5月10日(日)

★初夏の夜の電車傾きつつ曲がる  正子

○今日の俳句
蒲公英の種ふと浮び空の詩/河野啓一
野原の蒲公英の絮が、風が来て、ふっと空に浮かんだ。これから広い空を飛んでゆく、蒲公英の種子の旅がはじまる。その心は、「詩」と言える。蒲公英の種子の飛行は、「空の詩」であり、「空の歌」なのだ。(高橋正子)

○杜若(かきつばた)

[かきつばた/東京白金台・自然教育園(左:2013年5月2日・右:2012年5月10日)] 

★宵々の雨に音なし杜若/与謝蕪村
★杜若けふふる雨に莟見ゆ/山口青屯
★森に池あり杜若濃き青に/高橋信之

カキツバタ(燕子花、杜若、Iris laevigata)はアヤメ科アヤメ属の植物で、湿地に群生し、5月から6月にかけて紫色の花を付ける。内花被片が細く直立し,外花被片(前面に垂れ下がった花びら)の中央部に白ないし淡黄色の斑紋があることなどを特徴とする。愛知県の県花でもあり、三河国八橋(現在の知立市八橋)が『伊勢物語』で在原業平がカキツバタの歌を詠った場所とされることに由来している。在原業平が詠んだ歌は「から衣 きつつなれにし つましあれば はるばる来ぬる たびをしぞ思ふ」江戸時代の前半にはすでに多くの品種が成立しており、古典園芸植物の一つでもあるが、江戸時代後半には花菖蒲が非常に発展して、杜若はあまり注目されなかった。現代では再び品種改良が進められている。日本三大カキツバタ自生地は、愛知県刈谷市井ヶ谷町にある「小堤西池」、京都府京都市北区にある「大田の沢」、鳥取県岩美町唐川にある「唐川湿原」で、カキツバタの自生地として有名である。なお、「いずれがアヤメかカキツバタ」という慣用句がある。どれも素晴らしく優劣は付け難いという意味であるが、見分けがつきがたいという意味にも用いられる。

◇生活する花たち「芍薬・しゃが・繁縷(はこべ)」(横浜日吉本町)


コメント

  1. 河野啓一
    2015年5月14日 21:55

    お礼と鑑賞
    高橋正子先生
    5/10の今日の俳句に「蒲公英の種ふと浮び空の詩」をおとり上げくだされ、素敵なご句評を賜りまして厚く御礼申し上げます。本来、絮とすべきところ、無理な表現にしてしまいましたが、自分では気にいった作でした。今後ともご指導宜しくお願い申し上げます。
    鑑賞
    ★初夏の夜の電車傾きつつ曲がる  正子
    暑くもなく寒くもなく気持ちの良い初夏の宵のひと時、街の電車が気持よい響きを立てて走っています。少し傾きながら今、目の先のカーブ をを曲がって行きます—ゆくりなく父母の郷里、香川県高松市の路面電車を想い出し郷愁を覚えました。大阪でも、住吉からアベノまで(今でも)チンチン電車が走っており、中学にはそれで通っておりました。