H22/11月号投句

湿原に
高橋正子

尾瀬行きのバスの秋日のあたたかし  
みなかみの稲穂熟れそむ日和なり   
胡麻の花山の青さをきわだてり    
八月は水芭蕉の葉のおおいなる
ハンゴンソウの黄花真盛り触れもして
木道に沿えば風吹き吾亦紅
 イワショウブ
みはるかす湿原白き花が立ち
湿原に日はかたむかず未草
 弥太郎清水
差し入れし泉の水に手を切られ
山小屋の湯にいて秋の笹の音

9月10日(金)

★赤とんぼいくらでもくる高さなり  正子
秋と云えば赤とんぼ。小さな存在だが、それが手の届きそうな高さに乱舞している。そこに秋たけなわの歓びを感じます。「いくらでもくる」が、作者の驚きの気持ちを含めたユニークな措辞で、印象的です。(河野啓一)

○今日の俳句
海見ゆる牧に草食む秋の馬/河野啓一
海の見える牧場。ゆったりとして草を食む馬との取り合わせに、新鮮味がある。(高橋正子)

◇生活する花たち「月見草」(横浜日吉本町)

9月9日(木)

★つまみ菜を洗えば濁る水の色  正子
小さいつまみ菜には土も付いていない程でしょうが、それでも僅かに濁る水の色。小さく弱いつまみ菜を大切に洗っておられるのでしょう。湯掻けばほんの一握りですが、おいしいお浸しが食卓を賑わします。(黒谷光子)

○今日の俳句
どの道を行くも稲の香漂いて/黒谷光子
どの道を行っても稲の香がしている、静かであかるい村。稲の熟れるころを自然体で詠んでいて、いつまでも残したい日本の風景。(高橋正子)

○米国のプロバイダーからのアクセスがあって、ためしに そこの検索に、<masako takahashi>
を入れてみたら、以下のように、私の記事が10番目くらいに出てきた。この記事がインターネット上に残っていることは、大変ありがたい。[POETRY ON THE PEAKS]

○水煙時代平成元年から平成10年まで投句されていた、藤田正明さん(91歳・愛媛)の息子さんのお嫁さんから電話がある。ご本人は入院中なのだが、句集を作ってあげたいとのこと。発行所の電話は、インターネットで調べてわかったとのこと。早速、第1巻から水煙を取り出して、掲載句を選ぶ作業に入る。こういったこともあるものかと、存続することの意味をあらたに考えさせられた。

○句集原稿を選ぶ作業は、本人か身近な人がすべきなのだが、こちらで引き受ける。ブログ句会で話題になったピアフの歌をネットで何曲か聞きながら作業。今日は「Non.je ne regirette rien」がいいと思った。ついでに、「リリーマルレーン」を聞く。デートリッヒの英語とドイツ語の歌を聞いたが、やっぱりドイツ語のほうがよいかな。

◇生活する花たち「小豆の花」(横浜日吉本町)

9月8日(水)

拉致された人の死
★無花果のつめたさもてる人の死よ  正子
自分の人生、命を、無関係な第三者に意味なく決められる、断ち切られる虚しさ。無花果も花のないのは、もしかしたら、自分の意思ではないかもしれない。本当は、華となって咲きたかった。これは、進化の、結果であって自分では、どうしょうもないことだ。拉致は罪のない人が突然、連れ去られる。自分の意思を、越える強大な力の前では、無力だということを、お句は、詠っているいるのでは、ないでしょうか。 (成川寿美代)

○今日の俳句
朝もやに濡れて社の新松子/成川寿美代
朝もやにつつまれた社の静かなたたずまい。もやに濡れて、新松子のみどりが一際さわやかに目に映る。(高橋正子)

◇生活する花たち「キフネツリソウ」(尾瀬ヶ原)

9月7日(火)

★心すずしあらたな虫の鳴き始め  正子
秋の虫の声はいつもあたらしく、聞いている内に、耳でなく心身すべてに響いてきます。気持ちのよい夜です。(池田加代子)

○今日の俳句
山晴れて竜胆の青濃き道を/池田加代子
竜胆の咲くころの晴れた空は青く深い。その空の下の山道を行くと、それ以上に青の濃い竜胆に出会った。空にも地の花にも心が通じる気持ちがいい。(高橋正子)

◇生活する花たち「イグサ」(尾瀬ヶ原)

9月6日(月)

★揺れもせず夕日当れる青稲穂  正子
青稲穂がみずみずしく、静かに広がる稲田一面に差す夕日。温かく懐かしい田園の光景に包まれて、一日を終える安堵感が感じられます。 (柳原美知子)

○今日の俳句
朝空を翅に映して銀やんま/柳原美知子
朝空のすずしい青をそっくり翅に映して飛ぶ銀やんま。静と動の対比、朝の景色全体の中の一つの銀やんま、また逆に、銀やんまにある景色全体が詠まれている。これが俳句の「まこと」である。(高橋正子)

◇生活する花たち「サワギキョウ」(尾瀬ヶ原)

9月5日(日)

★娘の秋扇たたまれ青き色の見ゆ  正子
お嬢さまの扇がたたまれてそこにあります。その青さ、それが若さであり、同時に新しい秋の涼しさをも感じさせてくれます。(多田有花)

○今日の俳句
日々すべきことをなしつつ新涼に/多田有花
作者が、モンブランへ発つ直前の句であるから、その準備のための、「日々すべきこと」であろう。用意周到な計画と準備があって、初めて登頂は成功する。日々成し終えていく内に、季節も新涼へと移り変わっていった感慨がおおきい。(高橋正子)
あの年、ヨーロッパは今年の日本のように記録的な猛暑でした。氷河が溶け出して危険になり、モンブランをあきらめて、モンテローザに変更したのを思い出します。(多田有花)

○花冠10月号発送。正午前。

○八月月間賞と、ブログ句会無欠詠賞を発送。
○ネット短信No.77号発信。

○暑さがなかなか収まらない。京都では39.9度だった。今年の敬老の日は9月20日(月)となっている。こう、暦が動いては、暦にならないではないか。

◇生活する花たち「エゾリンドウ」(尾瀬ヶ原)

9月4日(土)

★朝は深し露草の青が育ち  正子

○今日の俳句
湧水のふちの露草汚れなし/迫田和代
「汚れなし」ときっぱりと詠んで、力のある句となった。こんこんと湧く水のほとりに、水に触れんばかりの露草の青い花。全く汚れのない世界である。(高橋正子)

◇生活する花たち「キツネノカミソリ」(横浜四季の森公園)

9月3日(金)

★草は花を娘の誕生日の空の下  正子
子供が何歳になろうとも、親の自分がいくつになろうとも子供の誕生の時の様子は鮮明に覚えているもの。又今年も季節が巡り来て、九月に入り身ほとりの草は娘の誕生日に併せるかの如く秋の花を咲かせ出した・・。秋の景の到来とともに子の誕生日に思いを馳せる親心が思われて素晴らしい。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
さざめける稲穂の風の中に居る/桑本栄太郎
稲穂の上を風が渡ると、稲穂はさざめくような、快い音を立てる。吹く風も稲穂のさざめく音も、自然体で受け止められている。(高橋正子)

◇生活する花たち「蒲の穂」(横浜四季の森公園)

9月2日(木)

★しろじろと穂芒空にそよぐなり  正子
夏に見る青芒とはまた違い、秋空にそよぐ芒はよく長けて、ふんわりとした趣が感じられます。青く澄んだ空に溶けこむような穂芒が、しろじろとによく詠われていて、一幅の画をみるようでもあります。(小川和子)

○今日の俳句
機関車の蒸気噴きゆく秋風よ/小川和子
「蒸気噴きゆく」に機関車の生きいきとした走りを見る。冷涼な秋風となってゆく蒸気に、秋の季をとらえた。(高橋正子)

○晴れ。相変わらず暑いが、明け方はすこし空気が冷えてきた。
○久しぶりに農協の野菜市場に出かける。来週からは、改築のために、場所を移転するとのこと。
いちぢく、さつまいも、大根葉、なす、お花を買う。

◇生活する花たち「キバナコスモス」(横浜日吉本町)