横浜港
★港湾の動きに満ちて春浅し 正子
大型船のゆっくりした動き、ちいさな船舶の活発な動き、岸壁でのガントリークレーンのゆっくりした動き船の上で動く人影などいろいろな動きが見える早春の港。その向こうにはキラキラ光る波。吹く風はまだ冷たいが確かな春の気配。本格的な春の到来を予感させる句である。(古田敬二)
○今日の俳句
耕しに土の中なる根のさみどり/古田敬二
「耕し」は、春の季語。春になると、種まきの準備など、田畑を耕す。耕していると、土の中に白い根ではなく、さみどりの根があることに驚く。土の中にもすでに春の息吹がある。(高橋正子)
★青空の果てしなきこと二月なる 正子
立春をすぎた頃の晴れた空は、うすみずいろに、春浅い二月ならではの軽やかさに充ちています。二月のひかりを伴い、果てしなく春へと向かう青空です。(小川和子)
○今日の俳句
二月の陽を反射させつつバス来たる/小川和子
バスを待っていると、向こうから陽を反射させながらバスがやって来た。光は、早くも明るい二月の光。二月の光を連れて来たバスである。(高橋正子)
慶大日吉キャンパス
★煙る銀杏芽吹く気配を一心に 正子
春になり芽吹きが新鮮に感じる時期となりました。 煙る銀杏が春の兆しが一気に訪れを感じさせてくれます。(高橋秀之)
○今日の俳句
食卓を彩る一輪挿しの梅/高橋秀之
毎日の食事が並び、家族の団欒がある食卓。食卓の一輪挿しの一枝の梅が今日という日を清々しく、ことに季節の新しさを知らせてくれる。さりげなく梅の花がある生活がそのまま句となった。(高橋正子)
★菜の花へ風の切先鋭かり 正子
菜の花が咲き始めたころでしょうか。まだ春は浅く、ときに冷たい風が野を吹き抜けます。風に大きく揺れ動く菜花にはらはらさせられている作者の気持が端的に詠まれていると思います。(河野啓一)
○今日の俳句
水音して箕面連山春浅し/河野啓一
「水音して・・春浅し」の感覚がいい。箕面連山を行くと、ころころと水音が絶えずしている。自然に身を入れると、確かに春が来ている。(高橋正子)
★歩けばある梅咲くところが登り口 正子
お住まいの近くの歩いて行ける所の坂を登った場所に、神社か或いはお寺があるようですね!。その登り口にある梅も、もうそろそろ開花なのでは・・?と、春めいた陽気に心が逸っている作者です。心が弾む心情が想われ、素敵な一句です。(桑本栄太郎)
○今日の俳句
★自転車の籠に紅梅つぼみもち/桑本栄太郎
停めてある自転車の籠につぼみをもっている紅梅を見た。どこかでもらった紅梅か、ここにもつぼみがついた花がある驚きと喜びがあって、句が生きいきしている。(高橋正子)
★さきがけて咲く菜の花が風のまま 正子
早春のまだ吹く風の冷たい中、さきがけて咲く菜の花。黄色の色彩があたりを明るくし、風のままに揺れる菜の花のみずみずしさが、まっすぐに伝わってくるようです。(小川和子)
○今日の俳句二月の陽を反射させつつバス来たる/小川和子
バスを待っていると、向こうから陽を反射させながらバスがやって来た。光は、早くも明るい二月の光。二月の光を連れて来たバスである。(高橋正子)
★梅の花いつもきれいな青空に 正子
寒さの中に、仄かな香をまとい凜と咲く可憐な梅の花。見上げるといつも澄みきった青空が花とともにあります。早春のみずみずしい空気と春を迎える静かな喜びが感じられます。(柳原美知子)
○今日の俳句
とりどりの遊具整い風二月/柳原美知子
遊具のペンキを塗りかえられたり、整備されて、子供たちが遊びに来るのを待つばかりとなっている。「風二月」がよく効いている。(高橋正子)
○神奈川宿散策
横浜そごうに用があるので、出かけた。そごうで用を済ませたあと、午後2時ポルタの鳩居堂で2時信之先生と待ち合わせで、探梅に。出かけた先は、横浜市神奈川区にある神奈川宿。ネットの検索では、ここの遊歩道に紅白の梅があって素晴らしいというこことだ。横浜駅から横浜線に乗って、次の東神奈川で下車。そこから神奈川区役所の方へ歩く。途中には、帆布販売店とか、板金店がある。寺を目安に、歩く。東海道の松並木が50メートルほどであろうか、残る。バスがようやく通るほどの道。その松並木を見て、さらに滝の川という川を目指す。浄瀧寺があり、その近くの橋を渡ると、梅の香りが漂ってきた。川には、鴨が泳いで、梅の花びらが流れている。ここが目当ての場所であった。
梅の香を息に吸い込みあるきけり 正子
梅散って花びら流る滝の川 正子
神奈川宿紅梅白梅匂いけり 正子
宗興寺
牡丹の芽ヘボン博士のレリーフに 正子
神奈川公園
下萌えは大樹の太る根もとより 正子
○ウェブサイト「横浜線沿線 街角散歩」に「神奈川宿歴史の道」というページがある。
①横浜線沿線 街角散歩
http://www.natsuzora.com/may/town/index.html
②神奈川宿歴史の道
http://www.natsuzora.com/may/town/kanagawa-aoki.html
○神奈川宿(横浜市神奈川区)は、日本橋(東京都中央区)を起点とする東海道の宿場の一つで、東海道五十三次の品川宿(東京都品川区)、川崎宿(川崎市川崎区)に次ぐ、三番目の宿場として賑わった。今ではすっかりビルの建ち並ぶ市街地に変貌し、ところどころに神奈川宿の面影や横浜開港期の歴史のひとこまを伝える場所も残っている。それらの史跡などを繋いで整備された散策コースは、東は新町の神奈川通東公園から西は台町の上台橋までの、約四キロほどで、「神奈川宿歴史の道」という。「神奈川宿歴史の道」の東の起点は京浜急行の神奈川新町駅の横にある神奈川通東公園で、この場所は横濱開港時にオランダ領事館として使われた長延寺のあった場所でもあり、この辺りが神奈川宿の東の入口に当たる。西の起点は、横浜駅近くの台町の上台橋である。
日吉西量寺・水掛観音
★水掛けて春水かがやく仏なる 正子
水に濡れかがやく仏様のお顔が、まぶしく微笑まれているようで、春のよろこびに包まれます。 (宮地祐子)
○今日の俳句
湖の青空の青へと辛夷の芽/黒谷光子
「湖の青」「空の青」というから、何かと思えば、「辛夷の芽」と来る。この読み手の期待感に、湖や空の青を背景に、辛夷の芽が尖り、輝いている姿、花が咲いたときの景色を想像させてくれる。(高橋正子)
○花冠4月号後記
★はやも、四月号。厳しい冬の寒さを越えて
春を迎えるのは、やはりうれしいものです。
今年は、特にそのことを実感しました。雪国
の方は、なおさらのことと思います。本号編
集中の今日、建国記念の日は、雪です。行き
つ戻りつ、春がやってくるようです。
★「俳句の風景」を連載していますが、今回
は、第四回となります。そして、四人の方の
登場です。雑草地を開墾に取り組んでおられ
る名古屋の古田敬二さん、キリマンジャロも
踏破され、毎日250メートルほどの増位
山を登って「散歩」に出かけられている姫路
の多田有花さん、広島牡蠣で有名な地御前に
お住いで、牡蠣の水揚げの様子など活き活き
と伝えてくださる佃康水さん、花冠の創刊の
地、俳都松山にお住いで、瀬戸内の冬の気候
を叙情豊かに綴っった藤田洋子さん、それぞ
れの「俳句の風景」です。力作です。「俳句
と生活」を掲げている花冠にとって、俳句の
生まれる風景、背景を知ることは、鑑賞の深
み、次への創作の深みの糧のなることと思い
ます。ご味読ください。
★ネット句会の金賞、一月月間賞を二十ペー
ジに掲載しています。句を拝見しますと、継
続が、洗練と深みをもたらしてくれるという
ことを知らされます。あまり、張り切らず、
緩めず、やはり、細く長くを続けて参りまし
ょう。
★正子の俳句日記に正子俳句の鑑賞をお寄せ
くださって、ありがとうございます。お一人
お一人、お礼を申し上げたいのですが、あっ
という間に過ぎる日にちに追いつかず、お礼
を書き込んでおりませんが、鑑賞文を日記に
貼り付けてお礼に代えさせていただきます。
★私は、今年ほど、「探梅」と称して近隣を
歩いたことはありません。さほど立派な梅林
があるわけでもなく、庭や畑隅の梅、境内の
梅などを咲いていないか見て歩くだけのこと
ですが、それぞれ、面白いところがあって、
楽しんでいます。
★二月十日には、信之先生がネットで検索し
て、神奈川宿の梅見に出かけました。二〇〇
二年の梅の素晴らしい写真を頼り出かけたわ
けですが、本陣跡の滝の川の遊歩道の梅十本
ほどが、京浜国道の下で、幹は哀れに煤けて
おりました。でも匂いは、さすが、遠くから
も漂ってきており、散った花びらが川を流れ
ておりました。わずかに、松並木が残ってお
りますが、「東海道」と呼ばれた面影はとっ
くに消えているようでした。ヘボン博士が施
術所として使った宋興禅寺も、現代風な切り
妻屋根の洋風な建物の寺に建て替えられてお
りました。これも、探梅のひとつでした。
(正子)
★おしばなの紅梅円形にて匂う 正子
おしばなとして、なお仄かな香りを残す紅梅。枝々に咲き匂う花をありありと思い浮べる、新鮮な香おりです。おしばなの一枚となりながら、より鮮やかで艶やかな、小さな円形の花びらです。(藤田洋子)
○今日の俳句
街筋の昼月ほっと梅開く/藤田洋子
街筋の空を見上げれば、白く透明感のある昼の月が浮かんでいる。昼月を遠く梅が開いて、昼月と梅との美しい出会いがある。(高橋正子)
★春浅し立ちたる草の鳴りづめに 正子
立春間もない頃の風、つまり東風が枯れ色をしたままで立っている草に吹きつけ、枯れ草同士が擦れてカサカサと鳴っている。この音が新芽を促す音なのかも知れない。枯れ草の根元から少しづつ新芽が出て来る様なそんな気配を感じます。(佃 康水)
○今日の俳句
包み紙少し濡れいて蕗の薹/佃 康水
蕗の薹を包んでいる紙がうっすらと濡れている。朝早く採られた蕗の薹だろうか。蕗の薹の息吹であろうか。しっとりとした命の、春みずみずしさがある。(高橋正子)