■4月月例ネット句会入賞発表■

■4月月例ネット句会入賞発表■
2024年4月14日
【金賞】
16.たがやせば目覚めて風に匂う土/ 吉田 晃
「土が目覚める」という感覚がいい。耕すと、下になっていた土が上に出てくる。その時の土の色、風が吹いてきて匂う土。冬の眠りから覚めた、春の土が新鮮である。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
22.花終えて今いきいきと山の色/多田有花
山に桜が咲いている景色も、それはそれで美しい日本の風景だが、桜が咲き終わると、急に山々に新緑が増え、山が生き生きとして感じられるのだ。花から新緑へ山の色の変化はすなわち、季節の移ろいの色。(髙橋正子)

19.藤蕾む枝垂れて咲くぞというかたち/祝恵子
「咲くぞ」の「ぞ」を入れると、中七が字余りになるが、その崩れに藤の花房が枝垂れ、その先に円錐の切っ先の力が読み取れる。また、散文的な表現の工夫に新しさがある。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
08.参道の桜の影を踏みしめる/高橋秀之
「踏みしめる」に確かさがある。参道には日がよく当たって、桜の影がしっかりとできている。しっかりした影でないと、「(踏み)しめる」感覚はわかない。一歩一歩の充実した着実さがうかがえる。(髙橋正子)

28.列車来て桜若葉が揺れる朝/西村友宏
「桜若葉」というあたらしい表現。葉桜になる少しまえに、柔らかな葉となっている。それを若葉と言った。駅や線路沿いにある桜の枝は、列車の風圧で揺れる。若葉と朝と、揺れに、さわやかさ新しさが感じらえる。(髙橋正子)

34.青空にゆったり葉桜ゆれている/髙橋句美子
桜が散るとすぐに葉桜の季節になる。新年度のあわただしが落ち着き、葉桜となった枝は、青々とした葉をゆったりと揺らせている。「ゆったり」した感じがよい。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/7句】
08.参道の桜の影を踏みしめる/高橋秀之
桜が満開の参道です。桜を仰ぐ目を下に向けると桜の影も同じように満開なのです。(多田有花)

16.たがやせば目覚めて風に匂う土/吉田 晃
19.藤蕾む枝垂れて咲くぞというかたち/祝恵子
22.花終えて今いきいきと山の色/多田有花
25.花菜畑はろばろ夕日溶かしゆく/柳原美知子
31けさ二輪雲のいろしてさくら咲く/川名ますみ
34.青空にゆったり葉桜ゆれている/髙橋句美子

【髙橋句美子特選/7句】
03.散り敷きて尚も色濃く花の屑/桑本栄太郎
散ったばかりの一面の花の色が乾くにつれて色濃く染め上げられ、その最後の美しさに桜の季節の名残りが惜しまれます。 (柳原美知子)

07.日が注ぐ新芽は色が鮮やかに/高橋秀之
春の日差しを受けて輝く新芽の色の美しさに見とれる心地よいひととき。心もはればれと良い一日になりそうです。 (柳原美知子)

18.春水を吸ってあかるい芽の緑/ 吉田 晃
生き生きとした新たな芽吹きから春らしさを感じました。明るい季節を予感させる素敵な光景です。(西村友宏)

13.蝶にして花散る谷を飛ぶはやさ/髙橋正子
16.たがやせば目覚めて風に匂う土/ 吉田 晃
22.花終えて今いきいきと山の色/多田有花
28.列車来て桜若葉が揺れる朝/西村友宏

入選/11句
01.あの辺り金蔵寺とや花の雲/桑本栄太郎
洛西大原野にある金蔵寺ですね。どこか高いところから見晴らしておられるのでしょうか。大原野に一面の桜、古刹の名前も雅やかです。 (多田有花)

04.山風にあらがう麦の青さかな/小口泰與
人間や他の動物のように歩いたり走ったりすることが出来ない植物は風にあたり揺れ動く事により、運動となり大きく成長すると云います。今の時季は日々春めくと共に風も良く吹き、抗うように揺れる青麦の様子が見えるようである。(桑本栄太郎)

09.ふと見れば白夜の空に桜舞う/高橋秀之
白夜の薄明りの空に舞う桜、長い夜を彩ってくれ、異国情緒が漂いますね。(柳原美知子)

10.子雀の水浴びしたる潦/廣田洋一
雨上がり潦におぼつかない足取りで近寄り、水浴びをしている子雀に寄せる作者の優しい視線が感じられます。 (柳原美知子)

21.花吹雪く展示車両のひかり号/ 祝恵子
京都の鉄道博物館でしょうか。東海道新幹線開通時に走ったひかり号が展示されています。今のものより丸い雰囲気で穏やかに花吹雪を浴び余生を楽しんでいます。(多田有花)

24.時おりは花びらに触れ歩きけり/多田有花
桜並木を散策していると、時々、さくらに触れて思わぬ喜びをもらいます。(祝恵子)

27.山桜眼下に我が町光る海/柳原美知子
山桜の咲いている場所から見下ろしている景色がよく見える。光る海が良い、景色を大きくみせる。(廣田洋一)

05.沼の面を袈裟切りに飛ぶ燕かな/小口泰與
06.揚がりきり点となりたる揚雲雀/小口泰與

17.枝垂れ咲く古刹桜の夕明かり/吉田晃
30.花冷えやシネマ帰りの夜散歩/西村友宏

■選者詠/髙橋正子
13.蝶にして花散る谷を飛ぶはやさ
桜吹雪の谷その中を蝶が飛んでいきます。まるで花びらの一片でもあるかのように。(多田有花)

14.花散るやしずかな息をはく地球
一年後また花を咲かせるためにしずかに花は散る。地球上の万物はそのようにしずかに息をはき、時を待ち、息をつなぎ、命をつないでゆく。その循環がとだえることのないように祈りたいですね。 (柳原美知子)

15.はちみつのような春の森時間

■選者詠/髙橋句美子
34.青空にゆったり葉桜ゆれている
 人ごみに晒された喧噪が去り、ようやく静かになった。葉が緑の色を広げ、残り少なくなった花が、その陰にあって、これまでの疲れをいやすかのように青空にゆったりとゆれている。(吉田 晃)

35.花吹雪どこへゆくのか空に消え
普段はひらひらと地面に揺れ落ちる桜が花吹雪として舞っている。吹き上げられて大空に向かった桜の葉にびらはどこへ行くのか。いろんな想像が膨らむ光景です。 (高橋秀之)

36.花祭り音楽聞こえた母の便り


互選高点句
●最高点句(5点)
16.たがやせば目覚めて風に匂う土/ 吉田 晃

集計:髙橋正子
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。

コメント

  1. 吉田晃/メールより転記
    2024年4月15日 12:41

    お礼
    〇花冠のホームページには書き込む場所がありませんから、メールにしました。
    四月句会金賞ありがとうございました。評価はされませんでしたが、私の一番思い入れの強い句は、「枝垂れ咲く古刹桜の夕明かり」です。これだけでは、どこにもある枝垂れ桜の景色ですが、投句には前書きができませんから、句だけを入れました。

    前書きを入れると以下のようになります。
    信之先生と久万町露峰の法連寺を訪ねる
    枝垂れ咲く古刹桜の夕明かり
    〇この句は、私がインターネット俳句センターに投句を始めた頃、信之先生が久万中学校を訪ねてくださって、その時、先生のご希望で露峰にある法連寺の枝垂れ桜を見に行った時を思い起こしたものです。
    〇法連寺の枝垂れ桜の奥には小さなお堂があり、そこの壁には奉納の額が掛けてあって、大野林火を始め早々たる俳人の名前が連ねてありました。信之先生は「すごいですねぇ」と見入っておられましたが、当時俳句を知らない私はただ先生の説明を聞いているだけでした。残念ながら、林火以外の俳人の名前は忘れてしまいましたが、40年ほど昔、先生と法連寺を訪ねたことは脳裏にはっきりと残っています。

  2. 多田有花
    2024年4月15日 14:14

    コメント
    08.参道の桜の影を踏みしめる/高橋秀之
    桜が満開の参道です。
    桜を仰ぐ目を下に向けると桜の影も同じように満開なのです。

    13.蝶にして花散る谷を飛ぶはやさ/髙橋正子
    桜吹雪の谷その中を蝶が飛んでいきます。
    まるで花びらの一片でもあるかのように。

    21.花吹雪く展示車両のひかり号/ 祝恵子
    京都の鉄道博物館でしょうか。
    東海道新幹線開通時に走ったひかり号が展示されています。
    今のものより丸い雰囲気で穏やかに花吹雪を浴び余生を楽しんでいます。

  3. 多田有花
    2024年4月15日 18:50

    お礼
    正子先生、4月月例句会を開催いただきありがとうございました。
    「22.花終えて今いきいきと山の色」を銀賞に
    「24.時おりは花びらに触れ歩きけり」入選句に
    それぞれお選びいただきありがとうございます。

    句美子さま、22を特選7句にお選びいただきありがとうございます。
    桑本栄太郎さま、吉田 晃さま、22に選をいただきありがとうございます。
    柳原美知子さま、祝恵子さま、24に選をいただきありがとうございます。

  4. 川名ますみ
    2024年4月16日 21:04

    お礼
    正子先生、4月の月例ネット句会に参加させていただきまして、ありがとうございました。互選に参加できず、申し訳ございません。
    遅ればせながら皆さまの御句を拝読し、春の芽吹く力と耀きを、深く感じました。素晴らしい季節ですね。
    「けさ二輪」の句を正子先生の特選にお選びいただきましたこと、感謝申し上げます。

  5. 柳原美知子
    2024年4月16日 23:56

    コメント
    03.散り敷きて尚も色濃く花の屑/桑本栄太郎
    散ったばかりの一面の花の色が乾くにつれて色濃く染め上げられ、その最後の美しさに桜の季節の名残りが惜しまれます。

    07.日が注ぐ新芽は色が鮮やかに/高橋秀之
    春の日差しを受けて輝く新芽の色の美しさに見とれる心地よいひととき。心もはればれと良い一日になりそうです。

    10.子雀の水浴びしたる潦/廣田洋一
    雨上がり潦におぼつかない足取りで近寄り、水浴び
    をしている子雀に寄せる作者の優しい視線が感じられます。

    14.花散るやしずかな息をはく地球/髙橋正子
    一年後また花を咲かせるためにしずかに花は散る。地球上の万物はそのようにしずかに息をはき、時を
    待ち、息をつなぎ、命をつないでゆく。
    その循環がとだえることのないように祈りたいですね。

  6. 柳原美知子
    2024年4月17日 0:18

    お礼
    正子先生、4月月例ネット句会を開催いただき、ありがとうございました。句美子様、友宏様、お世話いただき、ありがとうございました。
    皆様の桜の季節の多彩なお句を楽しませていただきました。
    「花菜畑」の句を正子先生の特選7句に、「山桜」の句を入選句にお加えいただき、とても嬉しく、
    感謝申しあげます。
    「山桜」の句に、洋一様の選と温かいコメントを、栄太郎様、秀之様、恵子様に選をいただき、お礼
    申しあげます。

  7. 小口泰與
    2024年4月17日 8:28

    御礼
    高橋正子先生
    4月月例ネット句会を開催していただき有難う御座いました。
    皆様の素晴らしい御句を拝見させ頂き感謝申し上げます。
    今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。

  8. 桑本栄太郎
    2024年4月17日 17:46

    御礼
    高橋正子先生
    花冠4月月例ネット句会をご開催頂き、大変有難う御座いました。
    「あの辺り金蔵寺とや花の雲」の句を入選句にお選び頂き、大変有難う御座います!!。多田有花様には同句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして、大変嬉しく存じます。住まいの西方に京西山の嶺があり、至る所に「花の雲」があります。その中腹あたりには有名な小塩山金蔵寺があります。
    高橋句美子様には「散り敷きて尚も色濃く花の屑」の句を特選句にお選び頂き、大変有難う御座います!!。又柳原様には嬉しいご句評を頂き大変有難う御座います!!。更に、廣田様、吉田様には同句に貴重な選を頂戴しまして大変有難う御座いました。

  9. 高橋秀之
    2024年4月20日 19:01

    お礼
    高橋正子先生
    4月月例ネット句会を開催いただきありがとうございました。
    高橋句美子様、西村友宏様、句会の世話ありがとうございました。

    参道の桜の影を踏みしめるの句を銅賞にお選びいただきありがとうございます。
    また、同句に選とコメントをいただいた多田有花さま、
    日が注ぐ新芽は色が鮮やかにの句を特選にお選びいただいた高橋久美子さま、同句にコメントをいただいた柳原美知子さま、
    ふと見れば白夜の空に桜舞うの句に選とコメントをいただいた柳原美知子さま、選をいただいた西村友宏さま、
    それぞれ、ありがとうございました。