ご挨拶(高橋正子/主宰)
昨日21日は夏至でした。一年で昼が一番長い日をどのように過ごされましたでしょうか。今月の句会には20名の方がご参加くださいました。花冠同人の方だけでなく、常連の古賀一弘さん、添削教室に投句なさっている内山富佐子さんも参加くださいまして、うれしいことでした。入賞の皆さまおめでとうございます。皆さまには選とコメントをありがとうございました。
陰暦五月は早苗月と呼ばれるように、今月の句会には、早苗や青田などの句がたくさん寄せられました。どのたの眼にもこうした美しい風景が目に映ったということでしょう。水田の風景が決して日本からなくならないことを願っています。
今月の句会の最中にインターネット俳句センターのアクセスが110万に達するのではないかと、楽しみにしていましたが、それは明日になりそうです。アクセス100万回をみんなでお祝いしたのは、2011年8月24日でした。その後は、ツイッターやフェイスブックなどが利用されるようになり、ホームページへのアクセスも変わりしましたが、ネット句会が続いていることは、皆さんの「細く長く」の持続力のおかげです。句会の管理運営は信之先生に、互選の集計は藤田洋子さんにお手を煩わせました。どうもお世話をありがとうございました。これで6月ネット句会を終わります。
■6月ネット句会入賞発表■
■6月ネット句会■
■入賞発表/2014年6月22日■
【金賞】
★早朝の草取り妻は露にぬれ/河野啓一
梅雨のころから、雑草の繁茂に悩まされる。暑い日中を避けて早朝に草取りをすると、草だけでなく、妻も露にぬれてしまっている。なんとはなしの、さりげない情愛がいい。(高橋正子)
【銀賞2句】
★田の隅に緑生き生き余り苗/柳原美知子
余り苗として田の隅に置かれたままの苗も、そこに根付いて、緑の葉も生き生きとして育ってくる。この苗は、もしも定植した苗が枯れたりするようなことがあれば、代わりに植えられる。余り苗といっても緑に命がすばらしい。(高橋正子)
★どの田にも早苗の直線吉野線/古田敬二
ネットで調べると、吉野線(よしのせん)は、奈良県橿原市の橿原神宮前駅から奈良県吉野郡吉野町の吉野駅までを結ぶ近畿日本鉄道(近鉄)の鉄道路線、とある。沿線のどの田にも早苗が直線にきれいに植えられて、すっきりとした眺めが望める。「早苗の直線」と「吉野線」の響きあいがとてもいい。(高橋正子)
【銅賞2句】
★夏至の雨根付きし苗の田を浸す/藤田洋子
田植のあと早苗は根付き、夏至のころ、根付いた苗は<ぶんけつ>する。梅雨の最中であって、雨は田を「浸す」のである。豊かな水と青々とした田は、日本の原風景であり、たゆまぬ力を感じる。(高橋正子)
★一瞬に蓮の葉返し青葉風/内山富佐子
蓮の葉が青々としてくるころは、あたりの木々も青葉となる。一瞬に強い風が吹き、蓮の広葉を裏返し、白っぽい緑の色を見せる。様々な緑の対比にが素直で、さわやかだ。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
★若竹の風光り透く兄の忌に/藤田洋子
梅雨の晴れ間のみずみずしい若竹を吹く風の中、在りし日の颯爽としたお兄様の姿が偲ばれるようです。(柳原美知子)
★水平線乱し寄せ来る卯波かな/古賀一弘
広々と眺望出来る場所に立って海を眺めていらっしゃるのでしょう。遥かな水平線を乱す程の白い波頭を立て卯波が寄せてくる。夏を迎える頃の壮大な海の力強さを感じます。(佃 康水)
★朝顔の初花すっきりと一輪/高橋正子
一輪開く朝顔が何とも初々しく、美しく、清々しい朝の始まりを感じさせてくれます。今年初めて朝顔を目にされた作者の感動が心にすっと届きます。(藤田洋子)
★早朝の草取り妻は露にぬれ/河野啓一
★どの田にも早苗の直線吉野線/古田敬二
★一瞬に蓮の葉返し青葉風/内山富佐子
★田の隅に緑生き生き余り苗/柳原美知子
【高橋正子特選/7句】
★夏至の雨根付きし苗の田を浸す/藤田洋子
5月初旬から6月のつい先日まで植えられた苗も根付き、早くも夏至を迎え青々と育って来ている。夏至の雨がたっぷり田に溢れ苗を浸している様子は、豊穣の秋を約束しているようで心が満たされ、安堵感がある。「田を浸す」との下五の措辞が効いている。(桑本栄太郎)
田植えが済んだかと思うと早やしっかりと根付き青々としてきました。今は水を欠かすことが出来ない時期ですが、夏至の雨が苗を浸してくれて居る情景を農家の人達は安心して見守って居られる事でしょう。 (佃 康水)
★ばら園や丹沢の峰近々と/渋谷洋介
ばら園からは、丹沢山系の峰々が間近に見られる。華やかな色彩のばら園と青々とした丹沢の峰々が好対照で、生命感にあふれている。(高橋正子)
★故郷の水の冷たさ五月過ぐ/内山富佐子
屹度井戸水と思います。遠い昔を懐かしく思い出しました。井戸の水は夏冷たく冬は、温かいのです。その冷たい水で冷やした果物の色の鮮やかさ。今思ってもすっきりです。 (迫田和代)
★紫陽花の垣にあふれる港町/小西 宏
港町に、群れ咲く紫陽花の藍色やライトブルーが明るい彩りを与えてくれます。海辺の澄んだ空気に、より生き生きと美しさを増す紫陽花です。(藤田洋子)
★早朝の草取り妻は露にぬれ/河野啓一
★どの田にも早苗の直線吉野線/古田敬二
★田の隅に緑生き生き余り苗/柳原美知子
【入選/16句】
★緑蔭の風に語らうカフェテリア/桑本栄太郎
カフェテリア の外にある緑陰でのお茶を、楽しんでおられるようです。風通しもよく、お話も弾んでいるのでしょうね。 (祝恵子)
★子雀も飛び方上手に梅雨晴れ間/河野啓一
夏の青空を嬉々として飛んでいる子雀の様子をよく観察しておられ、子雀に対する温かい愛情が感じられるいい句だと思いました。(井上治代)
★沢飛びの石譲り合う花菖蒲/佃 康水
菖蒲園のなかに人が通れるように飛び石が敷いてある。交差する見物客はお互い譲り合って花菖蒲を眺めている。そんな景が目に浮かぶようだ。「石譲り合う」と言う措辞が読者に暖かい気持ちにさせる。 (古賀一弘)
★棚田ごと夕陽に染まる青田かな/佃 康水
傾斜地に耕された棚田も青田となり、今くまなく夕陽に染まっています。穏やかで、調べもよく、どこか懐かしい景が思われます。(小川和子)
★水出しの緑茶の甘さ夏に入る/内山富佐子
水出しの緑茶の色彩、美味しさに清々しい夏の訪れが感じとれます。生活の営みとともにある俳句をあらためて実感いたします。(藤田洋子)
★短夜や今日が昨日になる時報/矢野文彦
今日が昨日になる時報は午前0時、夜も更けた時間ですが、この季節の夜は短く、気が付けば、その時間になっていねことに気が付きます。きっと夜も充実した時間を過ごされているのだろうと想像ができます。(高橋秀之)
★白百合に日差して山の雨上がる/藤田洋子
雨の中に咲く白百合の清楚。そこに日の当たり花の明るさが一段と増したとき、全山に雨が上がる。生命と大自然の織りなす静かで輝かしい妙味。 (小西 宏)
★凌霄花(のうぜん)の満つれば海の色想う/小西 宏
のうぜんと海の色との飛躍が印象に残りました。意味付けは難しいかもしれませんが、詩的な響きが魅力です。 (河野啓一)
★夏の雨止んで空また雲重し/高橋句美子
夏の季節風が高温で湿気を含んだ空気を運んで来るので、我が国では雨量が多く、黒雲は重く感じられる。リズム感が良く梅雨の空を的確にあらわしているとおもいます。 (小口泰與)
★もう会えぬ人をあれこれ明易し/矢野文彦
短い夏の夜が明けそうな時刻。夢の中の続きにように、もう会えなくなってしまった人をあれこれと考えるとますます目が冴えてしまう。(古田敬二)
★汚れなき白い色した花菖蒲/迫田和代
花が開いてまだ間もないのでしょう。汚れなき花菖蒲は、活き活きとして、可憐な花を咲かせていることと思います。 (高橋秀之)
色とりどりの花菖蒲が咲き誇っています。その中でも長く伸びた花茎の天辺に汚れの無い白菖蒲が咲き梅雨の中に一段と優雅に潤っています。(佃 康水)
★田毎はや青田波打つ頃となり/小川和子
田植えの苗も早や田水が見えなくなる程株が張り風に応える程に成長して来ました。暑くなる頃の青田波は涼しさを覚えると同時に穂の出るまでの青々とした美しい田園風景です。(佃 康水)
★竹の群れ水の流れのあり涼し/祝恵子
竹が風にそよぎ、せせらぎの音も涼やかで、暑い夏を忘れさせてくれる情景だと思います。 (井上治代)
お近くの庭園での作品でしょうか。竹林が手入れよく配され、水辺には菖蒲などが咲きみちて絶えず水音がする。竹のすがすがしさ、水の流れがそのままに涼しそうです。(小川和子)
★暑き日の作業の後の水あまし/井上治代
梅雨どきとは言え、晴れた日など盛夏を思わせるほどの暑い日があります。農作業は、自然との大いなる交流とも言えますが、ひと息ついた時の水の美味しさは格別でしょう。「水あまし」に収穫の喜びまで伝わってくるようです。(小川和子)
★夏風に揺れる木漏れ日御堂筋/高橋秀之
川筋から吹いてくる涼しい夏の風に揺れる通りの木漏れ日。都市の明るく軽快な夏の情景がリズムよく詠まれていて惹かれます。(柳原美知子)
★山里の暖簾くぐるや一夜酒/小口泰與
★■選者詠/高橋信之
★花菖蒲咲かせしここは農家の庭
★驚きにまた楽しみにカラーの黄
★るり柳明るし丘の西洋館
■選者詠/高橋正子
★青ぶどう明るく結ぶ西の窓
西の大窓に夏の光を浴びて透ける青葡萄の固くつぶらな実が、洋画を見るようにクローズアップされます。(柳原美知子)
★朝顔の初花すっきりと一輪
★夾竹桃の花のうずめる梅雨の家
■互選高点句
●最高点(5点/同点3句)
★田の隅に緑生き生き余り苗/柳原美知子
★どの田にも早苗の直線吉野線/古田敬二
★夏至の雨根付きし苗の田を浸す/藤田洋子
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
※コメントのない句にコメントをお願いいたします。
■6月ネット句会清記■
■6月ネット句会■
■清記/20名60句
01.花影の影に花影花菖蒲
02.水平線乱し寄せ来る卯波かな
03.梅雨晴間フランスパンを買ふ銀座
04.山里の暖簾くぐるや一夜酒
05.カーテンの色変えており五月晴
06.湖畔にてちと空酒や閑古鳥
07.よみがえる7つの川と新緑と
08.五月雨や雨に濡れない心旅
09.汚れなき白い色した花菖蒲
10.名の木札水にしっかと花菖蒲
11.池の辺の椅子に寛ろぐ梅雨晴れ間
12.竹の群れ水の流れのあり涼し
13.枇杷の実や芦屋に多し白き家
14.夏潮の運河眼下にモノレール
15.緑蔭の風に語らうカフェテリア
16.菖蒲田の声なき声や沖縄戦
17.七変化波打つ如し彩重ね
18.ばら園や丹沢の峰近々と
19.早朝の草取り妻は露にぬれ
20.子雀も飛び方上手に梅雨晴れ間
21.百合咲いて夕べの灯りほの白く
22.夏風に揺れる木漏れ日御堂筋
23.園内を色とりどりに花菖蒲
24.そよそよと隣の席にも団扇風
25.沢飛びの石譲り合う花菖蒲
26.棚田ごと夕陽に染まる青田かな
27.葉畳の池に尾を打つ糸蜻蛉
28.花菖蒲咲かせしここは農家の庭
29.驚きにまた楽しみにカラーの黄
30.るり柳明るし丘の西洋館
31.朝顔の初花すっきりと一輪
32.青ぶどう明るく結ぶ西の窓
33.夾竹桃の花のうずめる梅雨の家
34.白川を揺らめき渡る夏の蝶
35.長谷寺の若葉の駅を過ぎにけり
36.どの田にも早苗の直線吉野線
37.三輪の菖蒲開きて梅雨に入る
38.潮風を胸いっぱいに梅雨晴間
39.暑き日の作業の後の水あまし
40.水出しの緑茶の甘さ夏に入る
41.一瞬に蓮の葉返し青葉風
42.故郷の水の冷たさ五月過ぐ
43.もう会えぬ人をあれこれ明易し
44.短夜や今日が昨日になる時報
45.紫陽花の庭から縁へ人出入り
46.夏至の雨根付きし苗の田を浸す
47.若竹の風光り透く兄の忌に
48.白百合に日差して山の雨上がる
49.田毎はや青田波打つ頃となり
50.畦道を行く薫風に身をまかせ
51.茶庭なる静寂にひたる額の花
52.ミニトマト雨に鮮やかひとつ熟れ
53.田の隅に緑生き生き余り苗
54.青梅雨の瀬音に包まる里行けば
55.凌霄花(のうぜん)の満つれば海の色想う
56.夜に聞けり梅雨戻り来て濡れる音
57.紫陽花の垣にあふれる港町
58.雨降りの紫陽花の青いきいきと
59.夏の雨止んで空また雲重し
60.起きぬけの額汗ばむ夏至といい
※選句を開始してください。
◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、6月22日(日)午後6時から始め、同日(6月22日)午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、6月23日(月)午前10時です。
※2) 伝言・お礼等の投稿は、6月23日(月)午前10時~6月24日(火)午後6時です。
◆6月ネット句会のご案内◆
◆6月ネット句会のご案内◆
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠IDをお申し込みの上、取得してください。
②当季雑詠(夏の句)計3句を下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2014年6月15日(日)午後6時~6月22日(日)午後6時
④選句期間:6月22日(日)午後6時~午後9時
⑤入賞発表:6月23日(月)午前10時
※投句を受け付けています。