■入賞発表/2022年11月14日
【金賞】
18.初冬の薔薇みずいろの空に向き/多田有花
初冬の静かな明るさが詠まれた抒情的な句。薔薇が空を向くというのもユニーク。初冬が「薔薇」「みずいろ」の甘さを引き締めているところがよい。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
03.ぱちぱちと弾け朝顔実を散らす/桑本栄太郎
朝顔の蔓を引いたのであろうが、たくさんの実がぱちぱちと弾ける意外性が面白い。たくさんの朝顔が咲いた夏の日が追想できる。(髙橋正子)
16.午後の陽はすぐに傾き石蕗の花/多田有花
石蕗が咲くころの日の短さが「午後の陽はすぐに傾き」と詩的に表現されて、しっかりと安定した構成の句となっている。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
10.よく来たと戴くよべの柿二つ/弓削和人
「よべ」が多くを物語って、秋の夜の人の交わりの暖かさが感じられる句。「柿」も里の秋を表して十分だ。(髙橋正子)
29.路地裏の紅葉が揺れる朝の風/西村友宏
路地裏にも紅葉する木があって、朝の風がさらさらと紅葉を揺らしている。そんな小さなそよぎが、綺麗な朝、混じりけのない気持ちを感じせてくれる。(髙橋正子)
38.寄せ鍋へ野菜ざくざくいろいろと/髙橋句美子
寄せ鍋に野菜を大ぶりに切ってざくざくと入れる。彩りもいろいろと。忙しいなかでの鍋の支度はざっくりとするのもまたよい。(髙橋正子)
16.午後の陽はすぐに傾き石蕗の花/多田有花
暖かい海辺の地に生ずる草で初冬に黄色の花を咲かす石蕗の花が、午後の冬日に輝いているが、日は早くも没日となり残照の中に石蕗の花の黄色が輝いています。(小口泰與)
石蕗の花は、いつも日陰に灯るように咲いている印象があります。けれど、日陰を好むわけでなく、日の短い季節に明るい色の花を咲かせるため、そう思わせるのでしょう。冬の陽射しを「午後の陽はすぐに傾き」と詠まれたこと、実感にあふれた表現だと思います。(川名ますみ)
晩秋より初冬にかけて咲きだす石蕗の花は、日毎に日が短くなり直ぐ薄暗くる時間でも、凛と黄色の花が透き通るように輝いています。その光景が見えるようである。(桑本栄太郎)
22.銀杏落葉朝日浴びつつ散りにけり/廣田洋一
朝日にきらきらと輝きながら散ってゆく銀杏黄葉の美しさは神々しくもありますね。自然の懐にいだかれる豊かな朝のひとときが感じられます。 (柳原美知子)
36.初時雨しろき天井仰ぎみる/川名ますみ
初時雨のふる静かな日、しんしんと冬の訪れを感じながら雨音に誘われて、天窓を見るように思わずしろい天井を仰ぎます。 (柳原美知子)
38.寄せ鍋へ野菜ざくざくいろいろと/髙橋句美子
ざくざくいろいろとがいいです。具沢山、野菜たくさんのおいしそうな寄せ鍋が食べたくなりました。 (高橋秀之)
10.よく来たと戴くよべの柿二つ/弓削和人
18.初冬の薔薇みずいろの空に向き/多田有花
29.路地裏の紅葉が揺れる朝の風/西村友宏
【髙橋正子特選/7句】
25.茎引けば土よりからから落花生/柳原美知子
畝の茎を引っ張ると鈴なりの落花生が出て来る。丹精の落花生は大粒で思わず頬が緩むのだ。いろいろな料理方法があるが、茹でるのが手っ取り早くて美味しい。引いた落花生の茎を満足げに見ている作者が想像されます。(吉田晃)
落花生を引き抜いた時のうれしい気持ちが自然と伝わる素敵な句だと感じました。「からから らっかせい」とリズムも楽しい句だと感じました。 (西村友宏)
03.ぱちぱちと弾け朝顔実を散らす/桑本栄太郎
10.よく来たと戴くよべの柿二つ/弓削和人
16.午後の陽はすぐに傾き石蕗の花/多田有花
18.初冬の薔薇みずいろの空に向き/多田有花
29.路地裏の紅葉が揺れる朝の風/西村友宏
38.寄せ鍋へ野菜ざくざくいろいろと/髙橋句美子
【入選/18句】
06.峠越すこたびは雪や鯉の里/小口泰與
峠を越えると鯉の生産で有名な町に入るのでしょうか。雪を見て、前にこの峠を越したときのことを思い出されました。時間の経過と季節感が相乗効果を生んでいます。 (多田有花)
07.芙蓉咲くお出しの匂う店暖簾/祝 恵子
出汁の香りがする老舗の料理屋。暖簾にも歴史を感じます。その前に芙蓉が咲いています。美味しそうな、暖かい句です。 (多田有花)
08.菊一輪地蔵に一礼線路ぎわ/祝 恵子
線路際のお地蔵様に菊が一輪供えられている。思わずお地蔵さまに一礼してしまった、敬虔な気持ちがさりげなく詠まれている。(廣田洋一)
13.冬暖か小さな花の黄色にも/吉田 晃
寒い日が続く中、穏やかな暖かさがうれしい季節です。小さな草花も暖かさを感じて咲いているのかも知れません。 (髙橋句美子)
14.小春凪鵜の戯れに海光る/吉田 晃
小春の頃の穏やかな海の凪に、数羽の鵜が餌を探しながら戯れている景が微笑ましい。その瞬間に、波打ちながら太陽の光を反射する。鵜の群れを歓迎しているかのような情景に対して、爽快な気持ちになる句だと思いました。(弓削和人)
小春日の濃紺の凪の海に気持ちよさそうに鵜が遊び、波が光っている。潮の香と日差しに包まれて、心温まる浜辺でのひとときです。(柳原美知子)
17.銀杏落葉始まる金色を極め/多田有花
きれいな銀杏の黄金葉が幹を取り囲んでいるのが見えてきました。(祝恵子)
19.冬の富士友と二人で並び見る/高橋秀之
出張されたのか、旅だったのか、いずれにしても友人と会って旧交をあたためられました。二人で語らう向こうに見える晴れた富士。さっぱりとした友情が感じられます。 (多田有花)
28.風呂そうじ終えて最後の柿をむく/西村友宏
一仕事終えて、ご褒美の最後のひとつの柿をむく。よく熟れた柿の色と笑顔が目に浮かぶようです。 (柳原美知子)
01.干乾びて行方定めぬ落葉かな/桑本栄太郎
05.小魚の群来(くき)の岸辺や枯眞菰/小口泰與
09.赤い靴走りゆく子の十一月/祝 恵子
11.鵙日和尾羽を定めて飛びゆけり/弓削和人
15.梨売りの婆の手が剥く味見梨/吉田 晃
23.鯉の群ゆったり泳ぎ散紅葉/ 廣田洋一
24.冬鷺のつがひ飛び来る街の川/ 廣田洋一
27.菊ひらく朝日の中に友おわす/柳原美知子
34.撫子の花弁を梳いて風静か/川名ますみ
35.竜胆のふれれば傾ぐやわらかさ/川名ますみ
01.干乾びて行方定めぬ落葉かな/桑本栄太郎
10.よく来たと戴くよべの柿二つ/弓削和人
14.小春凪鵜の戯れに海光る/吉田 晃
25.茎引けば土よりからから落花生/柳原美知子
34.撫子の花弁を梳いて風静か/川名ますみ
35.竜胆のふれれば傾ぐやわらかさ/川名ますみ
36.初時雨しろき天井仰ぎみる/川名ますみ
40.夕食の卓に洋梨どっかりと
41.妻の土産桜紅葉をわが机上に
42.真っ赤な葉桜紅葉の土産なる
31.立冬の空を回れよ観覧車
近頃は各地に大きな観覧車ができています。乗るのもいいですが、回っているのを眺めるのもいいものです。これは横浜の「コスモクロック21」でしょうか。「回れよ」という言葉にさまざまな願いが感じられます。(多田有花)
32.小春日の真昼蟾蜍鳴く声のして
33.白山茶花の垣根長々寺隣り
■互選高点句
●最高点(7点)
03.ぱちぱちと弾け朝顔実を散らす/桑本栄太郎
集計:髙橋正子
※特別招待選者(木村晴美様)の選は、集計に入れておりません。
コメント
コメント
06.峠越すこたびは雪や鯉の里/ 小口泰與
峠を越えると鯉の生産で有名な町に入るのでしょうか。
雪を見て、前にこの峠を越したときのことを思い出されました。
時間の経過と季節感が相乗効果を生んでいます。
07.芙蓉咲くお出しの匂う店暖簾/祝 恵子
出汁の香りがする老舗の料理屋。暖簾にも歴史を感じます。
その前に芙蓉が咲いています。美味しそうな、暖かい句です。
19.冬の富士友と二人で並び見る/高橋秀之
出張されたのか、旅だったのか、いずれにしても友人と会って
旧交をあたためられました。二人で語らう向こうに見える晴れた富士。
さっぱりとした友情が感じられます。
お礼
信之先生、正子先生、
11月月例句会を開催いただきありがとうございました。
「18.初冬の薔薇みずいろの空に向き」に金賞を頂戴し、
信之先生、正子先生の特選もいただきありがとうございます。
正子先生の御句評も拝読いたしました。ありがとうございます。
柳原美知子様、廣田洋一様、選をいただきありがとうございます。
「16.午後の陽はすぐに傾き石蕗の花」には銀賞を頂戴し、
信之先生、正子先生の特選7句にもお選びいただきました。
正子先生の御句評もうれしく、重ねて御礼申し上げます。
川名ますみ様、桑本栄太郎様、選とコメントをいただきありがとうございます。
小口泰與様、高橋秀之様、西村友宏様、選をいただきありがとうございます。
「17.銀杏落葉始まる金色を極め」を入選18句にお選びいただきありがとうございます。
祝恵子様、選とコメントをいただきありがとうございます。
御礼
高橋信之先生、正子先生
花冠11月月例ネット句会をご開催頂き、大変有難う御座います!!。
はからずも小生の「ぱちぱちと弾け朝顔実を散らす」の句を銀賞にお選び頂き、その上過分なるご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
何時も野辺の散策の折り通ります田と鋪道を遮る金網に、野生の外来種であるアメリカ朝顔の実が連なって居りました。直径1・5センチばかりの、赤と青のとても小さくて可愛らしい花の朝顔であり、実を頂いて来年鉢に植えてみようと思い蔓を曳き実を採取して来ました。
又同句に、川名様、吉田様、弓削様、柳原様、多田様、西村様、高橋句美子様には貴重な選を頂戴しまして大変ありがとうございました。
入選句に「干乾びて行方定めぬ落葉かな」の句もお選び頂き、ありがとう御座いました。
又、高橋秀之様には「冬蝶」の句に貴重なる選を頂戴しまして、大変有難う御座いました。
更に特別選者の木村晴美様には「干乾びて行方定めぬ落葉かな」の句を特選7句にお選び頂き、大変有難うご御座いました。
両先生並びに会員の皆様、本格的な寒さの季節を迎える折柄充分ご自愛頂き、又共に参加出来ますよう!!。
コメント
22.銀杏落葉朝日浴びつつ散りにけり/廣田洋一
朝日にきらきらと輝きながら散ってゆく銀杏黄葉の美しさは神々しくもありますね。自然の懐にいだかれる豊かな朝のひとときが感じられます。
36.初時雨しろき天井仰ぎみる/川名ますみ
初時雨のふる静かな日、しんしんと冬の訪れを感じながら雨音に誘われて、天窓を見るように思わずしろい天井を仰ぎます。
28.風呂そうじ終えて最後の柿をむく/西村友宏
一仕事終えて、ご褒美の最後のひとつの柿をむく。
よく熟れた柿の色と笑顔が目に浮かぶようです。
お礼
信之先生、正子先生、11月月例句会の開催をありがとうございました。
「落花生」の句を正子先生の特選、「菊ひらく」を入選句にお加えいただき、ありがとうございました。
今年は落花生がよくでき、土の中から鈴生りになって出てきて、土を振るとからからと音がしたのに感動しました。まず塩ゆで、それからバターピーナッツにしておいしく香りがいいです。
特別選者の木村晴美様にも選をいただき、大変うれしく感謝申しあげます。
吉田晃様、西村友宏様には「落花生」に選と温かい
コメントを、桑本栄太郎様、祝恵子様、髙橋句美子
様には選をいただき、ありがとうございました。
髙橋秀之様には「菊ひらく」に選をいただき、ありがとうございました。
Unknown
お礼
高橋信之先生、正子先生、ご指導誠にありがとうございます。また会員各位の皆様におかれましても情景が目に浮かぶ素晴らしい句に学ばせていただいております。投句するだけで、精一杯ではありますが、量から質に化学変化を起こすときを心待ちにして、末永く取り組ませていただきます。ありがとうございました。
有花さんへ
観覧車の句に選とコメントをありがとうございました。観覧車に最近は乗っていないですが、時間があれば乗りたいです。松山では梅津寺パークにあって、乗ってました。句の観覧車は、家から電車で10分ほどのところにある都筑・阪急デパートの観覧車なのです。見ているとゆっくり回っています。観覧車は、街のシンボル的存在ですね。
お礼
信之先生、正子先生、11月の月例ネット句会を開催くださり、また、参加させていただきまして、ありがとうございます。
皆さまの作品に巡る季節を感じ、選やコメントに勉強させていただく、貴いひとときでした。
「初時雨」の句に、信之先生と木村晴美様の特選を賜りまして、感謝申し上げます。美知子さまのコメントも、嬉しく拝読しました。
「撫子」の句には、入選と木村晴美の特選を頂戴し、幸せに存じます。お選びくださいました和人さま、ありがとうございました。
また「竜胆」の句に、入選と木村晴美の特選を、そして泰與さま、恵子さま、句美子さまの貴重な選をいただきましたこと、お礼申し上げます。
また来月、月例句会でお目に掛かれますよう努めてまいります。皆さまにもどうぞお体おいといくださいませ。
お礼
高橋信之先生、正子先生、11月例ネット句会の開催をありがとうございました。
入選に「芙蓉」、「菊」「十一月」お取り頂きましてありがとうございます。
廣田洋一様、多田有花様、選と素敵なコメントを頂きましてありがとうございます。
柳原美知子様、小口泰與様、 高橋秀之様選句頂きましてありがとうございます。
お礼
高橋信之先生、高橋正子先生
11月月例句会開催いただきありがとうございました。
多田有花さまには富士の句に選とコメントをありがとうございました。ちょうど投句の日、友だちと新幹線で上京の時に見た富士山で、心わくわくのひとときでした。