12月月例ネット句会/入賞発表


■2018年12月月例ネット句会■
■入賞発表/2018年12月10日

【金賞】
03.一斉にその時来たり木の葉散る/桑本栄太郎
木の葉が散る。いろんな木木があるけれど、散る時がきて、それらが一斉に散る。落葉時雨に出会ったのであるが、「一斉にその時来たり」の自然界の不思議さが詠まれている。(高橋正子)

【銀賞/2句】
14.静かな雨冬のレモンを切りにけり/多田有花
しずかな冬の雨の日。レモンを切った。レモンティーに入れる一片だろうか。そのあとの生活が想像できる。レモンを切って静かにお茶を飲むのだろうか。いい時間だ。主題は「冬のレモン」。「冬の雨」がテーマではないところが新鮮だ。(高橋正子)

31.しぐれきて道後に響く刻太鼓/柳原美知子
道後温泉には「振鷺閣」という小さい塔のようになった部分に刻を知らせる太鼓「刻太鼓(ときだいこ)」がある。明治27年からずっと鳴らされていて、一日3回朝6時、正午、夕方6時に太鼓が打たれる。空をしぐれが過る。はからずも刻を知らせる太鼓が鳴って、昔ながらの情緒に浸る。しぐれの寒さに温泉の湯に浸りたい気持ちも湧く。(高橋正子)

【銅賞/3句】
22.芽水仙日の回り来る庭の隅/藤田洋子
「芽水仙」が可愛い。水仙は築山などの木の根元や、庭の隅に植えられて、年々芽を出してくれる。庭隅の水仙にも日が巡りくる時間があるのだ。そんなとき、水仙の芽が愛おしくなる。形が整った句だ(高橋正子)

10.スケートを滑る子こける子ながめる子/祝 恵子
スケートをする子どもの世界を詠んでいて、読むと、思わず楽しい気持ちになる。スケートを滑る子どもの様子は様々。読み手が子どもたちの様子を楽しんでいるのが伝わり、なお、楽しくなる。(高橋正子)

07.冬の瀬戸さざ波青く空に溶け/河野啓一
青い海が青い空に同化する様子が目に浮かびます。(高橋句美子)

【高橋信之特選/7句】
23.被災地の蜜柑生りしと届けらる/藤田洋子
蜜柑と言えば、瀬戸内、それも愛媛県の伊予蜜柑を連想します。7月のあの大変な豪雨水害の後、蜜柑が生ったと届けらた。おそらく知人、又は親戚の事であったものと推察されるが、少しづつ復旧している様子にひと安堵の作者です。 (桑本栄太郎)

33.風花の触れくる丘に線香立て/柳原美知子
お墓参りでしょう。風花が舞う寒い日、丘の墓地を訪れ線香をたてます。風に線香の煙が揺れて流されていきます。 (多田有花)

03.一斉にその時来たり木の葉散る/桑本栄太郎
08.大西日島々すべて茜色/河野啓一
14.静かな雨冬のレモンを切りにけり/多田有花
31.しぐれきて道後に響く刻太鼓/柳原美知子
38.冬夕焼け工事現場に水打たれ/高橋正子

【高橋正子特選/7句】
10.スケートを滑る子こける子ながめる子/祝 恵子
すごく微笑ましい情景が浮かんできます。楽しい句です。 (高橋秀之)

22.芽水仙日の回り来る庭の隅/藤田洋子
ようやく芽を出した水仙 のいとけなさ。冬の日差しが庭の隅にも届き、これからの成長が楽しみです。何気ない日常にも優しい心配りが感じられます。(柳原美知子)

03.一斉にその時来たり木の葉散る/桑本栄太郎
14.静かな雨冬のレモンを切りにけり/多田有花
27.仕事終え疲れ和らぐオリオン座/西村友宏
31.しぐれきて道後に響く刻太鼓/柳原美知子
33.風花の触れくる丘に線香立て/柳原美知子

【入選/14句】
04.次つぎに当て字の妙や漱石忌/小口泰與  
当意即妙の当て字を多用した漱石。当時の日本語の成り立ちにも大いに影響したとか。そのあたりの事情を紹介しされ巧みな句と思いました。 (河野啓一)

13.木枯に愛でぬ最後の彩りを/多田有花(正子添削)
木の葉を落し枯木にしてしまう強い風に辛うじて残る赤、黄色、緑の葉の色を極めた冬紅葉の素晴らしさを愛でる作者。素敵な景ですね。 (小口泰與)

16.冬山の色付きを背に渡月橋/高橋秀之
渡月橋から見る山のまだ残る紅葉。振り向いた景色がいい感じなのですね。(祝恵子)

25.足早にゴミ出す朝の息白し/西村友宏
朝、寒いのでゴミを出す時は、急ぎ足になる。その時に吐く息が白く見えた。朝の一瞬の変化を捉えたのが上手い。 (廣田洋一)

05.笹鳴や湖を見下ろす祖父の墓/小口泰與
あたりの静けさをいっそう際立たすような、冬を越す鶯の地鳴き。ご祖父様がしみじみと偲ばれるような笹鳴の静かな情景です。(藤田洋子)

12.冬灯し法事の僧の太い声/祝 恵子
寒中の法事は、寂しく気持ちも滅入りがちですが、お坊さんの太い声の堂々とした読経に少しずつ心も温まり、救われる思いがします。 (柳原美知子)

15.谷へ散る紅葉を傾く陽が照らす/多田有花
谷へと散りゆく紅葉の動きが見てとれるようです。午後の日の傾く頃、柔らかな陽射しを纏う紅葉がいっそう美しく、静かに深まる冬を感じます。(藤田洋子)

21.この年は病多かり日記果つ/廣田洋一
年の瀬、誰もが一年を振り返りその感慨にふけります。詠者にとっては病が多かった一年でした。来年は健やかな年であれば、と願います。 (多田有花)
2
9.熟れし柿誰も取らずに枝垂れる/高橋句美子
落葉した木々の中、赤い実をびっしりつけた柿の木が目につきます。住人のいない庭でしょうか、ここまでに成長した年月が思われ、一抹の寂しさを感じます。 (柳原美知子)

30.冬の鍋あれもこれもと急ぎ入れ/高橋句美子
忘年会でしょうか。鍋物を囲み、並んだ食材を次々鍋に入れてしまいます。食材の煮え方にムラが出たりすることも。早く食べたいと逸る気持ちがよく出ています。 (多田有花)

17.参道にわずかな落ち葉天龍寺/高橋秀之
20.嫁ぎし子戻ると決めて年の暮/廣田洋一
26.寝る前にあともう一つ蜜柑食べ/西村友宏
寝る前に食べるのは健康によくないと知りつつ、ついつい目の前の蜜柑を食べてしまう。のどかな日本の光景です。(高橋秀之)

34.逞しき前歯で林檎美味そうに/古田敬二
前歯が生えそろったお子様なんでしょうか。大きく口を開けて前歯で威勢よく齧る林檎は、それだけで美味しそうです。(高橋秀之)

※正子添削の句は、多くの皆さんが選ばれていますが、意味の上で表現に間違いがありますので、添削しました。

■選者詠/高橋信之
41.冬晴れのものみな良しと思う吾
瀬戸内沿岸部の冬のよく晴れた日もこういう印象です。日差しは最も弱くなるころですが、空は明るく裸になった木々の枝がその青空をさしています。すっきりさっぱりと清々しい晴れです。 (多田有花)

40.地が平ら天が平らに冬来る
42.天があり地があり冬の野を歩く

■選者詠/高橋正子
37.牡蠣洗う洗いたるほど水冷たし
水の冷たさも厭わず丁寧に洗われる牡蠣。洗うほど感じる水の冷たさに、新鮮な牡蠣の白さが見えてくるようです。旬の恵みをいただく細やかな心配りをも感じられます。 (藤田洋子)
剥いた牡蠣の実をさらに洗う。冷たい水で洗うほど美味しくなるという。冷たい手を我慢してさらに洗う。 (古田敬二)

38.冬夕焼け工事現場に水打たれ
冬夕焼けが町を染める頃、工事現場がきれいに片付けられ、水まで打たれている。最後まで手を抜かない丁寧な仕事ぶりがうかがえ、心地よい光景に心温まる夕暮れです。 (柳原美知子)

39.残菊の黄色ばかりが暮れ残る

■互選高点句
●最高点(同点3句/6点)
03.一斉にその時来たり木の葉散る/桑本栄太郎
07.冬の瀬戸さざ波青く空に溶け/河野啓一
31.しぐれきて道後に響く刻太鼓/柳原美知子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

■12月月例ネット句清記


■12月月例ネット句清記
2018年12月9日
14名42句

01.吟行の夢の中なり枯野かな
02.旋風となりし木の葉や風に舞う
03.一斉にその時来たり木の葉散る
04.次つぎに当て字の妙や漱石忌
05.笹鳴や湖を見下ろす祖父の墓
06.これがあの谷川岳や冬の星
07.冬の瀬戸さざ波青く空に溶け
08.大西日島々すべて茜色
09.朝ぼらけ漁火迅くも舟と化し
10.スケートを滑る子こける子ながめる子

11.アンコウ鍋二人に余る具沢山
12.冬灯し法事の僧の太い声
13.木枯に愛でし最後の彩りを
14.静かな雨冬のレモンを切りにけり
15.谷へ散る紅葉を傾く陽が照らす
16.冬山の色付きを背に渡月橋
17.参道にわずかな落ち葉天龍寺
18.冬風が頬をなでゆく露天風呂
19.山火事のようやく消えて三の酉
20.嫁ぎし子戻ると決めて年の暮

21.この年は病多かり日記果つ
22.芽水仙日の回り来る庭の隅
23.被災地の蜜柑生りしと届けらる
24.箱詰めの蜜柑つやつや手に一つ
25.足早にゴミ出す朝の息白し
26.寝る前にあともう一つ蜜柑食べ
27.仕事終え疲れ和らぐオリオン座
28.クリスマスのツリー数え街歩く
29.熟れし柿誰も取らずに枝垂れる
30.冬の鍋あれもこれもと急ぎ入れ

31.しぐれきて道後に響く刻太鼓
32.たいこまん好きな猫飼い漱石忌
33.風花の触れくる丘に線香立て
34.逞しき前歯で林檎美味そうに
35.受験生らしき人の横句集読む
36.開戦の日しらぬ人ばかりスマフォ繰る
37.牡蠣洗う洗いたるほど水冷たし
38.冬夕焼け工事現場に水打たれ
39.残菊の黄色ばかりが暮れ残る
40.地が平ら天が平らに冬来る

41.冬晴れのものみな良しと思う吾
42.天があり地があり冬の野を歩く

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。
選句は<コメント欄>にお書きください。

●12月月例ネット句会投句ご案内●


●12月月例ネット句会投句ご案内●
①投句:当季雑詠(冬の句)3句
②投句期間:2018年12月6日(木)午前6時~2018年12月9日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:12月9日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:12月10日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、12月10日(月)正午~12月13日(木)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之