◆ご挨拶/花まつりネット句会(句会主宰:高橋正子)◆


花祭り句会にご参加いただき、ありがとうございました。入賞の皆様おめでとうございます。選とコメントをありがとうございました。気づかぬところを気づかせていただきました。今日の句会の選では、信之先生と私の選が一句も重ならず、作者が同じでも異なる句を採ったり、という具合でした。これは、いい句がたくさんあって、どの句もそれぞれよく、選が重ならなかったのかもしれません。投句者も20人で、最近になく大勢でした。みなさんの底力を感じ、みんなの力で前へ、新しい季節へと運ばれいくような感覚になりました。

今日、4月8日は新暦の灌仏会ですが、今年は真冬のような冷え込みで、一日冷たい雨が降る横浜でした。東京では、雪が舞ったようです。桜は大方が散って、桜蕊のくれないが目立ちました。お昼すぎに、近くの天台宗金蔵寺に参りましたら、お参りの人は一人でした。花御堂は、寺の庇の下に設けられてそばに甘茶が用意されていました。いただいた甘茶の甘かったこと。いつもは甘茶が早々になくなるのに、雨の灌仏会はしずかでしたが、花御堂のお花は生き生きとして、飾られた桜の花も滴が宿っているようでした。互選の集計は洋子さんに、句会の管理運営は信之先生に今月もお願いいたしました。ご挨拶を小西宏さんにもいただきました。これで、今日の句会を終わります。来月は端午ネット句会です。来月もご参加をお待ちしています。

■花祭りネット句会を終えて/小西 宏■

 高橋信之先生、高橋正子先生、今年もまた「花祭りネット句会」をご開催くださり、たいへん有難うございました。また、藤田洋子さんには、いつものように互選集計の労をお取りいただきました。そしてなにより、この句会にお集まりくださり、たくさんのよい俳句をお寄せ下さった皆さま方に、深くお礼申し上げます。

 四月を迎え、いよいよ豊かな日差しの中、各地で花や木々、鳥や動物たちの伸びやかな姿を目にし耳にすることができるようになりました。それでもまた、気まぐれなお天気の変化に驚かされることの少なくない季節でもあります。ここ数日は、夏を思わせるような暖かな日があるかと思えば、冬に逆戻りしたかのような寒さに身を凍えさせる思いも致しました。皆さま方の投句を拝見しておりますと、そんな豊かな春の情景が明るく詠われ、伝えられていることを実感いたします。高位に入賞された方々の作品からは、そうした情景が見事に表現されていることを強く感じますが、そうでなかった句からも、それぞれから発散される新鮮な息遣いが漏れ聞こえてきます。これぞ句会の醍醐味であろうと、浅学の身ではありながら、嬉しく感じたところです。皆さま、どうも有り難うございました。(小西 宏)

■四月花まつりネット句会入賞発表■

■花祭りネット句会/2015年4月8日■
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之
○投句:20名60句

【金賞】
★風音の野を渡りゆく仏生会/ 柳原美知子
仏生会と思う一日、心静かに耳を澄ませば、野を風が吹き渡る音が聞こえる。野を渡る風音に万象の小さな声があるような気がする。(高橋正子)

【銀賞2句】
★花御堂の花に加わる花さくら/高橋正子
花御堂の屋根にはいろいろな花が飾られる。現実のところ、花屋から持ってきた百合やカーネーション、カラーなどが飾られている。その豪華な花々の中に、御堂の屋根の四角に、寺苑に咲く桜の枝が飾られていた。大方が花蕊となった寺苑の桜だが、花御堂の桜は、蕾もある桜が飾られ、心和むものを感じ嬉しくなった(自解:高橋正子)

★真直ぐを池に映して葦伸びる/古田敬二
池の葦が芽ぐみ、桜が散るころになるとどんどん緑の茎が伸びてくる。まっすぐに伸びる葦は池の水に映って、はやも初夏の涼しげな姿を見せている。まっすぐな葦の茎と水とがいい。(高橋正子)

【銅賞3句】
★花御堂傘色々とさし連ね/藤田洋子
雨の花祭りの花御堂は、参詣の人の色とりどりの傘が華やかさを一層引き立てているようです。(高橋秀之)

★軽やかに水音たてて水温む/井上治代
春風が吹き始めた庭の水道から出る水音も軽やかに、バケツを満たす水も温んで心地よい。春の訪れを喜び、生き生きと立ち働かれるお暮しがうかがえます。(柳原美知子)

★襞なして肌ぬれてゆく甘茶仏/小西 宏
甘茶をかけられて濡れていく誕生仏のさまが簡潔に詠まれています。仏の笑みやまわりの飾りつけ、人々の様子まで目に浮かぶようです。 (多田有花)

【高橋信之特選/8句】
★襟白く一年生のランドセル/小西 宏
白い襟もランドセルも子どもの顔もピッカピカ。大きな夢にむかって進んでいってほしいと思います。 (井上治代)

★花の屑付けて自転車帰りくる/ 祝恵子
あれほど爛漫と咲いた今年の桜も散りはじめました。桜吹雪の中を通りぬけた自転車にも、はらはらと花びらが散ったことでしょう。 (小川和子)

★咲き満ちて刻(とき)みちゆきて花の夜/井上治代
咲き誇る桜の美しく艶やかな花の夜。花爛漫の宵闇の柔らかな空気に包まれて、心豊かな刻がゆったりと流れます。 (藤田洋子)
毎年、刻(とき)が来れば咲いてくれ、私たちを喜ばせてくれる桜。待っていた今年も花の夜の満開を楽しみたいものです。(祝恵子)

★花御堂傘の色々さし連ね/藤田洋子
4月8日の灌仏会に誕生時の釈迦の立像を安置し、花を飾ったお堂にお参りに来る沢山の人達の傘の色と桜や菜の花や黄水仙、そして芝桜が咲くお寺の素晴らしい景がリズム良く詠われていると思います。 (小口泰與)
雨の花祭りの花御堂は、参詣の人の色とりどりの傘が華やかさを一層引き立てているようです。 (高橋秀之)

★花屑を落として車椅子を積む/川名ますみ
桜の花は思わぬところにまで花を散らし、その一片をも楽しませてくれます。それを見つけ、大切に地に落とすのも静かな喜びです。(小西 宏)

★供花挿せば日差しの中に初音澄む/柳原美知子
お彼岸のお墓参りだったのかもしれません。静かに花を供えるとき、ふと聞こえてきた鶯の声に、故人を偲ぶ思いをさらに深くしたことでしょう。(小西 宏)

★真直ぐを池に映して葦伸びる/古田敬二
上五の「真直ぐを」がいい。詠み手の思いが真直ぐに伝わってきて快い。 作者の内面の良さがいいのだ。(高橋信之)

★花御堂の花に加わる花さくら/高橋正子
花御堂は寺苑にあって、それほど目立つものではないが、多くが寺苑の真ん中に置かれ、花まつりという釈迦誕生の嬉しいお祝いの象徴となる。それに「花さくら」が加わっているのだ。(高橋信之)

【高橋正子特選/8句】
★襞なして肌ぬれてゆく甘茶仏/ 小西 宏
甘茶をかけられて濡れていく誕生仏のさまが簡潔に詠まれています。仏の笑みやまわりの飾りつけ、人々の様子まで目に浮かぶようです。 (多田有花)

★初つばめ駅舎を抜けて野の風へ/柳原美知子
日毎に春も進み、初つばめも見かける季節となった。「駅舎を抜けて野の風に」との表現に、鄙びた田舎の光景が想われ、翻りながら飛翔する初つばめのしなやかな姿が眼前に見えるようです。(桑本栄太郎)

★乳母車うまき夢見て花の下/古田敬二
作者のやさしさがいい。「やさしさ」には説明の必要は要らない。(高橋信之)

★地上にも空にもさくら夕暮れる/祝恵子
満開となった桜は空一杯に覆い、そろそろ散り始めた桜は地上を紅に染めています。空にも地にも花の明かりを残し暮れようとしている一瞬の静寂を感じます。(佃 康水)
足もとに降り敷く桜の花びら。見上げる空には咲き残る花。どちらも美しく、夕暮れになると幽玄な美しさも増します。 (井上治代)

★月蝕や白白白白ゆきやなぎ/矢野文彦
雪柳の咲き乱れる様子を「白白白白」と表現されたことが新鮮な感じがしました。月食との取り合わせも絶妙です。 (井上治代)

★菜の花の群がる川辺快晴に/高橋句美子
雲ひとつない青空に映える川辺の菜の花の黄。清らかに流れるせせらぎの音も聞こえてきそうです。春の喜びを感じさせてくれる晴れ晴れとした句ですね。(柳原美知子)

★風音の野を渡りゆく仏生会/柳原美知子
釈迦誕生の「仏生会」は、4月8日なので、いい季節だ。野を渡りゆく「風音」も快く胸に響く。釈迦誕生を祝ういい季節だ。(高橋信之)

★軽やかに水音たてて水温む/井上治代
春風が吹き始めた庭の水道から出る水音も軽やかに、バケツを満たす水も温んで心地よい。春の訪れを喜び、生き生きと立ち働かれるお暮しがうかがえます。(柳原美知子)

【入選/11句】
★囀りの野山に溢れ明日香村/河野啓一
明日香村と聞くだけで日本の原風景を想起致します。自然豊かな村では当に春爛漫鳥類もさぞ春を謳歌している事でしょう。 (佃 康水)

★花冷えや姫路城なる野面積み/桑本栄太郎
「花冷え」の冷たさと粗い石垣との対応がぴったりの感じで、時代を越えて城の歴史を偲ばせるものがあり、興味深い句と思いました。 (河野啓一)

★山歩き滴を宿す花惜しむ/多田有花
雨上がりの山を歩かれたのでしょう。おそらくまだ、からりとは晴れていない山道に、雨滴をまとった桜の花。重たげな滴とともに、その一片も落ちてしまいそうです。「花惜しむ」心地が募ります。(川名ますみ)

★陽春へ季語つぎつぎと宅配食/矢野文彦
最近は宅配の食事も美味しく、栄養も考慮されたものになっているようです。そんな中で、季節を楽しめる食材が使われ、お料理にも季語にある名前が付けられているのでしょう。春を味わいながら楽しくいただけます。(小西 宏)

★この星の静謐願い花祭り/河野啓一
世界中で起こる災害や人災が日々報じられる昨今、この地球の平和と静謐を願う詠者のしみじみと深い思いが花祭りに寄せて伝わってきます。(柳原美知子)

★山笑い一両列車の汽笛なる/福田ひろし
一両列車が走っているのは、都会ではなくのどかな山間部なのでしょう。その列車の汽笛が山に響く様子は、まさに山笑う雰囲気を醸し出してくれます。 (高橋秀之)

★百段を数え登る子花の山/佃 康水
山をあがるには段が続く、段を登りながら数えたら、百段あり、桜の花が見えた。子どもたちが数人で数えながらの花見だったかもしれませんね。(祝恵子)

★朧夜の街を清かに花明り/小川和子
朧夜の霞んだ街を桜の花が清らかに包んで、幻想的な雰囲気になっています。(祝恵子)
ぼんやりと朧に潤む街通りである。そこに仄々と浮かぶ花明り。見慣れたはずのわが街の、静かで和やかな佇まいである。(小西 宏)

★山門をくぐればばっちり花祭り/迫田和代
山門を潜って見ると美しく飾られた花御堂を中心に予想通り賑やかに花祭りが行われていました。その花祭りに加わり、さぞ心和む一時を過ごされた事でしょう。(佃 康水)

★次々に風にのりたる落花かな/小口泰與
枝を離れ行く「落花」は、風に乗って散る。次々に風に乗って散る。夥しい花びらが次々に風に乗って散る。(高橋信之)

★桜散る中を歩いて学校へ/高橋秀之
お子様の入学式でしょうか。落花を浴びながら、華やいだ気持ちでお子様の入学する学校へと歩を進める。お子様の成長を思う感慨と希望に満ちた学校への道程です。(柳原美知子)

■選者詠/高橋信之
★花まつり花のトンネル抜け寺へ
お釈迦様の生誕を祝う花祭りへと出かけられた道中出会われた満開の桜のトンネル、落花を浴びながら潜り抜ける至福のひととき。極楽浄土を観る思いが致します。(柳原美知子)

★満開の花の喜び誕生仏
★裏山の菫すみれ色の濃し

■選者詠/高橋正子
★花御堂の花に加わる花さくら
開花の状況によって桜の花が加わるのは非常に難しいのですが、今年は当地でも桜を加える事の出来たお寺を見かけました。自解されている様に桜を飾られた花御堂に一層の歓びを感じられた事でしょう。(佃 康水)

★さくら蕊のくれない深し瓦屋根
黒い瓦屋根にまで枝を伸ばす大樹に見事に咲き誇った桜。今はもう桜蕊ばかりになっているけれど、その深い紅の色もいとおしい。桜の花を惜しむ気持ちがよく表れていて、心打たれます。(柳原美知子)

★甘茶仏甘茶にまろく濡れいたる
甘茶仏が「まろく」である。穏やかで、まろくなのである。やさしいのである。。(高橋信之)

■互選高点句
●最高点(7点)
★初つばめ駅舎を抜けて野の風へ/柳原美知子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

◆花まつりネット句会清記◆

●清記●
[20名60句]

01.雨いろの桜にさくらいろの雨
02.ぱらぱらと膝掛の飛花振り落とす
03.花屑を落として車椅子を積む
04.雨を得て大和三山草萌ゆる
05.この星の静謐願い花祭り
06.囀りの野山に溢れ明日香村
07.あけぼのの社の庭の落花かな
08.いとけなき落花をつかむ幼かな
09.次々に風にのりたる落花かな
10.襞なして肌ぬれてゆく甘茶仏

11.襟白く一年生のランドセル
12.菜の花の野に香を潜(くぐ)り隠れんぼ
13.小坊主はおさな馴染や甘茶寺
14.花冷えや姫路城なる野面積み
15.ひと風の花の吹雪きや姫路城
16.真直ぐを池に映して葦伸びる
17.葦芽吹く朝吹く風に揺れる丈
18.乳母車うまき夢見て花の下
19.花筏新河岸川の水面染め
20.朧夜の街を清かに花明り

21.爛漫の花影ゆれる樹下をゆく
22.花の屑付けて自転車帰りくる
23.地上にも空にもさくら夕暮れる
24.チューリップガラス器に茎のすっきりと
25.山歩き滴を宿す花惜しむ
26.散り敷ける花びらに幾筋もの轍
27.沸き起こる桜吹雪の下にいる
28.百段を数え登る子花の山 
29.朱の鳥居眼下にひらく花見茣蓙
30.花御堂葺く子らどっと笑い声

31.山門をくぐればばっちり花祭り
32.崖のうえ空に近づく花御堂
33.雨続き土も柔らか草萌える
34.軽やかに水音たてて水温む
35.終日を老前整理菜種梅雨
36.咲き満ちて刻(とき)みちゆきて花の夜
37.花まつり花のトンネル抜け寺へ
38.満開の花の喜び誕生仏
39.裏山の菫すみれ色の濃し
40.甘茶仏甘茶にまろく濡れいたる

41.花御堂の花に加わる花さくら
42.さくら蕊のくれない深し瓦屋根
43.夜桜の広がる枝が照らされる
44.菜の花の群がる川辺快晴に
45.春光のまっすぐに射す散歩道
46.雨の粒ちりばめ光る花御堂
47.花御堂傘の色々さし連ね
48.寺の苔ふっくら青み花祭り
49.陽春へ季語つぎつぎと宅配食
50.月蝕や白白白白ゆきやなぎ

51.二日灸の動画をそえしメールかな
52.供花挿せば日差しの中に初音澄む
53.初つばめ駅舎を抜けて野の風へ
54.風音の野を渡りゆく仏生会
55.花冷えの午後を娘と歩きけり
56.吹き溜まりなれど見事な落花かな
57.山笑い一両列車の汽笛なる
58.花祭りいつもと違う飾りつけ
59.真っさらの制服の列入学式
60.桜散る中を歩いて学校へ

◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、4月8日(水)午後6時から始め、同日午後9時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、4月8日(水)午後10時
※2) 伝言・お礼等の投稿は、4月8日(水)午後10時~4月9日(木)午前10時です。

◆花祭り(4月)ネット句会案内◆

◆花祭り(4月8日、釈迦誕生の日)ネット句会のご案内◆
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠発行所にお申し込みください。
②当季雑詠(花祭り・春)計3句、花祭り・桜の句などを下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2015年4月7日(火)午前0時~4月8日(水)午後6時
④選句期間:4月8日(水)午後6時~午後9時
⑤入賞発表:4月8日(水)午後10時
⑥伝言・お礼等の投稿は、4月8日(水)午後10時~4月9日(木)午前10時

◆ご挨拶/雛祭りネット句会(句会主宰:高橋正子)◆

雛祭りネット句会にご参加いただき、ありがとうございました。入賞の皆様、おめでとうございます。寒い寒いといいながら、暖かい日もあって、寒い日に後戻りしながらも、着実に春となっていくこの頃です。今年は、旧暦のひな祭りは、新暦の4月21日になっていますから、うららかさから言えば、ずいぶん先取りしたひな祭りです。今回の金賞の句は、安芸の小京都竹原のひな祭りを詠まれたものでしょう。この地には大阪の高橋秀之さんも同じく足を運ばれた句がありました。西から東から、同時に竹原のひな祭りを見られたようです。それぞれの皆様のひな祭り、早春の句を楽しませていただきました。今月も集計を洋子さんに、管理運営は信之先生に、有花さんには、句会のご感想を書いていただきました。これで、ひな祭りネット句会を終わります。来月は、「花まつりネット句会」となりす。楽しみにお待ちください。(句会主宰:高橋正子)

■ひな祭りネット句会を終えて/多田有花■

◆雛祭り句会を終えて◆

ご挨拶(多田有花)
3月に入って、春らしさが一層身辺に漂うようになりました。3日の雛祭りの日は、姫路は午後から雨になりました。みなさまの地域のお天気はいかがでしたでしょうか? 姫路では、1日が雨、2日が晴れ、3日が雨とめまぐるしく空模様が変わりました。これも春らしさのひとつです。雛祭り句会には14名の方の参加がありました。全国各地さまざまな雛祭り、3月の様子をよまれた御句が揃いました。私がいつも散歩に行く山の梅林では、早咲きの紅梅がほぼ満開です。ここの梅林はこじんまりとしていますが、早咲きから遅咲きまでいろいろな梅がそろっており、桜が咲くころまで梅の花を楽しめます。山頂から見る播磨灘が春霞の向こうに姿を隠す日も多くなっています。鶯も鳴き始めました。
みなさま、投句、選、コメントをありがとうございました。正子先生、信之先生、句会の管理運営をありがとうございました。藤田洋子さまには、いつも互選の集計をいただきありがとうございます。

■雛祭りネット句会入賞発表■

■ひな祭りネット句会■
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

■入賞発表/2015年3月4日■

【金賞】
★青畳匂う座敷に雛飾る/佃康水
青畳は、藺草の匂いが芬々としてすがすがしい。そして畳替えをした新鮮さがある。その座敷に雛が飾られ雛飾りが力強く印象づけられる。(高橋正子)

【銀賞2句】
★春耕の畝黒々と伸びゆけり/古田敬二
「伸びゆけり」が、春の耕しをよく伝えている。耕して畝を作る。黒々とした畝がどんどんと出来上がり、畝自体が「伸びる」ようで、力強く、農作業の楽しさがある。(高橋正子)

★囀を仰げば空の水色に/柳原美知子
囀りが空から降ってくるうららかさ。空を仰げば空の色は柔らかな水色。このうららかさは、やはり、瀬戸内の穏やかな春をよく詠っていると思う。(高橋正子)

【銅賞3句】
★美しやあの色この色雛あられ/迫田和代
雛あられの色は、ひし餅の色も含めて、時には黄色も加わる。あの色この色がとり混ざり、小さな色の転がりが美しい。(高橋正子)

★一軸の墨痕清し雛の間に/藤田洋子
雛の部屋に軸が一本掛けられ、墨痕が匂うようにすがすがしい。あでやかな雛の色と対比され、黒々とした墨痕の力強さが雛の間を引き締めている。(高橋正子)

★ミモザ咲き焼きたてパンを自転車に/藤田洋子
ミモザと焼きたてパンの取り合わせが、軽やかでお洒落だ、ミモザが咲く道を焼きたてパンを買って自転車で帰る生活の楽しさ。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★ミモザ咲き焼きたてパンを自転車に/藤田洋子
ミモザだっていい香りでしょう。それに焼きたてのパン 生活力のある生き生きした句ですね。 (迫田和代)

★春耕の畝黒々と伸びゆけり/古田敬二
作物や野菜の種を撒く前や苗を植え付ける前に畑の土を耕し柔らかく解します。天地返しの土は黒々と伸び、いよいよ種まきですね。「伸びゆけり」の措辞が作物の豊作をも予想させます。(佃 康水)

★囀を仰げば空の水色に/柳原美知子
春めいた野山や公園などにはとりどりの鳥の囀りを聞く事ができます。
何の鳥だろうと空を仰ぎ囀りを聞いている作者も鳥達も瑞々しい蒼天の春を謳歌している様です。(佃 康水)

★一軸の墨痕清し雛の間に/藤田洋子
お雛様を飾ったお部屋に一幅のお軸が掛けられています。清々しい軸の墨痕が雛の間の一層の品格と佇まいを想起させ素敵です。(佃 康水)

★菜花つむ袋に一杯透くほどに/古田敬二
やっと寒さも和らぎ野に出て菜花をつむひととき、あたたかな心楽しい季節の喜びが伝わります。袋に一杯の菜花の黄色が、いっそう明るい春を感じさせてくれます。(藤田洋子)

★大空は小さな梅の向こう側/高橋秀之
小さな梅の花の向こう側には、広い大きな空が広がる。梅の清潔で、慎ましい花の姿が印象づけられる。(高橋正子)

★青畳匂う座敷に雛飾る/佃康水
★青という空に垂れたる榛の花/高橋正子

【高橋正子特選/8句】
★美しやあの色この色雛あられ/迫田和代
雛あられは作者にとって格別の感慨をお持ちの事でしょう。お婆様が毎年作って送って下さっていたことをお聞きした事があります。淡い彩りの雛あられに遠い昔を懐かしみ明るく詠まれた御句です。 (佃 康水)

★ミモザ咲き焼きたてパンを自転車に/藤田洋子
黄色いミモザの花が美しく咲く春の朝にパンを焼く。香ばしい香りが漂う。おすそ分けにと自転車に乗る。春の生き生きとした暮らしが浮かんでくる。 (内山富佐子)

★紅梅やふるさと発ちし頃なりき/桑本栄太郎
紅梅が咲く頃、故郷を後にして、都会へ出られたのでしょう。紅梅が咲くのを見ると、そのころを思い出す。過ぎてしまえばみな美しくなつかしいものになります。(多田有花)

★ぼんぼりに桃花耀く雛飾り/河野啓一
ほのかなぼんぼりの光に照らされたお雛様。桃の花もやさしく、現代の雛祭りというよりも、旧暦で祝われていたころのイメージが浮かんできます。(多田有花)

★春耕の畝黒々と伸びゆけり/古田敬二
★青畳匂う座敷に雛飾る/佃康水
★囀を仰げば空の水色に/柳原美知子
★ひな祭り嫁ぎし娘(こ)の幼なき日よ/高橋信之

【入選/8句】
★雛めぐりする町安芸の小京都/高橋秀之
安芸の小京都といえば、竹原。江戸時代に製塩業で栄えた古い町並みの中で所蔵される雛人形が展示されているのですね。それを巡って歩くのも趣のある雛祭りでしょう。 (多田有花)

★杉玉の揺るる街並み雛めぐる/佃康水
杉玉は別名酒林とも言われ、造り酒屋の軒先に飾り宣伝のひとつともしていました。杉玉のある街並みとは
それだけ古く鄙びた街並みでもあり、その町は旧家も多く、桃の節句には雛人形をお披露目もするのでしょう。そこをめぐり歩くとは趣きを覚えます。 (桑本栄太郎)
歴史を感じ風情漂う街並みに、雛飾りを愛でるひととき。しっとりと落ち着いた佇まいの中、しみじみと日本のよさが感じられます。 (藤田洋子)

★難しきことはともあれ桜餅/内山富佐子
人生生きていれば何かと難しいことに出会う。まあ、命をとられるほどのことはないと思うし、美味しい桜餅があることだ。今日はいい日だったと思うことにしよう。 (古田敬二)

★蓬摘む故郷恋しくなる夕べ/古田敬二
蓬を摘めば、香りと手に触れる感触に子供の頃の思い出が蘇ります。お母様の手作りの蓬餅の味、故郷の豊かな自然、かけがえのない故郷がいつまでも平和であってほしいものです。 (柳原美知子)   

★春寒の厨に立ちて卵とく/内山富佐子
まだまだ寒さの残る日の台所。料理のためにたまごをとくことにも気持ちが引き締まります。(高橋秀之)

★日の目見る十年越しの雛かな/小口泰與
十年という歳月を経て飾られたお雛様。変わらぬお雛様の優しい微笑に、自ずと心和み明るい気持ちになられたことでしょう。(藤田洋子)

★春夕焼け京阪電車の車窓より/多田有花
京阪電車は京都と大阪を結ぶ電車なので、京の雅やかさや商都大阪の生き生きと活動的な人たちが乗合っている。春夕焼けもそんな雰囲気で眺められるのだろう。(高橋正子)

★初恋の面輪もならぶ紙びいな/矢野文彦
紙の雛にそれぞれの顔が描かれている。一つ一つを眺めていて、遠い昔の初恋の乙女の面輪がふと浮かび、懐かしくも遠い昔が忍ばれた。品のある句。(高橋正子)

■選者詠/高橋信之
★ひな祭り嫁ぎし娘(こ)の幼なき日よ
雛祭りが来て、嫁いで行かれた娘さんの幼児時を想い出しておられる親心に共感を覚えます。色んな思い出が次々浮かんでくることでしょう。(河野啓一 )

★ひな祭りの朝暗がりの窓外よ
ひな祭りの日の未明。まだ明けやらぬ窓外の暗がりが、ひな祭りと思えばこそ、うるおって、春めいて感じられる。未明のひな祭りを詠んだ句も珍しい。(高橋正子)

★もの書くに窓外春の暗がりよ
ものを書く人は、昼間のしんとした時間だけでなく、夜や未明に起きて書く人が多い。ものを書きながら手を休め窓の外を見ると、暗がりながら、潤い春めいている。曙の日が差すのはもう少しあと。微妙な時間帯の暗がりを楽しむ。(高橋正子)

■選者詠/高橋正子
★身ほとりに紙雛かざり雛祭り
十段飾りや五段飾りも素晴らしいが、身のまわりをご自分で作った紙雛で飾って人生を楽しんでいる作者の素晴らしい生き方に感銘を覚えます。(小口泰與)

★青という空に垂れたる榛の花
早春の雑木林でいち早くみかける榛の木の花、下垂した紐状の花穂が独特の存在感です。高々と木立の枝先に垂れる榛の花が、まさに「青」と呼べる美しい空に映えて、辺りの清々しく澄んだ空気、明るい春の気配を感じさせてくれます。(藤田洋子)

★山桜帰り遅れし鶫おり
「山桜」の開花時期は、その種類によって、まちまちだが、この句の「山桜」は、開花時期の比較的早いものであろう。開花時期の早い「山桜」と帰りの遅い鶫との取り合わせで、にぎやかな風景を捉えた。早春の面白い風景で、「春が来た」という嬉しさと楽しさのある句だ。(高橋信之)

■互選高点句
●最高点(7点)
★青という空に垂れたる榛の花/高橋正子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

◆雛祭りネ ット句会清記◆

■雛祭りネ ット句会清記(2015年3月)■
【14名42句】

01.有職のおもざし愁う雛灯り
02.紅梅やふるさと発ちし頃なりき
03.店先の京の老舗や花菜漬
04.日の目見る十年越しの雛かな
05.百千鳥マーブルチョコの色あわし
06.五色豆かりっと噛むや百千鳥
07.春夕焼け京阪電車の車窓より
08.山下りてさっと炙りし鰆食ぶ
09.春の夜のホームにスイートポテトの香
10.蓬摘む故郷恋しくなる夕べ

11.菜花つむ袋に一杯透くほどに
12.春耕の畝黒々と伸びゆけり
13.雛めぐりする町安芸の小京都
14.大空は小さな梅の向こう側
15.うっすらと夜明けの生駒は春霞
16.青畳匂う座敷に雛飾る
17.杉玉の揺るる街並み雛めぐる
18.稲株を覆い一面草青む
19.埃箱中から昔の雛の顔
20.美しやあの色この色雛あられ

21.懐かしい故郷想う田螺あえ
22.囀を仰げば空の水色に
23.青饅の瑞々しきを小鉢に盛り
24.色紙に描く女雛いつしか我に似て
25.一軸の墨痕清し雛の間に
26.雨水晴れ花鉢一つ買い求む
27.ミモザ咲き焼きたてパンを自転車に
28.孫娘幼き頃の雛人形
29.ぼんぼりに桃花耀く雛飾り
30.春霞み瀬戸の島影海の色

31.身ほとりに紙雛かざり雛祭り
32.山桜帰り遅れし鶫おり
33.青という空に垂れたる榛の花
34.ひな祭りの朝暗がりの窓外よ
35.ひな祭り嫁ぎし娘(こ)の幼なき日よ
36.もの書くに窓外春の暗がりよ
37.白酒に酔いしふりしていたりけり
38.初恋の面輪もならぶ紙びいな
39.うすれゆく二日やいとの痕正す
40.春川の流れにまかせ番鳥

41.春寒の厨に立ちて卵とく
42.難しきことはともあれ桜餅

※選句を開始してください。明日(3月4日)午前9時までに済ませてください。

◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、3月3日(火)午後7時から始め、翌日(3月4日)午前9時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、3月4日(水)正午
※2) 伝言・お礼等の投稿は、3月4日(水)正午~3月5日(木)午後6時です。

◆雛祭りネ ット句会ご案内◆

●雛祭りネット句会投句案内●
①投句:当季雑詠(雛祭り・春の句)3句
②投句期間:2015年3月2日(月)午前0時~2015年3月3日(火)午後6時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:3月3日(火)午後7時~3月4日(水)午前9時
②入賞発表:3月4日(水)正午
③伝言・お礼等の投稿は、3月4日(水)正午~3月6日(金)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之