○フェイスブック日曜句会最優秀
[第1回句会]
★眠らんとすれば窓辺に降る月光/多田有花
眠ろうと明かりを消せば、窓辺に明るく月光が降り注いでいることに気がつく。この月光に包まれて眠れるのも幸せなことであろう。(高橋正子)
[第2回句会]
★秋天に伸びゆくものの数多あり/多田有花
秋の天に高く伸びてゆくものを読み手はいろいろ想像する。鉄塔であったり、高層ビルであったり、聳える木であったり。秋天にある飛行機雲も。秋麗の日差し、空気、まさに「秋」がよく表現されている。(高橋正子)
○高橋正子代表句
ベルリン
★カスターニエの青き実曇天よりもげば/高橋正子
この句は、ドイツの句会に家族で招待されたときのもので、カスターニエと曇天というドイツの風土にふさわしい言葉を使って、季感溢れる風景を詠むことに成功した。この句には、季語はないが季感があって、その奥の風土と自然を捉えた。ものの本質を見たのである。日本の風土に捕らわれずに、ドイツの風土を確かな目で見た。ここがインターナショナルである。(高橋信之)
ハワース
★「嵐ヶ丘」はここかと秋冷まといつつ/高橋正子
ブロンテ姉妹が住んでいたハワースを詠んだ句。作者は大学で英文学を学んだので、イギリスの地に思いは深い。 「嵐ヶ丘」の舞台となったハワースは、日本の北海道よりもずっと北にある。日本を出国し、ロンドンに着いた翌日の句は、「嵐ヶ丘」の「秋冷」を実感として捉えた。(高橋信之)
★水に触れ水に映りて蜻蛉飛ぶ/高橋正子
高橋正子第2句集「花冠」の代表句を挙げるすれば、この句を採ることに、躊躇うことはない。俳句の「まこと」を読み取ることができるので嬉しい。(高橋信之)
○俳句の風景
★おしゃべりの後に摘みけり赤のまま/祝 恵子
おしゃべりに夢中になったあと、ふっと足元を見ると赤のままが咲いている。思わず摘み取りたくなるなつかしさ。自分に帰るほんの小さな時間。(高橋正子)
★稲熟るる山へ空へと黄を揺らし/川名ますみ
甲府盆地の南方。増穂や玉穂といった地名もその所縁だろうか、稲作が盛んで、今は一帯が黄金色だ。車窓がまばゆい。
★秋麗のクイーンの切手のエアメール/後藤あゆみ
正子先生が9月23日にイギリスから送って下さった絵葉書が、今日届いた。飽かず眺めている。切手の上にスタンプはなく、下にオレンジ色の斜線がついているだけ。イギリスの切手には国名が記されていない。左の切手は女王の横顔で一目瞭然。右の切手は斜めにすると切手の右上に小さな女王の横顔が光って見えるようになっている。
バーミンガムにて
黄葉はじむ水道橋の高さにも 正子
コメント
お礼
高橋正子先生
「濃く厚き葉にどっさりと青どんぐり」を先生の「俳句日記」にお取り上げ下さり、たいへんありがとうございました。
また、「今日の秀句」への選評も賜り、たいへん嬉しく存じます。
鑑賞
★秋光あおあおと浴び「水浴の女」 正子
エミリオ・グレコの「水浴の女」は横浜のベイシェラトンホテル前にも飾ってありますが、「グレコ展」とありますからどこか他のところでご覧になったのかもしれません。いずれにせよ、伸びやかな肢体のブロンズ像に秋の光が豊かに行きわたり、青々と輝いていたことが見てとれます。理屈を言えば像自体の色なのかもしれませんが、「秋光あおあおと浴び」の表現が秋の爽やかさを遺憾なく伝えてくれています。
お礼
お礼
正子先生、10月30日の今日の俳句にブログより写真と赤のままの句をお取り頂きましてありがとうございました。
コメント
草を出て草へ飛びけりきりぎりす
原っぱへ出ると必ずこの光景がみられます。草から草へと身を隠すきりぎりすです。子どもがいれば追っかけるんだろうなと、思いながら見ていたりします。
お礼
正子先生、稲の句にご指導を賜り「俳句の風景」に掲載下さいましてありがとうございます。たわわに黄を揺らす稲穂は、確かに「稔る」から進んだ「熟るる」でしたし、「揺する」ような大きな動きとは違っていました。観察を勉強させて頂きますとともに、添削によって、小さな稲穂の様がぐっと近く顕れることに驚きました。お礼申し上げます。