★立春のピアノの弦のすべてが鳴る/高橋正子
ピアノの鍵盤がすべて押されるのは、調律時くらいでしょうか。でも、その弦がいちどきに「すべて鳴る」瞬間があります。ピアニストも、倍音を聴き、弾かない弦を共鳴させるべく心を砕きますから、そのように響いたら嬉しいことでしょう。澄んだ陽と程よく乾いた空気の内に、弦の全てを鳴らすピアノ。こよなく明るい立春です。(川名ますみ)
○今日の俳句
立春や光と翳と飛ぶ鳥と/矢野文彦
立春となると光がにわかに明るく感じられる。身辺にも光があり翳がある。空を見れば、自由に飛ぶ鳥も。光と翳と自由な鳥が立春の日に明るく詠まれた。(高橋正子)
○立春
★立春の米こぼれをり葛西橋/石田波郷
★立春の海よりの風海見えず/桂 信子
★立春の夜道どこからか水の匂い/高橋信之(昭和四十八年作)
「立春」と聞くと、それだけで気持ちがほぐれる。厳しい冬の寒さと別れ、いよいよ春になる。夜道を歩けば、どこからか水の匂いがする。小川の流れか、水はいち早く温み始めたのだろう。夜道の暗さに水の匂いが春のはなやぎのように感じられる。(高橋正子)
陰暦では、1年360日を二十四気七十二候に分けたが、立春はその二十四気の一つで、陽暦では2月4日か5日、節分の翌日に当たる。節分は冬の季語となっている。節分を境に翌日は春となる。あくまでも暦の上だが、この切り替えがまた、人の心の切り替えにも役立って、立春と聞くと見るもの聞くものが艶めいて感じられる。冬木もいよいよ芽を動かすのだろうと思う。寒禽と呼ばれていた鳥も鳴き声がかわいらしく聞こえる。
★立春の朝は襖の白に明け/高橋正子
★立春の朝のデージー鉢いっぱい/高橋句美子
○梅
[白梅/横浜日吉本町(2013年2月3日)]_[紅梅/横浜日吉本町(2013年2月3日)]
★梅白しきのふや鶴をぬすまれし 芭蕉
★白雲の竜をつつむや梅の花 嵐雪
★とぼとぼと日は入切て梅の花 杉風
★からからと猫のあがるやむめの花 許六
★山里や井戸のはたなる梅の花 鬼貫
★手折らるる人に薫るや梅の花 千代女
★此村に一えだ咲きぬ梅の華 也有
★二もとの梅に遅速を愛す哉 蕪村
梅の開花前線
和歌山県南部に位置する月向農園では、1月下旬~2月に梅が開花します。南北になが~い日本列島!あなたの処ではいつ頃かな?梅は百花に先駆けて咲き、桜などに比べ休眠が浅いために開花時期が天候によって大きく左右されます。
高温・適湿・多照の年は開花時期が早まり、乾燥の激しい年や気温の低い年はやや遅くなります。また、品種によって多少差があります。寒い中、いち早く春の訪れを知らせる梅の花は、1月下旬~5月上旬まで、約3ヶ月間かけて、ゆっくりと日本列島を北上します。
コメント
Unknown
お疲れさまでした
Matinさんへ
お訪ねいただき、ありがとうございました。