★鳥渡る異郷の空のうすぐもり 正子
秋も深まり、北方から群れをなして渡ってくる渡り鳥。力強いながらも懸命に飛んでくるその姿は異郷にある自身の姿と重なり、切なくも愛しい。うすぐもりの空であればなおさら郷愁を感じます。(柳原美知子)
○今日の俳句
橋に見る水きらめくは溝蕎麦に/柳原美知子
そんなに大きくなし橋であろう。橋の上から見ると、川の水がきらきら光り、溝蕎麦の花を輝かせている。田園の澄んだ水、澄んだ空気の中まで感じさせてくれる。
○コンテスト子どもの部の賞品と賞状を発送。
○角川「俳句11月号」で、第56回角川俳句賞の選考経過を読む。「受賞作なし」の声がたびたびあがっているが、2作を入賞させている。
○俳句11月号で目にとめるべき記事は、P48の<「江戸俳諧の黄金時代」ー手紙と俳諧の素敵な関係 伊藤善隆(湖北短期大学準教授 俳諧研究者)>この中で、日本の伝統的、詩歌(和歌・発句)の評のありかたについて。川本臥風先生の添削指導は、まさにこれであったことを知る。私が、ブログ句会、添削教室で行っている、評も基本的には、伝統的日本の詩歌の評であろうと思う。西洋のクリティック(批評)とは違うのである。随筆とエッセイが違うように。(最近は日本では、エッセイでないものをエッセイとしているが。エッセイは、論文なのであるが)
★草を出て草へ飛びけりきりぎりす 正子
キリギリスの動きは、なんとなくユーモアがあって見ていても楽しい。草むらから出てきたと思えば、また草むらへ飛び去る。イソップ童話では働き者の蟻にたいして、年中遊び呆けている道楽者ののように描かれているが、彼らは彼らなりに懸命に生きているのだろう。この一句で、ふと童心に帰ることができる。(山中啓輔)
○今日の俳句
玻璃戸拭き終え秋の空存分に/山中啓輔
玻璃戸しっかり拭き終えると、玻璃戸という隔てが無くなったように、秋の空が、直に、しかも存分に自分のものにできる。「秋の空」の感覚、秋の季節をよく捉えている。
○台風14号が伊豆半島に接近。遅い台風である。
★海の青日々に深まり柘榴の実 正子
海の青に、石榴の実の鮮やかな赤。なんと美しい色彩でしょうか。裂け目から覗く石榴の実はルビーような輝きと透明感があり、深まりゆく海の色に映えますね。詩情豊かな秋を感じました。(後藤あゆみ)
○今日の俳句
花束にして子が持ちし赤のまま/後藤あゆみ
赤のままは、ままごとのご飯から由来する名であるが、子が作ったその花束は、かわいいだけでなく、良き時代へのノスタルジックな雰囲気をもっている。それが表現されて、一味違う句になった。
★朝はまだ木犀の香のつめたかり 正子
香りがつめたい、という表現が新鮮です。朝、戸外へ出て真っ先に木犀の香りがした、肌に当たる空気の冷たさ、それが蘇ってきます。(多田有花)
○今日の俳句
さわやかに心を決めていることも/多田有花
この句は、心にきめていることがあって、それはさわやかなものだ、というのみである。体内をさわやかに風が吹く感じだ。
★霧に育ち大根くゆりと葉を反らす 正子
○今日の俳句
どんぐりの新しきが落ち混ざりたる/池田加代子
どんぐりを見つけた童心のような喜びはもちろん否定しないが、それより深く入って、すでに落ちて風雨にさらされたもの、あたらしく落ちたものが共に目に入る。それを見ると森に深い時間が流れていることが知れる。
★炊きあげし飯盒をすぐ露の土へ 正子
飯盒炊爨という言葉を思い出しました。飯盒に木の棒を当て、耳で中の沸騰具合を聴き、炊きあがったのを確認し、ふたを下にして冷ます。露が降りる朝は前の日から晴れの天気。さわやかな、露の置く野原での楽しい爨が始まります。(古田敬二)
蕎麦咲いて山の畑の傾けり/古田敬二
下五の「傾けり」にいい情感があって、日本の原風景が詠まれた。蕎麦は、他の作物ができない山の畑などに多く植えられる。山の畑に蕎麦の花が咲くと、畑の傾斜そのものが白く埋め尽くされ、冷涼で美しい空のもとに広がる。(高橋正子)
○インターネット俳句コンテストの審査員の先生方と、実行委員の皆様に、コンテストのお礼のメールを出す。賞状賞品の発送は、11月になってを予定しているが、子どもの部からはじめる。
○子どもの部のメダルをもらわなかった作品の賞品としてユニセフに色鉛筆を注文。半額がユニセフに入金されるとのこと。(25日ファックスで)
○花冠12月号を校了とする。
○台風14号がきているというのに、今夜は木枯らしのような風が吹いた。夜は13度まで下がる。
○「俳壇」を11月号から1年間購読することにした。本阿弥書店の編集長の田中氏に全国俳誌協会の授賞式・祝賀会で頼んでいたのが届いた。角川の「俳句」と「白洲正子」(文藝別冊/河出書房新社)と、鳩居堂の葉書を信之先生が横浜で買って来る。白洲正子は対談集。「明恵上人」を大学生のときに読んだ時には、著名な人とは知らなかった。この書で、「あかあかやあかあかあかやあかや月」という明恵上人の歌を覚えた。
グレコ展
★秋光あおあおと浴び「水浴の女」 正子
グレコの「水浴の女 / 第7」、インターネットで検索し、様々な画像を楽しみました。どの角度から見ても、自由で伸びやかですね。裸婦像のブロンズが、秋の色を「あおあおと浴び」ている。秋光を全身に受けて、いっそう心地好さそうな「水浴の女」が浮かびます。(川名ますみ)
※水浴の女 グレコ
http://sculpture-japan.com/s2/0225/s.htm
○今日の俳句①
朴の葉の落ちをり朴の木はいづこ/星野立子
昭和二十年の句。敗戦後まもなく迎えた秋である。道を歩いていてはらりと落ちている朴の落葉に出合った。こんなところに朴の葉が落ちて、朴の木はどこにあるのかしら、とあたりを眺めているところである。朴の葉は風に乗って来たのだろう。朴の葉は大きいがゆえに楽しい。料理では朴葉焼きにしたり、何々と歌など書き付けたり、子供は狐のお面を作ったり、散歩の途次ならくるくる回してみたり。これをたわいもないとみる人もいるだろうが、主婦の生活のなかでは、こういうことが楽しいのである。たぶんに子供じみているかもしれないが、これも人の要素である。
○今日の俳句②
水のいろ火のいろ街に秋燈/川名ますみ
街に灯る秋の燈を見ていますと、水のいろをした燈、火のいろをした燈があります。それが、大発見のように新鮮です。青い燈、赤い燈が入り混じる街の燈を見つめれば、どこかさびしさも湧いてきます。
○第19回インターネット俳句コンテスト入賞発表
10月20日に発表。
一般の部の選者に沖縄の豊里友行氏に参加していただいた。沖縄のマスコミのサイトにも取り上げていただき、盛り上がった。
http://internet-haiku.info/contest/
○全国俳誌協会編集賞授賞式・祝賀会
10月21日(木)午後6時開会8時終了
アルカディア市ヶ谷で開催。編集長の池田加代子と出席。名誉主宰の信之先生は、急用で欠席。会の模様は加代子さんの報告で。祝辞を花冠主宰として述べる。急に指名された。インターネット俳句コンテストも祝辞のなかで、紹介。全国俳誌協会の秋尾敏氏には、第3回より選者として選をしていただいている。
http://www.geocities.jp/zenkokuhaishi/
★新米の飯のかおりにからし漬け 正子
ご飯の好きな方は、新米が焚かれればそれだけでおかずなど要らない、とまで言われます。しかしご飯の香りに(秋茄子の?)からし漬けが添えられてあれば、その味は更に甘みを増すものとなるでしょう。味覚を通して、豊穣の秋の喜びを伝えてくれている嬉しい句です。(小西 宏)
○今日の俳句①
桐一葉日当りながら落ちにけり 高濱虚子
桐の葉は大きい。大きく軽いものが落ちるとき、落下の速度は、浮力も働いて遅い。桐の葉が落ちていくまでに、桐の葉は、秋の日を葉の全面に受けながら落ちたのだ。秋の日にあたる大きな桐の葉の色もじみじみとしており、ゆっくりと落ちる時間もこの世の時をゆるやかにしている。(高橋正子)
○今日の俳句②
濃く厚き葉にどっさりと青どんぐり/小西 宏
樫か楢か、葉がよく茂り、枝にはそれに負けないほどのどんぐりがどっさり付いている。「厚き葉」が葉の質感をよく捉えているので、どんぐりの生り具合がありありと目に浮かぶ。青どんぐりはさっぱりとして、楽しいものである。(高橋正子)
★呼んでみるかなたの空の雲の秋 正子
良く晴れた秋晴れの高い空には、刷毛雲、ひつじ雲、いわし雲が次々に現れ刻々と変化して流れて行きます。青空の高い天空を眺めていますと、爽やかさに思わず「お~い雲よ!」と親しく呼んで見たくなる心情にとても共感致します。 (桑本栄太郎)
○今日の俳句
コスモスの傾ぎしままが風を待つ/桑本栄太郎
雨風を受けてコスモスの花茎も傾くようになったが、花は溢れるように咲いている。風を待って今にも戦ぎだしそうである。
★足先がふっと蹴りたる青どんぐり 正子
青いどんぐりが落ちている。ふっと足先が出て青どんぐりを蹴ってみる。足先が憶えていた童心と、郷愁の一瞬を見事に捉えた一句だと思います。 (後藤あゆみ)
○今日の俳句
大玻璃の透けいて桜紅葉散る/後藤あゆみ
大玻璃を透ける「桜紅葉」が美しい。透きとおった玻璃を通して見ることによって、さらに桜紅葉が鮮やかに美しくなった。