1月5日(木)

★独楽の渦記憶の底を回りたる  正子
独楽が回りますと、描かれた螺旋が回転し、やがて目は追いつかなくなります。独楽を見て、ふと懐かしいなと辿った記憶も、同様かもしれません。記憶の渦を廻る内、いつしか覚えのない「底」に至っている。毎年の遊びの場ながら、自己の深くへ入る契機となる、一瞬でもあるのでしょう。 (川名ますみ)

★富士山と冬夕焼の中に居る/川名ますみ
富士山はいつもしっかりと座っている。さびしさもあるけれど、あたたかさのある冬夕焼けに包まれて過ごすとき、大きく、偉大なものといる安心感がある。(高橋正子)

○作品
二日の鐘晴れたる空へ撞かれけり
正月の山より白き雲行かす
二日の空銀芽吹き出す大樹あり
枯草の真白き絮の愛しけれ
空の青ジャノメエリカはうす紫
正月の山の落葉のかく深し
夕鐘の三日の山へ響きたり
水仙の茎切りもどし籠に挿す

○エリカ

エリカは、南アフリカ原産と、ヨーロッパ原産がある。針葉樹のような葉に筒型やベル型の小さな花がつき上品な印象の花である。「嵐が丘」の館の周囲にエリカがあるが、英語ではヒースと呼ばれている。
私が初めてエリカを見たのは、花粉の袋が黒いジャモメエリカ。四国松山には椿神社があって、1月の終わりか2月のはじめごろに椿祭りがある。椿さんというのだが、今年は1月29日からのようだ。もう暖かくなるかと思うと、一等級の寒さがぶり返す。椿祭りが済むまでは、暖かくならないというのが松山地方の通説。この祭りでは植木市が立つのも有名。そこでジャノメエリカを一鉢買った。四十年以上前のことだが、当時はエリカは珍しかったように思う。最近は、ヨーロッパにあるような棒状の枝につくエリカをたくさん目にするようになった。洋風の庭にはよく似合うだろうと思う。

◇生活する花たち「水仙」(横浜日吉本町)


コメント

  1. 川名ますみ
    2012年1月7日 20:15

    お礼とコメント
    正子先生、「富士山」の句を掲載頂き、あたたかいご講評を賜りまして、ありがとうございます。

    独楽の渦記憶の底を回りたる  正子
    独楽が回りますと、描かれた螺旋が回転し、やがて目は追いつかなくなります。独楽を見て、ふと懐かしいなと辿った記憶も、同様かもしれません。記憶の渦を廻る内、いつしか覚えのない「底」に至っている。毎年の遊びの場ながら、自己の深くへ入る契機となる、一瞬でもあるのでしょう。