裏の樹に蝉の一つが鳴きとおす
蝉音止み遠くで一つまた鳴けり
明日朝の食事に冷やす梨・トマト
朝日が溢れみんみん蝉がよく鳴けり
西瓜切ってみな故郷をもちたがる
夕立の気配集まる金の雲
鶏頭の花色いろいろ少しずつ
押入れに毛糸あること秋立ちぬ
立秋のコロッケからりと揚がりたり
青梨の冷たき甘さ歯に染みぬ
朝顔に水遣ってから留守にする
被爆手帳も父も死にゆき原爆忌
鶏頭の花が咲き出す原爆忌
原爆忌ラジオに鳴りて朝の鐘
夜の灯に鶏頭の苗涼しかり
朝の手にセロリーの香が移りたる
築地出て炎暑の風に煽られし
葉桜の蔭から勝鬨橋がよい
炎昼の勝鬨橋の開かぬまま
炎天に静もっている築地寺
遊覧船の下りゆく川水すずし
炎天の塔より水の浜離宮
えのころの夕日の色の風が吹き
えのころを誰かさびしい草にする
ゆらゆらと蔓を伸ばして育つ朝顔
樹があれば遠くにみんみん蝉の声
みんみんの声のしてくる遠い空
みんみんの遠き声へと耳とがる
ハイビスカス瞳大きな子の目覚め
ベランダに蝶が来ていて朝涼し
夏蝶の黄がひらひらと留まれリ
夕涼の山も木立もはや淋し
夏の雨降りやみ遠く鳴く雀
みんみんに鳴かれ太陽かっと照り
朝涼の粥噴く音のほかはなき
朝焼けにぱっちり苺の花の白
かなかなに夕べさみしき灯がともり
百合の香よ涼しき風よ買い物に
朝粥に胡瓜茗荷を漬けて寝る
長崎原爆忌/8月9日(日)
俳句
裏の樹に蝉の一つが鳴きとおす
蝉音止み遠くで一つまた鳴けり
○1945年8月6日8時15分の広島に続いて長崎に原爆が投下。11時2分。
8時15分といい、11時2分といい、朝なのだ。この時間に何をたくらみ、何を思う市民を殺そうとしたのだろうか。いかにも神の意思によるかのような、空中からの爆撃。許せるものではない。
終戦記念日が近づくと、それを振り返る報道に力が入るが、平和は普段の生活にあるのであって、普段の生活がいい加減では到底無理である。平和の思想は、毎日の生活の質素さと清潔さにあると思われる。質素と清潔というのは、現代流に解釈した「わび」の世界でもあろう。また、思想というのは、大きな言葉だが、ある思いや思考の日常的な継続なのだ。
○一日どんよりと曇り。午後7時56分ごろ地震。このところ地震が起きていなかったが、横浜あたりは震度3。床が揺れ、電灯の笠がゆれる。食器棚がびりびり音を立てる。
8月8日(土)
俳句
明日朝の食事に冷やす梨・トマト
朝日が溢れみんみん蝉がよく鳴けり
西瓜切ってみな故郷をもちたがる
○原爆忌句会の入賞者に賞品の発送を頼む。
金賞1名、銀賞2名、銅賞2名
立秋/8月7日(金)
俳句
夕立の気配集まる金の雲
鶏頭の花色いろいろ少しずつ
押入れに毛糸あること秋立ちぬ
立秋のコロッケからりと揚がりたり
青梨の冷たき甘さ歯に染みぬ
朝顔に水遣ってから留守にする
晴れ、夕方夕立。
○昨日の原爆忌に続いて、今日は立秋。8月7日という字面に微妙な翳りを
感じる。8に続く7。これでようやく秋なのだと。広島あたりでは、梅雨が明けないまま立秋を迎えたのではないだろうかと、妙な気持になる。
○埼玉県飯能市で大雨があったとのこと。降り始めて午後五時までに110mm。
原爆忌句会/8月6日(木)
俳句
被爆手帳も父も死にゆき原爆忌
永い月日のうちに一つづつもぎ取られ寂しくなって行きます。だからこそ、原爆は語り続けて行かなければならないと思います。 (佃 康水)
鶏頭の花が咲き出す原爆忌
少し淋しげな感じの鶏頭の花が咲き出す頃、いつも原爆忌が巡ってきます。ふと、子規の鶏頭の句を思い出しました。(河野啓一)
原爆忌ラジオに鳴りて朝の鐘
くもり
○原爆忌オンライン句会。23名参加。今回から智久さんに、集計をおねがいする。
○第64回目の原爆記念日。朝8時15分、原爆投下の時間にあわせてラジオから鳴る鐘を聞く。
○午後、西濃運輸で、花冠9月号が届く。原爆忌句会を行いつつ、区切りの着いたところで、発送の仕事。4時半には完了。すぐメール便を依頼して発送を済ませた。
○夕食は、山葵を食べるために、蕎麦にする。山葵がおいしいのは蕎麦と思う。それに、冷凍の巻寿司を解凍し、川海老と牛蒡のかきあげを抹茶塩で食べる。その後、急いでオンライン句会の仕事をする。
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原爆忌句会
ご挨拶
今日、8月6日は、広島に原爆が投下され64年目を迎えました。この原爆忌句会は、信之先生が提案され行われました。原爆投下の日の暑く晴れた日とは違い、今日の広島の朝は曇り空のようでした。8時15分に平和の鐘がラジオから鳴るのを耳に聞き留めました。
今日の句会には、23名の方々から原爆忌の句、七夕の句をご投句をいただきました。戦争を経験された世代からの実感の重い句が投句されたことは、大変重要なことだと思いました。経済主流の世の中に、アメリカ追随の世の中に、戦争も原爆も風化しつつあります。原爆は、西の方のこと、広島、長崎の人のこと、と突っぱねて考えている日本人が今いることに憤りを感じます。われわれが句を詠み、遺すことで、日本人の戦争に対する、遺すべき心情を明確に出来るものと思いました。
七夕の句にも、詩情豊かな佳句が投句され、心を和まされました。
信之先生には、句会を主宰いただき、ありがとうございました。暑さの中、投句と選、コメントをいただきまして、ありがとうございました。なお、集計は、伊豆の安藤智久さんがしてくださいました。今回が初めてでしたが、早速集計をしていただき、入賞発表に加えることができました。どうも、ありがとうございました。平和を祈念して、今日の原爆忌句会を終ります。(選者 高橋正子)
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天城のわさび/8月5日(水)
俳句
○薬の勉強を少々する。
○明日は、原爆忌なので、原爆忌句会を行うと信之先生が提案。行うことに。
○智久さんの伊豆屋さんに注文していたわさびセットが到着。山葵を食べるために、スーパーの魚屋でみて、サザエのおつくりと蛸を買う。一人は、サザエがよろしい、一人は蛸がよろしい。おろしたての余った山葵は、冷たい豆腐をゴマ豆腐を食べるように、また刺身風にして食べる。これがなかなかいける。
8月3日(月)
俳句
晴れ
○7月月間賞(最優秀2名)と7月無欠詠賞(5名)を発送。
8月2日(日)
俳句
曇り、ときどき雨。
○地蔵盆のころのような雨の匂いがする。気温も低い。北の部屋は風がよく通って、扇風機もいらないほど。
○植えたばかりの鶏頭がすずしそうに見える。秋の気配があるせいか。
○木曜日に阪急に出かけたとき、手ごろなスープカップを見つけたので、4つ買った。今朝は、そのスープカップを使いたいために、スープを作る。
コンソメの素、セロリ、玉葱、トマト、塩、胡椒。トマトは種を抜いて、さいの目。これでおいしいスープになった。
アダンの木/8月1日(土)
俳句
○7月月間賞を決定。宮本和美さん、小川和子さんの句に。
○7月31日の日経夕刊。海辺の情景十選⑩が紹介されている。谷川晃一という画家の文で田中一村の「アダンの木」を紹介。「ある種の絵には故郷がある。画家の故郷ではなく、その画家の感性が全開する環境、それが絵の故郷だ。ゴッホにとってのアルル、オキーフのニューメキシコなどがそれにあたる。」とある。
「感性が全開する環境」は確かにあるだろう。土地や風景との相性というものがある。ゴッホの絵を見ていると、アルルがそうだと思える。田中一村の絵の故郷は奄美大島。「夕日の残照を浴びるアダンの実と静かな海。しかし空には黒雲が広がり、豪雨接近の暗い気配を描いている。」夕日の残照に照らされるアダンの実と残照に静かに輝く海。新聞紙上の絵なのに、目が強力に絵に惹かれる。内面性の高い絵だ。田中一村と言う人は、1958年、新しい画境を求めて、それまで住んでいた千葉に家を売り払い、奄美大島に渡り、その地で働きながら制作を始めた伝説の画家とのこと。