1月12日(水)

★枯草を踏みおり人に離れおり  正子
集団でいた中から離れておられるのか、それとも最初からひとり出てこられたのか、いずれかはわかりませんが、人と離れて己の心と向き合っておられるように感じられます。枯草がすでに次の種を準備しているように、それは充実のひとときであるかもしれません。(多田有花)

○今日の俳句
髪洗う耳に木枯し届きけり/多田有花
髪を洗うときに耳の辺りが一番ひんやりするが、そこに木枯らしが吹く音が届いた。「耳に届く」は、リアル。季語は「木枯らし」。(高橋正子)

1月11日(火)

 石鎚山
★雪嶺にこだま返すには遠き  正子

○今日の俳句
無造作に一輪挿しの野水仙/渋谷洋介
野水仙を、珍重がらず、「無造作」に一輪挿しに活けたところがよい。野水仙のあるがままの姿、野にある風情が見えて、句が生きている。(高橋正子)

1月10日(月)

★冬ばれの空の向こうに何もない  正子
冬晴れの日、どこまでも澄み切った空は、空のその先まで全てを見せてくれるようです。向こうに「何もない」ことを確信できるほどの透徹した空が快く、また、気持が引き締まります。(川名ますみ)

○今日の俳句
雪礫空に返したくて放る/川名ますみ
雪を礫にして、礫にしてみると、それを思いっきり空へ放りたくなる。あれほどに遠く高い空へ返してやりたくなる。そうすると、思い切り心が解放されそう。若々しい句。(高橋正子)

1月9日(日)

★火が焼ける餅のきよらを身に映す  正子
昔はよく火鉢の炭火で餅を焼いたものです。網の上の餅が焼けるさまをじっと見つめ待っている。ひっくり返された餅はやがてぷっくりと膨れ上がり、真っ白な、透明に光る餅質が姿を現す。この清く美しい餅の姿は、いつのまにか見る者の身に照り映え、心を清らかにしてくれます。(小西 宏)

○今日の俳句
追羽根の澄みたる響き青空へ/小西 宏
追羽根を打つ音が、響いて青空へ抜けるしずかで、のどかな正月。「澄みたる響き」が、よく晴れ渡った青空を思い起こさせている。(高橋正子)

1月8日(土)

★初旅にみずほの山の青を飛び  正子
青々とした山々を見下ろして初旅の気分をを満喫されたことでしょう。かつて米国テキサス上空を飛べども飛べども点在する森しかなかったことを思い出しました。 (矢野文彦)

○今日の俳句
出会いたる冬三日月の大きさよ/矢野文彦
思いがけずも冬三日月に出会う。冬の寒さに磨かれ、澄んで、ましてや大きな三日月であることの驚き。(高橋正子)

1月7日(金)

★七草の書架のガラスの透きとおり  正子
正月七日、ようやく日常に戻る七草のころ、きれいに磨かれた書架のガラスに、整然と並ぶ書物が見えるようです。年の始めの清々しさとともに、清潔感漂うお暮らしもうかがえます。(藤田洋子)

○今日の俳句
刻ゆるやかに七草粥の煮ゆるなり/藤田洋子
主婦にとって、正月はなにかと落ち着かなく過ぎるが、七草のころになると一段落する。ふつふつと煮える七草粥に、「刻ゆるやかに」の感が強まる。(高橋正子)

○七草を刻めば芹の香が立ちぬ  正子
 七草のはこべはこべら春の香よ 正子
 七草粥うましと食べて出勤す  正子

1月6日(木)

★餅を焼く火の色澄むを損なわず  正子
お餅は日本人にとっては特別な食べものです。お正月を迎えるために用意するのもお餅です。それを焼く火の色、「澄むを損なわず」に厳かさを感じます。食べるということ、それを用意する気持ち、双方に通じる厳かさです。(多田有花)

○今日の俳句
よく晴れて風の激しき寒の入り/多田有花
いい嘱目吟である。今年の寒の入りは、よく晴れて風が激しく吹いた、ということだが、自然は、刻々、折々に、さまざまの変化を見せてくれる。それに触れての嘱目は、自然への素直な観照として尊ぶべき。(高橋正子)

1月5日(水)

★独楽の渦記憶の底を回りたる  正子
独楽の渦が緩やかに回る。昔見た曲芸の記憶だろうか。あるいは、幼い友の自慢の独楽であろうか。いや、もっと深い謎がくるくると我が身を曳きつけているのかも知れない。 (小西 宏)

○今日の俳句
オリオンの僅かに傾ぐ峰雪へ/小西 宏
オリオンが僅かに傾ぐ時間は静寂である。その時間の峰の雪とオリオンの冷たい輝きが何にも増してよい。(高橋正子)

1月4日(火)

★新巻に荒縄しっかとかかりたる  正子
塩蔵された鮭にかかる荒縄の力強さ、確かな目で新巻の姿を捉えていらっしゃると思います。おのずと、北国の厳しい冬の生活も感じさせていただきました。(藤田洋子)

○今日の俳句
四日はや高々と干す濯ぎもの/藤田洋子
主婦の若々しい生活俳句。四日になると、正月にたまったものの洗濯に精を出し、日に風に高々と掲げて干す。若々しさと清潔感に好感がもてる。(高橋正子)

○正月3が日は、穏やかな日が続いた。今日4日からは、信之先生は、味噌のお雑煮。日脚が伸びた感じが強まる。(高橋正子)

1月3日(月)

★誕生日正月三日の眉月に  正子
誕生日と言っても、正月三日なので、正月の用事に取り紛れて、特に感慨は湧かないが、私自身は、何かにつけて、月に恃む気持ちがあるので、美しい眉月にほっとして、今日は誕生日だと思ったのである。(自句自解)

○今日の俳句
水音を近く三椏芽は銀に/小川和子
原句は「水音を近くに」であったが、中七の八音を七音に整え、切れを入れた。それにより、作者の立場と情景がはっきりする。水音が近く聞こえ、三椏の芽が銀色に輝きながら、早春に咲くのを待っている。(高橋正子)

○新年ネット句会開催。今年初めてのネット句会。24名の参加者。修さん、弘さんもご参加。オフ句会でひょっこり顔を見せていただくとうれしいが、ネットでも同じ感じ。入賞発表中の1時ごろ、電気のブレーカーが突然落ちて、とんだハプニング。

○お節もほとんど食べ尽くした。今年は紅白膾を柚子果汁だけで作ったので、ずいぶん好評。酢が抜けることも、水っぽくなることもない。

○年賀状が、元旦、二日、三日と休まず配達される。京大の西村先生(元愛媛大学の先生)に、花冠を贈呈しているが、賀状に、「花冠のエッセイ興味深く読んでおります」とあった。