■新年ネット句会■
■入賞発表/2014年1月2日■
【金賞】
★信貴生駒高く上がれる初日かな/河野啓一
大阪府と奈良県の県境の信貴生駒の山並。信貴生駒スカイラインや寺もある。その山に高く上がった初日に目出度さがある。(高橋正子)
【銀賞2句】
★真っ先に日矢の射し込む注連飾り/佃 康水
朝日は先ず高いところから当たる。注連飾りが玄関などの高い位置にあって、真っ先に日矢が射し込んだのだ。元旦の明け初めが手堅く詠まれた。(高橋正子)
★午後の陽にまだある氷割り遊ぶ/小西 宏
午後の陽がきらきらと氷に差している。日中も気温が上がらないと、こんな氷に出くわすが、ちょっと割ってみたくなる遊び心。午後の陽が余計に遊び心をかきたてたのだろう。(高橋正子)
【銅賞3句】
★元日に空の碧さは極まれり/友田 修
テーマは「元日の空の碧さ」。そのテーマを「元日の空の碧さは」と「は」でもってきっぱりと限定したところに、この句の良さがある。元日だからこそ、「極まれり」に、強い実感が読み取れる。(高橋正子)
★てのひらに海を掬ひて初あかり/西川 仁
「海を掬ふ(う)」は、大胆な把握だが、行為はよくわかる。海の初日の出を拝もうと海辺に出かけた。初日が昇ると、海の水が明るくなり、思わず初あかりの差す海の水を手に掬う。海で迎える元旦の美しい行為に思える。(高橋正子)
★門松立つ首都の中心ひっそりと/高橋句美子
首都の中のその中心。半蔵門あたりもそうだろう。立派な門松を立ててひっそりとしている。首都のひっそりとした寂びさに、現実として驚く。首都の中心で働く作者の目に映る風景。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
★てのひらに海を掬ひて初あかり/西川 仁
元旦に東の空がほのぼのと明るくなり、前途に望みか出て素晴らしい新年を迎えるリズムも素敵な景ですね。(小口泰與)
★午後の陽にまだある氷割り遊ぶ/小西 宏
冬の日の子供たちの生き生きとした声が聞こえてくるようで、懐かしい気持ちになります。(柳原美知子)
★水色の空の暮れゆき年惜しむ/桑本栄太郎
日中の青々とした空が水色になり、そして暮れていく。日々繰り返される光景も大晦日ならではの年惜しむ気持ちが表れます。 (高橋秀之)
★新年の河滔々と蒼深む/小川和子
新年を迎え、澱みなく蒼い、河が滔々と流れています。その豊かな水は蒼さも深み今年も自然界へ大きな恵みをもたらしてくれる事でしょう。心まで豊かになります。 (佃 康水)
★元日に空の碧さは極まれり/友田 修
主題が「元日に空の碧さ」で、すっきりとしていて、それを「極まれり」と言い切った作者の詩情は、年の初めを祝うに何よりである。作者にとっての今年一年がよき年であるに違いない。(高橋信之)
★門松立つ首都の中心ひっそりと/高橋句美子
平明であるが、詠む対象をしっかりと捉えた確かな句である。(高橋信之)
★信貴生駒高く上がれる初日かな/河野啓一
いい句である。575の17字で十分であり、足りているのである。(高橋信之)
【高橋正子特選/7句】
★真っ先に日矢の射し込む注連飾り/佃 康水
元日の日の出を拝もうと今か今かと待っていると、漸く日が射し、その初明りは注連飾りに一番に当たった・・・。現実の光景かどうかはともかく、注連飾りに一番先に当たると言う初明りの厳かな雰囲気がよく表現されている。 (桑本栄太郎)
★順々に鈴の音大きく初詣/高橋秀之
お子さんたちを連れての初詣。それぞれの子がそれぞれの願いを胸に鈴を鳴らしています。何も願うことがなくても手をあわせる、そこから新しい年が始まります。 (多田有花)
★寒柝の拍子木合わせの音のずれ/祝恵子
拍子木の音に思わず耳を澄ませていると、そのタイミングが微妙にずれていた、それにふと頬をゆるめられたのでしょう。「ずれ」に着目された詠者の視点がいいです。 (多田有花)
★午後の陽にまだある氷割り遊ぶ/小西 宏
温暖化といわれ、氷が張ることも少なくなった都会。それでも時には冷え込むことがあり、影には午後になっても氷が残っていたりします。それを目ざとく見つけ、嬉々として遊ぶのは幼い子の可愛らしさが浮かんできます。 (多田有花)
★息白し襷を繋ぐ箱根山/古賀一弘
箱根駅伝ですね。息も白い寒さの中でも襷をつなぎ走りゆく選手を応援する沿道のみなさん年始の風物詩です。 (高橋秀之)
★底冷えの京の町家の入日かな/桑本栄太郎
江戸時代から京の伝統文化を受け継いだ町家。鄙びた中にも清楚な佇まいを残して居り日本人の憧れる町ですね。底冷えのする京の町家でさぞ澄み切った美しい入日を鑑賞され、昨年一年への感謝とまた今年への思いを新たにされたことでしょう。 (佃 康水)
★信貴生駒高く上がれる初日かな/河野啓一
大阪府と奈良県の県境の信貴生駒の山並。信貴生駒スカイラインや寺もある。その山に高く上がった初日に目出度さがある。(高橋正子)
【入選/5句】
★やわらかき小筆で記す初硯/西川 仁
小筆で記すのは御賀状でしょうか。年改まり、心静かに硯にむかう清々しさが、墨汁の香とともにしんと伝わってくるようです。(小川和子)
★砂浜に寄せ来る波へ初明かり/多田有花
砂浜に寄せ来る波はいつもと同じようでも、実は日々それぞれ異なる表情を見せてくれています。その波へ初明かりがさして見せてくれる風情は、新しい年への希望を感じさせてくれたことでしょう。(高橋秀之)
★穏やかな瀬戸の島山初日の出/多田有花
静かな海を輝かし、島々の間に昇る初日が美しく見えてきます。お正月にふさわしい、厳かな風景です。(小西 宏)
★初春の一番客のメジロ来る/古田敬二
新年早々メジロがやってきて巣作りの準備。何とも嬉しい光景ですね。(河野啓一)
★新年の賑わいを聞き背伸びする/高橋句美子
初詣の賑やかさが伝わる楽しい句と思います。背伸びしているのが神社なのか、家からなのかはわかりませんが、楽しげな様子を見たい気持ちの高揚が伝わります。(友田 修)
★僕ふたつ俺はみっつと雑煮餅/高橋秀之
家族揃って楽しいお正月を迎へられた暖かい句で、自然に顔が緩みます。(迫田和代)
★明々と全てを照らす初日の出/迫田和代
新しい年は明るい日の出とともに始まりました。この句から今年もいい年になるように願う作者の心情が読み取れます。 (井上治代)
★ひっそりと葉に抱かれて枇杷の花/井上治代
おとなしく、やさしい感じがよいです。ちょっと淋しいですが、やわらかい句だと思います。 (高橋句美子)
★裏側の印字かすかに年深し/永田満徳
年深しと思う場面はいろいろある。裏側の印字がかすかであることにも歳月を感じて、いよいよ年深しと思う。(高橋正子)
★三代の肌色違へ寒垢離/武藤隆司
三代の肌の色こそ違え、三代揃って寒垢離をする家族の一心な姿。(高橋正子)
★元旦や坂東太郎滔々と/小口泰與
川の流れは時に歳月の流れを連想させるものです。坂東太郎・利根川の雄大な流れはさらに大きな時間の流れをしみじみと印象づけるものでしょう。 (多田有花)
★栴檀の実の弾く陽も十二月/柳原美知子
大樹の栴檀の樹は葉もすっかり落とし空へたわわに実っているのがはっきりと見えています。その実は冬の澄んだ十二月の陽をもろに受け止め弾いてはいますが「弾く陽も十二月」の措辞でやや白っぽくなった冬の栴檀の実の寂しさを感じさせます。(佃 康水)
■選者詠/高橋信之
★元日青あお晴れ丸い世界に居る
私たちの住んでいる地球は青くて丸い。その地球で今年も無事に元日を迎えることができました。世界のみんなが青くて丸い地球にふさわしい生活が送れるように祈りたいと思います。(井上治代)
★初詣の姿勢正して拍手打つ
初詣は新年に当たっての決意や抱負など無事と平安を祈願いたしますが姿勢を正し柏手を打たれた一心の想いの深さが伝わります。 (佃 康水)
★初詣の家族に境内が明るい
■選者詠/高橋正子
★新年の冷え込む闇へ投函す
お年賀状の投函でしょうか。実は中学生の孫に頼まれ昨夜私も満天の星の夜道を投函いたしました。年賀状は新年になってから、或いは諸々の事情で出し遅れた人達へ早く投函しなければとついつい夜の投函になってしまいます。お年賀状に纏わる良く有る情景が伺えます。(佃 康水)
★大晦日の湯船香らす柚子ふたつ
一年の仕事を終え柚子湯に入ると、柚子の香に心身が安らぎます。下五の「柚子ふたつ」が愛らしく、明るい一年を締めくくることができたことと思います。(井上治代)
★この二日の空ののどかなちぎれ雲
■互選高点句
●最高点(6点)
★てのひらに海を掬ひて初あかり/西川 仁
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
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