★てのひらに書を読む梅雨のすずしさに 正子
外は梅雨の雨がしとしと降っています。部屋の中で、てのひらに書物を広げ読み耽っておられました。いつしか心安らぎ、すずしさに包まれるひとときを過ごされました。(藤田裕子)
○今日の俳句
青梅雨や雨音軽く夜に入る/藤田裕子
青梅雨という言葉が美しい。それと微妙にずれた軽い雨音がして夜に入る。心に浸透するような詩情がある。(高橋正子)
★時計草ほんの少しの青があり 正子
不思議な花の魅力の時計草、細やかに観照されたのでしょう。「ほんの少しの青」がある時計草の、特異な花型や色鮮やかな花弁がありありと目に浮かびます。(藤田洋子)
○今日の俳句
ポケットに鍵のふくらみリラの風/藤田洋子
ポケットにいくつも鍵を入れて出かける主婦の普段の生活。そういう生活にも、リラの咲く風が吹くと、洒落た生活となる。「リラの風」が作者の姿をよく浮き上がらせている。(高橋正子)
○落語会/出演:慶応大学落語研究会
第2回「笑って健康いきいき落語」が6月18日の午後、横浜市港北区日吉本町の「いきいき会館」で開催されました。この企画は、「ASA日吉本町/朝日・日経の販売店」と慶応大学落語研究会とのユニークなコラボ企画によるもので、100%手作りの落語会でした。健康維持、増進によいとされる笑いを、「地域の方々と共有する!」、というキャッチフレーズで、日吉本町在住の方は入場無料でした。
当日の番組は、慶応大学落語研究会のメンバー5名によるもので、古今亭今古(こんこ)さんの「みそ豆」(文学部2年)、桂洒風(しゃんぷう)さんの「宮戸川」(文学部3年)、三遊亭夜遊(ばんゆう)さんの「老婆の休日」(経済学部3年)、三遊亭慶馬(けいば)さんの「掛け取り」(法学部2年)、柳家ゆふりさんの「初音の鼓」(文学部3年)でした。
落語会に出掛けた(自宅から100mほどの会館)信之先生のご感想は、出演者の演技が初々しいことと出演者とお客さんとの距離が近いということで、快い時間を過ごせた、と言っておられました。
▼慶応大学落語研究会
http://keioochiken.web.fc2.com/
○野菜スタンド
日吉本町地下鉄駅から、20メートルほどの道路沿いの農家が野菜スタンドで夏野菜を売り始めた。冬野菜と夏野菜の端境期には、スタンドはお休みとなる。無人ではなく、対面。いんげん、蕗、きゅうり、大根葉、玉ねぎ、じゃが芋、ズッキーニ、トマトなどがある。自分の家の前の畑で採れたものを夫婦二人で売ってくれる。家のすぐ前なのだが、軽四トラックの荷台に載せてきて、テントを張ってその下で売ってくれる。奥さんの「ありがとうございました」は、日本語を母語とするひとではないことがわかるのだが、愛想がよい。東南アジアからお嫁にきたようだ。いつも夫婦ふたりで農作業をしている。
★紫陽花を抱え魚屋に魚を選る 正子
紫陽花と魚と、意外な取り合わせのように思いましたが、こんなこともありますね。道すがらきれいな紫陽花を買われたか、あるいは頂かれたか、腕に抱えながら今夜のおかずの魚を選ばれる、主婦の日常の一端をいきいきと詠まれていると思います。 (黒谷光子)
○今日の俳句
透かし見て蛍袋のがらんどう/黒谷光子
「がらんどう」がいかにも蛍袋らしく、読者に夢を見させてくれる。蛍をいれれば、幻想的な美しいあかりとなるだろう。(高橋正子)
○夏椿
六月、近所を歩くと、姫沙羅(ひめしゃら)の花が咲いているお宅がたくさんある。大方は、門の脇が多い。夏椿よりも小さい二、三センチの花が地面に落ちているので、花が咲いていると気づく。百日紅のようにつやつやした幹で、幹に映えて小ぶりの葉は、さわやかな緑。姫沙羅は、三大美幹木の一つにあげられるとのこと。あと二つは、白樺と青桐。たしかに庭に植えるとロマンティックな色と樹形で都会的な印象である。
歩いていると、たった一軒だが、夏椿にも出会う。夏椿は、夏に椿のような花が咲くので、その名が付いている。ツバキ科ナツツバキ属。落葉樹。夏椿は愛媛県の砥部動物園へいたる道に植えられている。紫陽花と並んで、咲くともなく咲いている。
夏椿は別名を沙羅(シャラ)、沙羅木(シャラノキ)という。沙羅(シャラ)の由来は、インドの沙羅双樹(サラソウジュ)と夏椿を日本人が間違えたことに由来しているとのこと。やがて、沙羅双樹からサラノキ、シャラノキ、シャラと変わっていったとのこと。
平家物語の「沙羅双樹の花の色」とあるが、夏椿を沙羅双樹としてそのころ、寺の庭に植えていたらしい。
インドの沙羅双樹は、ヒマラヤのふもとからインド中西部に分布する高木でフタバガキ科。釈迦が沙羅双樹の下で悟りをひらいたということで、聖木として大切にされる。葉の形がハート型で先がすっと尖っている。日吉の金蔵寺には、白雲木があるが、この木も葉が丸みを帯びたハート型であって、沙羅双樹として寺などに植えられているとのこと。花ではなく、葉の形で選ばれたものであろうと私は思う。
夏椿をシャラといったり、サラといったり、サラノキといったり、シャラノキといったり、ああ、ややこしい。白雲木まで沙羅双樹に見立てられたり。夏椿、姫沙羅ともに、一日花で朝咲いた花は夕べには散る。花の可憐さゆえに、いっそうはかなさを感じるのだろう。生者必衰、諸行無常。
葉の連想で言うなら、ついでに加えよう、ハート型の葉で美しいのは桂。これも高木になる。桂は京都平安神宮に立派な木がある。神奈川では、四季の森公園のシンボルツリーとして入り口に植えられている。桂は、月桂樹ではない。月に聳える桂の樹なんて思っちゃいけない。月桂樹はローリエ。栄者の冠となる。
ひめ沙羅の落つほど咲ける花の数 正子
紫陽花ときそわず咲いて夏椿 正子
★葛飾は薔薇咲き風の吹くところ 正子
葛飾はどんなところだろう。きどらない街筋には薔薇が咲き、そよ風が吹き、何処にでもあるような景にすっとなじみ、それを楽しむ作者です。 (小川和子)
○今日の俳句
青葉冷え鉱泉の湯気湧きのぼる/小川和子
青葉の中に勢いのある鉱泉の湯気が立ち上って、自然の力の大きさを感じる。「青葉冷え」なので、身体にそれが伝わる。(高橋正子)
○堀川喜代子さん(新潟)歓迎句会
6月12日(日)、堀川喜代子さんが新潟から上京され、歓迎句会を開きました。参加は、信之先生、喜代子さん、それに私正子でした。花冠会員の皆様には、日が迫っておりましたので、連絡いたしませんでした。
JR高田馬場駅の早稲田口で午前10時に待ち合わせました。私が空色の花冠7月号を目印に手に持ち待っていましたら、紺のパンツスーツの方が、すぐに私を見つけてくださり、堀川さんとわかりました。花冠の藤田裕子さんと似ておられて驚きましたが、初対面とは思えず、懐かしい気持ちになりました。雨は降らず、曇り空から、陽が射すときもありました。これが何よりの歓迎といえましょう。
リーガロイヤルホテル東京で、日曜のブッフェをご一緒するつもりで、ホテルのシャトルバスで、ホテルまで行きましたが、いつものカフェ・コルベーユは、予約なしでいったため、満席。場所を移して、神田川を渡り、関口芭蕉庵へ。庭を一巡りし、休憩所でしばし句作。あまりyっくりしていると、お昼が混むので、ほどなく蕎麦処へ。椿山荘の蕎麦処「無茶庵」で天せいろにビールで乾杯し昼食。昼食後、庭園を散歩しながらフォーシーズンズホテルの喫茶室へ行き、珈琲やソフトドリンクを飲みながら、三人で句会。句材は、芭蕉庵、椿山荘の庭園出拾ったもの。芭蕉庵は青葉が茂り、紫陽花が池の端などそこここに咲いて、まさに雨の最中。どくだみの花もいたるところに。木苺が良く茂り、「名残りの実」が一つだけ残っていた。椿山荘の庭園には、わらび、夏萩、紫陽花、薊、菖蒲、芹の花などが咲いていた。水車もこっとんと調子よく回っていた。帰りは、椿山荘から池袋西口までのシャトルバスに乗った。池袋で山手線外回り(上野東京方面)に乗り、喜代子さんとは田端で別れ、私達は目黒まで来、目黒から目黒線で帰宅。午後5時過ぎ。喜代子さん、信之先生、今日一日、疲れでした。(高橋正子記)
[作品]
せり上がるせり上がる万緑といい/信之
葉の上に葉が梅雨晴れの空を見せ/信之
木苺の名残りの色の手に零る/喜代子
芭蕉庵の木漏れ日淡し著我の花/喜代子
額あじさい雪崩れてついに水に触る/正子
緑陰に水湧きこぼる音尽きず/正子
▼関口芭蕉庵
東京都文京区関口2丁目11-3
http://kkubota.cool.ne.jp/sekiguchibashouan.htm
▼椿山荘「無茶庵」
東京都文京区関口2丁目10-8
http://www.chinzanso.com/restaurant/