■1月月例ネット句会/入賞発表/2023年

■1月月例ネット句会/入賞発表
■2023年1月例ネット句会■
■入賞発表/2023年1月9日
【金賞】
20.初空に富士のしろさの大いなり/川名ますみ
 富士山は季節により、時刻により、また見る場所により、さまざまな姿を見せてくれる。画に描かれ、写真に撮られ、また、人々の目裏に収められてきた。初空に見える富士山は白く雪を冠り「しろさの大いなり」と感嘆するほどだ。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
06.笹鳴きや湖を見下ろす祖父の墓/小口泰與
 寒さの中にも笹鳴きを聞く嬉しさ。その場所が、湖を見下ろす「祖父の墓」であることに、安心のある暖かさを感じる。(髙橋正子)

25.除雪車の過ぎて一条道ひらく/弓削和人
 除雪車が雪を除いて、一すじの道を開いてくれた。ただそのことだけながら、雪国の生活の苦労も美しさも背景に含んで読み取れる。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
09.小寒のそら群青に月満る/友田 修
 「小寒のそら」が、ことに澄み渡って群青であること。そこに満ちている月がしっかりと光を放っていること。それで十分だ。「満月」でなく、「月満る」として、この句に力のある詩情が生まれた。(髙橋正子)

23.黍餅の旨さ大地に恵まれて/吉田 晃
 黍餅は、もとは足りない糯米を補う餅だったが、最近は糯米の餅とあわせ好みの餅とし、搗かれることが多いかもしれない。実は、私も好きなのであるが、素朴な旨さ、噛みきりの良さに、「大地の恵み」を確かに実感する。(髙橋正子)

31.風花舞う道後歩けば旅人めき/柳原美知子
 道後は温泉で知られ、地元に住むものも、歩けば観光客に混じって旅人になったような錯覚を覚える。私も経験したことだが、温泉街の雰囲気に誘われ、浮かれやすくなって、時には温泉まんじゅうを土産に買ったこともある。風花が舞う寒い日の道後は、特に旅心を持たせてくれる。(髙橋正子)

【髙橋信之特選/7句】
09.小寒のそら群青に月満る/友田 修
小寒の日の夜空は群青であるが、そこに満ちる月は明るく輝いている。明るい未来を醸し出すような一コマです。(高橋秀之)

11.買い来たる七草セット野の香り/廣田洋一
七草粥を炊こうと七草セットを買ってきた。七草の緑からは野の香りがし、野にいるような安らかな気分になった。お粥が炊きあがるのが楽しみだ。 (柳原美知子)

20.初空に富士のしろさの大いなり/川名ますみ
今年の元日の東京は暖かい晴天に恵まれ富士山がきれいに見えました。
いつ見ても美しい富士ですが、元日であればなおさらのことです。 (多田有花)
 一度飛行機から見たことはあるが、それ以上に正月の富士はすばらしいのだろう。初富士は人の心に希望と優しさを与えてくれるのだと思う。それが、大いなるものの力であり、作者はその大いなる姿に心惹かれている。 (吉田晃)

25.除雪車の過ぎて一条道ひらく/弓削和人く
雪が積もってしまい除雪車が道を広げていく一筋の道、人の生活道路、ありがたいことです。 (祝恵子)

06.笹鳴きや湖を見下ろす祖父の墓/小口泰與
14.帰省するわが子の車で初詣/高橋秀之
23.黍餅の旨さ大地に恵まれて/吉田晃

【髙橋正子特選/7句】
13.除夜の鐘届けよ遠き星空へ/高橋秀之
除夜の鐘が鳴り、余韻の澄んだ音色が闇の中に響く。遥かに輝く星空へ今は亡き人たちへ想いを馳せつつ、静かに行く年を送り、くる年の平和を祈る詠者です。 (柳原美知子)

31.風花舞う道後歩けば旅人めき/柳原美知子
風花の舞う松山の道後町を歩いていると、ふと旅人のように錯覚する。道後温泉に立ち寄り、時計台を眺めた思い出が想起された。また、道後町に立ち寄りたくなる風情を感じる。(弓削和人)

06.笹鳴きや湖を見下ろす祖父の墓/小口泰與
09.小寒のそら群青に月満る/友田 修
20.初空に富士のしろさの大いなり/川名ますみ
23.黍餅の旨さ大地に恵まれて/吉田晃
25.除雪車の過ぎて一条道ひらく/弓削和人

【入選/20句】
01.人は皆想い出に生き年迎ふ/桑本栄太郎
子どもの頃は新年は新しい年への希望、決意といったものに満ちていた気がします。それが、いつの頃からか一年を振り返り、遠い過去を懐かしむ時へと変わって行きました。年齢を経たからこそ詠める御句と思います。 (多田有花)

02.水鳥の水脈を曳くさえ淑気満つ/桑本栄太郎
師走の間もそこにいた水鳥。しかし、新年となるとそれも新鮮に見えます。お正月を迎える「すべてが新たになる」という気持ちがこもっています。 (多田有花)

03.ふるさとの訛り飛び交う初電話/桑本栄太郎
故郷の兄弟や友人との初電話。思わず方言が出て、昔のままの気持ちで会話が弾みます。懐かしくも心温まるひと時です。(柳原美知子)

15.目に眩し仕事始めに見る日の出/高橋秀之
仕事始めは気が引き締まる時。晴れの日に見る日の出はその気持ちを高めてくれます。 (友田修)

18.子等の来て挨拶終えて屠蘇祝う/祝 恵子
年末年始の帰省なのでしょう。普段は慣れているお子様、お孫様が集まり「あけましておめでとうございます」のあいさつからみんなでお屠蘇をいただく。幸せな祝いの行事です。 (高橋秀之)

19.ベッドより伸ばす左手初明り/川名ますみ
カーテン、あるいは雨戸越しに感じる明るさ、確認のため左手を伸ばすと目に飛び込む元旦の曙光。気持ちが光により新たになる一瞬をとらえていると思います。 (友田修)

22.秒針が刻む残りの大晦日/吉田晃
大晦日の歴史はかなり古く、平安時代にさかのぼる。昔、大晦日は祭神様を祭るための準備の日であった。その準備も終わり、いよいよ12時を迎える時、くる年が素晴らしい良き日になることを心に祈っていた。(小口泰與)

24.七種の粥の白さや野の緑/吉田晃
緑の野草と焚く名草粥は、白米の白さが際立つのを、粥の白さとまとめたのが上手い。 (廣田洋一)

26.瑞雲のたなびく空や街遠く/弓削和人
吉兆といわれる瑞雲がたなびく空の向こうに見える街の遠景。これからそこに向かうのか、そこから来て振り返ってみた光景なのか。その街に何かの思いを残しているのだなあと感じる句です。 (友田修)

27.初御空真白き連山重なれり/弓削和人
詠者は雪国にお住まいなのでしょう。新年を迎え周りの山々を見上げられました。「真白き」に新年を迎えた新鮮な思いが感じられます。 (多田有花)

28.穏やかに光あふれて寒の入/多田有花
光あふれて、の表現が好きです。これから寒さも本番を迎えるであろう寒の入りなのに、そこに冬の日差しの暖かさを感じます。 (高橋秀之)

29.寒満月はや中天に高くあり/多田有花
中天に高く見える寒の満月から、その下にある広々とした群青の空間が見えてきます。広大な夜空を照らしている満月、立ち止まっていつまでも見ていたい気持ちになります。 (友田修)

32.大年の野はひろびろと鳥放ち/柳原美知子
気持ちのよい御句です。いいこともあったし、そうともいえないこともあった。それでも一年は過ぎてゆきまた新たな一年がやってきます。繰り返される大宇宙の営みです。 (多田有花)

34.旧友と出くわす里の初詣/西村友宏
産土神社へ初詣でのお詣りすれば、旧友と出会いました。自身が正月帰省の場合、或いは旧友が正月に里帰り中の出来事です。里の産土神社ならではの嬉しい正月の出会いです。 (桑本栄太郎)

35.夕風呂を終えて最後の雑煮食う/西村友宏
現代のお正月の風景が浮かんできます。大家族でにぎやかに祝う特別なお正月というのではなく、日常の続きのほんのひと時のめでたさ。豊かでもののあふれた時代のお正月です。 (多田有花)

36.背伸びして空の青さと初雀/西村友宏
元日に晴れた空を望もうとして背伸びをすると空の青を背景に雀が羽毛をふっくら膨らませて丸くなっている、、、そんな情景を想像しました。(友田修)

39.福寿草懐かしき色手にのせて/髙橋句美子
福寿草の色を「懐かしき」と表現されたところに詠者の優しさを感じます。そういえばあの黄色は懐かしい色だなあと改めて思います。 (多田有花)

04.空を裁つ利鎌の如き冬の月/小口泰與
21.初御空富士真っ白に晴れ渡り/川名ますみ
33.初詣水音身を透く畦を行き/柳原美知子

■選者詠/髙橋信之
後ほど

■選者詠/髙橋正子
41.人日の松葉灯ともる静かさよ/髙橋正子
今年もはや七日、人日となった。お正月の賑わいも一段落した夕べ。松飾りが静かに灯り、しみじみと今日までの安寧が実感され、今年の過ごし方が思われます。 (柳原美知子)

42.星出でて焼芋焼けている匂い
空を仰ぐと、もう星が出ている。気づけば、時間をかけて焼いた芋が「焼けている匂い」を漂わせている。そんな冬の夕刻を想像しました。星と焼芋、遠い存在のようですのに、こうして一体となる瞬間があるのですね。空も光も匂いも、すべて澄み渡る瞬間です。(川名ますみ)

40.正月の花のフリージャほの香る

■互選高点句
●最高点(6点/同点2句)
09.小寒のそら群青に月満る/友田 修
31.風花舞う道後歩けば旅人めき/柳原美知子

集計:髙橋正子

■1月月例ネット句会清記■

■1月月例ネット句会清記■
2023年1月8日
42句(14名)

01.人は皆想い出に生き年迎ふ
02.水鳥の水脈を曳くさへ淑気満つ
03.ふるさとの訛り飛び交う初電話
04.空を裁つ利鎌の如き冬の月
05.ふわふわと浮きし豆腐や六花
06.笹鳴きや湖を見下ろす祖父の墓
07.軽さかな曇天に舞う散り紅葉
08.冬の朝雨音にふと安堵する
09.小寒のそら群青に月満る
10.投句者を思ひつ選句去年今年

11.買ひ来たる七草セット野の香り
12.渾身の一句を添へて賀状来る
13.除夜の鐘届けよ遠き星空へ
14.帰省するわが子の車で初詣
15.目に眩し仕事始めに見る日の出
16.初春の鉢に白砂鶴と亀
17.二人には屠蘇器大きく薩摩焼
18.子等の来て挨拶終えて屠蘇祝う
19.ベッドより伸ばす左手初明り
20.初空に富士のしろさの大いなり

21.初御空富士真っ白に晴れ渡り
22.秒針が刻む残りの大晦日
23.黍餅の旨さ大地に恵まれて
24.七種の粥の白さや野の緑
25.除雪車の過ぎて一条道ひらく
26.瑞雲のたなびく空や街遠く
27.初御空真白き連山重なれり
28.穏やかに光あふれて寒の入
29.寒満月はや中天に高くあり
30.音もなく降り出しており寒の雨

31.風花舞う道後歩けば旅人めき
32.大年の野はひろびろと鳥放ち
33.初詣水音身を透く畦を行き
34.旧友と出くわす里の初詣
35.夕風呂を終えて最後の雑煮食う
36.背伸びして空の青さと初雀
37.初詣石段白に夜深まる
38.新年の晴れの予報に耳傾け
39.福寿草懐かしき色手にのせて
40.正月の花のフリージャほの香る

41.人日の松葉灯ともる静かさよ
42.星出でて焼芋焼けている匂い

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。選句は<コメント欄>にお書きください。

■2023年/新春月例ネット句会ご案内■

■1月月例ネット句会ご案内
①投句:当季雑詠(新年・冬の句)3句
②投句期間:2023年1月2日(月)午前6時~2023年1月8日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。
▼互選・入賞・伝言
①互選期間:1月8日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:1月9日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、1月9日(月)正午~1月12日(木)午後6時
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

2022年月例ネット句会最優秀作品決定

□2022年月例ネット句会の金賞作品12句から一人3句ずつ好きな句を選んでいただきました。その結果を発表いたします。
最優秀句:⑪初冬の薔薇みずいろの空に向き   多田 有花(8点)
次点優秀句:⑥連山を映し色濃き青田かな    桑本栄太郎(6点)
有花さん、栄太郎さん、おめでとうございます。
□選にご参加くださった皆様は次の方々です。暮れのお忙しいなか、ありがとうございました。番号は金賞作品の選句用の句番号です。(敬称略)
高橋 秀之:①、⑥、⑦
廣田 洋一:① ⑥ ⑪
桑本栄太郎:① ⑧ ⑫
弓削 和人:② ④ ⑪
祝  恵子:④ ⑦ ⑪
小口 泰與:⑥ ⑧ ⑪
多田 有花:④、⑤、⑥
柳原美知子:④ ? ⑪  
吉田  晃:③ ⑥ ⑦
川名ますみ:③、⑨、⑪
西村 友宏:③ ⑦ ⑪
髙橋句美子:① ⑥ ⑪
以上12名の皆さまでした。ありがとうございました。
なお、ご感想等がございましたら、下のコメント欄にお書きください。
2022年12月18日
花冠代表 髙橋正子
 

2022年月例ネット句会金賞作品

2022年月例ネット句会金賞作品(12句)
下記の金賞作品の中から、好きな句を3句選んで句の前に付けられた番号をコメント欄にお書きください。最高点句を2022年の最優秀作品といたします。よろしくお願いいたします。(花冠代表 髙橋正子)
一月 ①正月の凧いきいきと河川敷     多田有花
二月 ②裸木の白壁に影立たせおり     祝 恵子
三月 ③ヒヤシンス根っこは水を掴み巻く  祝 恵子
四月 ④客船に舞いこむ桜陽が照らす    高橋秀之
五月 ⑤住み古りし家に別れ来夕牡丹    柳原美知子
六月 ⑥連山を映し色濃き青田かな     桑本栄太郎
七月 ⑦合歓咲いてはるか島なみ青湛え   柳原美知子
八月 ⑧近況を語り合いたる盆の客     多田有花
九月 ⑨ふるさとの最後のひとつ梨を剥く  桑本栄太郎
十月 ⑩玄米を提げる山路や秋高し     弓削和人
十一月⑪初冬の薔薇みずいろの空に向き   多田有花
十二月⑫布団干す晴れ渡る日の午餐どき    高橋秀之

12月ネット句会を終えて/ご挨拶

今年も1月から12月まで、12回の月例ネット句会を行うことができました。ご参加のみな様、ありがとうございました。それぞれの回でその月らしい作品が生まれたことを喜こんでいます。
毎月第2日曜のネット句会ですが、驚くほどはっきりと季節の進み具合が見えました。関東から関西、四国と各地で暮らされている皆様の生活の様子が俳句を通して知ることができて、おひとりおひとりを近しく感じることができる句会でした。
来年2023年9月には花冠創刊40周年を迎えます。日々を繋いで40年経ったかと思うと感慨深いものがあります。これも花冠のお仲間がいればこそ、繋げた40年だと思います。ご支援、ご協力をありがとうございます。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
これで2022年12月月例ネット句会を終わります。皆様、よいお年をお迎えください。
2022年12月17日
花冠代表 髙橋正子

■12月月例ネット句会/入賞発表

■12月月例ネット句会/入賞発表
■2022年12月例ネット句会■
■入賞発表/2022年12月11日

【金賞】
27.布団干す晴れ渡る日の午餐どき/高橋秀之
「午餐どき」に家族の暮らしの姿が見えて、全てを温和に包こんでくれるような句。よく晴れた日曜日だろうか、午餐どきになってのんびり布団を干す。家族がそれぞれに、過ごして、ゆるく繋がっている家族像が見える。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
17.傘深くさして枯葉の吹く道を/吉田 晃
吹き降りがひどいのであろう。枯葉を吹く風が、雨を斜めに降らせる。濡れないように傘に深く身を入れて道を歩く。今は吹き降りの暗さのただ中にあるが、その先に必ずや明るさがあることが信じさせてくれる句。(髙橋正子)

31.小雪の朝日へつぎつぎ子ら登校/柳原美知子
ちらほら雪が舞ってもよさそうな日。そんな日も朝日は元気よく昇り、つぎつぎに登校してくる子供たちを輝かせている。昔から変わらぬ冬の朝の登校風景でありながら、「小雪」の日は、特別な光景に見える。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
01.みどり子の生誕待たる十二月/桑本栄太郎
十二月のみどり子の生誕は、イエス・キリストの生誕。今イエスがこの世に生誕するのを人々と共に心待ちにする気持ちがリアルである。(髙橋正子)

15.裸婦坐像銀杏落葉に囲まれて/多田有花
裸婦座像の周りに銀杏落葉が降り敷いている。銀杏落葉によって裸婦座像に想いが生まれてくるようだ。芸術的な風景に人はなにがしか、心が動く。(髙橋正子)

39.からからと笑うヘルパー小春風/川名ますみ
介護を受ける身となれば、ペルパーさんが明るい方であるといい。前向きに明るい方へ事が運ぶ感じがする。小春風のようなヘルパーのからから笑う声がいい。(髙橋正子)

【髙橋信之特選/7句】
12.冬の草触りて息吹感じたり/廣田洋一
冬なお青く、枯残った草が目に染みる。青々とした草が力つよさを感じさせてくれる。(小口泰與)
春に向けて、生命力の躍動を秘めている冬草。観ているだけではなく、触れることで感じ取れる何かを大切にしている。(弓削和人)

23.大学の銀杏黄葉の坂なせり/髙橋正子
大学の銀杏大樹の黄葉が降り輝く坂道。様々な青春時代に思いを馳せつつ、落葉を踏みしめて歩く温かいひとときです。(柳原美知子)

01.みどり子の生誕待たる十二月/桑本栄太郎
17.傘深くさして枯葉の吹く道を/吉田 晃
27.布団干す晴れ渡る日の午餐どき/高橋秀之
31.小雪の朝日へつぎつぎ子ら登校/柳原美知子
39.からからと笑うヘルパー小春風/川名ますみ

【髙橋正子特選/7句】
07.朝明けや空までつづく道に冬/弓削和人
朝一番に仰ぐ空。今日は冬の雲におおわれている。その空まで続いているような登り坂の道も白く冷気が漂っているようだ。本格的な冬の到来に身を引き締める詠者が想像されます。(柳原美知子)

15.裸婦坐像銀杏落葉に囲まれて/多田有花
 美術館の広い中庭だろうか。銀杏の葉が像の周りを黄色く埋めている。その真ん中に膝を崩した裸婦の座像がうつむき加減にある。行く秋に溶け込んで物思いに耽っている静かな姿を想像します。 (吉田晃)

21.升で豆量り売りする冬テント/祝 恵子
師走となり、お節料理のための豆類が売られ、活気づく出店。寒さの中にも生き生きと温かい生活のひとこまです。句のリズムもよく明るさを感じます。 (柳原美知子)

34.クリスマス街の光が夜空へと/高橋句美子
クリスマスの電飾で華やぐ街。その光が夜空にも投影され、幻想的な闇が浮かびあがります。日常とは異なったこの時期の都市の空間を楽しみながらの帰宅です。(柳原美知子)

11.探し出し子らに見せたる竜の玉/廣田洋一
27.布団干す晴れ渡る日の午餐どき/高橋秀之
31.小雪の朝日へつぎつぎ子ら登校/柳原美知子

【入選/17句】
02.着水の長き飛沫や鴨来たる/桑本栄太郎
鴨がスムーズに着水する一瞬の出来事を的確に捉えていると感じました。(西村友宏)

04.霜の朝連山我に迫り来る/小口泰與
山に囲まれた土地の冷え込んだ早朝の厳しくも清々しい空気が感じられます。 (多田有花)
朝の山の厳かな雰囲気に偉大さを思います。 (髙橋句美子)

06.昭和の血湧かせ唄うや年忘/小口泰與
忘年会で、歌をうたうとなると、独唱であれ、合唱であれ、歌いなれた昭和の歌を唄うことになる。血湧かせ唄うと、熱唱ぶりを表したのが上手い。 (廣田洋一)

14.薄日差す師走の城を仰ぎおり/多田有花
なにかとあわただしい師走。気がせく日常も仰ぎ見る城は変わらぬ風情を保っている。そんなお城が薄日が差しこむとより悠然と感じ、落ち着きを呼び戻してくれる気がします。(高橋秀之)

20.詰め放題からつき牡蠣を袋詰め/祝 恵子
物価高の歳末です。詰め放題、しかも牡蠣となるとうれしいですね。この日の夕食の献立は牡蠣に決まりです。(多田有花)

25.百万の電飾冬の御堂筋/高橋秀之
御堂筋は大阪梅田より難波まで続く幅44メートルの大阪の基幹道路である。その沿道には大きなビルが立ち並び、ビジネスや商業の中心をなして居る。冬の今頃の時季ともなれば、百万とも云うべき電飾で飾られ、寒さの中にも冬の風物詩として著名である。その景色をすべて名詞で詠われて居り、如何にも冬の街並みの風情が表された。 (桑本栄太郎)

30.新しきペンが滑らか冬の朝/西村友宏
新しい万年筆、少し張り込んで買われたものか、それとも贈り物でいただかれたものか。いずれにしても、ペンの滑らかさは弾む心を表しています。(多田有花)

35.ポインセチア軽き葉色を師へ選ぶ/高橋句美子
クリスマスの季節に欠かせぬポインセチア。赤々しいポインセチアではなく軽き葉色を選ぶ心が優しさを感じます。(高橋秀之)

38.日向ぼこ猫がそうしていた部屋で/川名ますみ
猫が日向ぼこしていた部屋。暖かく日が当たる部屋、今は一人で猫といるような気持になりうとうとしてきました。 (祝恵子)
猫は暖かい場所をよく知っています。猫のいた部屋はきっと暖かい。なので、日向ぼこには最適の部屋なのです。 (高橋秀之)
さっきまで猫がそこで気持ちよさそうに昼寝をしていました。そこで同じようにゆったりと過ごされます。猫がお好きな作者の思いがあふれています。(多田有花)

05.ダム湖へと沈みし村や返り花/小口泰與
08.浮かび咲く八手の花や夕の空/弓削和人
13.城まで歩く銀杏落葉の散る道を/多田有花
18.秋がゆく灯影に白き蛾の戯れ/吉田 晃
19.露草の紫色を溜めて冬/祝 恵
26.絶え間なく続く白波冬の海/高橋秀之
32.子が引いて作りし今朝の蕪のスープ/柳原美知子
37.眉墨をやや長くひく今朝の冬/川名ますみ

■選者詠/髙橋信之
のちほど。

■選者詠/髙橋正子
22.青空にきよらかなりて枯木立
23.大学の銀杏黄葉の坂なせり 
24.包まれてずっしり白菜のかたち

■互選高点句
●最高点(同点3句/4点)
02.着水の長き飛沫や鴨来たる/桑本栄太郎
25.百万の電飾冬の御堂筋/高橋秀之
38.日向ぼこ猫がそうしていた部屋で/川名ますみ
集計:髙橋正子

■12月月例ネット句会清記■

■12月月例ネット句会清記■
2022年12月11日
13句(39名)

01.みどり子の生誕待たる十二月
02.着水の長き飛沫や鴨来たる
03.ふるさとの海鳴り想う寒波かな
04.霜の朝連山我に迫り来る
05.ダム湖へと沈みし村や返り花
06.昭和の血湧かせ唄うや年忘
07.朝明けや空までつづく道に冬
08.浮かび咲く八手の花や夕の空
09.冬海に雲段段や波の花
10.道草を食わずに帰る漱石忌

11.探し出し子らに見せたる竜の玉
12.冬の草触りて息吹感じたり
13.城まで歩く銀杏落葉の散る道を
14.薄日差す師走の城を仰ぎおり
15.裸婦坐像銀杏落葉に囲まれて
16.ストーブの古びて首ふる小さな音
17.傘深くさして枯葉の吹く道を
18.秋がゆく灯影に白き蛾の戯れ
19.露草の紫色を溜めて冬
20.詰め放題からつき牡蠣を袋詰め

21.升で豆量り売りする冬テント
22.青空にきよらかなりて枯木立
23.大学の銀杏黄葉の坂なせり 
24.包まれてずっしり白菜のかたち
25.百万の電飾冬の御堂筋
26.絶え間なく続く白波冬の海
27.布団干す晴れ渡る日の午餐どき
28.冬晴れや人が群がる豚汁屋
29.鯛焼きの餡子ふくら頬緩む
30.新しきペンが滑らか冬の朝

31.小雪の朝日へつぎつぎ子ら登校
32.子が引いて作りし今朝の蕪のスープ
33.髪切って11月果つ街の灯に
34.クリスマス街の光が夜空へと
35.ポインセチア軽き葉色を師へ選ぶ
36.寒風を避けつつ乗り換え駅急ぐ
37.眉墨をやや長くひく今朝の冬
38.日向ぼこ猫がそうしていた部屋で
39.からからと笑うヘルパー小春風

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。選句は<コメント欄>にお書きください。

■2022年/12月月例ネット句会ご案内■

■2022年/12月月例ネット句会ご案内■
①投句:当季雑詠(冬の句)3句
②投句期間:2022年12月5日(月)午前6時~2022年11月11日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。
▼互選・入賞・伝言
①互選期間:12月11日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:12月12日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、12月12日(月)正午~12月15日(木)午後6時
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

ご挨拶/11月月例ネット句会を終えて

11月月例ネット句会にご参加いただき、ありがとうございました。
入賞の皆さまおめでとうございます。金・銀・銅賞は、信之先生と正子の特選句から決めています。(もちろん、選者特選句と互選句が重なる場合もあります。)入選句は、皆様の互選を頂いた句を入選としています。
今回は俳誌「オリーブ」の創刊同人の木村晴美さんに選をしていただきました。発行所の近所にお住まいで、お貸しした本を返しに来られましたので、選をお願いしましたところ、快く引き受けてくださいました。木村様ありがとうございました。
今回は、私の不手際で、清記を間違った場所にアップロードしてしまいましたが、皆様のご協力で無事、選とコメントを頂くことができました。ご協力ありがとうございました。これから寒さに向かい、インフルエンザや新型コロナの心配もありますが、風邪をひかれませんようにお過ごしください。
来月12月の月例ネット句会は、12月11日(日)になります。楽しみにお待ちください。これで11月月例ネット句会を終わります。
11月17日
髙橋正子