■第21回フェイスブック句会■
■入賞発表/2013年2月5日■
【金賞】
★枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
枝に止まった鳥が、枝移りをするのか枝が揺れる。それを見ていると、光も揺らしているのだ。枝を張る陽光に満ちた木、枝移りする鳥が、なんと早春らしいことよ。(高橋正子)
【銀賞】
★風二月鳥よろこびの声散らし/藤田裕子
二月の、まだまだ寒い風に、鳥はもう「よろこびの声」を散らしている。真冬とは違う風の暖かさを知ったのだろう。野の生きるものたちは、季節の変化に敏感だ。(高橋正子)
【銅賞】
★夕映えの雲良く伸びて春兆す/小口 泰與
寒さが幾分和らぐ日、夕映えの雲が「良く伸びて」いる。伸びやかな夕映えの雲に春の兆しを感じ取ったセンスがよい。観察の賜物であろう。(高橋正子)
★まんさくの丘へ親子の声弾む/佃 康水
まんさくは、「先ず咲く」の訛りとも言われる。春が兆したばかりの丘に、母と子が声を弾ませ、楽しそうである。春が来たと思う光景だ。(高橋正子)
★節分の庭で男が薪を割る/多田 有花
節分という節目に、薪を割る潔い男の力。この男、「良い鬼」ではないかと思ってしまう。(高橋正子)
【高橋信之特選/8句】
★枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
鳥そのものが光となって飛び去る。飛び去ったあとの木の枝がまた春の光に輝く。(古田 敬二)
★立春の朝は襖の白に明け/高橋正子
立春を迎える朝、ことさら際立つ襖の白さです。身辺の白の清々しさに、にわかに明るさを伴う春の光りを感じます。(藤田 洋子)
和室の襖に、立春の朝の明りが白々と穏やかです。冬の夜明けから柔らかな春の夜明けになってきた喜びが伝わってまいります。(藤田裕子)
★春立ちてとんとん刻む菜のみどり/藤田 洋子
寒も明けて、いよいよ立春。作者のうきうきとした気持ちが、菜を刻むとんとんと小気味よいリズムに現れているようです。(安藤 智久)
漸く立春を迎え、日常の厨事の何気ない所作にも、これからは少しづつ暖かくなって来るのだ・・との隠し切れない喜びの心情が窺えて素晴らしい。みどり色の菜を「とんとん刻む」との措辞が効果的である。(桑本 栄太郎)
寒気の中にもかすかな春の兆しが感じられる立春の朝、新鮮なみどりの菜の葉をリズム良く刻む軽快な音も春めいて来ている。春を迎えるうれしさが素晴らしいです。(小口泰與)
春らしいみどりの葉を音たてて刻んでいる。春が来た喜びが一杯です。みどりの葉も嬉しいですね。(迫田 和代)
★立春や夜明けは静かな雨となり/祝 恵子
俳句の侘・寂は、こういった「静かな」世界であろうと思う。自然の内に秘めたエネルギーをもつ静けさである。「立春」の雨の静けさがいい。(高橋信之)
★節分の庭で男が薪を割る/多田 有花
今日で冬が終わる。その区切りのときに男が独り薪を割っている。逞しくもあり、少し寂しげでもある。豆に追われた鬼か? いや、そんな説明は要らない。(小西 宏)
季節の入れ替わる節目の日を、鬼ではなく人を登場させて力強く詠まれたのが新鮮で印象に残りました。薪は鬼やらいの篝火などに使われるのでしょうね。(河野 啓一)
★白梅の花つぎつぎに空は青/迫田 和代
青い空に次々咲く白梅、春を見つけた嬉しさです。 (祝 恵子)
★風二月鳥よろこびの声散らし/藤田裕子
立春の声を聞くと自然界では春を謳歌したくなります。鳥達はいち早く春の到来へ喜びの声を散らしています。(佃 康水)
★宵闇のどこか匂いて豆を撒く/高橋正子
見えないところを見た。春近しを見た。すべての五感が働いて春近しを知ったのだ。視覚、嗅覚、「豆を撒く」ときの触覚と聴覚、それに「豆を食べるであろう」味覚までもが春近しを知った。日常を詠んで、いい感覚の句だ。(高橋信之)
【高橋正子特選/8句】
★枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
春の陽光のなかを枝を揺らせながら飛び交う鳥の嬉々とした様子に春を実感いたします。(黒谷光子)
★夕映えの雲良く伸びて春兆す/小口 泰與
夕焼け色を浴びた雲の明るさが広がり、春がすぐそこまでやってきている期待感が表れています。(祝 恵子)
★立春の朝のデージー鉢いっぱい/高橋句美子
立春の朝、鉢にいっぱい咲いているかわいいデージーの花。この光景を見ると、とても幸せな喜びを感じます。これから春に向かって、いろいろな夢も膨らんでまいります。 (藤田裕子)
★思い切り紅梅咲かせ丘の晴れ/高橋信之
空は晴れ、丘には紅梅が一気に咲き始めました。暖かく春めいてきた晴れた日、それに答えるかのように植物が活動を始めました。「思い切り」に力づよさが込められ、自然から元気をいただいたような思いが致します。 (藤田裕子)
★節分や豆蒔く音の弾みおり/井上 治代
節分の夜、豆を撒く音の弾みが何とも快く軽やかです。立春を明日に控えての、作者の心の弾みもうかがえ、明るい春の到来を感じさせてくれます。(藤田洋子)
節分の豆撒きは、子供の頃はもとより、大人になっても心弾む行事です。「豆蒔く音」によって、そんな待春の心が生き生きと詠われています。(小西 宏)
★節分会清め太鼓に島奮う/佃 康水
各地の寺社でとり行われる節分会。一島に春を呼び起すかのような清め太鼓の音が鳴り響き、厳かな中にも心晴れ晴れといたします。(藤田洋子)
島にある神社なのでしょう。節分の祭事の最中、きっと豆撒き直前の清め太鼓なのだろうと思います。「島奮う」の措辞が効果的で、句全体にリズムと力強さが感じられます。(小西 宏)
★節分会篝火赤く参道に/河野 啓一
節分の日、社寺参拝の人々のために浄らかに整えられた参道。その参道に赤く燃える篝火がひときわ鮮やかに、訪れる人の心にも温かく灯されるようです。 (藤田洋子)
神社の篝火はあるときは荘厳であり、あるときは力強く感じられます。赤く燃え上がる火炎は深遠な社での鬼やらいの儀式を鮮やかに見せてくれます。(小西 宏)
★まんさくの丘へ親子の声弾む/佃 康水
まんさくの花の明るい黄に包まれ、春めく日差しを浴びて丘に遊ぶ親子の笑い声が聞こえてきそうな心温まる光景ですね。 (柳原美知子)
【入選/14句】
★足湯してギターつま弾く春隣/柳原美知子
お家での光景か、それとも立ち寄りの温泉でしょうか。お湯に足を浸し、気分よくギターを弾く。春がもうそこまできている暖かさを楽しみながら、 お気に入りの曲を奏でる心持は春隣にふさわしいと感じます。(多田有花)
★雪の間に瑞々しきや蕗の薹/小口 泰與
雪の間からちょこんと顔をだした蕗の薹が春のおとずれを知らせてくれます。今年は例年より寒い冬だったので、蕗の薹を見つけた時はうれしかったことでしょう。(井上治代)
★寒晴の浦上天守マリア像/渋谷洋介
寒晴れにマリヤ像を配した景が見事です。(下地 鉄)
★子の春着一寸伸ばして夜の耽る/上島 祥子
立春を迎えて晴れ晴れとした思いの中に早や春着の支度が始まります。一日の家事を済ませ夜のしじまに子供の春着を丹念に直しながら子の成長を喜ぶ母親の姿が見えて参ります。(佃 康水)
※「春着」は、新年の季語。正月に着るために新調した衣服または晴れ着のこと。(注:高橋正子)
★犬とゆく二月の雨を軽く蹴り/安藤 智久
冷たい二月の雨も愛犬と一緒なら足取りも軽やかになりますね。(上島 祥子)
犬と歩く時、足の運びは、少しリズミカル。春浅い二月、やさしい雨を「軽く蹴り」ながら進む影が、さらりとそして力強くゆきます。春本番ももうじきです。(川名ますみ)
★敷石を音なく濡らす春の雨/黒谷 光子
春の雨の佇まいが旨く表現されていると思います。(古賀一弘)
★朝やさし枝垂るる先に梅一輪/川名ますみ
この数日穏やかな日が続いております。日ごと見ていて枝垂れる先に見つけた一輪の咲いた梅を見た喜びが伝わってまいります。 (祝恵子)
★寒椿縁に座れば目の高さ/高橋 秀之
縁側から目線は庭にある寒椿に、寒さのなか、頑張って咲いてくれる椿です。 (祝恵子)
★新駅の高架完成春立ちぬ/桑本 栄太郎
新駅の高架の完成は地域の人達にとっては何より嬉しい事、立春と共に大きな喜びが伝わってきます。(佃 康水)
★立春の雨鮮やかな傘が行く/古田 敬二
色とりどりの雨傘が通ってゆく道筋、立春の雨が柔らかく優しく降っています。傘の上に降る雨に、春の訪れを感じられ素敵です。 (藤田裕子)
★かき混ぜて音もいっしよの浅利汁/下地 鉄
湯気がたちあつあつの浅利汁を、かき混ぜて食べると美味しさ抜群です。「中七」の「音もいっしょの」という表現がすばらしいです。 (井上治代)
★目白来てヒヨ来て冬日射す小枝/小川 和子
鳥は自然のなかで快活に動いています。明るい日射しの中で小枝を揺らしながら楽しそうです。 (井上治代)
★紅ふふむ梅の蕾や雨の中/古賀一弘
雨の中で梅の紅い色が兆しはじめています。花が開くのも間近でしょう。 (井上治代)
★やわらかき雨連れ春の来たりけり/多田 有花
立春の朝は雨に明けたのでしょう。「やわらかき雨」に芽吹きをうながすような春らしい静かな趣が感じられて好きな句です。(小川 和子)
●選者
■選者詠/高橋信之
★梅開花一輪晴れのうれしさに
一輪であっても晴れた日の梅の開花には理屈抜きで春の訪れの嬉しさがあります。(高橋 秀之)
★思い切り紅梅咲かせ丘の晴れ
空は晴れ、丘には紅梅が一気に咲き始めました。暖かく春めいてきた晴れた日、それに答えるかのように植物が活動を始めました。「思い切り」に力づよさが込められ、自然から元気をいただいたような思いが致します。 (藤田裕子)
★今日は立春パソコンの明るい画面
■選者詠/高橋正子
★寒牡丹わが息すれば匂い立ち
真冬に咲く寒牡丹は華やかで、つい花に近付いて香りをかがれたたのでしょう。その動作が「わが息すれば」と詠まれ、ほのかな香りを楽しまれている様子がうかがえます。(佃 康水)
★立春の朝は襖の白に明け
特に技巧のある句ではないが、レベルの高い句。日常の確かさがいい。(高橋信之)
★宵闇のどこか匂いて豆を撒く
節分の宵闇のやわらかくかぐわしい春めく気配を捉えられ、女性ならではの感性を感じます。待春の思いがさらりと詠まれた素敵なお句ですね。(柳原美知子)
■互選高点句
●最高点(11点)
★枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
●次点(9点)
★春立ちてとんとん刻む菜のみどり/藤田 洋子
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
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