入賞発表/新年ネット句会


■2016年新年ネット句会■
■入賞発表/2016年1月3日

【金賞】
★澄み渡る大空青き初詣/高橋秀之
今年は晴天の暖かい元旦で、正月とは思えない陽気だった。澄み渡る空、それも「大空」であるのがいい。気持ちがおおらかで、晴れやかな初詣だ。よい正月。(高橋正子)

【銀賞】
★東(ひんがし)の大きな星よ除夜詣/ 佃 康水
大晦日の夜からお参りに出かけ、そのまま新年となる。年改まった空を見上がれば、東に輝く大きな星が目に入る。早くも明けの明星なのであろうか。なにか願いを叶えてくれそうな大きな星である。(高橋正子)

【銅賞2句】
★実南天活けて障子の初明り/小川和子
真っ赤な南天の実を障子のある部屋に活けた。朝が来て障子に初明かりが差し、部屋は淑気に満ちた部屋となっている。日本の正月の良き光景だ。(高橋正子)

★石鎚の嶺くっきりと初景色/柳原美知子
石鎚山は、四国の霊峰。中四国では一番高い山で、松山市の郊外からも眺められる。新年の朝、その特徴ある嶺がくっきりと目に入ると、なにか勇気づけられる気がする。初景色ならば、なおさらだろう。(高橋正子)

【高橋信之特選/5句】
★新年に着信音が鳴り続く/高橋秀之
携帯電話のメールでの新年の祝詞が飛び交う若い世代。時代の移り変わりが思われます。(柳原美知子)

★年用意身に付いてきし割烹着/小川和子
まなうらに浮かぶ母のかいがいしい割烹着姿。年齢を少しずつ重ね、自身もようやく割烹着が身に付いてきたようだ。来し方への感慨と今後への意気が感じられます。(柳原美知子)

★銀翼の浮きたる二日の空の碧/高橋正子
冬晴れの澄み切った青空に浮かぶ銀翼、大空高く飛行機雲が伸びてゆく様子が鮮やかに目に浮かび、祥雲を仰ぐようです。(柳原美知子)

★初売りの声は大きく高らかに/高橋秀之
初売りの明るさは、まず売る人の声から。大きく高らかな声はめでたさの表れ。この声にひかれて立ち寄る人も多いだろう。(高橋正子)

★石鎚の嶺くっきりと初景色/柳原美知子
石鎚山は、四国の霊峰。中四国では一番高い山で、松山市の郊外からも眺められる。新年の朝、その特徴ある嶺がくっきりと目に入ると、なにか勇気づけられる気がする。初景色ならば、なおさらだろう。(高橋正子)

【高橋正子特選/5句】
★実南天活けて障子の初明り/小川和子
実南天をお正月花として高々と活けられました。艶やかな赤い実が座敷に明かりを灯した様に映えているのが見えて参ります。(佃 康水)

★石鎚の嶺くっきりと初景色/柳原美知子
身近に山を仰ぐ生活の清々しさを、御句により思い出させていただきました。よく晴れた元日の石鎚山の神々しさがまっすぐに伝わってきます。(小川和子)

★澄み渡る大空青き初詣/高橋秀之
上5 中7 下5のすべてが心晴れ晴れとする言葉が並び大変晴れやかさを感じます。快晴に恵まれ、今年も壮健な良い年を予見出来そうなそんな初詣だった事でしょう。 (佃 康水)

★年明くや北鎌倉に寺多き/高橋信之
鎌倉は海と山に囲まれた美しい古都鎌倉、昔は知識階級や権力者が多く住まわれて居たとか。そこへ多数の宗派がお寺を構えたためにお寺が多いのだと浅い知識では有りますが理解しています。お寺は自然環境も豊かでも有り、まして蒼天に恵まれたお元日。淑気の満ち満ちた北鎌倉の様子が見えて参ります。(佃 康水)

★東(ひんがし)の大きな星よ除夜詣/佃 康水
大晦日の夜からお参りに出かけ、そのまま新年となる。年改まった空を見上がれば、東に輝く大きな星が目に入る。早くも明けの明星なのであろうか。なにか願いを叶えてくれそうな大きな星である。(高橋正子)

【入選/4句】
★瀬音響く祠に小さき鏡餅/柳原美知子
瀬音響くとあれば屹度しっかりした小川でしょうね。まわりが大きく感じられます。可愛い鏡餅も温かいですね。 (迫田和代)

★境内の真夜に溢るる御慶かな/佃 康水
二年参りで初詣に出かけられているのでしょう。真夜中にもかかわらず新年を祝う人たちで活気のある境内が浮かびます。(高橋秀之)

★広い海茜の空から初日の出/迫田和代
海からの初日の出。空を茜に染め、海から昇る初日に神々しさ、晴れやかさが見られ、新年の喜びが読み取れる。(高橋正子)

★初詣絵馬奉納し幸祈る/河野啓一
初詣で祈るのは、家族の、大きくは世界の幸せ。絵馬を奉納し、幸を祈る。営々と受け継がれている絵馬の奉納。(高橋正子)

■選者詠/高橋信之
★新春の鳩の土産を玄関に
土産にもらった鳩の置物を玄関に飾ってみた。今年1年の平和を祈念するささやかな作者のお気持ちがつたわってきます。(河野啓一)

★年明くや北鎌倉に寺多き
鎌倉は海と山に囲まれた美しい古都鎌倉、昔は知識階級や権力者が多く住まわれて居たとか。そこへ多数の宗派がお寺を構えたためにお寺が多いのだと浅い知識では有りますが理解しています。お寺は自然環境も豊かでも有り、まして蒼天に恵まれたお元日。淑気の満ち満ちた北鎌倉の様子が見えて参ります。(佃 康水)

★卓上の皿の蜜柑の明るき色
お正月と言えば炬燵の上の蜜柑が思われます。蜜柑の色の明るさは、故郷瀬戸内の空や海の明るさに繋がるものなのでしょうか。お健やかに新年を迎えられお喜び申し上げます。(柳原美知子)

■選者詠/高橋正子
★坂の上に鈴振り鳴らす初詣
初空を見上げながら坂の上の神社への初詣。振り鳴らす鈴の音も晴れ晴れとした大空へひろがってゆき、今年を明るく迎えられた喜びが感じられます。ご清福をお祈り致します。 (柳原美知子)

★元旦の布巾を干せば鵯の声
元旦に布巾を綺麗に洗い干していると何処からか鵯の声が聞こえた。
鵯の鳴く自然豊かな環境の中に干された真っ白な布巾を大きくイメージ致します。主婦としても清潔な日頃の暮らし振りまでもが見えて来るようです。(佃 康水)

★銀翼の浮きたる二日の空の碧
冬晴れの澄み切った青空に浮かぶ銀翼、大空高く飛行機雲が伸びてゆく様子が鮮やかに目に浮かび、祥雲を仰ぐようです。(柳原美知子)

■互選高点句
●最高点(4点/同点2句)
★実南天活けて障子の初明り/小川和子
★瀬音響く祠に小さき鏡餅/柳原美知子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

◆新年ネット句会清記◆


■新年ネット句会清記
8名24句

01.広い海茜の空から初日の出
02.青い空緑緑の初詣
03.慌ただし年の暮れの顔つきに
04.元日の一献酒は福寿かな
05,去年今年カミオカンデに幸あれと
06.初詣絵馬奉納し幸祈る
07.東(ひんがし)の大きな星よ除夜詣
08.境内の真夜に溢るる御慶かな
09.絵手紙の笑う猿見て初笑い
10.新年に着信音が鳴り続く

11.初売りの声は大きく高らかに
12.澄み渡る大空青き初詣
13.実南天活けて障子の初明り
14.御持たせの逸品受けて雑煮膳
15.年用意身に付いてきし割烹着
16.坂の上の鈴振り鳴らす初詣
17.銀翼の浮きたる二日の空の碧
18.元旦の布巾を干せば鵯の声
19.年明くや北鎌倉に寺多き
20.新春の鳩の土産を玄関に

21.卓上の皿の蜜柑の明るき色
22.石鎚の嶺くっきりと初景色
23.飼い猫に初の正月晴れ晴れと
24.瀬音響く祠に小さき鏡餅

※互選を開始してください。

◆新年ネット句会(2016)のご案内◆


●新年ネット句会(2016)投句案内●
①投句:当季雑詠(新年か、冬の句)3句
②投句期間:2015年12月30日(水)午前0時~2016年1月2日(土)午後6時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:1月2日(土)午後7時~午後10時
②入賞発表:1月3日(日)正午
③伝言・お礼等の投稿は、1月3日(日)正午~1月4日(月)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

●会費納入の件/花冠発行所●


■□来年度(平成28年度)の会費納入について
花冠会費・同人費は、本年度(平成27年度)をもって、前金切れとなりました。来年
度(平成28年度)の納入(前納)を下記の要領でお願いします。
①納入期日:本日から12月末日まで
②会費2万円(花冠誌代、ネット使用料、維持同人費を含む)
③会員以外の方、ネット使用をなさらない方は、郵便為替を送付いたしますので、その
納入金額をご送金ください。
※納入済の方は、下記アドレスの花冠発行所ブログでご確認ください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan100/

▼送金先:
○ゆうちょ銀行
[店名]〇二八(読み ゼロニハチ)
[店番]028
[預金種目]普通預金
[口座番号]6257389
[名義]花冠発行所(カカンハッコウショ)
○郵便振替
口座番号 00290-1-116469
口座名称 花冠発行所(カカンハッコウショ)

●デイリー句会
http://blog.goo.ne.jp/kakan003
●ウェブサイト/インターネット俳句センター
http://kakan.info/
●花冠伝言板
http://blog.goo.ne.jp/kakan2013d

◆12月ネット句会のご案内◆

◆12月ネット句会のご案内◆
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠IDをお申し込みの上、取得してください。
②当季雑詠(秋または冬の句)計3句を下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2015年12月1日(火)午前5時~12月6日(日)午後6時
④選句期間:12月6日(日)午後6時~12月6日(日)午後9時
⑤入賞発表:12月7日(月)正午

※10・11月ネット句会中止

◆10月ネット句会中止のお知らせ◆

◆10月ネット句会中止のお知らせ◆

①高橋信之先生、高橋正子先生から連絡があり、先生のパソコンに不具合が生じたため、今回のネット句会については「中止」いたします。
②ご投句、選句については、ご自由に行ってください。投句は句会の案内のコメント欄に、選句は下の<コメント欄>にお書き込みください。
(記:高橋秀之)

◆10月ネット句会のご案内◆

◆10月ネット句会のご案内◆
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠IDをお申し込みの上、取得してください。
②当季雑詠(秋の句)計3句を下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2015年10月5日(月)午前5時~10月11日(日)午後6時
④選句期間:10月11日(日)午後6時~10月11日(日)午後9時
⑤入賞発表:10月12日(月)正午

◆ご挨拶/9月ネット句会(句会主宰:高橋正子)◆


ご挨拶
次々に来た台風も過ぎ去って、秋らしい空が見れるようになりました。句会の皆様には、大雨の被害はございませんでしたでしょうか。水害のニュースが一日中流れて気がかりでした。
今月は16名の方が参加くださいました。ご投句から始まり、互選とコメントをありがとうございました。入賞の皆様おめでとうございます。先月の句会は、立秋でしたがそれからひと月で、ぐんと秋らしくなりました。これからは、七草の風情や月の美しさ、あふれる秋果を楽しまれることでしょう。毎回思うことですが、ご投句には季節の変化が丁寧に詠まれて、季節のある国にいる幸せを思いました。
句会の管理運営は信之先生に、また、互選の集計は藤田洋子さんにお世話になりました。ありがとうございました。これで9月ネット句会を終わります。

■9月ネット句会入賞発表■


■2015年9月ネット句会■
■入賞発表/2015年9月14日
□入賞/16名21句

【金賞】
★水澄みて今日を新たに迎えけり/内山富佐子
水澄む日となった。そんな日は、気持ちも新たに今日を迎える。日々心新たにさせてくれる水澄む秋である。すっきりとした心境の句だ。(高橋正子)

【銀賞2句】
★ひとしきり萩と吹かれて丘の上/藤田洋子
萩の咲く丘に佇むと、萩が風に吹かれている。ひとしきり萩と同じ風に吹かれてみる。身の内までさわさわと萩の風が吹くようだ。(高橋正子)

★朝の窓鰯雲へと開け放つ/柳原美知子
朝の窓を開ける。開けると鰯雲の空が広がる。高く、広々と広がる鰯雲へと心を開け放ったような気持になる。ひろやかな句だ。(高橋正子)

【銅賞3句】
★多摩川の嵩増し蒼し颱風過/川名ますみ
颱風が過ぎると、雨に水嵩の増した多摩川も、蒼い水となって豊かに流れている。颱風一過のあとの安心。(高橋正子)

★赤とんぼの群れに真っ直ぐ突入す/高橋秀之
「真っ直ぐ突入す」が男らしいところ。赤とんぼの群れに突入した愉快さいい。(高橋正子)

★台風の過ぎゆく空の色軽し/井上治代
台風が過ぎてゆくとき、次第に雲の色もうすれ、水色の空が見えるようになる。さほど大きい台風ではなかったのだろう。「色軽し」に台風のあとのさわやかさが読み取れる。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★瀬戸の航望む丘陵萩白し/藤田洋子
穏やかな瀬戸内海の船の旅白い萩が美しく咲き乱れている景色が浮かび上がる昔瀬戸内海を見た美しい景が思い出されました。(内山富佐子)

★秋刀魚焼く帰りの遅き子にも焼く/古田敬二
秋刀魚の美味しい季節となりました。七輪で家族の秋刀魚を目をしょぼしょぼさせながら焼いているあたたかい場面が浮かび上がってきました。(内山富佐子)
回遊魚の秋刀魚は脂がのっていて塩焼きにして柚子や大根おろしで食べるのがとても美味しいので、この時期には必ず食卓に上ります。帰りの遅い子供さんにも是非食べさせたいと言う親心と温かいご家族を垣間見る思いです。(佃 康水)

★朝の窓鰯雲へと開け放つ/柳原美知子
朝夕はすっかり秋らしくなりました。動きのある句で好きです。(古田敬二)

★ひとしきり萩と吹かれて丘の上/藤田洋子
萩の咲く丘に佇むと、萩が風に吹かれている。ひとしきり萩と同じ風に吹かれてみる。身の内までさわさわと萩の風が吹くようだ。(高橋正子)

★葛の花ふっと匂うは高みより/ 高橋正子
「葛の花」を遠くに見ることがあるが、その在りどころが確かなので嬉しい。秋の季節が確実に来たことを知らせてくれるのだ。(高橋信之)

★多摩川の嵩増し蒼し颱風過/川名ますみ
颱風が過ぎると、雨に水嵩の増した多摩川も、蒼い水となって豊かに流れている。颱風一過のあとの安心。(高橋正子)

★水澄みて今日を新たに迎えけり/内山富佐子
水澄む日となった。そんな日は、気持ちも新たに今日を迎える。日々心新たにさせてくれる水澄む秋である。すっきりとした心境の句だ。(高橋正子)

★赤とんぼの群れに真っ直ぐ突入す/ 高橋秀之
「真っ直ぐ突入す」が男らしいところ。赤とんぼの群れに突入した愉快さいい。(高橋正子)

【高橋正子特選/8句】
★台風の過ぎゆく空の色軽し/井上治代
台風の来る前の空は、暗くて重苦しい色ですが、過ぎ去ったとき、それた時の色は、軽いのです。それは実感です。良い俳句ですね。 (迫田和代)
台風一過黒々とした雲も無くなり、青空が現れ、空は夕ぐれの淡い素敵な色と太陽の光りに雲も淡い色の中にゆったりと漂っている素敵な景です。 (小口泰與)

★水澄みて今日を新たに迎えけり/内山富佐子
美しく澄んだ、秋の水にふれた折の新鮮な心地。曇りのない水、滞ることのない季に、自らの今日も「新たに迎え」る心境になります。(川名ますみ)

★目の前を右に左に赤とんぼ/高橋秀之
涼しい風が吹き始めると、どこからともなく赤とんぼの数がふえて、自由きままな感じで飛びかっています。とんぼが飛び始めると、もうすっかり秋になったという気持ちになります。(井上治代)

★朝の窓鰯雲へと開け放つ/柳原美知子
朝夕はすっかり秋らしくなりました。動きのある句で好きです。(古田敬二)

★変わらない椅子に座って虫しぐれ/迫田和代
「変わらない椅子」の措辞がいいですね。夜の静かな一時、何時もの椅子に座っていると澄み切った虫の音がやがて虫時雨となって聞こえて来る。椅子のみならず作者の普段からの平穏な暮らしぶりが見えて参ります。(佃 康水)

★多摩川の嵩増し蒼し颱風過/川名ますみ
颱風が過ぎると、雨に水嵩の増した多摩川も、蒼い水となって豊かに流れている。颱風一過のあとの安心。(高橋正子)

★ひとしきり萩と吹かれて丘の上/藤田洋子
萩の咲く丘に佇むと、萩が風に吹かれている。ひとしきり萩と同じ風に吹かれてみる。身の内までさわさわと萩の風が吹くようだ。(高橋正子)

★さわやかに風吹く森の中を吹く/高橋信之
「森の中」を一人歩くのが好きだ。遥かな高みに、僅かだが青い空を見て歩く。季節の移り変わりに、自然の確かな営みを見る。その確かさがいい。(自句自解)

【入選/8句】
★藪からし小さき花は可憐なり/井上治代
藪枯らしは蔓が絡んで繁茂すると藪でも枯れると云う害草と言われています。しかし、あの小さな花はとても害草とは思えないほどに可憐です。嫌な草木にも愛おしむ気持ちが持てる所。(佃 康水)

★落柿舎の裏の塚かな柿ひとつ/桑本栄太郎 
如何にも秋の風情ですね。もう様子は変わっているでしょうが、以前、嵯峨野に去来の草庵を訪ねたことを想い出します。(河野啓一)

★筏曳き瀬戸をゆく船いわし雲/佃 康水
瀬戸の船がいわし雲が湧く中を、ゆっくりと筏を引きながら進んでいる。写真の世界にいるようです。 (祝恵子)

★湧きいずる霧のまにまに鳥兜/多田有花
一面に立ち込める山霧の中、鮮やかに目を引く鳥兜に深山の秋を感じます。美しくも毒草の鳥兜なればこそ、ひときわ強い存在感を放ちます。 (藤田洋子)
今の時季、霧深い山に入れば猛毒で知られるトリカブトの花を見る事が出来ます。幻想的なうす紫のその花は霧の中に見え隠れしていて、妖しくも登山者の眼を奪うようです。現場に立つ作者の、高山の霧深い光景が眼の前に鮮やかに想起されます。 (桑本栄太郎)

★水災の隣に伸びぬ鰯雲/川名ますみ
この度の豪雨による水害は、東日本大震災の津波をおもい起させ、自然の猛威を再び思い知らされました。が、自然はまたそのかたわらで、美しい鰯雲や月を見せてもくれます。被害を受けた方々に思いを馳せ、一瞬でも心慰められるようお祈り致します。 (柳原美知子)

★木の実落つ音の静けさ森の道/河野啓一
澄み切った空気が漂う森の中で、木の実の落ちる音が響きます。心が洗われるような情景です。(井上治代)

★瓢箪に並ぶ実の影映りおり/祝恵子
瓢箪に別の瓢箪の実の影が映っているところまで、よく観察されていて、たくさんの実がなっている様子がよくわかります。(井上治代)

★杉の実や銃弾の数果ても無し/小口泰與
「杉の実」を鉄砲のたま(銃弾)としたのが「杉の実鉄砲」で、鉄砲作りは、男の子に人気があった。杉の実鉄砲の他に紙鉄砲、竹鉄砲と、いろいろな鉄砲を作った。「ポンッ」と威勢のいい音が心地よく、いろんな的を目がけて楽しんだものだ。(高橋信之)

■選者詠/高橋信之
★さわやかに風吹く森の中を吹く
都会の喧騒を離れた森の中、吹き抜ける風の清々しさに、暑熱去る季節のいっそう澄んだ秋意を感じます。自然の健やかさ、透明な秋の大気に満たされる作者の姿に、さわやかな季節の喜びがあふれます。(藤田洋子)
「森の中」を一人歩くのが好きだ。遥かな高みに、僅かだが青い空を見て歩く。季節の移り変わりに、自然の確かな営みを見る。その確かさがいい。(自句自解)

★新涼の風に吹かれて喜びぬ
空は青く澄み、吹く風は涼しく、爽やかな季節になりました。「風に吹かれて喜びぬ」という表現が素直で、全身で秋を満喫している様子がよく伝わりました。(井上治代)

★穂絮飛ぶ池の向こうを風が吹き
池の周りに繁茂する草々の穂絮が風に乗り秋光に煌めきながら飛んでゆく様子、水澄む池の面のかすかな小波の音まで聞こえてきそうな爽やかな秋の情景に心洗われるようです。(柳原美知子)

■選者詠/高橋正子
★月光の曲にこおろぎ鳴き速む
こおろぎの鳴き声が、月光の幻想的な曲に合わせて速くなると感じるほどに、幻想的な雰囲気の秋の夜なのでしょう。(高橋秀之)

★葛の花ふっと匂うは高みより
葛の葉の密生する中に薄紫、薄紅色に直立の形に可愛い花を咲かせますが、葛の生茂った山か丘を散策して居られたのでしょうか?高みよりふっと匂いがしてきました。そこはかとない香りに秋を感じ取られた事でしょう。(佃 康水)

★無花果に思い出したる瀬戸の空
作者が生まれ、育ったのは、「福山」で、瀬戸内海の鞆の浦の直ぐ近くの町である。そして、学生時代以来、子育ての時期は、四国の松山で過ごした。「瀬戸の空」には、作者の人生の思いがある。(高橋信之)

■互選高点句
●最高点(7点/同点2句)
★水澄みて今日を新たに迎えけり/内山富佐子
★筏曳き瀬戸をゆく船いわし雲/佃 康水

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。