10月25日(木)

 グレコ展
★秋光あおあおと浴び「水浴の女」  正子
秋の光が降り注ぐ美術館には清澄な空気が漂っています。描かれた「水浴の女」は秋の光を「あおあお」と浴び、いっそう美しく輝いてみえます。破調の俳句ですが、それがまたこの「水浴の女」に焦点が合っていて、この絵に感動した作者の心情が伺えます。(井上治代)

○今日の俳句
早朝の山懐の霧深し/井上治代
大洲盆地らしい私の好きな風景だ。早朝でなくても、松山から峠を越えるあたりから、道は流れるような霧に包まれることもあった。(高橋正子)

○郁子(むべ)

[郁子の果実/東京白金台・国立自然教育園]        [郁子の花/東京白金台・国立自然教育園]

★塗盆に茶屋の女房の郁子をのせ/高浜虚子
★郁子も濡るる山坂僧の白合羽/野沢節子
★覗きゐてやがてくぐりぬ郁子の門/野村泊月
★妹よ抛らん郁子の実の青い拳/金子皆子

「むべ」で思い出すのは、「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ/文屋康秀」の百人一首にある「むべ」 。
もちろん、この歌の「むべ(宜)」は、「なるほど」の意味だが、この歌に、いつも、「むべの実」を想像してしまう。

★郁子の花引けば絡みし木がざわと/高橋正子
★郁子咲くを森の高きに写し撮る/高橋信之
★郁子仰ぎ見るふるさとは道草(あけび)熟るるや/高橋信之

昨日、信之先生が、東京白金台の自然教育園に出かけた。白ほととぎすや、郁子の実を写真に撮って見せてくれた。郁子と言えば、この5月10日に自然教育園に出かけた折り、郁子の花を見た。実はあけびと似ているが、花は全然違う。郁子の花はバナナの皮を剥いたような恰好で、オフホワイトの花びらで芯が赤紫。その花が実を結んだ。あけびは細長いが、郁子は握り拳のようだ。写真に撮ったのはまだ熟れてない実で、切れ目が入りそうに白っぽい筋が写っている。間もなく熟れて、紫色になるのだろう。「むべ山風を嵐といふらむ」の、「郁子」とは関係ない歌が頭を離れないが、山を吹く風が収まって、郁子は実を結ぶ山の果実である。

★郁子の実の青きなれども薄みどり/高橋正子

 ムベ(郁子、野木瓜、学名:Stauntonia hexaphylla)は、アケビ科ムベ属の常緑つる性木本植物。別名、トキワアケビ(常葉通草)。方言名はグベ(長崎県諫早地方)、フユビ(島根県隠岐郡)、イノチナガ、コッコなど。日本の本州関東以西、台湾、中国に生える。柄のある3~7枚の小葉からなる掌状複葉。小葉の葉身は厚い革質で、深緑で艶があり、裏側はやや色が薄い。裏面には、特徴的な網状の葉脈を見ることが出来る。花期は5月。花には雌雄があり、芳香を発し、花冠は薄い黄色で細長く、剥いたバナナの皮のようでアケビの花とは趣が異なる。10月に5~7cmの果実が赤紫に熟す。この果実は同じ科のアケビに似ているが、果皮はアケビに比べると薄く柔らかく、心皮の縫合線に沿って裂けることはない。果皮の内側には、乳白色の非常に固い層がある。その内側に、胎座に由来する半透明の果肉をまとった小さな黒い種子が多数あり、その間には甘い果汁が満たされている。果肉も甘いが種にしっかり着いており、種子をより分けて食べるのは難しい。自然状態ではニホンザルが好んで食べ、種子散布に寄与しているようである。主に盆栽や日陰棚にしたてる。食用となる。日本では伝統的に果樹として重んじられ、宮中に献上する習慣もあった。 しかしアケビ等に比較して果実が小さく、果肉も甘いが食べにくいので、商業的価値はほとんどない。茎や根は野木瓜(やもっか)という生薬で利尿剤となる。

▼郁子の花咲くころ/5月10日の「俳句日記」:
http://bit.ly/RWFgTv

◇生活する花たち「黄釣舟草・曼珠沙華・白曼珠沙華」(横浜・四季の森公園)


コメント

  1. 井上治代
    2012年10月23日 1:30

    お礼
    正子先生
    今日の俳句に「霧深し」の句をお選び頂きましてありがとうございます。大洲はたんだんと霧が深くなり、時には朝10時くらいまで霧に包まれているということもあります。

    秋光あおあおと浴び「水浴の女」
    秋の光が降り注ぐ美術館には清澄な空気が漂っています。描かれた「水浴の女」は秋の光を「あおあお」と浴び、いっそう美しく輝いてみえます。破調の俳句ですが、それがまたこの「水浴の女」に焦点が合っていて、この絵に感動した作者の心情が伺えます。