2月10日(金)

★おしばなの紅梅円形にて匂う   正子
おしばなとなりながらも、「円形にて匂う」紅梅。丸い五弁の花びらの可憐さも、馥郁とした香りもとどめた美しさです。紅梅の何ともいえない愛らしさが、そこはかとなく漂う香りとともに伝わります。(藤田洋子)

○今日の俳句
街筋の昼月ほっと梅開く/藤田洋子
街筋の空を見上げれば、白く透明感のある昼の月が浮かんでいる。昼月を遠く梅が開いて、昼月と梅との美しい出会いがある。(高橋正子)

○蓬 蓬摘む
★蓬萌ゆ憶良・旅人に亦吾に/竹下しづの女

春になると、祖母が「墓原(はかわら)へ蓬を摘みにいこう」と、竹かごと鋏と用意して連れて行ってくれた。墓原は、墓地ではなくて、裏山の裾の村の墓地の隣りにある柿の木がある畑である。夜は怖くて決して行けないが、昼間は、丘になっているので瀬戸内海が見渡せ、汽笛を鳴らしてゆく船が遠くかすんで見えるうららかなところである。竹かごは「ほぼろ」と呼んでいた。鋏はじゃんけんのチョキに似た握り鋏と呼ばれる鋏で、これで萌え出た蓬をちょきちょきと摘みとる。蓬は爪でたくさん摘みとると爪が真黒になって、痛くなる。摘んだ蓬は、雛祭の菱餅になったし、蓬餅、蓬団子となって、春が来たら食べられる嬉しいものであった。

これまで住んだところには、摘もうと思えば摘める蓬がいつでもあった。埃を冠っていない山裾などで、子供たちと遊びながら蓬を摘んで持ち帰って蓬団子にした。ただ摘むだけのこともあった。夏草となり埃っぽくなった蓬は、もういやだけれど。(しかし、梅雨の季節、水に倒れた蓬を牛車が轢くと芳しい香をあげるという枕草子にもあるような場合は別にして。)若草を摘む喜びは、万葉の時代から、日本人の心のどこかにあるのではと思う。

★利根川に道真っすぐや蓬摘む/小口泰與
利根川は関東平野を延々と流れる大河であるのは言うまでもないが、利根川に沿う道がまっすぐであること、それほどの川であることに意外性がある。真っ直ぐな土手道に蓬を摘む楽しさは、どんなであろうか。(高橋正子)

◇生活する花たち「梅①・梅②・蝋梅」(横浜日吉本町・金蔵寺)


コメント

  1. 藤田洋子
    2012年2月4日 23:22

    お礼
    正子先生、今日の俳句に「梅開く」の句を取り上げていただきありがとうございます。お住まい近くの梅も可愛い開花ですね。

    ★おしばなの紅梅円形にて匂う  正子
    おしばなとなりながらも、「円形にて匂う」紅梅。丸い五弁の花びらの可憐さも、馥郁とした香りもとどめた美しさです。紅梅の何ともいえない愛らしさが、そこはかとなく漂う香りとともに伝わります。