■4月月例ネット句会入賞発表■
2024年4月14日
【金賞】
16.たがやせば目覚めて風に匂う土/ 吉田 晃
「土が目覚める」という感覚がいい。耕すと、下になっていた土が上に出てくる。その時の土の色、風が吹いてきて匂う土。冬の眠りから覚めた、春の土が新鮮である。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
22.花終えて今いきいきと山の色/多田有花
山に桜が咲いている景色も、それはそれで美しい日本の風景だが、桜が咲き終わると、急に山々に新緑が増え、山が生き生きとして感じられるのだ。花から新緑へ山の色の変化はすなわち、季節の移ろいの色。(髙橋正子)
19.藤蕾む枝垂れて咲くぞというかたち/祝恵子
「咲くぞ」の「ぞ」を入れると、中七が字余りになるが、その崩れに藤の花房が枝垂れ、その先に円錐の切っ先の力が読み取れる。また、散文的な表現の工夫に新しさがある。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
08.参道の桜の影を踏みしめる/高橋秀之
「踏みしめる」に確かさがある。参道には日がよく当たって、桜の影がしっかりとできている。しっかりした影でないと、「(踏み)しめる」感覚はわかない。一歩一歩の充実した着実さがうかがえる。(髙橋正子)
28.列車来て桜若葉が揺れる朝/西村友宏
「桜若葉」というあたらしい表現。葉桜になる少しまえに、柔らかな葉となっている。それを若葉と言った。駅や線路沿いにある桜の枝は、列車の風圧で揺れる。若葉と朝と、揺れに、さわやかさ新しさが感じらえる。(髙橋正子)
34.青空にゆったり葉桜ゆれている/髙橋句美子
桜が散るとすぐに葉桜の季節になる。新年度のあわただしが落ち着き、葉桜となった枝は、青々とした葉をゆったりと揺らせている。「ゆったり」した感じがよい。(髙橋正子)
【髙橋正子特選/7句】
08.参道の桜の影を踏みしめる/高橋秀之
桜が満開の参道です。桜を仰ぐ目を下に向けると桜の影も同じように満開なのです。(多田有花)
16.たがやせば目覚めて風に匂う土/吉田 晃
19.藤蕾む枝垂れて咲くぞというかたち/祝恵子
22.花終えて今いきいきと山の色/多田有花
25.花菜畑はろばろ夕日溶かしゆく/柳原美知子
31けさ二輪雲のいろしてさくら咲く/川名ますみ
34.青空にゆったり葉桜ゆれている/髙橋句美子
【髙橋句美子特選/7句】
03.散り敷きて尚も色濃く花の屑/桑本栄太郎
散ったばかりの一面の花の色が乾くにつれて色濃く染め上げられ、その最後の美しさに桜の季節の名残りが惜しまれます。 (柳原美知子)
07.日が注ぐ新芽は色が鮮やかに/高橋秀之
春の日差しを受けて輝く新芽の色の美しさに見とれる心地よいひととき。心もはればれと良い一日になりそうです。 (柳原美知子)
18.春水を吸ってあかるい芽の緑/ 吉田 晃
生き生きとした新たな芽吹きから春らしさを感じました。明るい季節を予感させる素敵な光景です。(西村友宏)
13.蝶にして花散る谷を飛ぶはやさ/髙橋正子
16.たがやせば目覚めて風に匂う土/ 吉田 晃
22.花終えて今いきいきと山の色/多田有花
28.列車来て桜若葉が揺れる朝/西村友宏
【入選/11句】
01.あの辺り金蔵寺とや花の雲/桑本栄太郎
洛西大原野にある金蔵寺ですね。どこか高いところから見晴らしておられるのでしょうか。大原野に一面の桜、古刹の名前も雅やかです。 (多田有花)
04.山風にあらがう麦の青さかな/小口泰與
人間や他の動物のように歩いたり走ったりすることが出来ない植物は風にあたり揺れ動く事により、運動となり大きく成長すると云います。今の時季は日々春めくと共に風も良く吹き、抗うように揺れる青麦の様子が見えるようである。(桑本栄太郎)
09.ふと見れば白夜の空に桜舞う/高橋秀之
白夜の薄明りの空に舞う桜、長い夜を彩ってくれ、異国情緒が漂いますね。(柳原美知子)
10.子雀の水浴びしたる潦/廣田洋一
雨上がり潦におぼつかない足取りで近寄り、水浴びをしている子雀に寄せる作者の優しい視線が感じられます。 (柳原美知子)
21.花吹雪く展示車両のひかり号/ 祝恵子
京都の鉄道博物館でしょうか。東海道新幹線開通時に走ったひかり号が展示されています。今のものより丸い雰囲気で穏やかに花吹雪を浴び余生を楽しんでいます。(多田有花)
24.時おりは花びらに触れ歩きけり/多田有花
桜並木を散策していると、時々、さくらに触れて思わぬ喜びをもらいます。(祝恵子)
27.山桜眼下に我が町光る海/柳原美知子
山桜の咲いている場所から見下ろしている景色がよく見える。光る海が良い、景色を大きくみせる。(廣田洋一)
05.沼の面を袈裟切りに飛ぶ燕かな/小口泰與
06.揚がりきり点となりたる揚雲雀/小口泰與
17.枝垂れ咲く古刹桜の夕明かり/吉田晃
30.花冷えやシネマ帰りの夜散歩/西村友宏
■選者詠/髙橋正子
13.蝶にして花散る谷を飛ぶはやさ
桜吹雪の谷その中を蝶が飛んでいきます。まるで花びらの一片でもあるかのように。(多田有花)
14.花散るやしずかな息をはく地球
一年後また花を咲かせるためにしずかに花は散る。地球上の万物はそのようにしずかに息をはき、時を待ち、息をつなぎ、命をつないでゆく。その循環がとだえることのないように祈りたいですね。 (柳原美知子)
15.はちみつのような春の森時間
■選者詠/髙橋句美子
34.青空にゆったり葉桜ゆれている
人ごみに晒された喧噪が去り、ようやく静かになった。葉が緑の色を広げ、残り少なくなった花が、その陰にあって、これまでの疲れをいやすかのように青空にゆったりとゆれている。(吉田 晃)
35.花吹雪どこへゆくのか空に消え
普段はひらひらと地面に揺れ落ちる桜が花吹雪として舞っている。吹き上げられて大空に向かった桜の葉にびらはどこへ行くのか。いろんな想像が膨らむ光景です。 (高橋秀之)
36.花祭り音楽聞こえた母の便り
互選高点句
●最高点句(5点)
16.たがやせば目覚めて風に匂う土/ 吉田 晃
集計:髙橋正子
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。
■4月月例ネット句会ご案内■
①投句:当季雑詠
4月8日(月)午前6時~4月14日(日)午後5時
②投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。
▼互選・入賞・伝言
①互選期間:4月14日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:4月15日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、4月15日(月)正午~4月18日(木)午後6時
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:髙橋句美子・西村友宏
ご挨拶
三月月例ネット句会にご参加いただき、ありがとうございました。今回は、句会の前日の私のコロナ感染という思わぬ事態になりましたが、ご協力で、ほぼいつもと変わりなく、句会を終えることができました。ありがとうございました。入賞の皆様おめでとうございます。
変わりゆく季節が的確に詠まれている月例句会の俳句は、毎月楽しみです。春夏秋冬の季節は変わらないのに、そのなかの日々の変化は目まぐるしいものがあります。暖かいと思っていた今週でしたが、来週からまた寒さが戻る予報です。
十分にお体に気を付けてお過ごしください。これで、3月月例ネット句会を終わります。
2024年3月15日
髙橋正子
■3月月例ネット句会入賞発表■
2024年3月11日
【金賞】
22.青麦の吹かれて日々に濃く太く/柳原美知子
野の青麦はさまざまな風に吹かれて生長する。芽生えたばかりは寒風に、寒が明け、料峭の風に、ときは暖かい風に、日々、色濃く、そして太く、しっかりと育っていく。
その生長を見るのは、楽しみである。そのままが詠まれた自然体がいい。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
13.絹さやの緑が妻のばら寿司に/吉田 晃
ばら寿司に絹さやは、定番のようだが、わたしは、小学生のころの子どもの日のピクニックを思い出す。五月、絹さやと筍が採れる。婦人会の人たちが子供たちにばら寿司を作ってくれる。、それをもって岬の景色のいい山に登るのである。戦後余りたっていない日のことが忘れられない。奥様も生き生きとした緑の絹さやを散らしてばら寿司をつくってくれた。明るい季節の手料理に舌鼓を打たれたことだろう。(髙橋正子)
03.囀や拭き忘れたる窓ぼこり/弓削和人
俳句らしい着眼点の句で、技巧があるわけではないが、大変うまい。季節をぴったりと捉えていて、「窓ぼこり」のイメージゆるぎない。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
04.一掬(いっきく)の水にも春の兆しあり/小口泰與
朝の洗面のときとか、あるいは、ほかに両手に掬って水をくむことがあった。水の温みぐあい、柔らかい水の光りなど、春の兆しが見られた。ささやかな春の兆しがうれしい時だ。(髙橋正子)
27.朝粥にあおき菜花の辛子和え/川名ますみ
朝粥のお菜にみどり鮮やか菜花の辛子和えがあった。さらりとした白い粥とあおい菜花、菜花の苦み、和えた辛子の辛味は大人の味である。それが、この句を一段と大人の句としている。(髙橋正子)
34.雛人形烏帽子に刀勇ましく/髙橋句美子
雛人形には、内裏雛、三人官女、五人囃子、若人の右大臣、老人の左大臣等がいる。酒を酌み、管弦を楽しむばかりではなく、右大臣、左大臣が烏帽子を冠り、背に槍を背負い、刀をさして、勇ましい。雛人形にもこんな一面があることを見つけ出した。月遅れの雛を飾り、装束をつけてもらったので、気づいたのであろう。(髙橋正子)
【髙橋正子特選/7句】
03.囀や拭き忘れたる窓ぼこり/弓削和人
囀りと窓ぼこりの取り合わせが良い。(廣田洋一)
小鳥の明るい囀に空を見上げると、窓にうっすら埃を見つけました。春埃ということばがある通り、雪や水が溶け、春は埃が立ちやすい季ですね。美しい気付きが相応しい言葉で詠まれた、好きな句です。 (川名ますみ)
04.一掬(いっきく)の水にも春の兆しあり/小口泰與
まだまだ寒い時期ではありますが、暖かく感じる日も少しずつ増えてきました。春の訪れを感じる素敵な一コマです。 (西村友宏)
15.日陰には日陰の白さ水仙花/吉田 晃
目立たない日陰に芳香を追うと、真っ白い水仙の花が凛と立っています。日陰であればこそまたその白さが際立ち美しいですね。 (柳原美知子)
22.青麦の吹かれて日々に濃く太く/柳原美知子
3月の今の時季は、春北風も吹き気温は一定ではなく、寒暖差も大きいですね?然し日差しは日毎に強くなり、木々の枝は芽吹き畑の作物も大きく生長します。青麦の生長にそのことが良く見え、暖かい春到来の喜びであります。 (桑本栄太郎)
29.雨上がり雫を添えて白き梅/西村友宏
雨上がりの雫が白梅を透かせ、日差しを透かせ、みずみずしく心洗われる情景を見せてくれます。 (柳原美知子)
13.絹さやの緑が妻のばら寿司に/吉田 晃
【髙橋句美子特選/7句】
20.春なかば枝先のみな光りおり/多田有花
遥かな樹々の枝先にも新芽が芽吹き、蕾もついて光に包まれ、野は明るさに満ち、春もなかばと実感されます。 (柳原美知子)
04.一掬(いっきく)の水にも春の兆しあり/小口泰與
09.磯菜摘むはるか彼方や隠岐の島/桑本栄太郎
10.白き富士くつきり浮かぶ春の海/廣田洋一
22.青麦の吹かれて日々に濃く太く/柳原美知子
23.春雪の山より鳩来湯けむりへ/柳原美知子
28.試験終え空の青さに白き梅/西村友宏
【入選/9句】
01.ものの芽のわれさきの芽と競いけり/弓削和人
芽吹きの雰囲気をみごとに描写されています。春が進むにつれて百万千万の芽が競って芽吹いています。生き物の生きる力の象徴という感じです。 (多田有花)
07.木々の枝のしずく歌いぬ春の雨/桑本栄太郎
今年の早春は雨が多かった印象です。それをしずくが歌う春ととらえられました。詩人らしい感性が光ります。 (多田有花)
<鳥取の田舎日本海の追憶>
09.磯菜摘むはるか彼方や隠岐の島/桑本栄太郎
日本海の荒波の磯に海苔掻きをしているのだろう。早春の冷たい飛沫を受けて、ひたすら作業をしている遥か沖に隠岐の島が霞んで見える。(吉田 晃)
11.着物着て大化けしたる卒業生/廣田洋一
私も先日卒業式に出席しました。女子は和服に袴の人が多く、髪型もきめてすぐには誰かわからないほどの人もいましたね。 (多田有花)
17. 手を延ばす今年も会えたつくつくし/祝 恵子
能登半島の大地震に始まった今年。なんとか無事に冬を越し、春を告げてくれるつくしに出会えた嬉しさが伝わってきます。(柳原美知子)
24.宝のごとひらくネーブル掛け袋/柳原美知子
袋掛けのままのネーブルが届いたのでしょうか。それを丁寧に開くと珠玉のネーブルが現れました。 (多田有花)
26.まなうらの色にかがやき春浅し//川名ますみ
まなうらに感じられる浅春の日差しのかがやき、五感で季節を感じられ、意表をつく表現に惹かれます。 (柳原美知子)
19.答辞読むときおり声を詰まらせて/多田有花
25.グーの手を突き出すかたち木瓜蕾/川名ますみ
■選者詠/髙橋正子
33.紅梅を翔つ鳥羽を透かせけり/髙橋正子
紅梅を翔つ鳥は仄かに香を引き、透く羽は薄い紅を引き青空の色へと広がっていくようです。美しい光景が目に浮かんできます。 (柳原美知子)
31.杉の香の芬々(ふんぷん)として春の森
32.春耕の畑の傾斜がくろぐろと
■選者詠/髙橋句美子
35.梅祭り琴の響きに梅が舞い
梅祭りに、琴の演奏がはじまるやいなや、いままで静かにしていた梅の花が軽やかに舞うように見えた。作者の心境が梅に映じているのだろう。(弓削和人)
36 枝垂梅水面に褪せた色映し
きれいな枝垂梅であったのに、盛りを過ぎた今は、寂しい色合いとなって水面に映っています。 (祝恵子)
34.雛人形烏帽子に刀勇ましく
互選高点句
●最高点句(5点/同点2句)
04.一掬(いっきく)の水にも春の兆しあり/小口泰與
22.青麦の吹かれて日々に濃く太く/柳原美知子
●次点句(4点/同点2句)
03.囀や拭き忘れたる窓ぼこり/弓削和人
27.朝粥にあおき菜花の辛子和え/川名ますみ
集計:髙橋正子
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。
[お詫び]
入賞発表は、髙橋正子が土曜日にコロナに感染しましたので、遅れますが、本日中には発表の予定です。よろしくお願いします。
2024年3月11日
髙橋正子
[ お礼]
お見舞い、ありがとうございます。
今日11日、朝一番に、病院で検査してもらいましたら、コロナに感染していました。風邪やインフルエンザとお別れと言う時期になって、まさかのコロナ感染でした。薬をもらいましたので、しっかり治したいと思います。ご心配をおかけしています。
2024年3月11日夕刻
髙橋正子
■3月月例ネット句会ご案内■
①投句:当季雑詠
3月4日(月)午前6時~3月10日(日)午後5時
②投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。
▼互選・入賞・伝言
①互選期間:3月10日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:3月11日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、3月11日(月)正午~3月14日(木)午後6時
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:髙橋句美子・西村友宏
気温が20度を超えるような暖かさになって、驚きます。まだ、2月中旬なのに、この気温です。
2月月例ネット句会にご参加いただき、ありがとうございます。夜遅くまで選をしてくださった方もおられ、ありがとうございます。選句はなるべく選句時間にしていただくように決めてはいますが、全員の選がいただきたいので、お仕事の都合もあるでしょうから、時間外も受け取っています。
合同句集に続き、2月号をお届けすることができ、ほっとしています。月例句会の句が冊子となって出来上がり、花冠の歴史が積み重なっていくのは、うれしいことです。花冠2月号をごゆっくりお楽しみください。ご意見があれば、およせください。
これで2月月例ネット句会を終わります。ご協力ありがとうございました。
2024年2月16日
髙橋正子
■2月月例ネット句会入賞発表■
2024年2月11日
【金賞】
07.ぐんぐんと岸の白梅ふくらめり/川名ますみ
岸の白梅には、陽がよくあたっているのだろう。「ぐんぐん」というほど、蕾がふくらみはじめている。どの蕾も、どの蕾もふくらむ勢いがあって、圧倒される。それ以上に作者が「ぐんぐん」と言えるほどに精神に元気があるのが、とてもいい。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
15.暖かな日差しの中の木椅子かな/廣田洋一
春暖かな日差しに木椅子が置かれている。誰が座るのだろう。もう座っているのかもしれない。穏やかな日差しに温まった木椅子。木の椅子が、象徴的に穏やかで明るく、落ち着いた心象を表している。(髙橋正子)
25.寒ごやし麦の吹かれている畝に/吉田 晃
寒のこやしは、根が動くまえに与えられる。麦の芽がすくすく育ってそよぐほどになっている。畝で吹かれているが、その畝の脇に寒ごやしをやるのだ。力強い句。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
10.投函の新聞かんと春浅し/弓削和人
人通りはないのだろう。新聞がポストに落とされて「かん」と音がする。もう、春がそこに来ているから「かん」と言う音がうれしく心に響くのだ。(髙橋正子)
16.曙の雲をまといて春の山/多田有花
清少納言の枕の草子をいうまでもなく、春の曙の雲は、美しいにちがいない。その雲を纏った春の山が座っているのだ。「春の曙」と言わないで、「春の山」と「春」の使い方がうまい。それによって、句に新鮮さがうまれている。(髙橋正子)
34.梅林の賑やかな小さな街/髙橋句美子
梅林のある小さな街。その街が今日は賑やかなのだ。観梅に訪れた人も混じって小さな街は賑わっている。梅見どきの賑わいが春の訪れを伝えている。(髙橋正子)
【髙橋正子特選/7句】
10.投函の新聞かんと春浅し/弓削和人
早朝、新聞受けに投函される新聞。その音は「かんと」響きました。まだ春の風色の揃わない、街の空気を鳴らしつつ、新聞が春を連れてくるようです。 (川名ますみ)
春になったものの、春色はまだ整わない.降雪もあり、木々の芽吹きも間がある頃、朝刊を待ち遠しく待っている。そこに待ち焦がれた新聞が配達された。(小口泰與)
15.暖かな日差しの中の木椅子かな/廣田洋一
春を最も最初に感じるのは日差しです。その暖かそうな日差しの中に置かれている木椅子。先ほどまで座っていた人の存在も感じられて暖かです。 (多田有花)
23.球音を聞きつつ見上ぐ城二月/ 柳原美知子
球音と言えばやはり野球部、近くに学校があるのでしょうか。選抜高校野球の話題もそろそろ聞こえてくる頃です。見あげておられるのは松山城ですね。 (多田有花)
25.寒ごやし麦の吹かれている畝に/吉田 晃
農作業の実感が伝わってきます。冷たい風が吹く中でおこなわれる施肥が春からの作物を育てます。 (多田有花)
34.梅林の賑やかな小さな街/髙橋句美子
下五の小さな街で梅林の賑やかさが強調されている。上手い詠み方。(廣田洋一)
07.ぐんぐんと岸の白梅ふくらめり/川名ますみ
16.曙の雲をまといて春の山/多田有花
【髙橋句美子特選/7句】
05.枝先の色づき来たる楓の芽/桑本栄太郎
周囲の木々の枝はまだ冬の姿のままです。しかし、よく見てみると枝先が少し色づいているのがわかります。少しずつ春が歩みを進めているようでうれしくなりますね。(多田有花)
06.あおぞらの風の田面や犬ふぐり/ 桑本栄太郎
この時期になるとまず目につくのがオオイヌノフグリの青い花です。早春の野や田のあぜで星が瞬くような美しい青色をみせてくれます。(多田有花)
08.雪に濡れさくらの枝のほの赤き/川名ますみ
先日の関東地方は思わぬ大雪に見舞われました。桜の枝にも積もった雪が翌日には溶けていきその下から桜の芽が見えてきました。桜はすでに花の準備を終え、気温と日差しがそれにふさわしくなるのを待っています。(多田有花)
17.梅が香に誘われ歩く散歩道/多田有花
真っ先に春を告げてくれる梅の花が咲き始めると、心も浮き立ち、思わずその香りを嗅ぎに出たくなりますね。浅春の日差しの中の至福の散歩です。(柳原美知子)
20.新芽出すホームの隅のプランター/高橋秀之
普段行き来するプラットホームの隅にあるプランターの草木にもいつの間にか新芽が出、春の息吹が感じられたうれしさ。良い一日となりそうです。(柳原美知子)
26.餅黴を削りつつ焼く二月来る/吉田 晃
大きな鏡餅は食べきるのにも時間がかかり、二月にもなると黴が生えてきます。それを削りながら焼いて、しっかりとした昔ながらの歯ごたえのある味を
楽しまれている。懐かしい光景です。(柳原美知子)
15.暖かな日差しの中の木椅子かな/廣田洋一
【入選/9句】
02.水底へ春の来ており賑賑し/小口泰與
川面が波立つ底をのぞくと、小魚の影や様々なもの
の影が揺らめき、賑やかに春を告げてくれています。万物の生命の生まれる春が実感されるようです。(柳原美知子)
12.まさおなる空にこぼるる寒椿/弓削和人
透徹した冬空の青さと零れ落ちる椿の真紅の美しさ、寒椿への愛惜の念が感じられ、心惹かれます。 (柳原美知子)
寒椿の明るい朱色が空の青さに映える美しい光景が目に浮かびました。「こぼれる」という表現も面白いを思いました。(西村友宏)
18.その歴史長き国なり建国日/多田有花
折りしも本日2月11日は、我が国日本の建国記念日です。建国以来本年は2683年目になるとも云われ、国家として世界で一番歴史の長い国ですね?もっと天皇家を尊び、国民も誇りを持ちましょう。 (桑本栄太郎)
24.しだれ梅塀歩く猫尾を振って/柳原美知子
民家の庭のしだれ梅であろうか。境界にある塀の上を猫が尾を振り振り(愛想を振り振り?)歩いていく。春の兆しを垣間見る一コマです。 (高橋秀之)
27.牡蠣鍋の牡蠣の一つをすくいけり/吉田 晃
この句を見て、理屈抜きで牡蠣鍋を食べたいと思いました。立春を過ぎましたが、寒いがつつく今日この頃、牡蠣鍋は体が温まります。(高橋秀之)
29.春一番歯医者帰りの頬を打つ/西村友宏
歯医者帰りの頬。ちょうど数日前歯医者に行ったところなのでそれが普段と違う感覚であることを実感しているときにこの句を見ました。頬に受ける春一番の風も玲連とは違う感覚だったことでしょう。 (高橋秀之)
30.春夕べ商談まとまりホットココア/西村友宏
商談がまとまった帰り道。ホッと一息をホットココアでくつろぐ。コーヒーではなくココアというところに、充実と癒しの気持ちを感じます。 (高橋秀之)
21.見上げれば春の大空雲ひとつ/高橋秀之
22.星めぐりの歌の余韻に明日立春//柳原美知子
■選者詠/髙橋正子
31.椿活け夜は背ナよりしんと冷ゆ
信之先生ご健在の時から、高橋家は大きな花瓶に賑やかに花を飾ることはしない。一輪挿しに、時には野の花であったり、時には散歩で見かけた道の花であったりを何気なく飾っておられる。この椿もそうなのだろう。俳誌の仕事が一段落し椿が一輪、作業机に飾られていて、一息ついた今、二月の冷たさを感じておられるのだと想像する。 (吉田 晃)
33春の雪ことば真摯な葉書きかな/髙橋正子
春の雪が積もり、外出もままならない日に届いた葉書き。ただでさえ嬉しいのに、そこに書かれた真摯な言葉には更に感動が深まります。(柳原美知子)
32.春の雪積もりし量の屋根にあり
■選者詠/髙橋句美子
34.梅林の賑やかな小さな街
下五の小さな街で梅林の賑やかさが強調されている。上手い詠み方。(廣田洋一)
36.立春の風が高く流れゆく
今日から春、という気持ちが「高く流れる風」という言葉に現れています。(多田有花)
35.節分の豆を数えてカラカラと
互選高点句
●最高点句(5点/同点4句)
07.ぐんぐんと岸の白梅ふくらめり/川名ますみ
10.投函の新聞かんと春浅し/弓削和人
15.暖かな日差しの中の木椅子かな/廣田洋一
25.寒ごやし麦の吹かれている畝に/吉田 晃
集計:髙橋正子
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。