■4月ネット句会■
■入賞発表/2013年4月15日■
【金賞】
★花林檎溢れ街角あらたまる/小川和子
林檎の花が咲くときは、長い冬が終わり春が来たとき。街角も「あらたまる」。新鮮な感じだけでなく、なにか厳かな感じを秘めている。(高橋正子)
【銀賞/2句】
★風船の真っ直ぐ上る大空へ/高橋秀之
風もなく風船が真っ直ぐに大空へ上がってゆく。「すうっと、自然のままな」状態に快さを感じる。春のおおらかさ、のびやかさがいい。(高橋正子)
★桜蘂降るを載せきしボンネット/川名ますみ
鏡のようなボンネットに降った紅色の桜蘂のイメージが鮮明。桜蘂を払わずにやって来た車に現代風な風流がある。(高橋正子)
【銅賞/2句】
★チューリップ一万本の赤うれし/井上治代
一万本の赤いチューリップに、思わず微笑みと嬉しさがこみ上げてくる。チュ-リップと言えば、まずは赤、その可愛らしさ、あどけなさを素直に受け止めているのがよい。(高橋正子)
★掘りあげし筍は地のあたたかさ/安藤智久
掘り上げたばかりは、地中のあたたかさとなっている。ほっこりとした土をつけた柔らかな筍への愛おしみ。(高橋正子)
【高橋信之特選/8句】
★八重桜どつと大きな風に散る/川名ますみ
満開の八重桜は枝が見えない程重く垂れ下がっている。そこに強い風が吹きどっと散っている八重桜。まさにものの哀れを感じます。 (小口泰與)
★フリージア咲くだけ剪りてみどり児に/高橋正子
みどり児は見ているだけで周りを明るい気持ちにさせてくれます。そのみどり児に目の前にあるフリージアを咲くだけ剪りてが嬉しさ、優しさを感じさせてくれます。(高橋秀之)
大切な赤ちゃんへ、丹精されたフリージアを「咲くだけ剪りて」贈られたのでしょう。精一杯の、そして余分のない、祝福のお気持ちが、花束から香りたつようです。誕生の歓びと、未来の明るさを想い、力強い心地です。 (川名ますみ)
★青麦の畑の青さよ風清し/小川和子
畑一面に、麦の若葉が青々と伸び、その上を吹いてくる風がとても清らかで爽やかです。生き生きとした光景に、おもいきり深呼吸したくなるような清々しさを覚えました。(藤田裕子)
★チューリップ一万本の赤うれし/井上治代
公園か広場か1万本の赤いチューリップが勢揃いして可愛く咲き誇っています。春爛漫、広々と咲く赤いチューリップは気持ちを浮き立たせ開放的な嬉しさが湧いてまいります。 (佃 康水)
★このカーブ曲がれば今年も山桜/古田敬二
毎年訪れている山桜。このカーブを目印に、曲がれば見えてくる山桜。浮き浮きとした喜びが伝わってまいります。きっと清楚な山桜だったと思います。(藤田裕子)
★葉も花も朝日を透かせチューリップ/安藤智久
チューリップに注ぐ春陽がきらきらと眩しく、葉も花も鮮明で、春の喜びを感じます。赤や黄のチューリップが目の前に広がります。(藤田裕子)
★芝青む丘ふくらみて子ら遊ぶ/藤田洋子
丘の芝も青く伸びてきて春の光景を見せてくれます。冬の間、家の中で遊ぶことの多かった子どもたちも、外へ出て遊んでおります。自然の中で元気に遊ぶ子供達を優しく見つめられています。(藤田裕子)
★花林檎溢れ街角あらたまる/小川和子
【高橋正子特選/8句】
★蛇口へと集まる子らに夏近し/小川和子
春の陽射しは時には暑いほどに感じる日もある。戸外で元気に遊ぶ子供らの、急き切って水を求める明るい表情が見てとれて心地良い。(桑本栄太郎)
★新しき光りを路地へ燕くる/藤田裕子
ひらりと舞う燕の影が空に横切った瞬間、我が町にも新しい季節が訪れたことを実感する。燕を「新しき光り」と爽やかに表現されたところが新鮮です。(安藤智久)
★.鶯に啼かれて森の仲間となる/高橋信之
鶯のあのやわらかな呼び声はなんでしょうか?木霊する森の響き、芽生えの木々のうす緑、そして歌声の後のひっそりとした静まり。つまり皆、仲間として森に迎え入れられた訪れ人の喜びでしょう。 (小西 宏)
★掘りあげし筍は地のあたたかさ/安藤智久
筍は、春の太陽のあたたかさを十分に吸い込んだ土の中で成長します。掘った筍に触れてみると、そのあたたかさが残っています。それを、「地のあたたかさ」と感じた作者の豊かな感性が素晴らしいと思います。筍ご飯や煮しめなどごちそうがたくさんつくれたことでしょう。 (井上治代)
新鮮な大地の恵み、地のあたたかさが好きな表現です。(渋谷洋介)
自らの手で収穫された筍、その筍を手に取ったら暖かかったという新鮮な驚き。それは大地の暖かさ、土のぬくもりです。(多田有花)
★桜蕊降る公園の夜半の月/渋谷洋介
静かに降ってくる桜蕊。時間の流れる音もきこえるようです。空には明るい月が出て、いつまで見ていても飽きない美しい情景です。(井上治代)
★桜蘂降るを載せきしボンネット/川名ますみ
★風船の真っ直ぐ上る大空へ/高橋秀之
★花林檎溢れ街角あらたまる/小川和子
【入選/16句】
★夏近し放つ稚鮎の躍り出づ/佃 康水
水温む夏近くとなると毎年川に稚鮎の放流があるようです。放たれて躍り川に入る稚鮎たち、大きくなり釣り人たちを喜ばすことでしょう。(祝恵子)
シーズンに備え稚鮎の放流の時期でしょうか。跳ねて踊りながら稚魚が川に飛び込んでゆく様子は釣り人たちを鼓舞せずにはおれませんね。(河野啓一)
★水音もあたたか水路の草を引く/安藤智久
寒さもようやく和らぎ、日ごとにあたたまる水辺。快い水音を聞きながら水路の草を引くひとときに、明るく柔らかな水辺の春を感じます。(藤田洋子)
★お互いに手を振り交わす花見舟/祝恵子
春爛漫の花見舟。美味しいお花見弁当もあるでしょう。うきうきした舟同士擦れ違い、お互い手を振って楽しそうですね。 (迫田和代)
楽しそうな景がすぐ目に浮かぶ。(下地鉄)
★曙の地震が木の芽を驚かす/多田有花
昨日の朝の地震には私も驚きましたが木の芽も驚くとは意外でした。今出てきたばかりの柔らかい木の芽が驚き震えたと考えられる豊かな発想に感じ入りました。(黒谷光子)
★春の風赤子の祝いにびゅんと鳴る/高橋句美子
赤ちゃんの誕生祝いでしょうか。春風がお祝いするかの様にびゅんと鳴って通り過ぎて行った。びゅんと鳴ると詠まれたのは きっと心地良い風だったのでしょう。春風の音と赤子の措辞に赤ちゃんへ注がれている優しい眼差しが見える様です。 (佃 康水)
★髪切りて春愁少しほぐれゆく/藤田裕子
冬の間にやや伸びた髪をカットして外に出ると春風が首筋に気持ち良い。春風が心のわだかまりを解きほぐしてくれるようだ。(古田敬二)
★風あらば遠まわりして花吹雪/黒谷光子
真っ直ぐに落ちるのではなく、風に流され、舞うように落ちる桜の花びら。桜吹雪がたくさんの桜が風に流され散る様子を感じさせてくれます。(高橋秀之)
★入学式明るい声が駅にあふれ/高橋句美子
駅に溢れているとあるから高校生でしょうか。これからの新しい生活への希望が全員の明るい声になり、笑顔が見えてくるようです。(高橋秀之)
★芝にふれ枝にふれつつ春の蝶/下地鉄
蝶の姿をいくつも見かけるようになりました。明るい日差しの中ひらひらと飛ぶ蝶、それを目で追っておられる詠者の姿が浮かびます。 (多田有花)
★ダムの湖を抱きて花の盛りかな/佃 康水
ダムのほとりに沿って桜が植えられています。やや高い位置から湖と桜並木を遠望むされたものでしょうか。春の盛りの華やかさがあります。 (多田有花)
★たらの芽や宅配食のいろどりりに/矢野文彦
宅配のお弁当にたらの芽が添えられていました。季節の彩りを忘れない心遣いがうれしいですね。たらの芽の歯ざわり、香り、かすかな苦味を堪能されたことでしょう。 (多田有花)
宅配食の心づくしですね。たらの芽など、春の香りと彩りを届けてくれています。そしてこの俳句も。 (小西 宏)
★若い日のあれこれ想う桜餅/迫田和代
桜餅の香りと彩りが若さによく似合います。そんな若い日にも、桜餅を手にして、ふと思うことがあったのでしょうか? 何か嬉しいことでしょうか、あるいは春の愁いのようなものでしょうか? (小西 宏)
桜餅の香りと味が、若い日の出来事を思い出させてくれ、懐かしさがこみあげてきます。今では、楽しかったこと、苦しかったこと、すべてがいい思い出になりました。(井上治代)
★ピアノ演奏響く窓辺の春の空/河野啓一
窓からピアノの音が聞こえて来ます。軽やかな響きです。見上げれば明るい春の空。ゆったりとした、静かな一時を感じさせてくれます。 (小西 宏)
★ハナミズキ蝶きて白き身のこなし/小西 宏
青い空へ揺れているハナミズキを眩しく思う今日このころです。白蝶のひらひらと舞うすがたを見て「身のこなし」と表現された事で、白蝶のしなやかさそして瑞々しいハナミズキが目に浮かび、ほのぼのとした春の明るさが感じられます。 (佃 康水)
ハナミズキの高さに蝶が舞いおりました。「白き身のこなし」一瞬目が離せません。(祝恵子)
★葉も花も朝日を透かせチューリップ/安藤智久
清々しい朝の光の中で、可愛いチューリップが咲いています。朝日を透かせて輝いているチューリップから今日一日の活力を与えられそうです。(井上治代)
★青空の雲は動かず花蘇芳/桑本栄太郎
青空の青、動かない白い雲、地上には赤い花蘇芳、配色の見事さです。(祝恵子)
★頬白や浮子のとどまる瀞碧し/小口泰與
頬白の鳴く声やびくつかない浮子、眠気を誘うような心休まる静かな瀞渓での時間です。(祝恵子)
■選者詠/高橋信之
★鶯に啼かれて森の仲間となる
鶯のあのやわらかな呼び声はなんでしょうか?木霊する森の響き、芽生えの木々のうす緑、そして歌声の後のひっそりとした静まり。つまり皆、仲間として森に迎え入れられた訪れ人の喜びでしょう。 (小西 宏)
★午後の陽が燦々農地の藤咲かせ
★花水木に空青あおと明るい未来
■選者詠/高橋正子
★フリージア咲くだけ剪りてみどり児に
みどり児は見ているだけで周りを明るい気持ちにさせてくれます。そのみどり児に目の前にあるフリージアを咲くだけ剪りてが嬉しさ、優しさを感じさせてくれます。(高橋秀之)
大切な赤ちゃんへ、丹精されたフリージアを「咲くだけ剪りて」贈られたのでしょう。精一杯の、そして余分のない、祝福のお気持ちが、花束から香りたつようです。誕生の歓びと、未来の明るさを想い、力強い心地です。 (川名ますみ)
★山陰にふいに水湧き著莪の花
著莪の花は山陰、竹藪、庭隅などのあまり目立たない所で良く見かけます。著莪の花をひっそりとした山陰に見つけられ、その辺りの地の湿りに水の湧いていることにきずかれ「ふいに水湧き」と詠まれたのでしょうか。著莪の花の咲いている情景が見えてまいります。 (佃 康水)
★藤棚の下の匂いのかすかなり
■互選高点句
●最高点(9点)
★新しき光りを路地へ燕くる/藤田裕子
●次点(7点)
★芝青む丘ふくらみて子ら遊ぶ/藤田洋子
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
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