■入賞発表/2022年3月14日
【金賞】
09.ヒヤシンス根っこは水を掴み巻く/祝 恵子
水栽培のヒアシンスの根の逞しさを描写して、シュールなイメージを呼び起こす。「水を掴み巻く」が、人の手ならば、出来そうもないこと。透明感とヒアシンスの匂いを呼び起こしている。ここがよい。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
31.花菜畑分けゆく先の海の青/柳原美知子
花菜畑の黄色、海の青い色の対比が鮮やか。風景を鮮明に捉え、日本人の原風景でありながらも、斬新な絵画のようであるのが新鮮。(髙橋正子)
20.鮮やかな袴で揃い卒業生/多田有花
卒業式に臨む女子学生たちが、鮮やかな袴で勢ぞろいした。鮮やかな色に、華やかさと凛々しさ、また若さが読み取れ、眩しいほどである。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
17.終着の近き電車へ麦青む/吉田 晃
電車が終着の駅に近づくと、麦が青々と育っているのを目にすることになった。電車は市街から郊外へと走り、終着駅近くになると田園風景が広がるということ。麦青む景色があるのがうれしい。(髙橋正子)
22.春日和巣立つわが子にスーツ買う/高橋秀之
社会人となる子に、はなむけにスーツを買う親の気持ちを「春日和」がよく表している。日常の言葉が素直に心に温かく響いて来る句だ。(髙橋正子)
29.トンネルを抜けて空には春の虹/西村友宏
暗いトンネルを抜けるとそこにあるのは、空にかかる春の虹。予期しない春の虹に心が広がる思い。よいことがありそうだ。(髙橋正子)
22.春日和巣立つわが子にスーツ買う/高橋秀之
我が子も漸く学生生活を終え、社会人となって巣立つ事になる春を迎えた。最後の子育ての心算でスーツを買い与え、ほっと安堵と同時に、一抹の寂しさも感ずる簿妙な親心が垣間見える。 (桑本栄太郎)
29.トンネルを抜けて空には春の虹/西村友宏
車か電車かあるいは徒歩か、いずれにせよ閉塞空間のトンネルを抜けたらその先の青空に虹がかかっていました。忘れがたい一瞬です。 (多田有花)
31.花菜畑分けゆく先の海の青/柳原美知子
黄色の花菜の畑を越えてゆくとその先なに青々とした春の海が開けている。希望の世界が目の前にある。素敵な景ですね。 (小口泰與)
41.戦争の報道昼夜咲くミモザ/髙橋正子
ミモザの黄の花が美しい季節となったけれど、同じ空の下ウクライナでは戦争が起き、多くの命と街が失われており、胸が痛みます。一日も早い停戦と平和を祈る日々です。 (柳原美知子)
09.ヒヤシンス根っこは水を掴み巻く/祝 恵子
14.菊根分鉢を受けたる垣根越/廣田洋一
20.鮮やかな袴で揃い卒業生/ 多田有花
【髙橋正子特選/7句】
28.水温の春めく朝に声弾む/西村友宏
水温で春を感じた、にそうなんだと思います。私もこの数日の温かさに、メダカの水替えをしたところです。(祝恵子)
34.青空へ桜の蕾ふっくら伸び/髙橋句美子
急に暖かくなり、桜の蕾がふくらんで青空に映え、気持ちも浮き立ちます。日一日と開花が待たれます。 (柳原美知子)
09.ヒヤシンス根っこは水を掴み巻く/祝 恵子
17.終着の近き電車へ麦青む/吉田 晃
20.鮮やかな袴で揃い卒業生/ 多田有花
22.春日和巣立つわが子にスーツ買う/高橋秀之
31.花菜畑分けゆく先の海の青/柳原美知子
03.利根川の水は水追い鳥雲に/小口泰與
豊かな利根川の流れの上を渡り鳥が北方へと帰ってゆきます。名残りを惜しみ、新たな季節の到来を実感される優しい眼差しが感じられます。 (柳原美知子)
昼寝をされていたのでしょう。冬ならばすぐに日が傾いてしまいますが、まだまだ明るいところに春の日永を実感されています。 (多田有花)
一面の菜の花に包まれた海沿いの鉄路。駅に停車するたび、菜の花の匂いが車内にもひろがり、駅を降りると海にもその匂いがひろがっていくのを感じます。春が実感される至福のひとときです。 (柳原美知子)
菜の花が広々と咲いている様子が思い浮かびました。(髙橋句美子)
21.花束を解けば春の香広がりぬ/多田有花
ラッピングを解いたことで漂う香りが素敵な春の訪れを演出しているような綺麗なシーンが浮かびました。 (西村友宏)
27.葉牡丹の茎立風をつかまえる/川名ますみ
これと同じ光景を近所の玄関で目にしました。小さな葉ボタンが立ち上がって伸び、まるで薔薇のようです。葉ボタンの新たな美しさを発見されていますね。 (多田有花)
30.伊予柑を剥くか剥かぬか午後十時/西村友宏
伊予柑を食べたい、でももう遅い時間だから、の葛藤が読み取れます。春になり夜の時間も過ごしやすくなってきました。 (高橋秀之)
36.麗日のパン屋の香り坂下る/髙橋句美子
寒さが去りうらうらと春の日差しが差す坂道を下っていたら焼きたてのパンの香りが漂ってきました。春の何でもない一日の幸せです。 (多田有花)
37.雨音に春の夜明けと判じけり/友田 修
静かに土を濡らすような雨音に耳を澄ませ、春の夜明けを味わわれる。充実した一日となることでしょう。 (柳原美知子)
02.山裾の松の支える春の雲/小口泰與
05.三月や出会いと別れあるばかり/桑本栄太郎
08.送りくる春の荷包む新聞紙/祝 恵子
19.いかなごのくぎ煮や播磨の春の味/多田有花
11.春の雲高しその下を鳥たちは
雲の高さと、その下を舞う鳥の姿が対比されていて、春の空を舞う鳥たちの喜びが見えるようだ。鳥たちが命を喜んでいる姿を感じておられるこの句は信之先生のものに間違いない。 (吉田晃)
10.春うららぽん菓子皿に軽くあり
12.白れんの道を妻と帰りたり
■選者詠/髙橋正子
40.花蕾枝に散らばりはや眩し
桜の枝のそこここで、花芽が膨らみ始めました。ほんのり紅色を帯びて、はやくも春の陽射しに燦めいています。枝に散らばる蕾が眩しい、希望に満ちた光景です。 (川名ますみ)
41.戦争の報道昼夜咲くミモザ
42.戦下のバス母も子もみな着ぶくれて
■互選高点句
●最高点(6点)
09.ヒヤシンス根っこは水を掴み巻く/祝 恵子
集計:髙橋正子