8月11日(木)

★おみなえし山の葛垂る庭先に  正子
おみなえしの黄と葛の紅紫色も鮮やかに、身近な庭先に秋の七草を楽しむ心豊かなお暮らしです。ひらがな表記の「おみなえし」の優しさに、野生の葛と対照的なおみなえしの伸び立つしなやかさがより強く感じられます。(藤田洋子)

○今日の俳句
新刊の一書机上に秋初め/藤田洋子
秋が来たと思う爽やかさに、さっぱりと片付いた机上に一冊の新刊書が読まれんとして置いてある。生活が新鮮に詠まれている。(高橋正子)

◇生活する花たち「落花生の花・ササゲの花・稲の花」(横浜市緑区北八朔町)

8月10日(水)

★ひとつぶのつめたさうましぶどう食ぶ  正子
ぶどうは多汁で甘酸っぱく、手を濡らしつつも一粒ずつ頂けるのがまた嬉しい果実です。上五、中七を全部ひらがなにされたことで、良く冷えたぶどうを一粒ずつ、美味しく味わいながらゆとりの時間を過ごされていらっしゃる様子が窺えます。(佃 康水)

○鬼灯(ほおずき)

 ほおずきの玲瓏と熟れ原爆忌  正子

 月遅れのお盆が近くなると、ほおずきを思い出す。生家には、築山といって庭石や灯籠や小さい池に、松、椿、紅葉といった木を配しているところがあって、そこに先祖を祀る小さい碑のようなものがあるのだが、そのわきにほおずきが植えてあった。お盆のころちょうど熟れるので、植えられたのであろうが、このほおずきは、きれいに熟れかけたと思うと、袋が虫にくわれて網目状になってしまうのが、ほどんど。中の実の皮と破らないように種を出して口に含めば、鳴るというもの。しかし、これがうまくいったことはなかった。かなりの技がいるのであろう。浅草のほおずき市に売られるような完璧なほおずきを見てみたいものと思っていた。
 東京・下町の夏の風物詩「ほおずき市」が7月9日、東京都台東区の浅草寺で始まった。本堂周辺に並んだ露店は約220軒。朱色が鮮やかな丹波ホオズキが売れ筋で、1鉢2500円。かつて薬効があるとして用いられた、緑色の千成ホオズキも人気という。9、10日は参拝すると4万6千日分の御利益があるとされる浅草寺の功徳日。ほおずき市は10日夜まで開かれ、浅草観光連盟は約60万人の人出を見込んだ。

○今日の俳句
露草を今朝の客にと摘みて来る/佃 康水
まだ露草が咲いているうちの来客。すずしい露草の花を摘んで来てもてなす心。主客ともにすずやかな気持ちのひと時が過ごせそうだ。(高橋正子)

◇生活する花たち「落花生の花・胡麻の花・稲の花」(横浜市緑区北八朔町)

8月9日(火)

★西瓜切ってみなの心に故郷(くに)ありぬ  正子
西瓜は、みんなで頂くのが、おいしいですね。分けられた西瓜を、それぞれが嚼む。やがて言葉少なとなり、ふと見渡せば、皆が懐かしげな顔つきに。西瓜を切り分けることで、そこへ集う人達に故郷を想わせる。季節とともにある、暮らしの力と存じます。(川名ますみ)

○今日の俳句
車椅子とんぼの群へ触れに入る/川名ますみ
「触れに入る」がすばらしくよい。とんぼの群れに、自ら入り、とんぼと同じように交わることに純粋な喜びがある。(高橋正子)

○落花生の花
 ピーナッツの花咲かせ空ひろびろと  高橋信之

 生家の前はすぐ畑となって、胡麻を植えていたことを既に書いたが、その胡麻畑の隣に落花生を植え、同じ時期に花を咲かせていたので、夏休みの記憶に残っている。当時、生家では、南京豆といっていたが、南米原産で東アジアを経由して、江戸時代(1706)に日本に渡来したと言われている。落花生は、7・8月の早朝に黄色の花が咲いて、昼にはしぼんでしまう。数日経つと子房柄(子房と花托との間の部分)が伸びて地中に潜り込み、子房の部分が膨らんで結実する。地中で実を作ることから落花生(ラッカセイ)の名前が付けられた。

◇生活する花たち「ササゲの花・稲の花①・稲の花②」(横浜市緑区北八朔町)

8月8日(月)立秋

★朝顔の紺一輪を水に挿し  正子
朝の澄んだ涼しい空気の中に咲く朝顔が美しく、今朝だけの花をゆっくり眺めていたい。が、するべき事は山ほど。紺色の一輪を冷たい水に挿して、近くに置き楽しまれる様子を思い浮かべました。(津本けい)

○今日の俳句
水甕にとんぼの羽音止まりぬ/津本けい
水甕に来たとんぼが、水甕の上に止まって、止まるために力強い羽音をさせる。水と、とんぼと、その羽音。涼しい世界だ。「止まりぬ」で、この句が命を得た。(高橋正子)

○胡麻の花
 胡麻の花川流域の拡がりに    信之
 胡麻の花咲かせ一畝また一畝   〃 
 胡麻の花咲かせて厚く地を覆う  〃 
 胡麻の花稲の花咲くその続き   正子

生家の前はすぐ畑となって、そのひと隅に夏休みになると、胡麻の花が咲いた。栽培していたのだ。生家は大畑(だいばたけ)の屋号がついていたが、申し訳程度に5畝ほど胡麻を植えていた。それで1年間に消費する胡麻がまかなえたのだろう。夏休みには胡麻の花が咲いて、秋には、筒状の俵型の実ができた。枯れ色になると畑から抜いて葉をむしって棒のようにして筵に拡げて干す。藺ござに新聞紙を敷いて乾かした胡麻を載せ、木槌で叩いて種、いわゆる胡麻を出す。白胡麻ではなく、黒胡麻だった。木槌で叩いて種を採るのは、祖母と私の役目で、その後は、母親がきれいに洗って干していたのだろうが、記憶がない。

胡麻は、アフリカあるいはインド原産とされる。古くから食用とされ、日本には胡(中国西域・シルクロード)を経由して入ったとされる。昨日、北八朔町の畑で見たものは、丈は、1メートルを越えてたくましかった。花はうすむらさきの筒型で金魚草のような形。花は下から上に向って咲く。上は花がさき、下の方は実が出来ているのもよく見かけた。面白いことに、種は、5つにわかれた殻に入っている。今、わが家では、白胡麻と黒胡麻を用途によって、あるいは気分によって適当に使い分けているが、新米の胡麻お結びが一等美味しい。新米と新胡麻は出会いもの。

○横浜市緑区北八朔
 おみなえし山の葛垂る庭先に   正子
 桔梗は低し岩間に咲いており   〃
 梨の実に白雲の空広がれる    〃
 第三京浜国道直下を晩夏の川   〃
 遠雷は遠雷のまま昼下がり    〃
 水遣りし花に遠雷なお遠く    〃

◇生活する花たち「桔梗・胡麻の花①・胡麻の花②」(横浜市緑区北八朔町)

8月7日(日)

★七夕の星はいずれも澄み透る  正子
新暦の七夕は梅雨のさなかで星は見えないことが多いのですが、旧暦の七夕の頃は空が高く星がきれいに見えます。どの星も澄んでいて涼しげです。澄み透る星々を仰ぎながら、秋の気配も感じられるのではないでしょうか。 (後藤あゆみ)
七夕の夜はもう秋の空、涼やかで美しい空気です。天の川を成すそれぞれの星も、天の川の外に在る星も、澄み透って見えることでしょう。都会の空には難しい景色かもしれませんが、御句のように「澄み透る」心境で仰ぎたいと思いました。(川名ますみ)

○今日の俳句
緑蔭にセーラー服のかたまれり/川名ますみ
セーラー服の少女たちが緑陰にかたまっている。おしゃべりに夢中でもなく、次のことを待っているのだろう。「かたまれり」に少女のうぶな、固い一面が読みとれる。(高橋正子)

○稲の花
稲の花をしばらく見ていない。電車に乗って、横浜市営地下鉄グリーンラインの川和町までゆけば、田んぼと梨畑が見れる。
朝、今日は立秋なんだけれど、6時半ごろ起こされる。稲の花の写真を涼しいうちに撮りにゆくからということだ。一昨日までは涼しかったのだが、また暑くなって、暑さ負けしそうだ。
7時過ぎ出発する予定が、コーヒーを入れたりして少し遅くなった。中山行きの電車で、終点の一駅手前の川和町で降りる。グリーンライン沿線では、もっとも牧歌的な風景が見れる。階上の駅を降りて道沿いに行くといきなり、ピーナッツの花が目に入る。ささげかなにかの豆の花を見たり、月見草の花を見たり。薊は、すっかり種になって、ほうけて一つ二つ残る花が無残。信号を右折し、幅広い農道に沿えば、すぐ田んぼがあり、稲に花が咲いている。田んぼに水を引く農家の人がひとり。腰に手を当てて、水の入り具合を見ている。直径10センチほどのパイプからごぼごぼと田んぼに水が流れ混んでいる。今の時期、水がたくさん要るのだろう。子どものころは、稲の花は、夏休みの終わりから二百十日ごろが盛りだったと記憶している。早速、田んぼの脇の道に入って、写真を撮る。どれも似たのが稲の花。ちらちらとした稲の花をクローズアップしたもの、田んぼの全景を入れたもの、稲の花と遠く青い山を入れたものなど撮った。

田んぼの道を山手の民家のある方へ折れる。桔梗、おみなえしが咲いている家を見つける。民家はみな山沿いにあって、敷地に山から夏草が押し寄せ、除草もままならぬのか、暑そうに見える。しばらく歩くと、盆踊りの櫓が見えた。自治会の役員らしき人、とび職のような人が数人いる。「盆踊りの用意ですか。」と聞くと、「盆踊りは終わったよ。」との答え。櫓を取り外すところだった。狭いながらも、そこは、十二神社の境内である。北八朔町の神社で、お伊勢さんとあるから、伊勢神社系であろう。神社は二十段ほど石段の上にあり、杉の大木が左右にある。夫婦杉といって、幹の一つが途中から二つに分かれた杉がある。ご利益があるらしい。神社からは、田んぼの中をまっすぐ通る農道と田んぼ一帯が見晴らせる。稲が熟れ、その中を祭りの神輿が担がれてゆくのが想像できる。信之先生が「鎮守の森が残っているなあ。」という。境内で冷たいコーヒーを飲んで、休憩する。休憩のあとは、田んぼの中を鶴見川の方へと歩く。鶴見川に添うと、第三京浜の国道の高架と、田園都市線の鉄橋が見える。釣竿を持った人に会ったので、「何が釣れますか。」と聞くと、「鯉ですよ。」と照れ笑いをしながら答える。ただ、釣って、また放すだけなのか。鶴見川沿いは、夏草が繁茂し、にいにい蝉、ミンミン蝉が川ぶちの木の中で鳴いている。サイクリングする人、ジョギングをする人をみると、みな汗だく。暑さばかりが募る。田園都市線の電車が二本通過。その鉄橋をくぐり、市ヶ尾駅へ向かう。駅までは坂道。駅近くのドトールでアイスコーヒーとサンドウィッチ、アップルデニッシュで一息入れる。しかし、昼までには帰りたい。市ヶ尾から田園都市線渋谷行きであざみ野まで。あざみ野から市営地下鉄ブルーライン湘南台行で、センター北まで。センター北からグリーンラインで我が家のある日吉本町まで。今日の日程は終わり。

梨畑のことを書き忘れようとしたが、梨畑は、田んぼの続きにあって(元は田んぼだったのだろうが)、青く高い網で周囲を囲んでいるので肝心の梨は良く見えない。「浜なし」として売られるのは、もう少し先のようで、赤梨系のようだ。梨畑の周囲も水路が巡っているが、畑には愛媛の蜜柑畑同様にスプリンクラーが設置してある。

畑の話をもう一つ。農道沿いに、畑があって、栗畑もある。青栗がたわわに枝に付いている。雑草を燃やす煙も細々と昇っている。若いお嫁さんらしい人が畑の水栓から水を汲み、作物に水遣りをしている。「あっ、ブルーベリーですね。」と思わず言ってしまったら、お嫁さんは、「そうですか。」と知らなかった風に答える。これから熟れようとしてブルーベリーの色はどりどりだった。

稲の花水路に水の高鳴れり    正子
境内より農道ますぐ稲の花    〃
稲の花山嶺ようやく見えており  〃

◇生活する花たち「ササゲの花・稲の花①・稲の花②」(横浜市緑区北八朔町)

8月6日(土)

★胸うちに今日の夏野を棲まわせる  正子
楽しかった今日一日の夏野の思い出を忘れないであろうという思い、「胸うちに棲まわせる」素晴らしくすてきです。 (祝恵子)

○今日の俳句
児は透けし袋に水着持ち帰る/祝恵子
泳いだあとの幼い子どもが、透き通った袋に水着を入れて持って帰ったというのであるが、なにもが愛らしい。濡れたままの幼子の髪、かわいい絵柄の透き通った袋、それを持って歩く様子など。(高橋正子)

◇生活する花たち「向日葵」(横浜日吉本町)

8月5日(金)


★夏まつりのふうせん浮かせ子ら眠る  正子
子供達にとっての夏まつりは、屋台店をあれこれ回って見るのが何よりの楽しみ。一番人気が有るのがふうせんの様で、遠くから色鮮やかなふうせんを見つけておねだりをしています。買って貰ったふうせんを家に持ち帰り、おまつりの心地良い疲れにうとうと眠ってしまいます。安らかな寝息を聞いて居るかの様にふうせんは子供達のそばに高く浮いています。そんな様子を見守っていらっしゃるご家族の温かい眼差しが見えて参ります。(佃 康水)

○今日の俳句
作務僧も素麺流しの竹を組む/佃 康水
寺での素麺流しであろうか。作務僧も出て、素麺を流す青竹を組み、境内での素麺流しがいかにも涼しそうである。(高橋正子)

◇生活する花たち「昼顔とキンシバイ・むくげ・ななかまど」(横浜日吉本町)

8月4日(木)

★野に出でて日傘の内を風が吹き  正子
真夏の暑い陽射しの中を歩く時、わずかな日蔭でも有難いもの。日傘を差せば、少しの日蔭にも風が通り抜け、涼しさが生じるから不思議ですね。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
青蘆の風に逆らい騒ぎけり/桑本栄太郎
逞しく育った青葦は、風に抵抗して、というより、風の縦横な吹き方に騒ぐ。乱れ騒ぐ青葦と風の具合がとても魅力的。(高橋正子)

◇生活する花たち「淩霄花・朝顔・黄花コスモス」(横浜日吉本町)

8月3日(水)

★夏蒲団糊の匂いて身に添えり  正子
糊の利いた布団はきっぱりと乾いて肌に纏いつかず、清々しい眠りに就くことができます。夏の夜に糊の匂いを引き合わせて下さり、涼しさが伝わります。(小西 宏)

○今日の俳句
大きく晴れし南の空や凌霄花/小西 宏
南の空が広く眺め渡されて、その中にオレンジ色の凌霄花が咲き盛り、絵画的印象の強い句となっている。(高橋正子)

◇生活する花たち「夾竹桃・むくげ・ハイビスカス」(横浜日吉本町)

8月2日(火)

★這いはじめし子に展げ敷く花茣蓙  正子
はいはいを始めた赤ちゃん、その様子をうれしく思いながら花茣蓙を広げるお母さん。明るく涼しげな母子の微笑ましい様子が伝わってきます。(多田有花)

○今日の俳句
頂の青筋揚羽雲に触れ/多田有花
山の頂には、こんなところまでよくも、というような蝶などを見かける。飛べば雲に触れそうな青筋揚羽もいて、驚き、また楽しい世界を作っている。(高橋正子)

○簾
 古家や奈良の都の青簾        正岡子規
 すだれ立てかけて店頭トマトの赤   高橋信之
 熟睡(うまい)の子に簾の内の青き部屋 高橋正子

 マンション1階の西端がわが家族の住居で、その北西に信之先生の書斎がある。書斎の西窓と北窓に簾を吊って、北からの涼しい風が吹きこんでくる。

 信之先生の書斎は、真夏でも涼しいので、そこがネットの仕事場にもなって、時には、私の仕事場ともなる。今日は、涼しすぎて、西窓を締めた。ネットは、毎日の決まった仕事がある。花冠ツイッター句会での入賞句を毎日欠かすことなく選んでいる。今日の秀句・佳句である。
http://twilog.org/kakan_haiku

 全国俳誌協会の新設IT事業部の部長になったので、協会公式のホームページを作っている。今日制作の試作版は、下記アドレスの表紙で、蒲の穂の写真と草田男の俳句を選んで制作した。
http://zenkoku-haishi.info/index3.html

 協会公式サイト試作版は、第1号から第6号までを制作し、IT事業部のブログにリンクを貼った。
http://blog.goo.ne.jp/zhk2011 

○現代俳句一日一句鑑賞
★見おぼえの山百合けふは風雨かな/ 星野立子

この前通って見た山百合が、今日は、雨に打たれ、風に煽られて咲いている。風雨のなかの山百合に、この前見た山百合が重なり、山百合の姿がしなやかに捉えられている。山百合に「見覚えの」を持ってきたのは、立子の真骨頂。(高橋正子)

▼その他は、下記アドレスをご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan2011

◇生活する花たち「槿①・槿②・蒲の穂」(横浜日吉本町)