデンは、冬の初めとあって、咲き残る花、季節はずれなのにきれいに咲いている花。枯れたまま倒れた枝、茨の実などが入り混じっている。細くレンガを敷いた道以外は、何がどこにあるのか、野原よりももっと仕切りがつかない。その中に、ところどころ冬薔薇が咲いている。どれも、れっきとした名前があるのだろうが、それに構わずじっくりと見て歩くと、申し分なくきれいに花開いている。春に咲くアリッサムも元気いっぱいに十分に花を咲かせて、レタスなども瑞々しいところを見ると、土がいいのだろうと察しがつく。冬薔薇なのに瑞々しい。午後の日を浴びて一つの花にも日陰と日向がある。やはりこの寂しい陰りは冬薔薇なのだ。室内の喫茶室にも薔薇がグラスに挿してあったが、オールドローズなのか柔らかによく開いて、窓辺の小寒い夕方の陰りによく匂っていた。
★冬薔薇にいずみ野の空ひろびろと 正子
★冬そうび二輪の匂う板机 〃
バラ(薔薇)は、バラ科バラ属の種(しゅ)の総称。バラ属の植物は、灌木、低木、または木本性のつる植物で、葉や茎に棘があるものが多い。葉は1回奇数羽状複葉。花は5枚の花びらと多数の雄蘂を持つ(ただし、園芸種では大部分が八重咲きである)。北半球の温帯域に広く自生しているが、チベット周辺、中国の雲南省からミャンマーにかけてが主産地でここから中近東、ヨーロッパへ、また極東から北アメリカへと伝播した。南半球にはバラは自生していない。世界に約120種がある。「ばら」の名は和語で、「いばら」の転訛したもの。漢語「薔薇」の字をあてるのが通常だが、この語はまた音読みで「そうび」「しょうび」とも読む。漢語には「玫瑰」(まいかい)の異称もある。 欧米ではラテン語: rosa に由来する名で呼ぶ言語が多く、また同じ語が別義として「ピンク色」の意味をもつことが多い。6月の誕生花である。季語は夏で、「冬薔薇」「ふゆそうび」となると冬の季語になる。なお、一般に「ばら」と呼ぶときは、園芸品種としてのそれを指すことが多い。
◇生活する花たち「白ほととぎす・茶の花・むべの実」(東京白金台・国立自然教育園)

★木曽三川ひとつは鴨がいきいきと 正子
木曽三川とは、濃尾平野を流れる木曽川、長良川、揖斐川の3つの川の総称ですね。その中の一つ、殊に木曽川でしょうか?「木曽三川」という大変良い環境の中で鴨の群れはいきいきと伸びやかに泳いでいる。鴨の句の中にその周辺の雄大な景色までも見えて参ります。(佃 康水)
○今日の俳句
浜風に確と結びし新松子/佃 康水
浜辺の松の枝にしっかりと青い松毬(まつかさ)がついた。古い松毬と違って充実している。それを「確と」が言い当てている。浜辺の青松毬のすがすがしさがよい。(高橋正子)
○フェイスブックの会
横浜いずみ野のカフェ・ド・ダラであった<フェイスブックの会>に信之先生と出席。広い庭園に咲く冬薔薇を写真に撮った。午後3時から午後5時までは、ガーデンで薔薇やそのほかの花の写真を撮ったり、俳句を作ったりして過ごした。<フェイスブックの会>は、午後5時から8時半まで食事会だった。カフェ・ド・ダラのマスターいさら・あんどさんと奥さんの絹子さん、それにご近所の紫芝寛子さんに大変お世話になった。参加者は14名でした。
★冬薔薇(そうび)凛として立つ土に立つ/高橋信之
★夕日の中の冬ばらの赤明らかに/高橋信之
★空ひろびろ庭ひろびろ冬そうび咲く/高橋信之
★冬ばら楽しフェイスブックの集まりに/高橋信之
★冬薔薇にいずみ野の空ひろびろと/高橋正子
★冬そうび二輪の匂う板机/高橋正子
★キャンドルの炎ゆらめく冬の薔薇/高橋正子
★夕寒の刻つと来たり薔薇園に/高橋正子
★吾亦紅に白竜胆を交え活け/高橋正子
○千両

[千両/横浜市港北区松の川緑道]
★供華に活け千両の実をこぼしけり/稲畑汀子
小寒い風が吹くと、千両の実が熟れる。この寒さの感覚ととも松山市郊外の砥部の家の庭にあった千両を思い出す。おめでたいので、赤い実の千両と黄色い実の千両の両方を植木屋さんが植えてくれた。丈は50センチくらいに育って、正月の花に一本きることもあった。庭には、千両、万両、十両があった。これだけ揃って百両がないので、買ったか、もらったか解らないが、鉢植の百両が後に加わった。
★水鉢に映り千両黄と赤と/高橋正子
センリョウ(仙蓼/千両、Sarcandra glabra(Thunb.) Nakai)はセンリョウ科の常緑小低木。林内に生育し、また冬に赤い果実をつけ美しいので栽培される。東アジア~インドに分布する。日本では南関東・東海地方~九州・沖縄までの比較的暖かい常緑樹林下に自生している。高さは50~100cm。葉は対生。花は黄緑色で7~8月頃に咲き、茎の先に穂状花序をつくる。花には花被がなく、花軸に緑色の雌しべが付き、その側面に薄緑色の雄しべが直接出る変わった姿でをしている。果実は液果で10月頃から赤く熟し、翌年2月頃まで見られる。被子植物であるにもかかわらず、維管束の木部は導管でなく、裸子植物同様の仮導管から構成されている。花の構造の特殊性と共に、この植物の原始性を表す特徴と考えられる。特に名前がめでたいのでマンリョウ(万両)などとともに正月の縁起物とされる。
◇生活する花たち「冬薔薇①②・ウィンターコスモス」(横浜いずみ野/カフェ・ド・ダラ)

★天の日は初冠雪の嶺に照り 正子
万物を照らす「天の日」に輝く初冠雪の嶺が、神々しいまでに眩く、美しく、自然の大景をのぞむ晴れやかな感動が伝わります。明るく心澄みわたる冬の始まりです。(藤田洋子)
○今日の俳句
しんとある鵜船の河畔冬初め/藤田洋子
「しんと」の擬態語がこの句のよさ。鵜飼の季節を終えた鵜舟が置かれている河畔の風景に、初冬に対する作者の気持ちが良く出ている。(高橋正子)
○茶の花

[茶の花/横浜市港北区松の川緑道] [茶の花/東京白金台・自然教育園]
★茶の花や白にも黄にもおぼつかな 蕪村
★茶の花に隠れんぼする雀かな 一茶
★茶の花や利休の像を床の上 子規
★茶の花や洛陽見ゆる寺の門 碧梧桐
★茶の花に暖き日のしまひかな 虚子
★散るは柿の葉咲くは茶の花ざかり 山頭火
★古茶の木ちるさかりとてあらざりき 蛇笏
★茶の花に富士かくれなき端山かな 秋櫻子
チャノキ(茶の木、学名:Camellia sinensis)は、ツバキ科ツバキ属の常緑樹である。チャの木、あるいは茶樹とも記される。単にチャ(茶)と呼ぶこともある。原産地は中国南部とされているが確かなことはわかっていない。中国や日本で栽培される1m前後の常緑低木(学名 : Camellia sinensis)。インド・スリランカなどで栽培される変種のアッサムチャ(学名 : C. sinensis var. assamica)は8 – 15mにも達する高木になる。栽培では普通は1m以下に刈り込まれるが、野生状態では2mに達する例もある。幹はその株からもよく分枝して、枝が混み合うが、古くなるとさらにその基部からも芽を出す。樹皮は滑らかで幹の内部は堅い。若い枝では樹皮は褐色だが、古くなると灰色になる。葉は枝に互生する。葉には短い葉柄があり、葉身は長さ5-7cm、長楕円状被針形、先端は鈍いかわずかに尖り、縁には細かくて背の低い鋸歯が並ぶ。葉質は薄い革質、ややばりばりと硬くなる。表面は濃緑色でややつやがある。その表面は独特で、葉脈に沿ってくぼむ一方、その間の面は上面に丸く盛り上がり、全体にはっきり波打つ。花は10-11月頃に咲く。花は枝の途中の葉柄基部から1つずつつき、短い柄でぶら下がるように下を向く。花冠は白く、径2-2.5cm、ツバキの花に似るが、花弁が抱え込むように丸っこく開く。果実は花と同じくらいの大きさにふくらむ。普通は2-3室を含み、それぞれに1個ずつの種子を含む。果実の形はこれらの種子の数だけ外側にふくらみを持っている。日本の地図記号で茶畑を表す記号はこの果実を図案化したものである
日本では、栽培される以外に、山林で見かけることも多い。古くから栽培されているため、逸出している例が多く、山里の人家周辺では、自然林にも多少は入り込んでいる例がある。また、人家が見られないのにチャノキがあった場合、かつてそこに集落があった可能性がある。
◇生活する花たち「ナガボノシロワレモコウ・茶の花・カラスウリ」(東京白金台・国立自然教育園)

琵琶湖
★平らかな湖水に向きて冬はじめ 正子
去年の湖北吟行のおりの御句でしょうか。あの日はとてもいいお天気で、暖かでした。すぐに雪と鉛色の雲に包まれる時期になる、その前の一時の明るさが貴重でした。(多田有花)
○今日の俳句
茶の花の咲くや羽音に包まれて/多田有花
茶の花は椿に似るが、椿よりもずっと小さい。その蜜を吸いに目白などがくる。姿は見えないが、羽音が聞こえる。茶の花と小鳥がよくマッチしている。(高橋正子)
○立冬(冬立つ・冬に入る・冬来る/ふゆきたる・今朝の冬)
★百姓に花瓶売りけり今朝の冬 蕪村
★菊の香や月夜ながらに冬に入る 子規
★出羽人も知らぬ山見ゆ今朝の冬 碧梧桐
★賣卜先生辻に風邪ひいて冬来る 虚子
★冬に入る爐につみ焚くや古草鞋 蛇笏
★蜂の巣のこはれて落ちぬ今朝の冬 鬼城
★立冬やとも枯れしたる藪からし 亞浪
★冬来る平八郎の鯉の図に 万太郎
★冬来たる眼みひらきて思ふこと 鷹女
★句を作る心戻りぬ冬立ちぬ 草城
★妻子居て味噌汁うまし今朝の冬/高橋信之
★立冬の洗濯機なりよく回る/高橋正子
○山茶花(さざんか)

[山茶花/横浜日吉本町]
★山茶花のここを書斎と定めたり 子規
★山茶花の垣一重なり法華寺 漱石
★生け垣に山茶花まじる片かげり 龍之介
★山茶花や日南に氷る手水桶 碧梧桐
★霜を掃き山茶花を掃くばかりかな 虚子
★雨の山茶花の散るでもなく 山頭火
★山茶花の葉滑る花や霜の上 石鼎
★山茶花にあかつき闇のありにけり 万太郎
★山茶花の花のこぼれに掃きとどむ 虚子
★山茶花や生れて十日の仔牛立つ 秋櫻子
★山茶花の樹々が真黄に母葬る 多佳子
★山茶花の散りしく月夜つづきけり 青畝
★山茶花の大輪旦暮おだやかに 汀女
★山茶花の咲くより散りてあたらしき 草城
★鎌倉の山茶花日和大人の門も 爽雨
★山茶花の玻璃に一点映り澄み 立子
★山茶花のこぼれつぐなり夜も見ゆ 楸邨
★山茶花の一期一会の花と吾/高橋信之
山茶花が咲き始めると、もう、冬が近いんだぞと思う。冬物の服を早めに出したり、炬燵は、ストーブは、と冬支度が始まる。焚火の煙がうすうすと上って匂ってきたりすると、暖かいところが恋しくなる。椿と山茶花の違いはとよく効かれるが、山茶花は花弁が一枚一枚分かれて、咲き終わると散る。赤や白だけでなく、ほんのりピンクがかったものから、また八重のものまでいろんな花があるようだ。椿ほど改まってなくて、親しみやすい花だ。山茶花の垣根からいい匂いがこぼれると、そこを通るのがうれしい。
★山茶花にこぼるる目白の声ばかり/高橋正子
サザンカ(山茶花、学名:Camellia sasanqua)は、ツバキ科ツバキ属の常緑広葉樹で、秋の終わりから、冬にかけての寒い時期に、花を咲かせる。野生の個体の花の色は部分的に淡い桃色を交えた白であるのに対し、植栽される園芸品種の花の色は赤や、白や、ピンクなど様々である。童謡「たきび」(作詞:巽聖歌、作曲:渡辺茂)の歌詞に登場することでもよく知られる。漢字表記の山茶花は中国語でツバキ類一般を指す山茶に由来し、サザンカの名は山茶花の本来の読みである「サンサカ」が訛ったものといわれる。
日本では山口県、四国南部から九州中南部、南西諸島(屋久島から西表島)等に、日本国外では台湾、中国、インドネシアなどに分布する。なお、ツバキ科の植物は熱帯から亜熱帯に自生しており、ツバキ、サザンカ、チャは温帯に適応した珍しい種であり、日本は自生地としては北限である。サザンカには多くの栽培品種(園芸品種)があり、花の時期や花形などで3つの群に分けるのが一般的である。サザンカ群以外はツバキとの交雑である。
◇生活する花たち「ノダケ・シロバナサクラタデ・ユウガギク」(東京白金台・国立自然教育園)

★紺碧の天と対いて刈田あり 正子
秋らしい紺碧の空、それと対等に苅田が向かい合っています。大きな仕事をなし終えた後の、しかし自然体の力を留めて広がる土と根の存在感。茫漠としてなだらかな風景を見ることができます。 (小西 宏)
○今日の俳句
秋深き山道薪の高々と/小西 宏
やがて来る冬に備えて、薪が山道に高々と積まれているのを見ると、「秋深し」の情感が高まる。(高橋正子)
○桂黄葉(かつらもみじ)

[桂黄葉/横浜・四季の森公園]
★桂黄葉の下をくぐって森の公園/高橋信之
★黄葉して桂の一樹しかと立つ/高橋正子
カツラ(桂、学名:Cercidiphyllum japonicum)は、カツラ科カツラ属の落葉高木。日本各地のほか、朝鮮半島、中国にも分布する。街路樹や公園樹に利用され、アメリカなどでも植栽されている。日本で自生するものはブナ林域などの冷温帯の渓流などに多く見られる。高さは30mほど、樹木の直径は2mほどにもなる。葉はハート型に似た円形が特徴的で、秋には黄色く紅葉する。落葉は甘い香り(醤油の良いにおいに似ている)を呈する。成長すると主幹が折れ、株立ちするものが多い。日本においては山形県最上郡最上町にある「権現山の大カツラ」が最も太く、地上から約1.3mの位置での幹周が20m近くにまで成長している。中国の伝説では、「桂」は「月の中にあるという高い理想」を表す木であり、「カツラ(桂)を折る」とも用いられる。しかし中国で言う「桂」はモクセイ(木犀)のことであって、日本と韓国では古くからカツラと混同されている(万葉集でも月にいる「かつらをとこ(桂男)」を歌ったものがある)。用途として、街路樹として植えられるほか、材は香りがよく耐久性があるので、建築、家具、鉛筆などの材料に使われる。また、碁盤、将棋盤にも使われるが、近年は市場への供給が減っており、貴重な木材となりつつある。桂皮(シナモン)は、同じ桂の字を使うがクスノキ科の異種の樹皮である。
◇生活する花たち「ゲンノショウコ・曼珠沙華・白曼珠沙華」(横浜・四季の森公園)

★冷たさも露けさもスライスオニオン 正子
スライスオニオンは、美しいたべものです。白く透き通り、冷たくしっとりとして、つんと新鮮な香りがします。秋の冷たさも露けさも、そのスライスオニオンにある。秋の空気を頂くと思えば、いっそう美味しいことでしょう。 (川名ますみ)
○今日の俳句
刷かれきてここより鰯雲となる/かわなますみ
眺めている空の雲の景色は、見ていて飽きない。移動していると、空に刷かれていたすじ雲が、あるところからは、鰯雲となったというたのしさ。秋空の澄んだ空気を得て、心境が出た。(高橋正子)
○黒鉄黐(クロガネモチ)

[黒鉄黐/横浜・四季の森公園]
★赤がうれし黒鉄黐に朝が来て/高橋正子
クロガネモチ(黒鉄黐、学名 Ilex rotunda)は、モチノキ科モチノキ属の常緑高木。高木に分類されるものの、自然状態での成長は普通10m程度にとどまり、あまり高くならない。明るいところを好む。葉は革質で楕円形やや波打つことが多く、深緑色。表面につやがある。若い茎には陵があり、紫っぽく色づくことが多い。春4月に新芽を吹き、葉が交替する。雌雄異株で、花は淡紫色、5月から6月に咲く。たくさんの果実を秋につける。果実は真っ赤な球形で、直径6mmほど。本州(茨城・福井以西)・四国・九州・琉球列島に産し、国外では台湾・中国・インドシナまで分布する。低地の森林に多く、しばしば海岸林にも顔を出す。しばしば庭木として用いられ、比較的都市環境にも耐えることから、公園樹、あるいは街路樹として植えられる。「クロガネモチ」が「金持ち」に通じるから縁起木として庭木として好まれる地域もある。西日本では野鳥が種を運び、庭等に野生えすることがある。材木は農機具の柄としても用いられる。
◇生活する花たち「貴舟菊・山茶花・柘榴」(横浜日吉本町)

★ポプラ黄葉雲寄り雲のまた流る 正子
高木のポプラが黄葉した姿はどんなに美しいことだろう。箒状に伸びたポプラの木を見上げれば、秋の澄んだ空にうかぶ雲が自由にポプラの上空を流れ、はるかなるものへの憧憬の念がわいてくるようです。 (小川和子)
○今日の俳句
石榴今枝にほどよき重さあり/小川和子
石榴の実は、弾けるころには、重くなって、細い枝がぐんと撓む。そうなると、重すぎないかと思うが、重くならない手前の湾曲した枝に、「ほどよさ」がある。視点が面白い。(高橋正子)
○ナガボノシロワレモコウ

[ナガボノシロワレモコウ/東京白金台・自然教育園]_[吾亦紅(ワレモコウ)/横浜市港北区松の川緑道]
東京白金台・自然教育園
★吾亦紅の白花を垂れ池近し/高橋信之
百花園
★吾亦紅スカイツリーのある空に/高橋正子
松山
★吾亦紅コーヒー店のくらがりに/高橋正子
今年は、吾亦紅をこれでもか、というほど見た。四季の森公園、近所の庭。しかし、白い吾亦紅があるのは、思いもしなかった。ナガボノシロワレモコウというのがあると、写真を見せてくれた。穂が長いので、一見ワレモコウには見えない。
★まぼろしのごとくナガボノワレモコウ/高橋正子
ナガボノシロワレモコウ(Sanguisorba tenuifolia)は、バラ科ワレモコウ属の多年草で、湿原や湿性の草原に生育する。北海道・関東地方以北の本州、樺太に分布するが、中国地方などにも隔離分布している。湿原に生育する植物は、氷河時代に分布したものが生き残っていることがあり、ナガボノシロワレモコウもその例の1つである。地下に太い根茎があり、8月から10月にかけ、高さ1mほどの茎を出して花を付ける。茎の上部は枝分かれして長さ2~5cm程の花穂を出し、長いものは垂れ下がる。花は先端から咲き始め、花弁はない。萼片は4枚で白色であり、これが花の色となっている。雄しべは4本で長く、黒い葯が目立つ。葉は11~15の小葉からなり、小葉の幅は狭いく、三角形の鋸歯がある。
ワレモコウ(吾亦紅、吾木香)は、バラ科・ワレモコウ属。日本列島、朝鮮半島、中国大陸、シベリアなどに分布しており、アラスカでは帰化植物として自生している。草地に生える多年生草本。地下茎は太くて短い。根出葉は長い柄があり、羽状複葉、小葉は細長い楕円形、細かい鋸歯がある。秋に茎を伸ばし、その先に穂状の可憐な花をつける。穂は短く楕円形につまり、暗紅色に色づく。「ワレモコウ」の漢字表記には吾亦紅の他に我吾紅、吾木香、我毛紅などがある。このようになったのは諸説があるが、一説によると、「われもこうありたい」とはかない思いをこめて名づけられたという。また、命名するときに、赤黒いこの花はなに色だろうか、と論議があり、その時みなそれぞれに茶色、こげ茶、紫などと言い張った。そのとき、選者に、どこからか「いや、私は断じて紅ですよ」と言うのが聞こえた。選者は「花が自分で言っているのだから間違いない、われも紅とする」で「我亦紅」となったという説もある。
◇生活する花たち「白式部・南天・かりん」(横浜日吉本町)

★霧に育ち大根くゆりと葉を反らす 正子
霧の大地に育っている大根、白い大根も見え、「くゆりと葉を反らす」葉の全体が反らしている。そろそろ収穫の時期かもしれません。霧に大根の青葉といい、新鮮そのものです。 (祝恵子)
○今日の俳句
芒日を透かしておりぬ寺静か/祝恵子
日当たりのよい寺はだれも居ぬようだ。芒が日を透かし、これ以上ないような静けさと、穏やかな明るさが思われる。(高橋正子)
○山鳥兜(ヤマトリカブト、鳥兜・鳥頭・かぶと花)

[ヤマトリカブト/横浜・四季の森公園] [オクトリカブト/尾瀬ヶ原]
★今生は病む生なりき鳥頭(トリカブト)/石田波郷
★かぶと花手折りて何を恋ひゆくや/石原君代
★鳥兜毒持つことは静かなり/東金夢明
★オキシドール泡立ちており鳥兜/河村まさあき
★国境へ鳥兜の原広がりぬ/久保田慶子
横浜・四季の森公園
★鳥兜のむらさき優しこの森は/高橋信之
★鳥兜斜めがちにて色淡し/高橋正子
ヤマトリカブト(山鳥兜、学名:Aconitum japonicum)は、 キンポウゲ科トリカブト属の多年草。トリカブト属の中には、オクトリカブト、ミヤマトリカブト、ハコネトリカブトなどがあり、ヤマトリカブトは、オクトリカブトの変種で、中国原産。花の形が、舞楽のときにかぶる、鳳凰(ほうおう)の頭をかたどった兜に似ていることから「鳥兜」。また、山地に生える鳥兜なので「山~」となった。ふつう、「鳥兜」と呼ぶ場合は、この「山鳥兜」を指すようで、単なる「鳥兜」という名前の花はない。英名の”monkshood”は「僧侶のフード(かぶりもの)」の意。
トリカブト(鳥兜)の仲間は日本には約30種自生している。沢筋などの比較的湿気の多い場所を好む。花時には草丈90~130cmほどになる。茎は斜上することが多く、稀に直立する。 秋に、花茎の上部にいくつかの青紫色の長さ4cmほどの兜(かぶと)型の花をつける。花の色は紫色の他、白、黄色、ピンク色など。葉は大きさはいろいろあり、径7~12cmほどの偏円形ですが、3~5深裂(葉の基部近くまで裂けている)し、裂片はさらに細かく中~深裂(欠刻状の鋸歯)しているのが特徴で、見た目では全体に細かく裂けているように見える。
塊根を乾燥させたものは漢方薬や毒として用いられ、烏頭(うず)または附子(生薬名は「ぶし」、毒に使うときは「ぶす」)と呼ばれる。本来「附子」は、球根の周り着いている「子ども」のぶぶん、中央部の「親」の部分は「烏頭(うず)」、子球のないものを「天雄(てんゆう)」と呼んでいたが、現在は附子以外のことばはほとんど用いられていない。ドクウツギ、ドクゼリと並んで日本三大有毒植物の一つとされる。ヨーロッパでは、魔術の女神ヘカテーを司る花とされ、庭に埋めてはならないとされる。ギリシア神話では、地獄の番犬といわれるケルベロスのよだれから生まれたともされている。狼男伝説とも関連づけられている。富士山の名の由来には複数の説があり、山麓に多く自生しているトリカブト(附子)からとする説もある。また俗に不美人のことを「ブス」と言うが、これはトリカブトの中毒で神経に障害が起き、顔の表情がおかしくなったのを指すという説もある。10月13日の誕生花(鳥兜)、花言葉は「騎士道、栄光」(鳥兜)。
◇生活する花たち「茶の花・犬蓼・吾亦紅」(横浜下田町・松の川緑道)

★秋海は青より銀に由比ヶ浜 正子
由比ガ浜は鎌倉の相模湾に面した湘南の海。夏は本場の青々とした海が秋になり、日差しを受けて青よりも銀色に輝いているのでしょう。活発な夏と異なる静かな秋の海を感じさせてくれます。(高橋秀之)
○今日の俳句
絹雲の大空全て淡き色/高橋秀之
絹雲は成層圏に秋によく発達する雲で、薄く箒で掃いたようである。その雲が生まれる大空は淡い色に広がっている。軽くて伸びやかなところがよい。(高橋正子)
○がまずみ

[がまずみの実/東京白金台・自然教育園]_[がまずみの花/東京白金台・自然教育園]
★がまずみや蓑虫切に糸縮め/殿村菟絲子
★がまずみの実を噛み捨てて語を継がず/瀬知和子
★がまずみを含みて道の遠きかな/斎藤玲子
★がまずみの白き花冴ゆ梅雨の入り/那須亀洞
★そぞのみの思い出多し山学校/大柳雄彦(宮城環境保全研究所)
11月に入っても、まだ十分に秋の気配が残り、過ごし易い日が続いている。そんなある日、近くにある国見峠の道ばたで、赤く熟したガマズミの実を啄ばむジョウビタキの姿が見られた。
遠い昔を思い起こし、その場で綴った駄作である。私が小学校に通っていたのは、昭和10年代の後半、つまり、太平洋戦争の真っ只中のこと。今とは違って塾などあるはずはなく、学校からの宿題もほとんどなかった時代である。当然ながら下校後の山学校は日課になっていて、気の合った者同志で色んな場所に出かけていった。とりわけ、晴天の日が続く晩秋の山学校は楽しく、かなり奥地の山林まで足を延ばし、クリを拾い、アケビやサルナシをもぎ取り、ガマズミやナツハゼの実をしゃぶるなどして、夢中になって過ごしたものである。しかし、つるべ落としのこの時期は、日の暮れるのが滅法早く、あわてて家路につくのは毎度のことで、時には、山の中にランドセルを忘れてきた苦い思い出もある。
「そぞのみ」は、本県で使われているガマズミの方言で、「よっずみ」と呼ぶ地方もある。里山地帯の至るところに生えている潅木で、紅葉も美しい。初夏に赤い実を枝一杯につけ、はじめは酸っぱいが、徐々に甘みを増していく。山林内での、賦存量はかなり多く、しかも手の届く高さで採取できるので、農村部の子供たちにとっては人気のある野生の食品である。(宮城環境保全研究所/仙台市青葉区八幡のホームページより)
ガマズミ(莢蒾、学名:Viburnum dilatatum)は、山地や丘陵地の明るい林や草原に生える落葉低木。樹高2-3m程度となる。若い枝は星状毛や腺点があってざらざらで、灰緑色。古くなると、灰黒色になる。葉は対生し、細かい鋸歯がある卵型から広卵形で10cm程度。表面には羽状の葉脈がわずかに出っ張り、凹凸がある。表面は脈上にだけ毛があるが、裏面では腺点や星状毛などが多い。花期は5-6月。白い小さい花の花序を作る。晩夏から秋にかけて3-5mm程度の果実をつけ、食用となる。果実は赤く熟し、最終的に晩秋の頃に表面に白っぽい粉をふき、この時期がもっとも美味になる。焼酎に漬けて果実酒にも利用する。また、丈夫でよく分枝するため、庭木として観賞用に植樹されることもある。
★がまずみの実赤し鳥の眼に吾に/高橋信之
がまずみの赤い実が楽しい。初夏に咲く白い花を、秋になっての青い実を思えばなお楽しい。(高橋信之)
◇生活する花たち「白ほととぎす・茶の花・むべの実」(東京白金台・国立自然教育園)

★日にいちばん耀くものに菊蕾 正子
菊の蕾はしっかりと巻かれ、小さな毬のようです。野菊の蕾がたくさんついて、秋の日を浴びている景色には、ささやかな希望を感じます。それを「日にいちばん耀くもの」とご覧になる心境。控えめなもの、未だ咲かぬものへの、優しいまなざしが捉えた発見です。(川名ますみ)
○今日の俳句
水のいろ火のいろ街に秋燈/川名ますみ
街に灯る秋の燈を見ていますと、水のいろをした燈、火のいろをした燈があります。それが、大発見のように新鮮です。青い燈、赤い燈が入り混じる街の燈を見つめれば、どこかさびしさも湧いてきます。(高橋正子)
○金水引(キンミズヒキ)

[金水引/横浜・四季の森公園]_[銀水引/東京・向島百花園]
★金水引のきらきら森の正午となる/高橋信之
キンミズヒキ(金水引、学名:Aqrimonia pilosa)は、バラ科キンミズヒキ属の多年草。本州、四国、九州などの林の縁、原野、路傍に普通に見られる。草丈1メートル程に伸びて、全株に長毛が密生し、葉は互生し、羽状の複葉で表面に腺点がある。大小ふぞろいの小葉からなっているが、根元につくものは大きくなる。長い葉柄には葉状で縁がぎざぎざの托葉(たくよう)がある。花は、夏から秋にかけ、長くのびた茎の上部に黄色5弁の小さなものを穂状につけ、果実は宿存がくの内側にでき、そのがくの縁には鋭くて内側に曲がった刺毛が多数でき、この刺毛が衣類等に附着して散布に役立っている。
キンミズヒキの名前の由来は、ミズヒキは「水引」の意味で、夏に黄花の小花を細長く穂のように咲かせる姿から「金色の水引」に見たてこの名前がついたという。
中国では、果実の刺毛が内側に曲がった姿から「竜の牙(きば)」を連想して、龍牙草(りゅうげそう)という漢名があり、それを音読みして生薬名になった。 また、キンミズヒキの果実が衣類に簡単につきやすいことから、ヒッツキグサという別名もある。キンミズヒキ属は、アグリモニアといい、ギリシャ語で刺の多い植物という意味のアルゲモネからきている。キンミズヒキは、日本から東ヨーロッパまで広く分布して、全体に小型のものはヒメキンミズヒキと呼ばれ、日本の特産種。夏から初秋の開花期に全草を掘り採り、水でよく洗って天日で乾燥し、生薬名は龍牙草(りゅうげそう)又は、仙鶴草(せんかくそう)という。春先の若芽や若葉を摘み、熱湯で茹でて水にさらしてから、おひたしや和え物にしたり、汁の実にしたりして食べる。
◇生活する花たち「萩・からいとそう・瓢箪」(東京・向島百花園)
