■8月月例ネット句会入賞発表■

■8月月例ネット句会入賞発表■
2023年8月14日
39句(13名)

【金賞】
21.田草取り水の濁りを遠ざかる/吉田 晃
田の草取りは、一人、もくもくとする静かな作業だ。田に足を入れ、田草を取るとき、田水は濁る。田草を取り終えて、その濁りを後にする。「遠ざかる」は、田をそっとそこに置き、何事もなかったように田を去る感じで、田の作業はあまりにも静かなのだ。鳥が田水を濁して飛び去るにも似ている。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
10.今朝の秋野のひろがりに道ひとつ/弓削和人
「今朝の秋」を覚える野のひろがり、そこに道がひとつ。絵画的な印象の句に、涼しさを感じ、何かを思う。(髙橋正子)

34.歓声と重なる花火大輪に/髙橋句美子
打ち上げ花火が揚がる。花火が揚がるたびに大勢の観客の歓声が、花火の大きさに合わせたように、上がる。大輪の花火には大輪の花火のような華やかな歓声。(髙橋正子)


【銅賞/3句】
22.新秋の雲ひとつなき夜明けかな/多田有花
「新秋」の言葉のひびきが爽やかで、さっそうとしている。新秋の夜明けの空は雲ひとつない空。新秋は初秋と同じ意味ながら、すっきりとした心を感じる。実にさっぱりしている。(髙橋正子)

25.大切りのメロンをぐいとジューサーに/川名ますみ
メロンが大切りにされて、ジューサーの口にぐいと押し込まれ、ジュースがしぼられる。「大切り」「ぐいと」はメロンのフレッシュさを言い得て力強い。(髙橋正子)

32.花火のあと星が畳みかけて出る/西村友宏
花火が終わったあと、見物の人たちは、家路についているが、空を見上げておれば、星がつぐつぎに、花火の美しさになおも畳みかけるように生まれ出ている。花火も星々も美しい。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/7句】
10.今朝の秋野のひろがりに道ひとつ/弓削和人
この道は秋の野を横切って山のふもとの村に伸びているのだろうか。「野のひろがりに道一つ」から、初秋の涼しさを感じた。風の涼しさを感じる句だと思った。 (吉田 晃)

12.夏座敷みるみる雲の湧きにけり/弓削和人
座敷に座っておられるのか、寝転んでおられるのか。いずれにしてもその窓の外でわずかの間に積乱雲が成長していきました。そのスピードこそ夏のエネルギーそのものです。 (多田有花)

28.花南瓜今朝満開の畑土踏む/柳原美知子
丹精込めて育てられたかぼちゃの花が次々咲いています。野菜を育てることの楽しさが御句全体からあふれています。(多田有花)

34.歓声と重なる花火大輪に/髙橋句美子
花火はいろいろの光や形象を表す。打ち上げて花の様に開く揚花火は、雄壮な爆音のあとの五彩の火は、夏の夜空に誠に美しいです。 (小口泰與)

25.大切りのメロンをぐいとジューサーに/川名ますみ
夏の暑い盛りに、みずみずしいメロンを大胆に大きく切ることによって、涼風が過ぎていく感があり、「ぐいと」の表現が活きていて真実味があります。 (弓削和人)
メロンジュースを手慣れたてえづきで作る様が浮かびました。メロンのフレッシュさも感じる爽やかな時間です。 (西村友宏)

32.花火のあと星が畳みかけて出る/西村友宏
花火大会、さきほどまで大輪の花火が開いていた夜空。それが終了すると同時に星の瞬きが戻ってきました。星空の輝きにさきほどまでの花火の華やかさが一層印象的に思い出されます。 (多田有花)

12.夏座敷みるみる雲の湧きにけり/弓削和人
21.田草取り水の濁りを遠ざかる/吉田 晃
22.新秋の雲ひとつなき夜明けかな/多田有花

【髙橋句美子特選/7句】
07.艶やかに舞ひを奉納立秋祭/廣田洋一
品の良さを感じます。立秋は暑さの極みのころです。その中で凛とした雰囲気で神に奉納する舞が舞われました。 (多田有花)

31.素潜りを終えて朝から氷菓食う/西村友宏
素潜りした後の氷菓、夏休み感満載です。日焼けした若々しい肌に白い歯、80年代のコカ・コーラやネスカフェのCMを連想しました。理屈抜きに気持ちがいいです。 (多田有花)
朝の早い時間に一素潜りをして、一息く様子が、氷菓で爽やかで涼しそうになっています。(髙橋句美子)


02.かなかなの忽と入日の茜かな/桑本栄太郎
10.今朝の秋野のひろがりに道ひとつ/弓削和人
12.夏座敷みるみる雲の湧きにけり/弓削和人
21.田草取り水の濁りを遠ざかる/吉田 晃
27.揚花火横浜港のリズミカル/川名ますみ

【入選/17句】
01.落蝉の翅透けて居りうすみどり/桑本栄太郎
落ちたばかりなのだろう。うすみどりの翅が瑞々しい。息絶えたばかりのその姿に作者は心を寄せているのでしょう。 (吉田 晃)

02.かなかなの忽と入日の茜かな/桑本栄太郎
厳しい残暑の一日が暮れ、あたりが夕陽の色に染まる頃、にわかに蜩の声が聞こえ始めました。あたりの空気を冷やすようなその声に耳で涼んでおられます。 (多田有花)

06.百舌鳥高音朝の味噌汁沸騰す/小口泰與
初秋の朝の空気に鵙の高い声が響き、新たな季節の到来が実感されます。温かいお味噌汁もほしい肌寒さとなり、「沸騰す」と「鵙高音」とが一気に移り変わった季節をうまく表現されていて素敵です。(柳原美知子)

09.珊瑚樹の実たわわに光るテニスコート/廣田洋一
照り返しの厳しいテニスコートだが、夏風に珊瑚樹の実が揺れながら光っている。暑さの中に涼を感じることができます。 (吉田 晃)

14.落蝉の一つ二つと軒先に/祝 恵子
落蝉が仰向けに倒れている様は、秋の侘びしさを感じさせる。一つ二つが良い。(廣田洋一)

15.立秋やするべきことを問うてみる/祝 恵子
梅雨も長く酷暑だった今夏、思いどおり出来ないことも多かった。ようやく立秋となり、改めて今後すべきことを問うてみる。前向きなお姿に惹かれます。 (柳原美知子)

16.今日と明日賑わう食卓盂蘭盆会/高橋秀之
お子さんたちも成長され、家を出てそれぞれの道を歩かれています。お盆には久しぶりに実家に戻ってこられます。ご夫婦がそれを楽しみにいろいろ準備されている様が浮かんできます。(多田有花)

20.鈴なりのトマト生き生きした緑/吉田 晃
農家の畑なのか家庭菜園なのか。これから赤く色づくであろうトマトが鈴なりになっている、若々しいトマトの様子です。(高橋秀之)

23.早秋や暁の月高くあり/多田有花
秋の気配のただよう暁の空にまだ色を残し高く浮かんでいる月。長い暑さからようやく解放され、心やすらぐ情景ですね。(柳原美知子)

35.りんご飴夜店の光りにあかあかと/髙橋句美子
夜店の露天のりんご飴は、こども心に赤々として美味しそうに見えたのを思い出します。いつの時代になっても、光にあたってあかあかとしてこその、りんご飴です。 (高橋秀之)

29.持ち上がらぬ初成り西瓜叩いてみる/柳原美知子
思い出します。庭の畑での収穫のことを。大人の真似して耳を寄せて叩いていたことを。(祝 恵子)

04.磯鴫や貴婦人の如歩みをり/小口泰與
11.街新た湖畔に映る揚花火/弓削和人
17.帰省の子台風予想とにらめっこ/高橋秀之
24.夜明けにはほっと息つくごと残暑/多田有花
26.旧友と分けるゼリーのきれいな色/川名ますみ
33.花火待つ今か今かと腕まくり/西村友宏
36.夏野菜切る手のリズム均一に髙橋句美子

■選者詠/髙橋正子
37.原爆忌少女少年詩をよみぬ 
8月6日の原爆の日、平和記念式典で少女と少年が「平和への誓い」を読み上げました。二人の誓いは「詩」というべき強さで、胸に突き刺さるものでした。78年前の子ども達が詠んだかもしれない詩をも、想う句です。(川名ますみ)

8月6日、広島原爆被爆者慰霊平和祈念祭です。78年前人類が超えてはならない一線を超えてしまった、忌むべき原爆投下被災による犠牲者の御霊の安らかなる事と、又今なお苦しむ被災者の支援を誓い松田広島市長の平和への誓いを述べました。その中で「世界の核保有国は核兵器による抑止政策を今こそ改めるときである。」と述べ、小学校6年生の男女生徒は、「自分の意見を相手に押し付けるのではなく、相手の希望もよく話し合いましょう」と力強く正義感を持って詩を朗読しました。(桑本栄太郎)

38.雲の峰南方方位に生まれたる  
39.遠雷のさまよい鳴るも近寄らず

■選者詠/髙橋句美子
34.歓声と重なる花火大輪に
35.りんご飴夜店の光りにあかあかと
36.夏野菜切る手のリズム均一に

■互選高点句
●最高点句(5点/同点4句)
10.今朝の秋野のひろがりに道ひとつ/弓削和人
14.落蝉の一つ二つと軒先に/祝 恵子
25.大切りのメロンをぐいとジューサーに/川名ますみ
34.歓声と重なる花火大輪に/髙橋句美子

※集計:髙橋正子
※コメントの無い句にコメントをお願いします。

■8月月例ネット句会清記■

■8月月例ネット句会清記■
2023年8月13日
39句(13名)

o1.落蝉の翅透けて居りうすみどり
02.かなかなの忽と入日の茜かな
03.初秋や想い出ありぬ母の実家(さと)
04.磯鴫や貴婦人の如歩みをり
05.とんぼうの水輪の二つ残しけり
06.百舌鳥高音朝の味噌汁沸騰す
07.艶やかに舞ひを奉納立秋祭
08.いざ出陣跳人の声の高々と
09.珊瑚樹の実たわわに光るテニスコート
10.今朝の秋野のひろがりに道ひとつ

11.街新た湖畔に映る揚花火
12.夏座敷みるみる雲の湧きにけり
13.酷暑なり災害用のラジオ買う
14.落蝉の一つ二つと軒先に
15.立秋やするべきことを問うてみる
16.今日と明日賑わう食卓盂蘭盆会
17.帰省の子台風予想とにらめっこ
18.一休みしつつ夏の日伊勢神宮
19.秋風鈴軒に小さな風の音
20.鈴なりのトマト生き生きした緑

21.田草取り水の濁りを遠ざかる
22.新秋の雲ひとつなき夜明けかな
23.早秋や暁の月高くあり
24.夜明けにはほっと息つくごと残暑
25.大切りのメロンをぐいとジューサーに
26.旧友と分けるゼリーのきれいな色
27.揚花火横浜港のリズミカル
28.花南瓜今朝満開の畑土踏む
29.持ち上がらぬ初成り西瓜叩いてみる
30.長崎忌発熱外来テントの下

31.素潜りを終えて朝から氷菓食う
32.花火のあと星が畳みかけて出る
33.花火待つ今か今かと腕まくり
34.歓声と重なる花火大輪に
35.りんご飴夜店の光りにあかあかと
36.夏野菜切る手のリズム均一に
37.原爆忌少女少年詩をよみぬ 
38.雲の峰南方方位に生まれたる  
39.遠雷のさまよい鳴るも近寄らず


※互選を始めてください。5句選をし、その中の1句にコメントをお書きください。選とコメントは下記のコメント欄にお書きください。

■8月月例ネット句会ご案内■

■8月月例ネット句会ご案内■
①投句:当季雑詠(夏の句・秋の句)3句
②投句期間:2023年8月7日(月)午前6時~2023年8月13日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:8月13日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:8月14日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、8月14日(月)正午~8月17日(木)午後6時
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:髙橋句美子・西村友宏

ご挨拶/7月月例ネット句会を終えて

連日厳しい暑さが続いております。大雨の被害もあちこちに出ています。みなさんのところは、雨の被害などございませんか。何事もないことを祈っています。
お暑い中、7月月例ネット句会にご参加くださいましてありがとうございました。その時、その時に詠まれた句が、時のうつろいをこんなにも表現しているのかと、いつも驚かされます。選とコメントもたくさんいただき、ありがとうございました。
お断りしておきますが、月例ネット句会のご案内に「当季雑詠(夏の句)」を投句するよう希望していますが、現実、今夏なのに露草が咲いて、惹かれて句に詠むこともあります。このあたりは、議論を呼ぶところで、厳密な結社もありますが、いきいきとした感性を大事にしたいと思いますので、投句された句には、多少季節の幅を持たせたいと思います。
信之先生が亡くなられて、早くも四十九日がすぎ、先日法要を営みました。少し落ち着いたところです。葬儀の際には追悼句、またあたたかいお手紙、ご香料をいただき、ありがとうございました。月例ネット句会は信之先生の存命中と同じように開催したいと思っておりますので、よろしくお願いします。
ネット短信でもお知らせしましたが、編集長の高橋句美子さんに選者になってもらいました。また句会ブログの管理は句美子さんと、西村友宏さんにお願いしました。こちらもよろしくお願いします。
今月もありがとうございました。これで7月月例ネット句会を終わります。
2023年7月14日
髙橋正子

■7月月例ネット句会入賞発表■

■7月月例ネット句会入賞発表■
2023年7月10日

【金賞】
21.来ては去り去っては戻る揚羽蝶/髙橋秀之
「来てはさり去っては戻る」に揚羽蝶が飛んでいるようなリズム感がある。勢い盛んな夏の花々をゆらりと飛ぶリズム感と共に、その姿が鮮やか想像できる。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
22.露草の一花だけの青を見せ/祝 恵子
露草の季語は秋だけれど、すでに道端や草原には露草が咲きはじめている。「一花だけの青」は鮮烈な印象で、花への愛おしみが感じられる。(髙橋正子)

28.雲とれてしだいに大きく夏の富士/多田有花
今年はコロナ禍のあとの登山解禁で、外国人も、日本人も大勢の人が山頂を目指し、ご来迎を拝もうと登山したと報道で見た。富士山を覆っていた雲が晴れると、大きな夏富士の山容が目の当たりに迫って見える。登っている途中か。「しだいに大きく」に山頂へ次第に近づいていく高揚感が読み取れる。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
08.水打って空へはじける飛沫かな/弓削和人
「打水が空へはじける」がいい。若々しい涼感と言えるだろう。夏が飛沫のように輝いている。(髙橋正子)

15.にぎやかに母の友らと盆支度/川名ますみ
亡くなった人の魂を迎えるお盆は、迎える嬉しさがあって、盆支度に数人がいればお喋りがはずみ、にぎやかでさえある。母の魂を迎えて嬉しいのは娘だけでなく、その親友たちもである。(髙橋正子)

33.降り注ぐ滝音棚田に風わたる/柳原美知子
棚田は滝音が注ぐところにある。涼しい滝の音と、棚田を渡る涼風が入り交じり、佇めば、常世のような感じがしてくる。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/7句】

11.白紫陽花手折り置かれている手水/吉田 晃
蒸し暑い日々、手水にふんわりと置かれた清楚な白紫陽花は涼し気で、やさしい気持ちになります。緑に囲まれた手水が想像され、心配りが嬉しいひとときです。(柳原美知子)

参拝前に心身を清める手水舎に、手折られた花が置かれています。紫陽花、ことに白の紫陽花は清潔感に満ちていますから、手水の水がいっそう涼やかに感じられたでしょう。心遣いが嬉しいですね。 (川名ますみ)

21.来ては去り去っては戻る揚羽蝶/髙橋秀之
気温もあがり万物みどりとなし、あらゆる花の咲く夏となりました。揚羽蝶の行ったり戻ったりの優雅に舞う光景が、俗世の憂さを忘れさせてくれます。 (桑本栄太郎)
黄色い地に黒い筋模様を持つ揚羽蝶が人なっこく来ては去り又来る景が素敵ですね。 (小口泰與)
37.夏帽子さらりと洗われ色淡く/髙橋句美子
夏帽子は季節柄淡い色が多い。そして、洗うとその淡い色がより淡く感じる。これも夏の一つの不思議かもしれません。(高橋秀之)

08.水打って空へはじける飛沫かな/弓削和人

15.にぎやかに母の友らと盆支度/川名ますみ
22.露草の一花だけの青を見せ/祝 恵子
28.雲とれてしだいに大きく夏の富士/多田有花

【髙橋句美子特選/7句】
02.植込みのつつつと伸びる青すすき/桑本栄太郎
青すすきがいつの間にか伸びていく情景を、゛つつつ゛と表現されていることで、植物の成長スピードが人間や動物のように、意志を持って、生きようとする夏らしい句かと思います。 (弓削和人)


33.降り注ぐ滝音棚田に風わたる/柳原美知子
滝と棚田、風に吹かれる青田のさざ波、いい風景です。(祝恵子)

34.伸びをしてプール開きのチャイム待つ/西村友宏
プールで泳ぎたい気持ちを抑えながら待っている様子が想像できます。伸びをして、という言葉がゆったりとした夏を感じます。(髙橋句美子)

10.花蜜柑ゆっくり過ぎる蝶の時間/吉田 晃
22.露草の一花だけの青を見せ/祝 恵子
26.ふりあおぐ合歓よ真青き空の花/髙橋正子
28.雲とれてしだいに大きく夏の富士/多田有花

【入選/14句】

05,日を受けて枝の翡翠妙なるよ/小口泰與
色彩が目に浮かぶ鮮やかな一句。明るい陽射しとそれに映える鮮やかなカワセミの色。カメラマンでもある詠者の視線を感じます。 (多田有花)
07.あき缶の口に滲み入る岩清水/弓削和人
岩清水がじわじわと湧き出る万緑の谷の景の中、小さなあき缶に滲みいる清水の冷たさが清冽に感じられます。岩清水とのうれしい出合いですね。(柳原美知子)

13.地域猫見上げる先に七夕笹/川名ますみ
風をよく感じ、揺れている七夕笹に反応する地域猫。猫を見守る作者と地域の人々の温かい気持ちが伝わってきます。(柳原美知子)
14.フラミンゴ水浴びるとき夏日揺れ/川名ますみ
 優しくてわかりやすい句ですね。フラミンゴの動きに、水がキラキラ光って零れ散る様子が想像されます。暑い夏の日差しが、「水浴びる時」「夏の日ゆれ」によって涼しく感じられます。(吉田 晃)
24.ひまわりに話しかけてる今日は晴れ/祝 恵子
朝いちばんの「おはよう」なんだろうと想像して読みました。気持ちよい晴れの朝、背丈ほどあろうかという向日葵に話しかける様子は清々しい1日のスタートです。(高橋秀之)

30.国籍あまた夏富士の頂へ/多田有花
新型コロナウィルス感染症の行動規制も緩和され、外国の方々の訪日観光客も戻ってきました。そんな観光客は日本の象徴、富士山の頂を目指す方も多いのでしょう。日常が戻って来た一コマの光景です。(高橋秀之)
31.旧友とピッツァ分け合う薔薇の卓/柳原美知子
コロナ禍も一段落し、久しぶりに会った気の置けない友人たちと歓談。「ピッツァ分け合う」に間柄の親しさが現れています。 薔薇を飾ったテーブルで、思い存分話すのは何よりの喜びです。 (多田有花)
32.雨上がり空みずいろに立葵/柳原美知子
雨上りに色鮮やかに咲く立葵と爽やかな空の青さが素敵な夏の訪れを感じさせます。 (西村友宏)
35.冷房のような夜風に沢音も/西村友宏
避暑地でのひとときでしょうか。山間の宿では肌寒いほどの夜風です。都会を抜け出して渓流のそばで過ごすひととき、涼しさ満載です。 (多田有花)

01.初蝉と想いくすぐる耳の奥/桑本栄太郎
09.雨に似て水輪のひとつ糸蜻蛉/弓削和人
12.自転車の少女は風に立葵/吉田 晃
18.梅雨の蝶庭の草花巡りたり/廣田洋一
19.一輪の向日葵に差す陽は東/髙橋秀之

■選者詠/髙橋正子
25.山百合の花の大きく倒れ咲く
山百合は、真横になる程倒れても花は咲き続ける。それほど生命力が強いのを上手く詠んだ。 (廣田洋一)
山百合は野生の花とは思えないほど見事な花を咲かせます。これをもとに多くの園芸品種が作られています。梅雨の後半を彩る花であり細かな雨に濡れて咲いているのもいいものです。 (多田有花)

26.ふりあおぐ合歓よ真青き空の花
薄桃色の花弁の細い花が青空いっぱいに広がっている。子どもの頃に海を望む岬の道で見た光景である。青空に溶け込んでしまいそうな質素で優しい花だが見ていて飽きない。「真青き空の花」の表現がぴったり当てはまったところに、この句の魅力を感じた。その花に呼びかけている正子先生の心の内を推し量る術はないが、この句を見た時、「真青き空の花」になったそこに、信之先生の笑顔を思い浮かべたのである。信之先生には「あきらさん、深読みは陳腐になりますよ」とご指導を受けたが、敢えてコメントをさせていただいた。(吉田晃)

27.暑き日の水騒がせてかいつぶり

■選者詠/髙橋句美子

37.夏帽子さらりと洗われ色淡く
夏帽子は季節柄淡い色が多い。そして、洗うとその淡い色がより淡く感じる。これも夏の一つの不思議かもしれません。(高橋秀之)

38.採れたての桃の硬さに音がする
たまたま昨日実家で母にもらった桃がこんな感じでした。採れたては、ほんと瑞々しさがあり、硬さがあります。(高橋秀之)
39.朝採れのいんげん豆の青の濃さ

■互選高点句
●最高点句(6点)
21.来ては去り去っては戻る揚羽蝶/髙橋秀之
集計:髙橋正子


※コメントの無い句にコメントをお願いします。

■7月月例ネット句会清記■

■7月月例ネット句会清記■
2023年7月9日
39句(13名)

01.初蝉と想いくすぐる耳の奥
02.植込みのつつつと伸びる青すすき
03.青蘆やさざ波立つる夕の風
04.峰雲の変化激しき蒼き空
05.日を受けて枝の翡翠妙なるよ
06.鷺草の天飛んで来し夢の間に
07.あき缶の口に滲み入る岩清水
08.水打って空へはじける飛沫かな
09.雨に似て水輪のひとつ糸蜻蛉
10.花蜜柑ゆっくり過ぎる蝶の時間

11.白紫陽花手折り置かれている手水
12.自転車の少女は風に立葵
13.地域猫見上げる先に七夕笹
14.フラミンゴ水浴びるとき夏日揺れ
15.にぎやかに母の友らと盆支度
16.ミストにて涼をとりたる神田明神
17.七夕や宇宙の旅を願ひたり
18.梅雨の蝶庭の草花巡りたり
19.一輪の向日葵に差す陽は東
20.梅雨晴れ間所狭しと洗濯物

21.来ては去り去っては戻る揚羽蝶
22.露草の一花だけの青を見せ
23.苦瓜の最初の花に受粉さす
24.ひまわりに話しかけてる今日は晴れ
25.山百合の花の大きく倒れ咲く
26.ふりあおぐ合歓よ真青き空の花
27.暑き日の水騒がせてかいつぶり
28.雲とれてしだいに大きく夏の富士
29.五合目より梅雨晴れの富士山頂
30.国籍あまた夏富士の頂へ

31.旧友とピッツァ分け合う薔薇の卓
32.雨上がり空みずいろに立葵
33.降り注ぐ滝音棚田に風わたる
34.伸びをしてプール開きのチャイム待つ
35.冷房のような夜風に沢音も
36.喜雨のなか色とりどりの傘集う
37.夏帽子さらりと洗われ色淡く
38.採れたての桃の硬さに音がする
39.朝採れのいんげん豆の青の濃さ

※互選をはじめてください。好きな句を5句選び、そのうちの一句にコメントをお願いします。

7月月例ネット句会ご案内

①投句:当季雑詠(夏の句)3句
②投句期間:2023年7月3日(月)午前6時~2023年7月9日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:7月9日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:7月10日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、7月10日(月)正午~7月13日(木)午後6時
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:髙橋句美子・西村友宏

追悼 故花冠名誉主宰/髙橋信之先生

 
故高橋信之先生
 謹んでご冥福をお祈りいたします。
         2023年6月11日
         花冠会員一同
★螢火や悼みて想う師の栄光/桑本栄太郎

★先生の手料理句会窓は初夏/吉田晃

★夕焼の消ゆる速さや恩師の死/小口泰與

★追悼の雨天心へ四葩かな/弓削和人

★紫陽花に色なきを見る朝かな/友田修

★大阪城師を囲みいた夏の句座/祝恵子

★亡き師との思い出遠き富士の夏/多田有花

★葉桜や子たちを連れて長浜城/高橋秀之

★梅雨に入る深き祈りの一と日より/藤田洋子

★バースデイカード五月の空の師へ送り/柳原美知子

〈2007年水煙俳句フェスティバル〉
★天の青知る師と乾杯十一月/川名ますみ

★See youと英文俳句夏の暮/廣田洋一

★芍薬の香る葬儀に空青し/西村友宏

★菖蒲湯に最後の思い出父の家/高橋句美子

★薫風にいつかかわした君の声/遠部光子


★外に出たき思いもありぬ聖五月/高橋正子

(以上16句)

いただいた追悼句は、短冊に書いて仏前に供えさせていただきました。それぞれのかたが信之先生との思い出を俳句にしていただき、ともに過ごした時を私も思い出しました。仏前がとても賑やかになりました。ありがとうございました。
(なお、追悼句の互選はいたしません。)

■故髙橋信之先生追悼句会/入賞発表

■故髙橋信之先生追悼句会(6月月例ネット句会)
入賞発表/2023年6月12日

【金賞】
27.紫陽花の今朝の色挿すガラス瓶/藤田洋子
七変化と言われる紫陽花について「今朝の色」は、はっとさせられる。庭から、今朝切り取った朝顔の「今朝だけの色」。ガラス瓶が今朝だけの色を支えていることに揺らぎと儚さが感じ取れる。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
05.菜園に初生り胡瓜の濃き一本/吉田 晃
初生りの嬉しさが、「濃き一本」に凝縮されている。一本の胡瓜が目にはっきりとある、この力強さ。(髙橋正子)


30.水湛え朝空湛え田植待つ/柳原美知子
田植を待つ田んぼには、水が湛えられ、朝の空を映している。ひやひやと風の吹く田植を待つ田は洋子さんの言われるように「静謐」な田である。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
18.時々は川面に触れて鯉のぼり/祝 恵子
川に張り渡されている鯉のぼりだろう。風が吹くと、川を溯るように勢いよく泳ぐ。風が止むと鯉のぼりは尾が垂れて川面に触れる。それを「時々は川面に触れて」で簡潔にして十分に表現されている。(髙橋正子)

34.芍薬を深く抱く師の薄き胸/川名ますみ
信之先生の誕生日は、5月28日で、ちょうど誕生日に合わせたように芍薬の花が咲くので、花が咲くのを心待ちにしていたように思う。松山郊外の砥部には庭があったので、昔ながらの一重の芍薬を植えていた。そんなことを承知の皆さんからよく芍薬の花を贈られた。痩身であったので、芍薬の花を「深く抱く」感じに見えたのだろう。(髙橋正子)

32.色あせたジーンズ干して夏の色/西村友宏
ジーンズは、よく履いて、洗い晒らされたものに、ますます愛着がわく。色あせたジーンズは色が薄くなって、夏が来て、夏に履くのにいい色になった。「夏の色」がさわやか。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/7句】

05.菜園に初生り胡瓜の濃き一本/吉田 晃
手塩にかけて育てられた胡瓜が生る時期に入ってきました。
採りごろになった胡瓜を見つけられた心のときめきが伝わってきます。 (多田有花)

18.時々は川面に触れて鯉のぼり/祝 恵子
鯉幟が川を渡って飾られている。風がなかったり、逆に強すぎたりすると鯉幟が上下に揺れてたまには尾が川面に触れる様が良く見える。川面に触れてが良い。 (廣田洋一)

25.額装の師の墨痕に梅雨深む/藤田洋子
信之先生の墨跡も瑞々しい書を前に、さまざまな思い出とともに時の過ぎゆく感慨と哀悼の思いが「梅雨深む」に表されていて、感動します。 (柳原美知子)

27.紫陽花の今朝の色挿すガラス瓶/藤田洋子
日替わりで色の違う紫陽花をガラス瓶にさして楽しむ情景が浮かぶとともに、昨日挿した紫陽花の色が今日は変化して違う色になっていたりするのかなと想像されます。諸事、無常、変化の世の中ですがそれを楽しむ気持ちも大切と思いました。 (友田修)
紫陽花の日ごと徐々に色変えてゆく姿、今朝の色、がいいですね。 (祝恵子)
紫陽花の色の変化を楽しむ素敵な日常が目に浮かびます。「今朝の色」で一日を気持ちよくスタートできそうです。(西村友宏)

30.水湛え朝空湛え田植待つ/柳原美知子
田植えを前に、一面水を満たした田と朝空の爽やかな清々しい光景。田植えの準備が整い、その時を待つ水田の静謐なひと時をも感じます。 (藤田洋子)

34.芍薬を深く抱く師の薄き胸/川名ますみ
大好きな芍薬の花の香りに包まれた細身の信之先生のお姿と笑顔が彷彿とされます。先生への思いが伝わってきます。ご冥福をお祈りいたします。(柳原美知子)

27.紫陽花の今朝の色挿すガラス瓶/藤田洋子
32.色あせたジーンズ干して夏の色/西村友宏

【髙橋句美子特選/7句】

13.紫陽花を濡らす優しき朝の雨/友田 修
紫陽花を降り包む雨の静けさに、紫陽花の清楚な佇まいが目に浮かびます。しっとりと心落ち着く朝の情景です。
(藤田洋子)
20.いつになく早き梅雨入り師は逝けり/多田有花
今年は例年にない早い梅雨入りで、信之先生のご逝去を哀悼するかのような雨となりました。先生との思い出を胸にご冥福をお祈りするお気持ちが伝わってきます。 (柳原美知子)

26.紫陽花の薄きみどりに偲ぶ日々/藤田洋子
薄きみどり色はなんとも言えない感情を表しています。(髙橋句美子)

05.菜園に初生り胡瓜の濃き一本/吉田 晃
32.色あせたジーンズ干して夏の色/西村友宏
34.芍薬を深く抱く師の薄き胸/川名ますみ
45.衣更えて夫かろやかに旅立てり/髙橋正子

【入選/14句】

1.はんざきのように眠りぬ夏の風邪/桑本栄太郎
「はんざき」というのが意表を突く言葉であると同時にユーモアを感じます。
きれいな水の底でじっとしているはんざきのように、ゆっくり今はただ眠るのみです。 (多田有花)
12.まさおなる空や二階へ枇杷実/弓削和人
枇杷が実り始めました。二階へ届きそうな大きな枇杷の木なのでしょう。
それを下から見上げるとその視線の先に青空が広がっていました。 (多田有花)

17.メダカの子今は小さなちいさな子/祝 恵子
そうなんです。ほんとそうなんです。というように見たままの句。でも、なぜか心に訴えるものがありました(わが家でメダカを飼っているからかもしれません)。 (高橋秀之)

40.竹林の手入れを終へて梅雨満月/廣田洋一
竹は成長が早く手入れが欠かせません。梅雨の季節、伐採や落葉掻きを終え、雨夜の月を想う時は、会いたくても会えない相手が浮かぶでしょうか。竹取の翁のような、広い世界と少しの寂しさを感じます。 (川名ますみ)


03.斧構えうじゃうじゃや生る子蟷螂/桑本栄太郎
07.電話より聲高らかや松落葉/小口泰與
19.師の訃報告げる電話や五月逝く/多田有花
15.真青なる空に吹き初む夏の風/友田 修
22.一株の紫陽花大きく鮮やかに/高橋秀之
24.初蝶の舞い上がりゆく空広し/高橋秀之
31.夕日さす水面に光る鮎二匹/西村友宏
35.青葉雨心あそばせ光りとなる/川名ますみ
41.短夜やこむらがへりに目覚めたり/廣田洋一
42.短夜のワイン控えめパリの宿/廣田洋一

■選者詠/髙橋正子
45.衣更えて夫かろやかに旅立てり
信之先生を見送られた正子先生の御句。看取るということには、一言では言い難いものがあります。ただ「かろやかに」という語が信之先生らしくもあり、正子先生らしくもあります。今は旅立たれた信之先生にもご遺族のみなさまにも「お疲れ様でございました」と申し上げたいです。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。 (多田有花)
信之先生のご逝去は丁度衣更の時季であった為、死出の旅の衣もかろやかであったとは言え、小柄な信之先生のお身体を想う時正子先生の御心境は如何許りかと想われます。 (桑本栄太郎)
 昔は、宮中でも民間でも、陰暦四月朔日と十月朔日とに、衣を更えるのを例とした。要するに、冬より夏へ時期の衣服にかえて信之先生は次の新しい世界へと旅立っていきました。今は正子先生をはじめご遺族の皆様の弥栄をお祈り申し上げます。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。合掌。 (小口泰與)
軽やかに旅立たれたとのこと。先生の笑顔が見える。「晃さん 先に行っときますよ」という声が聞こえる気がして辛い。 (吉田晃)

43.入らざりし点滴液捨つ夏隣
44.昼顔は真昼の花よ夫眠る

■選者詠/髙橋句美子

37.絵ろうそく揺らぐ炎に蓮の花/髙橋句美子
丁寧に一つ一つ絵が描かれた和蝋燭。揺らめく炎がことさら柔らかく、優しく感じられます。その炎の揺らぎと蓮の花の清浄さに、作者の込められた情感がしみじみと伝わります。
(藤田洋子)

38.芍薬の白はもうすぐ誕生日

白色の芍薬がお好きだった信之先生。通りすがりに
芳香を放っている白い芍薬を見ると、お父様の誕生日が意識されます。お元気で誕生日を迎えてほしいと願われる情愛が思われます。 (柳原美知子)

39.初夏の雨花の苗は青々と

■互選高点句
●最高点句(7点)
27.紫陽花の今朝の色挿すガラス瓶/藤田洋子


集計:髙橋正子
※コメントの無い句にコメントをお願いします。