5月31日(木)

★葛飾は薔薇咲き風の吹くところ  正子
東京の葛飾区は近くに江戸川も控え、都心から離れ下町の自然と人情の感じられるところ。地名の葛飾を「は」で強調されていて、訪れられた時の大変好感を覚えられた心情がにじみ出ていると思います。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
竹皮を脱ぐや常なる一幹に/桑本栄太郎
下五の「一幹に」がいい。今年の竹の誕生と成長を言葉の意味でも、また「イッカン」という音の響きでも。(高橋信之)

○かぼちゃの花

[かぼちゃの花/横浜市緑区北八朔]

★南瓜咲く室戸の雨は湯のごとし/大峯あきら
★貧乏な日本が佳し花南瓜/池田澄子
★黄の濃さよ日の出前なる花南瓜/両角竹舟郎
★朝早き車窓に南瓜の花を見き/高橋正子

南瓜は、ウリ科カボチャ属(学名 Cucurbita)の総称である。特にその果実をいう。原産は南北アメリカ大陸。主要生産地は中国、インド、ウクライナ、アフリカ。果実を食用とし、カロテン、ビタミン類を多く含む緑黄色野菜。 日本における呼称類はこの果菜が、国外から渡来したことに関連するものが多い。一般にはポルトガル語由来であるとされ、通説として「カンボジア」を意味する Camboja (カンボジャ)の転訛であるとされる[3]。 方言では「ぼうぶら」「ボーボラ」などの名を用いる地方もあり、これはやはりポルトガル語で、「カボチャ」や「ウリ類」を意味する abóbora (アボボラ)に由来するとされる。 ほかに「唐茄子(とうなす)」「南京(なんきん)」などの名もある。 漢字表記「南瓜」は中国語: 南瓜 (ナングァ; nánguā)によるもの。英名は pumpkin (パンプキン)であると理解されている場合が少なくないが、実際には、少なくとも北米では、果皮がオレンジ色の種類のみが pumpkin であり、その他のカボチャ類は全て squash (スクウォッシュ)と総称される[4]。 したがって日本のカボチャは、kabocha squash (カボチャ・スクウォッシュ)などと呼ばれている。属名Cucurbita はラテン語で、一般的には「ウリ」と訳される語を転用したもの。

◇生活する花たち「柏葉あじさい・ガザニア・釣鐘草」(横浜市緑区北八朔)

5月30日(水)

 港の見える丘公園
★薔薇を見しその目に遠き氷川丸  正子
薔薇の咲く心地良い季節の、港の見える丘公園。高台にあって、爽やかな港の展望が開けます。美しい薔薇も、遠望の氷川丸も、鮮やかに目に浮かび、海への視野の広がりが目も心も楽しませてくれます。(藤田洋子)

○今日の俳句
ポケットに鍵のふくらみリラの風/藤田洋子
ポケットにいくつも鍵を入れて出かける主婦の普段の生活。そういう生活にも、リラの咲く風が吹くと、洒落た生活となる。「リラの風」が作者の姿をよく浮き上がらせている。

○茄子の花

[茄子の花/横浜日吉本町]

★この辺でかみ合ふ話茄子の花/稲畑汀子
★ふだん着の俳句大好き茄子の花/上田五千石
★雨あとの土息づくや茄子の花/松本一枝
★茄子の花茄子に映つてをりにけり/木暮陶句郎

 茄子(なす)は、ナス科ナス属の植物。また、その果実のこと。原産地はインドの東部が有力である。その後、ビルマを経由して中国へ渡ったと考えられている。中国では広く栽培され、日本でも1000年以上に渡り栽培されている。温帯では一年生植物であるが、熱帯では多年生植物となる。日本には奈良時代に、奈須比(なすび)として伝わった。土地によっては現在もそう呼ばれることがある。女房言葉により茄子となった。以降日本人にとってなじみのある庶民的な野菜となった。葉とヘタには棘があり、葉には毛が生えている。世界の各地で独自の品種が育てられている。加賀茄子などの一部例外もあるが日本においては南方ほど長実または大長実で、北方ほど小実品種となる。本州の中間地では中間的な中長品種が栽培されてきた。これは寒い地域では栽培期間が短く大きな実を収穫する事が難しい上に、冬季の保存食として小さい実のほうが漬物に加工しやすいからである。しかし食文化の均一化などにより野菜炒めや焼き茄子など、さまざまな料理に利用しやすい中長品種が全国的に流通している。日本で栽培される栽培品種のほとんどは果皮が紫色又は黒紫色である。しかしヨーロッパやアメリカ等では白・黄緑色・明るい紫、さらに縞模様の品種も広く栽培される。果肉は密度が低くスポンジ状である。ヘタの部分には鋭いトゲが生えている場合がある。新鮮な物ほど鋭く、鮮度を見分ける方法の一つとなるが、触った際にトゲが刺さり怪我をすることがある。収穫の作業性向上や実に傷がつくという理由から棘の無い品種も開発されている。品種によってさまざまな食べ方がある。小実品種は漬物、長実品種は焼き茄子、米茄子はソテー。栄養的にはさほど見るべきものはないが、東洋医学では体温を下げる効果があるとされている。また皮の色素ナスニンは抗酸化作用があるアントシアニンの一種である。なかには、「赤ナス」のような観賞用として生け花などにも利用されているもの(熊本県などで「赤ナス」の商品名で栽培されている食用の品種とは別物)もある。赤ナスは食用のナスの台木としても用いられる(観賞用の赤ナスは味などにおいて食用には適さないとされる)。

 茄子の花は野菜の花のなかでも、句に詠まれることが多い。茄子は、濃い紫の茎、紫の色を残した緑の葉、うす紫の花、そして紫の実とその色合いが少しずつ違って一本となっている。その中で茄子の花の芯は一つ黄色で、そのおかげで花が生きている。夕方、野菜畑に水をやるときには、もっとも涼しそうな花である。

★茄子の花葉かげもっとも涼しかり/高橋正子

◇生活する花たち「梅花空木・昼咲月見草・キモノケイトウ」(横浜市緑区北八朔)

5月29日(火)

★朴の花わが身清めて芳しき  正子
今の季節、白く芳香ある大きな花を咲かせる朴の花。葉も花もゆったりと大柄であるだけに、その香りのゆたかさに、身も心も清められるようです。(小川和子)

○今日の俳句
青紫蘇を水に放ちてより刻む/小川和子
青紫蘇をしゃっきりと香りよく、細く切るためには、水に放して、いきいきとさせて刻む。水と紫蘇の出会いが涼しさを呼び起こしてくれる。(高橋正子)

○胡瓜の花

[胡瓜の花/横浜市緑区中山町]

★蝶を追ふ虻の力や瓜の花/正岡子規
★夕鰺を妻が値ぎりて瓜の花/高浜虚子
★生き得たる四十九年や胡瓜咲く/日野草城
★雲ひくし風呂の窓より瓜の花/芥川龍之介
★土蔵もて史蹟としたり瓜の花/富安風生
★瓜咲くや一つになつて村の音/永田耕衣
★肌合いの届くところに胡瓜咲く/成宮颯

胡瓜は、(キュウリ、Cucumis sativus L.)とはウリ科キュウリ属のつる性一年草、およびその果実のことである。かつては熟した実を食用とした事もあったが、甘みが薄いためにあまり好まれず、現在では未熟な実を食用とするようになった。インド北部、ヒマラヤ山麓原産。日本では平安時代から栽培される。胡瓜の「胡」という字は、シルクロードを渡って来たことを意味している。「キュウリ」の呼称は、漢字で「木瓜」または「黄瓜」(きうり)と書いていたことに由来する。上記の通り現代では未熟な実を食べる事からあまり知られていないが、熟した実は黄色くなる。尚、現代では「木瓜」はボケの花を指す。温暖な気候を好むつる性植物。栽培されているキュウリのうち、3分の2は生で食することができる。種子は暗発芽種子である。雌雄異花ではあるが、単為結果を行うため雄花が咲かなくとも結実する。主に黄色く甘い香りのする花を咲かせるが、生育ステージや品種、温度条件により雄花と雌花の比率が異なる。概ね、雄花と雌花がそれぞれ対になる形で花を咲かせてゆく。葉は鋸歯状で大きく、果実を直射日光から防御する日よけとしての役割を持つ。長い円形の果実は生長が非常に早く、50cmにまで達する事もある。熟すと苦味が出るため、その前に収穫して食べる。日本では収穫作業が一日に2~3回行われる(これには、日本市場のキュウリの規格が小果であることも一因である)。夏は露地栽培、秋から初春にかけては、ハウスでの栽培がメインとなり、気温によっては暖房を入れて栽培することもある。しかし、2003年から2008年の原油価格の価格高騰により、暖房をかけてまでの栽培を見送る農家も少なくない。果実色は濃緑が一般的だが、淡緑や白のものもある。根の酸素要求量が大きく、過湿により土壌の気相が小さい等、悪条件下では根が土壌上部に集中する。生産高は2004年、2005年は群馬県が第一位であったが、2006年からは宮崎県が第一位である。

◇生活する花たち「朴の花・カルミア・睡蓮」(横浜都筑区緑道ふじやとの道)

5月28日(月)

★浜名湖の水の五月を新幹線  正子

○今日の俳句
大きめの制服なじみ五月の児/黒谷光子
幼稚園児や一年生など、大きめの制服を着せら、緊張して入園入学をしたが、五月になると、園や学校の生活にもなじみ、制服も大きいながら身にあってきた。そのあたりが、屈託なくて、かわいらしい。(高橋正子)

○芍薬

[芍薬/横浜日吉本町自宅]

★芍薬を画く牡丹に似も似ずも/正岡子規
★蕾日に焦げんとしては芍薬咲く/中村草田男
★芍薬の一ト夜のつぼみほぐれけり/久保田万太郎
★嫁ぎゆき芍薬の花咲きつづく/和知喜八
★そろひ咲く白芍薬よ朝の庭/阿部ひろし
★芍薬のピンクが白に近い色/高橋信之
★芍薬の白はふっくら日の溶けし/高橋正子

 今日、5月28日は信之先生の81歳の誕生日。家族の都合で、昨日の日曜日に誕生祝いをした。四角な大きなケーキを句美子が作り、わたしは、たけのこ寿司を作った。ただそれだけの簡素なお祝い。芍薬の花を昼過ぎに買って花瓶に生けておいたら、夜には、蕾まで開きはじめて、開いていた花は、これ以上咲けないというほど開いた。花もちをよくする薬を入れたせいと、水切りがうまくいったのかもしれない。誕生日にふさわしく豪華に咲いた。砥部の庭には、臥風先生のお宅から移した芍薬があった。来年は、芍薬の根っこを買って鉢で育てようという話になった。
 花冠同人で今日の俳句に挙げた黒谷光子さんも、facebookで拝見すると、28日がお誕生日とのこと。光子さん、おめでとうございます。
 芍薬は牡丹が終わったころに咲く。牡丹ほど気取っていないので、砥部の庭にもあって、咲けば切って花瓶に挿して楽しんだ。小学生のころから芍薬は変わらずある。今はどうか知らないが、教室には教卓の近くに花瓶があって花が活けてあった。家に咲いた花を切って子どもたちが持ってきていたが、芍薬の咲く時期には、花瓶に挿しきれないほど芍薬が集まる。すると先生がバケツを用意してバケツに入れてくれる。このころは、芍薬だけでなく、あやめやいちはつなども次々に誰かがもって来ていた。

◇生活する花たち「ひなげし・おだまき・木苺」(横浜日吉本町)

5月27日(日)

★竹落葉わが胸中を降るごとし  正子
かろやかに降りそそぐ竹落葉。自然の動きを深く観察し続ければこそ、それが「胸中を降る」様を、意識できるのでしょう。胸中の入れ替わりには、つい「今年は何々の古葉を捨て」などと意味づけたくなりますが、竹が葉を落とすように自然の季のなすことなのだと、御句に感じた次第です。(川名ますみ)

○今日の俳句
山峡の一家の植田陽を返す/川名ますみ
山峡なので「一家の植田」に、つつましい田が想像できる。植田に風が渡り、陽をよく返している。陽に恵まれて、これから夏を過ごして、実りの秋へ豊かに稲が育っていくことであろう。単なる写生でなく、植田の一家にも心が及んでいる。(高橋正子)

○昼顔

[昼顔/横浜市緑区寺山町]

★昼顔や屈託のなき海女の笑み/水原春郎
★昼顔よ汝はそも何故ひといろに/林翔
★昼顔を広げて浜を踏ましめず/鷹羽狩行
★昼顔の咲いて上りの電車透く/岡本眸
★晝顔はみな肌色の熱き色/瀧春一
★ひるがほに紙の日の丸掛かりをり/吉田汀史

昼顔(学名Calystegia japonica)は、ヒルガオ科の植物。アサガオ同様朝開花するが昼になっても花がしぼまないことからこの名がある。つる性の多年草で、地上部は毎年枯れる。春から蔓が伸び始め、夏にかけて道ばたなどに繁茂する。夏に薄いピンク色で直径5~6cmの花を咲かせる。花の形は漏斗形。苞葉が萼を包み込むので、帰化植物のセイヨウヒルガオ(西洋昼顔、学名Convolvulus arvensis)と区別できる。アサガオと違って鑑賞用に栽培されることは、殆ど無い。また、結実することはまれであるが、地下茎で増え、一度増えると駆除が難しいため、大半は雑草として扱われる。黄色のヒルガオは無い。 ヒルガオの花言葉は「絆」。 根で組み合っているので、「絆」という花言葉になったと思われる。
夏の光が強くなりはじめるころから、昼顔の花が咲く。道端などに繁茂する植物とは思えないほど、たよりなげな淡いピンクの花が光りにとけるようで、夏の風景にやさしさを添えている。

◇生活する花たち「薔薇・雪の下・矢車草」(横浜日吉本町)

5月26日(土)

★ほととぎす啼きつつゆくも空の中  正子
夏鳥ほととぎすの季節がやってきました。さわやかな鳴声と空の広さを詠んで、「空の中」に奥深い意味を込められた御句でもあろうかと思いました。例えば去りにし人を惜しむ心や、大空の下で一喜一憂している人間の姿などが想われます。子規や不如帰にも何か通じるのではないかと考えました。 (河野啓一)

○今日の俳句
夏潮の青く広きや船の旅/河野啓一
「夏潮」は青さを特徴とするものであるが、「広き」が加わり、船旅の開放感を詠み手にも味あわせてくれる。(高橋正子)

○ネット短信
<No.147>を午前11時過ぎに配信する。

■ネット短信No.147/2012年5月26日発信
□発信者:高橋正子(花冠代表)
□電話:045-534-3290
■□第13回(紫陽花)フェイスブック句会のご案内
①投句:当季雑詠(夏の句)を計3句、紫陽花など
②投句期間:2012年6月2日(土)午前0時~午後12時(24時)
③互選期間:6月3日(日)午前6時~午後12時(24時)
④入賞発表:6月4日(月)午前0時
http://www.facebook.com/kakan02
■□高橋正子の俳句日記(ブログ)
以下の方の句をご紹介していますので、ご確認ください。俳句のコメントもお願いします。
多田有花(6/1)小川和子(5/29)黒谷光子(5/28)川名ますみ(5/27)
http://blog.goo.ne.jp/kakan02/
●インターネット俳句センター
http://kakan.info/

◆後記/正子◆
☆母の葬儀のため、今日の秀句の選は信之先生に代行していただきました。25日から元通り、
選をいたしておりますので、よろしくお願いいたします。
☆母、遠部一恵が5月22日午前6時35分死去。享年97歳。葬儀は5月24日午前11時に
とり行い、家族葬とした。葬祭場は福山市中央斎場奈良津葬祭会館。葬儀の最後に長女である
私が参列者に挨拶。故人に対する挨拶と参列者へのお礼を述べた。アメリカのニューメキシコ
大学で数学の研究者となっている弟遠部仁士の数学の論文が日本学士院の紀要(PROCEEDINGS
OF THE JAPAN ACADEMY SERIES A MATHEMATICAL SCIENCES)に掲載されていること、および孫
である高橋元が情報通信学会の学会賞を受賞したこと、などを述べた。葬儀の終了は2時ごろ
で、横浜の自宅には新幹線で午後6時半過ぎ同行した句美子と帰宅。元夫婦は、別便の新幹線
で帰った。葬儀は、しめやかに無事執り行われ、終了した。長女として母への務めが終わり、
肩の荷が下りた。元、奈津子、句美子が参列してくれ、何よりも母への孝行となった。
◇お礼◇
多田有花さん、小西宏さん、藤田裕子さん、河野啓一さん、祝恵子さん、
ブログにお悔やみをいただき、ありがとうございました。風薫る良い季節に、無事母を見送る
ことができました。

○栃の花

[紅花栃の木(べにばなとちのき)/横浜市都筑区牛久保]

★栃咲いて浅夜しづかな疲れあり/星野麦丘人
★仰ぎ見る樹齢いくばくぞ栃の花/杉田久女
★山砂の流れとどめて栃咲けり/長谷川かな女
★栃咲くやまぬがれ難き女の身/石田波郷
★墓地の道乾きて冷えぬ栃の花/草間時彦
★裁判所あたりを暗く栃の花/大堀柊花
★あつまれる神ほとけかも橡の花/山崎 聰
★栃の花大志を抱く男居て/谷内 茂
★栃の花日ぐれは逸る水の音/菅井静子

栃の木(トチノキ、学名:Aesculus turbinata)は、トチノキ科(APG植物分類体系ではムクロジ科とする)トチノキ属の落葉広葉樹。近縁種でヨーロッパ産のセイヨウトチノキ (Aesculus hippocastanum) が、フランス語名「マロニエ:marronnier」としてよく知られている。落葉性の高木で、温帯の落葉広葉樹林の重要な構成種の一つ。水気を好み、適度に湿気のある肥沃な土壌で育つ。谷間では、より低い標高から出現することもある。サワグルミなどとともに姿を見せることが多い。木はとても大きくなり高さ25m、太さも1mを越えるものが少なくない。葉も非常に大きく、この区域では最大級の葉である。葉柄は長く、その先に倒卵形の小葉5~7枚を掌状につけ(掌状複葉)、全体の長さは50cmにもなる。葉は枝先に集まって着く。5月から6月にその葉の間から穂状の花序が顔を出す。穂は高く立ち上がり、個々の花と花びらはさほど大きくないが、雄しべが伸び、全体としてはにぎやかで目立つ姿である。花は白~薄い紅色。ツバキのものを大きくしたような丸い果実が熟すと厚い果皮が割れて少数の種子を落とす。種子は大きさ、艶、形ともに、クリのてっぺんのとんがりをなくして丸くしたようなものを想像すれば、ほぼ間違いない。ただし、色はより黒っぽい。日本では東日本を中心に分布、中でも東北地方に顕著に見られる。木材として家具などの材料となる。巨木になるものが多いので、昔はくり抜いて臼を作るのにもよく使われた。最近は乱伐が原因で産出量が減り、主にテーブルなどに使用される。木質は芯が黄金がかった黄色で、周辺は白色調。綺麗な杢目がでることが多い。また真っ直ぐ伸びる木ではないので変化に飛んだ木材となりやすい。比較的乾燥しにくい木材であるが、乾燥が進むと割れやすいのが欠点であるが、21世紀頃にはウォールナットなどと同じ銘木級の高価な木材となっている。デンプンやタンパク質を多く含有する種子は栃の実として渋抜きして食用になる。同様に渋抜きして食用になるコナラやミズナラなどの果実(ドングリ)よりも長期間流水に浸す、大量の灰汁で煮るなど高度な技術が必要で手間がかかるが、かつては米がほとんど取れない山村ではヒエやドングリと共に主食の大きな一角を成し、常食しない地域でも飢饉の際の食料(飢救作物)として重宝された。現在では、渋抜きしたものをもち米と共についた栃餅(とちもち)などとしてあちこちの土産物になっている。そのほか、街路樹に用いられる。パリの街路樹のマロニエは、セイヨウトチノキといわれ実のさやに刺がある。また、マロニエと米国産のアカバナトチノキ (Aesculus pavia) を交配したベニバナトチノキ (Aesculus x carnea) も街路樹として使用される。日本では大正時代から街路樹として採用されるようになった。(フリー百科事典「ウィキペディア」より)

栃の花を若いときに見た記憶はないが、栃の天狗の団扇のような葉はなかなか面白い。立ちあがる花も大木の花らしくおおらかで、どことなく洒落ている。

★朴の花栃の花見てゆたけしや/高橋正子
★朴の花わが身清めて芳しき/高橋正子

◇生活する花たち「おだまき・鉄線花・ひなげし」(横浜日吉本町)

5月25日(金)

★金魚鉢きらめくものを子が飼えり  正子
お子さんが小さい時、金魚鉢に金魚を飼い、その動きに目を凝らし大切に育てられています。そのお姿に、命あるものをいとおしむ優しさを感じられ、微笑ましく見つめられています。(藤田裕子)

○今日の俳句
ピアノ曲流れ軽やか空五月/藤田裕子
ピアノ曲が流れ、気持ちが軽く明るくなる。空は五月のうるわしさそのもの。よい季節のさわやかな気持ち。(高橋正子)

○母の葬
母、遠部一恵が5月22日午前6時35分死去。享年97歳。葬儀は5月24日午前11時にとり行い、家族葬とした。葬祭場は福山市中央斎場奈良津葬祭会館。葬儀の最後に長女である私が参列者に挨拶。故人に対する挨拶と参列者へのお礼を述べた。アメリカのニューメキシコ大学で数学の研究者となっている弟遠部仁士の数学の論文が日本学士院の紀要(PROCEEDINGS OF THE JAPAN ACADEMY SERIES A MATHEMATICAL SCIENCES)に掲載されていること、および孫である高橋元が情報通信学会の学会賞を受賞したこと、などを述べた。葬儀の終了は2時ごろで、横浜の自宅には新幹線で午後6時半過ぎ同行した句美子と帰宅。元夫婦は、別便の新幹線で帰った。葬儀は、しめやかに無事執り行われ、終了した。長女として母への務めが終わり、肩の荷が下りた。元、奈津子、句美子が参列してくれ、何よりも母への孝行となった。

○紫蘭

[白しらん/北鎌倉・東慶寺]

★吾知るや雑草園に紫蘭あり/高浜虚子
★紫蘭咲いていささかは岩もあはれなり/北原白秋

紫蘭(シラン、ラン科シラン属の宿根草、学名 Bletilla striata Reichb. fil.)は、日本、台湾、中国原産の地生ランで、日向の草原などに自生する。野生のものは準絶滅危惧種。しかし栽培品として広く普及しており、種子が飛散して栽培逸出することもあるため、野生状態のものも本来の自生個体かどうか判別は難しい。地下にある偽球茎は丸くて平らで、前年以前の古い偽球茎がいくつもつながっている。葉は、最も新しい偽球茎から根出状に3枚から5枚程度出て、幅の広い長楕円形で、薄いが堅く、表面にはたくさんの縦筋が並んでいる。花期は4月から5月。花は紫紅色で、30から50cm程度の花茎の先に数個つく。花弁は細長く、あまり開ききらないような感じに咲く。観賞用に、花の色が白色のもの、斑入りのもの、淡色花、花弁が唇弁化した「三蝶咲き」などがある。

★咲きほうけ風の紫蘭となりいたり/高橋正子

◇生活する花たち「白あやめ・白しらん・紫蘭」(北鎌倉・東慶寺)

5月24日(木)

★青葉木菟湯にとっぷり子と沈む  正子
アオバズクは大きな目が印象的な夏鳥です。青葉のころにやって来るゆえに青葉木菟と呼ばれます。夜行性で「ホッ ホッ」と規則的に囀ります。そんな鳴き声を聞きながらお子さんとゆったりお湯につかっておられます。山の宿か、あるいは露天風呂でしょうか。(多田有花)

○今日の俳句
山法師空より星を受けて咲く/多田有花
山法師の花と一般に言われているのは、正確には花ではないが、風車のような扁平な形をしている。この花が夜には、星の輝きを直接受けて開いている。清潔な抒情のある句。(高橋正子)

○十薬(ドクダミ)

[十薬/横浜日吉本町]

★どくだみや真昼の闇に白十字/川端茅舎
★十薬や四つの花びらよごれざる/池内友次郎
★叢に十薬花を沈め咲き/星野立子
★十薬の根の長々と瓦礫より/細見綾子
★測量の人十薬に踏み込みぬ/稲畑汀子
★十薬や夜へ突立つ坂がかり/鷲谷七菜子
★花言葉なき十薬は十字切る/上田五千石
★毒だみや十文字白き夕まぐれ/石橋秀野

十薬は、生薬名の十薬(じゅうやく、重薬とも書く)で、ドクダミ(蕺草、学名:Houttuynia cordata)ともいわれ、ドクダミ科ドクダミ属の多年草。 住宅周辺や道ばたなどに自生し、特に半日陰地を好む。全草に悪臭がある。開花期は5~7月頃。茎頂に、4枚の白色の総苞(花弁に見える部分)のある棒状の花序に淡黄色の小花を密生させる。本来の花には花弁も、がくもなく、雌しべと雄しべのみからなる。加熱することで臭気が和らぐことから、日本では山菜として天ぷらなどにして賞味されることがある。他の香草と共に食されるドクダミ(ベトナム)、また、ベトナム料理ではザウゾプカー(rau giấp cá)またはザウジエプカー(rau diếp cá)と称し、主要な香草として重視されている。ただし、日本に自生している個体群ほど臭気はきつくないとも言われている。中国西南部では「折耳根(ジョーアルゲン 拼音: zhéěrgēn )」と称し、四川省や雲南省では主に葉や茎を、貴州省では主に根を野菜として用いる。根は少し水で晒して、トウガラシなどで辛い味付けの和え物にする。生薬として、開花期の地上部を乾燥させたものは生薬名十薬(じゅうやく、重薬とも書く)とされ、日本薬局方にも収録されている。十薬の煎液には利尿作用、動脈硬化の予防作用などがある。なお臭気はほとんど無い。 また、湿疹、かぶれなどには、生葉をすり潰したものを貼り付けるとよい。

◇生活する花たち「こあじさい・くさのおう・まるばうつぎ」(東京白金台・自然教育園)

5月23日(水)

★燕子花を抱え一束の湿り  正子
燕子花の数本を抱え、その一束の湿りを通して、水辺に群れ咲く燕子花のみずみずしさ、剣状の葉とともにある花のありようが伝わります。美しい季節の花を手にして、快い湿りを感じます。(藤田洋子)

○今日の俳句
開いては菖蒲の高さ揃いたり/藤田洋子
菖蒲のあでやかな花が印象づけられる。どれも同じ丈に咲きそろう菖蒲の見事さ。(高橋正子)

○睡蓮(ひつじ草)

[睡蓮/横浜・山田富士公園]

★雨明るくなりし目前(マサカ)のひつじ草/臼田亜浪
★睡蓮の花沈み今日のこと終へず/臼田亜浪
★睡蓮に日影とて見ぬ尼一人/飯田蛇笏
★睡蓮や鬢に手をあてて水鏡/杉田久女
★睡蓮に胸のあたりを切らるるよ/永田耕衣
★睡蓮の明暗たつきのピアノ打つ/中村草田男
★睡蓮に雨意あり胸の釦嵌む/中村草田男
★睡蓮の葉の押さへたる水に雨意/中村草田男
★老の賜ひし杖睡蓮の花へ曳く/中村草田男
★睡蓮点々主情の人の背高く/中村草田男
★睡蓮沿ふ山路ゆきつつ文字つづる/中村草田男
★睡蓮の敷き重なりし広葉かな/星野立子
★一ならび睡蓮の葉の吹かれ立つ/星野立子
★睡蓮の汀に睫長き子よ/星野立子
★睡蓮やまづ暮のいろ石にあり/加藤楸邨
★睡蓮の池とも別れ柩行く/村越化石
★睡蓮咲く妻逝き二十七年目/松崎鉄之介
★睡蓮のひかりを絵の具盛り描く/宮津昭彦
★睡蓮や人語のごとく鳴きし鳥/原 月舟
★睡蓮の水に二時の日三時の日/後藤比奈男

睡蓮(学名:Nymphaea)は、スイレン目スイレン属の植物の一つで、水生多年草。単にスイレン(睡蓮)と呼ぶことが多い。日本にはヒツジグサ(未草)の1種類のみ自生する。日本全国の池や沼に広く分布している。白い花を午後、未の刻ごろに咲かせる事からその名が付いたと言われる。水位が安定している池などに生息し、地下茎から長い茎を伸ばし、水面に葉や花を浮かべる。葉は円形から広楕円形で円の中心付近に葉柄が着き、その部分に深い切れ込みが入る。葉の表面に強い撥水性はない。多くの植物では気孔は葉の裏側にあるが、スイレンでは葉の表側に分布する。根茎から直接伸びる花柄の先端に直径5-10cmほどの花をつける。産地で大まかに分けると、熱帯産と温帯産に分けられる。温帯産は水面のすぐ上に花を付けるが、熱帯産は水面から高く突き出た茎の先端に花をつけるので、区別は容易である。また、熱帯産には夜や早朝にしか花を咲かせない種もある。

◇生活する花たち「白あやめ・額紫陽花・シラン白」(北鎌倉・東慶寺)

5月22日(火)

★葉桜に夜も残れる空の紺  正子
美しく広がった葉桜のうす緑と、暮れなずむ初夏の夜空の深い紺色とが溶け合って独特の色彩の世界を描いている、との句意かと存じます。色ばかりでなく爽やかな夜風も感じられるように思いました。 (河野啓一)

○今日の俳句
卯の花の白きを門に置きし家/河野啓一
卯の花の白さを門に配しているのがいい感覚だ。「置きし」は、画を描いているような、絵具を置くような、詠み方で、光景を絵画的にしている。(高橋正子)

○紫陽花(あじさい)

[アジサイ 墨田の花火/東京・関口芭蕉庵]

★紫陽花や藪を小庭の別座敷/松尾芭蕉
★紫陽花の末一色となりにけり/小林一茶
★紫陽花の花に日を経る湯治かな/高浜虚子
★紫陽花や水辺の夕餉早きかな/水原秋櫻子
★紫陽花や白よりいでし浅みどり/渡辺水巴
★紫陽花の醸せる暗さよりの雨/桂信子
★大輪の紫陽花に葉の大きさよ/稲畑汀子
★里山の結界なせる濃紫陽花/宮津昭彦
★あじさゐや生き残るもの喪に服し/鈴木真砂女
★誓子旧居紺あぢさゐに迎へられ/品川鈴子
★紫陽花の花あるうちを刈られけり/島谷征良
★あぢさゐに触れて鋏のくもりけり/高田正子

紫陽花(アジサイ、学名: Hydrangea、アジサイ科アジサイ属の植物の総称である。学名は「水の容器」という意味で、そのまま「ヒドランジア」あるいは「ハイドランジア」ということもある。また、英語では「ハイドレインジア」と呼ぶ。開花時期は、 6月から7月15日頃。ちょうど梅雨時期と重なる。日本原産。色がついているのは「萼(がく)」で、花はその中の小さな点のような部分。しかしやはり萼が目立つ。紫、ピンク、青、白などいろいろあり。花の色は土が酸性かアルカリ性かによっても。また、花の色は、土によるのではなく遺伝的に決まっている、という説もある。

★妻の浴衣あじさい白く染め抜かれ/高橋信之
★あじさいに七曜またも巡りくる/高橋正子

◇生活する花たち「紫陽花」(北鎌倉・東慶寺)