■11月月例ネット句会入賞発表■
2025年11月9日(日)
【金賞】
34.縺れあう黄蝶のふたつ天高し/川名ますみ
「天高し」によって、黄蝶は空の高みの、その青さの中にいることがわかる。空の青に紛れず、二つの蝶が軽やかに縺れあっている。
「ふたつ」は可憐な蝶をイメージさせてくれる。どの言葉も吟味され、詩のある句となっている。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
01.バス停の夜の静寂や金木犀/桑本栄太郎
「バス停の夜の静寂」が、金木犀の特別感を出している。バス停近くの住宅に金木犀があるのだろう。金木犀の匂いが夜の静寂に沁み込んでいくようだ。(髙橋正子)
29.草原に青き輝き竜胆咲く/多田有花
草原に竜胆が咲いているのを見つけた。竜胆は、思わず「青き輝き」を心で叫ぶほど可憐な青い花だったのだ。私は阿蘇で草の中に、それも足元に竜胆を見つけたとき、まさに、このような感じだった。あれから、50年近くになるだろうが、いまだにその花を覚えている。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
12.月満ちてあたり一面虫の声/友田 修
満月のひかりが、辺りを照らし、一面に鳴く虫の声を澄み透らせている。月と虫の声の織り成す、秋夜の満ち足りた時である。(髙橋正子)
24.柿落葉ひと葉ひと葉に色残し/藤田洋子
柿落葉は、ひと葉にいろんな色があるが、また別のひと葉ひと葉を見ても、その色彩は印象深い。落ちて間もない葉には、十分色が残っている。(髙橋正子)
25.風の穂に止まるとんぼの軽い赤/吉田 晃
「軽い赤」がとんぼの軽やかさを言い得ている。風に揺れている稲穂にとんぼが来て、つっと止まった。とんぼの動作がいかにも軽やかなのだ。「軽い赤」はそれから来ていると言えよう。(髙橋正子)
【髙橋正子特選/7句】
01.バス停の夜の静寂や金木犀/桑本栄太郎
金木犀は住宅地の中にその香りが漂ってきて気が付くことが多いです。帰宅時にバスを降りてバスが去り、あたりに静けさが戻ったとき、
ふと金木犀の香りに気づかれた、その瞬間を詠まれています。(多田有花)
24.柿落葉ひと葉ひと葉に色残し/藤田洋子
紅葉する落葉の中でも柿落葉は赤、黄色、緑、青、紫などがあります。そして中には虫喰いもあり、一番変化に富みそれぞれひと葉ごとに変化があり、見ていても飽きが来ませんね!(桑本栄太郎)
落ち葉となり、一生を終えた柿の葉も、その一葉ごとにそれぞれ異なる色を残している。人の人生も同じかな。人それぞれの色がきっと残っていくと信じたい。(友田修)
28.朝霧の晴れ一面の芒原/多田有花
朝霧がぱっと晴れて、広がった一面の芒にハッとする情景が想像されました。秋の高原の清々しさが感じられました。(土橋みよ)
立ち込める霧も晴れ、朝の日が差す芒原の清々しい光景。霧に濡れる一面の芒もみずみずしい美しさです。(藤田洋子)
12.月満ちてあたり一面虫の声/友田 修
25.風の穂に止まるとんぼの軽い赤/吉田晃
29.草原に青き輝き竜胆咲く/多田有花
34.縺れあう黄蝶のふたつ天高し/川名ますみ
【入選/15句】
22.水底に日差し朽葉の散らばりに/藤田洋子
水の底まで日が差すと、腐ってぼろぼろになった落葉が見えました。朽葉といえども、色や形が顕わになることで、その命を再認識します。「散らばり」ということばから、葉が自ら散っていったような、能動的な明るさを感じました。(川名ますみ)
32.礫浜に白波砕ける秋の朝/上島祥子
晩秋から初冬にかけて、波は荒くなっていきます。磯浜に打ちつける白波、波音に季節の移ろいを感じます。(高橋 秀之)
36.シチューからスパイス香る今朝の冬/川名ますみ
立冬の日の夕食はぐつぐつとシチューを煮込む。ローリエやペッパーなどスパイスの香りが食欲をそそり、体の芯から温まって、冬の到来が実感されます。新たな季節を楽しんで迎えられるお心持ちが伝わってきます(柳原美知子)
04.棘光る鈴なりの柚子に朝日差し/土橋みよ
08.紅葉が空の青さを引き立てる/高橋秀之
11.曼珠沙華妖しい光を連れてくる/友田 修
13.富士山のくっきり見ゆる小春かな/廣田洋一
14.ひとしきり落葉時雨を浴びにけり/廣田洋一
19.足湯する道後の空には鰯雲/柳原美知子
20.小鳥来て声澄む道後の子規像に/柳原美知子
21.はじめてと嫁栗飯を作りくれ/柳原美知子
23.古代蓮枯れきるまでを水に照り/藤田洋子
26.すする茶の音の軽さよ冬に入る/吉田 晃
27.逝く秋の風の心地を満身に/吉田 晃
30.立冬の月くっきりと宵の空/多田有花
■選者詠/髙橋正子
17.オリオンの星をたしかに星月夜
今の時期オリオン座が昇る時間は遅く、慌ただしい一日を過ごした夜更けに出会います。澄み渡る静寂の秋の夜空に、冬が近づいて来た合図を受けた心地がします。美しい景色です。(上島祥子)
「たしかに」の表現によって、オリオンのひときわ明るく強く輝いている存在の大きさが表現されているだけでなく、満天の星の存在の強さ、大きさをも感じさせてくれ、目の前に星月夜を見ている気になってきた。(吉田 晃)
16.今朝の冬病み臥す窓に外の光
18.初紅葉電車のわれを誰知らず
互選高点句
●最高点句(8点)
28.朝霧の晴れ一面の芒原/多田有花
集計:髙橋正子
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