8月8日(日)

★朝顔の紺一輪を水に挿し  正子
その朝早く咲いた朝顔をがくごと摘んで水に挿せば、紺色の花が涼しく目を楽しませてくれます。身近に一輪のある、さわやかな朝のひとときが思われます。(小川和子)

○今日の俳句
西瓜切る水音たてて俎板に/小川和子
大きな西瓜を切ると、皮の割れる音と共に水の音、水の匂いがする。西瓜のみずみずしさが切った瞬間にあふれ出た句。(高橋正子)

○<広島のとある岬のひろしま忌/正子>について
上の句について、啓輔さん、あゆみさんからコメントをいただきました。お二人の心に触れる句であったことをうれしく思います。。

平和公園では、大々的に式典がおこなわれている。しかし「とある岬」でも、今もって忌まわしい思い出を、胸に秘めている人がいるであろう。それぞれの原爆忌が、きっと日本のいたるところにある。そんなことを、ふと気付かされた。(山中啓輔)
「広島のとある岬のひろしま忌」の句を読んだ瞬間に伯母のことが思い出され涙が溢れてきました。静かな淡々とした句に込められた深い思いがひしひしと伝わって参りました。 (後藤あゆみ)
●「はるか南十字星の下で」(後藤あゆみ)
http://tategakibunko.mydns.jp/novel/12158

「広島のとある岬」は、広島県の東端にある私のふるさとの岬のことです。地図には小さな点が阿伏兎観音の所在を示しています。この観音様のある岬のことです。この岬を回れば鞆の浦へ、反対に鞆の浦からの潮は、小さな私の村の湾を流れて尾道水道へとつながります。この潮に燈籠流しの燈籠が置かれると、燈籠は昼間は四国山脈が霞む沖へと流れてゆきました。景勝の地ですが、多くの人から見れば「とある岬」にしか過ぎません。広島県の端とはいえ、原爆の犠牲者がいました。私の父親も同級生の父親も被爆者でした。お盆の夜は、小学校の校庭で慰霊祭と盆踊りが行われ、昭和30年代までは、慰霊祭に遅れることのないように夕方になると主婦たちは気が気でないようでした。まだ戦死者の記憶がなまなましく残っているころだったからでしょう。三人の息子が戦死して子どもが居なくなた家が道路と川を隔てた斜め向かいにありました。子ども心にもお気の毒と思っておりました。どきどき牛を見せてもらいに行くと(当時は牛を見に行くことも子どもの遊びのひとつでした)、柔和な顔で仕事をしておられました。人ごとのように詠んでしまった句ですが、しかし、このように言えるもの戦後65年経った原爆忌に、私が63歳になっているせいもあるでしょうと、思いました。
●阿伏兎岬
http://www.citydo.com/prf/hiroshima/area_fukuyama/kenbun/rekishi/fukuyama022.html
http://www.sukima.com/14_sanyou01_04/15abuto.html
http://blowinthewind.net/koji/abuto.htm
◇生活する花たち「木槿」(横浜日吉本町)


コメント

  1. 小川和子
    2010年8月9日 10:03

    お礼
    正子先生、8月8日の句に「西瓜切る」の句をお選び頂きましてありがとうございました。

    朝顔の紺一輪を水に挿し 正子
    その朝早く咲いた朝顔をがくごと摘んで水に挿せば、紺色の花が涼しく目を楽しませてくれます。身近に一輪のある、さわやかな朝のひとときが思われます。

    広島のとある岬のひろしま忌 正子
    私も心ひかれ、原爆忌句会の互選の句に選ばせて頂きましたが、山中様、後藤様のコメントと手記、正子先生の解説を読ませて頂き、より深く鑑賞させて頂きました。貴重な証言をありがとうございました。

  2. 後藤あゆみ
    2010年8月10日 17:03

    お礼
    正子先生
    先生の俳句日記に「はるか南十字星の下で」にリンクを張っていただき、恐縮しております。サイパンでこんな事もあったのだという事実を、こちらを通して何人かの方々に読んでいただくことができました。本当にありがとうございます。
    小川和子様にもお礼申し上げます。

    とある岬とは阿伏兎岬だったのですね。じっくりと阿伏兎観音や美しい風景やを見せていただきました。まさしく景勝の地です。その背景などを知り、また深く「広島のとある岬のひろしま忌」を噛み締めております。

  3. 高橋正子
    2010年8月11日 0:31

    お礼/和子さんへ
    朝顔の句にコメントをありがとうごじざいました。とてもきれいな涼しそうな朝顔になりうれしく思います。
    また、原爆忌の句会では、「とある岬のひろしま忌」を採ってくださって、ありがとうごじざいます。ひとごとのように詠んだので、分かっていただき、うれしいです。

  4. 高橋正子
    2010年8月11日 0:37

    後藤あゆみさんへ
    私の故郷の阿伏岬のリンクを見ていただき、ありがとうございました。8月7日だったと思いますが、阿伏祭りがあり、海沿いの道に夜店が出ます。この祭りが夏休みの子どもの楽しみでした。「横尾あめ」というのが祭りの名物でしたが、今はどうでしょうか。その祭りが済むとお盆がきます。