自由な投句箱/12月1日~12月10日

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。 
       🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄
      今日の俳句『現代俳句一日一句鑑賞』(髙橋正子著)より
  名前の右端に🌸の印が付いている句は、(現)または(元)花冠会員の句
     名前の右端に🍁の印が付いている句は、花冠に縁の深い方の句
12月10
★大根を包む新聞濡らしけり       堀 佐夜子(ほり さよこ)🌸
12月9
★生牡蠣の胸を落ちゆくさみしさ堪ふ   西垣 脩(にしがき しゅう)🍁
12月8日
★髪洗う耳に木枯し届きけり       多田 有花(ただ ゆか)🌸
12月7日
★鴨とほく泛(う)けり睫毛に風おぼゆ   西垣 脩 (にしがき しゅう)🍁
12月6日
★冬の水一枝の影も欺かず      中村 草田男(なかむら くさたお)
12月5日
★霜の墓抱き起こされしとき見たり  石田 波郷(いしだ はきょう)
12月4日
初雪を大きく受けて芭蕉佇つ     安丸 てつじ(やすまる てつじ)🌸
12月3日
大佛の冬日は山へ移りけり      星野 立子(ほしの たつこ)
12月2日
★大根を手に余らせてすりおろす   高橋 秀之(たかはし ひでゆき)🌸
12月1日
★水漬きつつ木賊(とくさ)は青し冬の雨  中村 汀女(なかむら ていじょ)

今日の秀句/12月1日~12月10日

12月10日(1句)

★配達夫来て去りしずか雪の軒/弓削和人
雪の積もった日の生活の静けさが詠まれている。配達夫が来て、配達が済むと去っていく。当たり前のことが、暖かく思われる雪の日である。(髙橋正子)
12月9日(1句)

★集落と枯田の中を川流る/多田有花
人の住む、コミュニティのある集落と、収穫が終わり枯れ色を深めた田、その中を時が流れるかのように流れる川。この景色に、人々の営みの遥けさと寂しさを思う。(髙橋正子)
12月8日(1句)

★寒菊を風の中にて切りにける/小口泰與
冬のきびしい寒さのなかで咲く菊には凛としたたたずまいがある。寒風のなかで人の手により、あっけなく切り取られる。ただそれを言っただけの句。読後の思いはさまざまであろう。(髙橋正子)
12月7日(3句)

★師走の空へ薔薇色の薔薇咲きぬ/多田有花
薔薇の色と言えば、すぐ思い浮かぶ色を薔薇色という。年の終わりの師走の空と薔薇色の薔薇の詩情が日常にある喜び。(髙橋正子)

★年忘れ締めは真白き握飯/廣田洋一
年忘れにふさわしく、余計なもののない、「真白き握飯」によって、さっぱりと年が越せそうだ。(髙橋正子)

★水鏡して水仙の今朝の色/小口泰與
水に映った端正な水仙の姿。それがまた今朝は「今朝の色」となっている。(髙橋正子)
12月6日(1句)

★冬菊へ小さき虫の寄り止まる/多田有花
冬菊は寒さのなかに咲き続けている。生き生きとしている。小さい虫が寄り集まっている。本当に小さい光景だが、みんな生きているんだと言う思いがする。(髙橋正子)
12月5日(1句)

★木の葉髪たった一人の批評受け/弓削和人
たった一人からの批評は、貴重であるが、一人だけからと言う寂しさもある。その真偽が本当のところよくわからないと言う不安もある。そんな気持ちが「木の葉髪」と言う季語に重ねられている。(髙橋正子)
12月4日(1句)

★綿虫の想い出すかに浮かびけり/桑本栄太郎
「綿虫」は、アブラムシの仲間で5ミリほどの虫。綿にくるまれたようにふわふわと空中を浮遊し、物にあたるとくっ付く。晩秋や初冬の頃、また初雪のこと現れるので雪虫とも呼ばれている。
「想い出すかに浮かぶ」は綿虫の様子でもあり、作者の想い出の心象でもある。(髙橋正子)
12月3日(1句)

★裸木のさくら枝垂るる威厳かな/桑本栄太郎
花の季節は満開の花枝が枝垂れ優美であったろうに、裸木となっては、威厳のある姿を見せている。(髙橋正子)
12月2日
該当句無し
12月1日(1句)

★樫の木の稀に斜めや雪の郷/小口泰與
樫の木の姿をまず目に浮かべると、堂々とまっすぐに立っている。作者が目にしたのは、雪国の幹が斜めになった樫。きびしい雪国の風雪に幹が斜めになったのであろう。それを思いみている。(髙橋正子)

12月1日~12月10日

12月10日(4名)

小口泰與
鴨の居て沼の静けさ日曜日★★★
水底へ日の射しにけり冬の沼★★★
手袋の人差し指に穴のあり★★★

廣田洋一
枇杷の花残れる虫を惹きよせて★★★★
蕩けさうな鮪の刺身酒を酌む★★★
朝な夕な木の葉掃きたる両隣★★★

多田有花
山降り来りなば傍らに万両★★★★
冬菊の咲く道をゆく女子高生★★★
誕生日祝うおでんを囲みつつ★★★

桑本栄太郎
ワクチンの七回目とや冬ざるる★★★
松山のことは想い出漱石忌★★★
冬うらら背ナに日差しの昼餉かな★★★

弓削和人
雪嶺のかなたの里に灯しあり★★★
配達夫来て去りしづか雪の軒★★★★
遅番の吾を待ちたる雪明り★★★★
12月9日(4名)
小口泰與
身づくろいしたる浅間や雪化粧★★★
水底に沈みし冬の山の峰★★★★
みずみずし庭の蜜柑をもぎ取りし★★★

桑本栄太郎
河に沿いさくら冬木の坂くだる★★★
うずくまる猫に日差しや漱石忌★★★
こつ然とつむじ巻きたる冬の風★★★

多田有花
陽を透かし冬の紅葉の輝けり★★★
集落と枯田の中を川流る★★★★
枯山の頂に坐し昼ごはん★★★

弓削和人
長靴や雪踏む一歩の弾む声★★★
母は娘の部屋をととのえ冬の草
母は娘の部屋をととのえ」と「冬の草」はどんな関係ですか。(髙橋正子)

雪まろげじっとせずいる秋田犬★★★
12月8日(3名)
小口泰與
水鳥や鯉の尾びれの揺れにける★★★
寒鮒の光る鱗や岩の間に★★★
寒菊を風の中にて切りにける★★★★

多田有花
快晴に残る紅葉を映す池★★★
キャンプ場にテントいくつも冬紅葉★★★
大雪や彩り残る道をゆく★★★

桑本栄太郎
青空にすでに冬木の銀杏かな★★★
補助輪のコキコキ行くや冬うらら★★★
山膚の未だ真つ赤ぞ冬の嶺★★★
12月7日(4名)
多田有花
師走の空へ薔薇色の薔薇咲きぬ★★★★
降誕祭待つや銀杏は黄金色★★★
手洗いに小さき聖樹飾られて★★★

廣田洋一
予報通り寒気覆いし東京ぞ★★★
年用意予定と予算立てにけり★★★
年忘れ締めは真白き握飯★★★★

小口泰與
上空を微塵の如き寒烏★★★
水鏡して水仙の今朝の色★★★★
見つけたる長きすそ野の冬赤城★★★

桑本栄太郎
見下ろせば眼下真つ赤ぞ冬紅葉★★★
大雪や風に転がるポプラの葉★★★
ひと風に舞いあがりたる木の葉かな★★★
12月6日(3名)
小口泰與
道の辺の沼へ枯葉の数多なる★★★
丸き輪を嘴よりはきし冬翡翠★★★
道の辺の枯木の株に躓けり★★★

多田有花
冬菊へ小さき虫の寄り止まる★★★★
花好きの家門前に冬の薔薇★★★
冬野菜取り入れている家庭菜園★★★

廣田洋一
土産物買い忘れたり暮の旅★★★
忘れたる友の名前や賀状書く★★★
彩りし木の葉浮かべて冬の川★★★
12月5日(5名)
小口泰與
あけぼのの汀を歩む冬白鷺(原句)
季節感をよりはっきり出すために、添削しました。季語を何にするかが大切です。(髙橋正子)
あけぼのの冬の汀を踏む白鷺(正子添削)

定刻に聞こゆ人声冬散歩
「冬散歩」を季語とするより、例えば「冬の朝」「霜の朝」などを季語とする方が良いと思います。(髙橋正子)
道すがら見し冬翡翠の魚捕るを★★★

多田有花
桜枯れ赤き烏瓜のみ残る★★★
日当たり良好冬菊咲く角の家★★★
生垣の淡紅山茶花咲き初めし★★★

廣田洋一
青空にぽつんと浮かぶ木守柿★★★
神木の大銀杏光る冬の空★★★★
積りたる落葉踏みしめ虚子谷倉★★★

桑本栄太郎
階(きざわし)の眼下真つ赤ぞ冬もみじ★★★
すじ雲の今朝のあおぞら寒波来る★★★
今朝みれば今日は冬木の銀杏かな★★★

弓削和人
木の葉髪たった一人の批評受け★★★★
短日の旅行カバンの重きかな★★★
浮寝鳥湖底に沈む急きごころ★★★
12月4日(5名)
小口泰與
鷹舞て山の小沼の静寂なる★★★
肌を刺す赤城颪や商店街★★★
冬帽の我座し見入る野鳥かな★★★

多田有花
冬うららみな来られたし瀬戸内に★★★
なだらかな播磨の山はまだ眠らず★★★
川波の光り流れる冬の午後★★★

廣田洋一
冬紅葉窓を掠めるケーブルカー(原句)
冬紅葉ケーブルカーの窓掠め(正子添削)
冬黄葉真っ盛りの大銀杏★★★
木の葉を透ける冬日や法の庭★★★

桑本栄太郎
パソコンの背ナ陽当たる冬ぬくし★★★
すすき穂のほどけ波打つ日差しかな★★★
綿虫の想い出すかに浮かびけり★★★★
弓削和人
都どり跳上橋(はねあげばし)の影に揺れ★★★
釣人の穂先は冬日を掠めたり(原句)
「釣人の穂先」の表現は飛躍しすぎです。(髙橋正子)
釣竿の穂先冬日を掠めたり(正子添削)

肩をすぼめ駅を行き過ぐ暖房車
「肩すぼめ駅を行き過ぐ」と「暖房車」との情景を丁寧に言う必要があります。(髙橋正子)
12月3日(3名)
小口泰與
ざあと言う鷹の羽音や沼野辺に★★★
見事なる冬翡翠の羽の色★★★
寒雀とんとんとんととたん屋根★★★

多田有花
ゆで栗を窓辺に食めば冬うらら★★★
瀬戸内の予報は冬晴の続く★★★
日当たればそこは明るし枯芒★★★★

桑本栄太郎
山膚のけぶり棚引く冬もみじ★★★
溝川の楽を歌うよ冬うらら★★★
裸木のさくら枝垂るる威厳かな★★★★
12月2日(4名)
小口泰與
沼沿いの枯れし薄や風の中★★★
ゆったりと水際歩む二羽の鴨★★★
夕凍みの畑より戻る老夫婦★★★

多田有花
つやつやと栗茹であがり十二月★★★
極月の空へがまずみの実の残る★★★
実南天日差し明るき庭にあり★★★

桑本栄太郎
山茱萸の赤き実垂るるあおぞらに★★★
かくしゃくとゲートボールや冬ぬくし★★★
夜の闇をびりりびりりと雪起こし★★★

廣田洋一
居座りて人を眺める冬の鹿★★★
滝の音忙しく流れ冬紅葉★★★
宇治平等院雅楽奏でる冬夜空★★★
12月1日(4名)
多田有花
色彩を野山に残し師走来る★★★
暖かき播磨は盛りの冬紅葉★★★
凩に干せるものみなよく乾く★★★

小口泰與
客人(まろうど)として裏の小池に冬の月★★★
樫の木の稀に斜めや雪の郷★★★★
冬ばらを見入る外つ国人たりし★★★

桑本栄太郎
藁におの冬の田面や大原野★★★
冬菊のよりどころなく傾ぎけり★★★
あおぞらと唖然となりぬ冬紅葉★★★

廣田洋一
冬紅葉芭蕉の句碑を仰ぎけり★★★
神木の煌めく光冬黄葉★★★
山茶花の花びら散りぬ法の庭★★★

秀句とコメント/11月25日~11月29日分

●29日に帰省から横浜の自宅に帰りました。夕方になりかけていましたが新幹線が新富士を過ぎると、冠雪の富士山の全容が見えました。すばらしかったです

●11月25日から11月29日の間、いつもと変わらず、ご投句をありがとうございました。その間の句に★印をつけ、秀句にコメントをつけました。ご確認ください。(髙橋正子)

自由な投句箱/11月30日

今日の秀句/11月30日(1句)

スケートの子等の目付きの生き生きと/小口泰與
スケートを滑る子供たちは、どの子も喜々として、目が生き生きとしている。「生き生き」が子供らしさを感じさせてくれる。(髙橋正子)
11月30日(4名)
小口泰與
一村の絵画や冬の日煌煌と★★★
スケートの子等の目付きの生き生きと★★★★
水底の魚逃したる小鴨かな★★★

多田有花
冬の夜のわが身で作る影絵かな★★★
冬の雨続く二日の後の晴れ★★★
わが郷の周り彩る冬紅葉★★★

桑本栄太郎
虫食いの桜紅葉や日を透きぬ★★★
赤くなるもの全てが赤く冬紅葉★★★
振り返りふりかえり見る冬もみじ★★★

廣田洋一
忘れずにマフラー加え旅支度★★★
マフラーに顎をうずめし女学生★★★
道沿いの枝に挿されし手袋かな★★★
今日の俳句
★街の色変えつつ落ちる冬夕日  髙橋 句美子(たかはし くみこ)🌸
冬、夕日が落ちてゆく時、夕日の光が街を映し出し、しだいに弱くなり、街が暮れていく。その様子「街の色変えつつ」と詠んだ。 しずかな観照の句。(髙橋正子)

自由な投句箱/11月29日

今日の秀句/11月29日(2句)

★ストールをさらりとショートヘアの背に/川名ますみ
ショートヘアのうなじから背にかけて、しなやかな女性の姿が思い浮かぶ。ストールもショートヘアも「さらり」として絵画的な印象の句。(髙橋正子)
★大ぶりのポプラ枯葉や風に添う/桑本栄太郎
ポプラの葉のなかでも特に大ぶりの枯葉が、風に吹かれて運ばれているのだろう。少し吹かれては、止まり、また吹かれては動く。風の気持ちに添うように。(髙橋正子)

11月29日(6名)

廣田洋一
散紅葉しづこころなき城の跡★★★
一陣の風のまにまに紅葉散る★★★
ブロッコリー弁当箱の甘き色★★★★

多田有花
再現の池の面に冬の城★★★
冬浅き夜の野点傘の下★★★★
照明に照らされ残る紅葉かな★★★

小口泰與
眼間の入日まばゆし冬浅間★★★★
羽ひろぐ冬白鷺のまばゆきし
「まばゆきし」は、正しくは「まばゆかりし」となります。(髙橋正子)

この沼の冬翡翠の舞い出でよ★★★

桑本栄太郎
冬ぞらの哀しきほどの青さかな★★★
大ぶりのポプラ枯葉や風に添う★★★★
白き実のあらわとなりぬ冬紅葉★★★

弓削和人
時雨るるやおにぎり片手の駅前バス
「おにぎり片手の」の「の」の使い方は、問題です。「駅前バス」も省略しすぎで、無理な表現です。俳句では、「ひとつ」の事を言おうとしてみてください。(髙橋正子)

夜店急く傘持つ人や町しぐれ
「夜店急く」は省略しすぎの表現。一句を散文を書くように書いて、それから省略できるとことを省略しては、どうでしょうか。(髙橋正子)

木枯をのこして明けの旅切符
この句の場合、「木枯をのこして」を率直に表現されたら、いかがでしょうか。
(髙橋正子)
川名ますみ
聖橋渡り冬紅葉の湯島★★★
低く来てしずかしずかに冬の雷★★★
ストールをさらりとショートヘアの背に★★★★
今日の俳句
★冬空をいま青く塗る画家羨(とも)し/中村草田男(なかむらくさたお)
 画家が冬空を青く塗っているのを見ている。見ているうちに冬空を青く塗る画家の心境を羨ましく思った。おなじところに居ながら、二人は、画家と作者は、反対の心境なのだ。(髙橋正子)

自由な投句箱/11月28日

今日の秀句/11月28日(1句)

★京都への旅の支度や芭蕉の忌/廣田洋一
芭蕉忌は旧暦なら、今年は新暦の11月12日にあたる。京都はとくに、時雨の降る情趣ある季節。京都への旅は、聖地のようになっている嵯峨野の落柿舎を訪ねる予定も入っているだろう。芭蕉を偲びながら、芭蕉への敬意や、俳句への思いを新たにされたのだろう。(髙橋正子)

11月28日(5名)
廣田洋一
京都への旅の支度や芭蕉の忌★★★★
時雨忌や虚子生誕150年★★★
奥の細道そっと閉じたり芭蕉の忌★★★

多田有花
冬の夜に寄り添い城を見上げる人★★★
光の輪彼方にありぬ冬の城★★★
冬夜空真白き城の浮かびおり★★★

桑本栄太郎
枯葉舞いつむじ風巻く狭庭かな★★★
遠峰の鉄塔ニ三基冬の空★★★
木枯やビルの切り取る青き空★★★

小口泰與
眼間の稜線長き冬の山★★★
眦に冬翡翠の居りにけり★★★
魚を捕る冬翡翠をまのあたり★★★

弓削和人
茶の染みの忙しかりし古日記
「茶の染み」が「忙し」は主観的な表現で、わかりにくいです。(髙橋正子)

土沈み家庭菜園冬眠中
「冬眠」は、動物に対して用いられますが、菜園に用いたのは、新しい発見とも言えますが、子どもっぽい発想と思います。いろいろ表現を試みるのは良いと思いますが、観察はじっくりと。(髙橋正子)

陽をとらえ舞い散りひらり枯尾花 ★★★
今日の俳句
★枯蔦となり一本を捕縛せり/三橋鷹女(みつはしたかじょ)
一本の幹にからまっている蔦。緑に茂っているときは、「捕縛」の意識よりも緑の濃さに目がいく。枯蔦となると、紅葉した葉や枯れ萎んだ葉がところどころに残るものの、樹にからまっている具合が目に入る。拠っていながらも、その樹を捕縛している。蔦の強靭さを見て取った。人間関係もこういったことがありそうなので、面白い。(髙橋正子ー『現代俳句一日一句鑑賞』より)

自由な投句箱/11月27日

今日の秀句/11月27日(2句)

★みちのくに風花ちらと帰り継ぐ/弓削和人
「帰り継ぐ」は、同じ場所に何度も帰ることを意味するので、この度帰るみちのくには、風花がちらと舞っている。寒さに戸惑いながらも風花にみちのくの冬の初めを感じている。美しい句。(髙橋正子)

★山茶花の咲き始めたる日和かな/廣田洋一
日和の良さも、山茶花の咲きはじめの花の初々しさも、どちらも晴れやかに詠まれている。(髙橋正子)

11月27日(5名)
小口泰與
指先に痛さひろごる寒さかな★★★
沼風に重なり揺れる枯薄★★★
動かざる枯葉に朝日山の沼★★★

多田有花
一斉に雀飛び立つ枯葎★★★
冬の夜に光の木々の立ち並ぶ★★★
師走近し紅白の光の並木★★★

桑本栄太郎
ひと風に彩なし冬の紅葉散る★★★
赤と黄の落葉の土手や唐かえで★★★
交差点尾灯つらなり冬ざるる★★★

廣田洋一
山茶花の咲き始めたる日和かな★★★★
山茶花散る由緒の寺の墓原に★★★
山茶花の白くっきりと四ツ目垣★★★

弓削和人
いにしえの戦は枯野の城址かな★★★
涸渓や橋欄干に見下ろしつ★★★
みちのくの風花ちらと帰り継ぐ (原句)
「帰り継ぐ」は、何度も帰る意味なので、「みちのくの風花」より、「みちのくに」がよいのでなないでしょう。俳句では、「の」は便利に使われていますが、
よく吟味して使ってください。(髙橋正子)

みちのくに風花ちらと帰り継ぐ(正子添削)
今日の俳句
★冬天やポケットの中の両こぶし/大石和堂(おおいしわどう)🌸
 高い冬天に対して、ポケットの中で握りしめる己の両こぶしの確実さ、寒さを身に引き寄せて、確かに受け止める。(髙橋正子ー『現代俳句一日一句鑑賞』より)

自由な投句箱/11月26日

今日の秀句/11月26日(1句)

★着ぶくれて信号待ちのベビーカー/弓削和人
信号待ちで居合わせたベビーカー。ベビーカーの赤ん坊は、しっかりと着せられて着ぶくれている。親子のほのぼのとした愛情を感じる微笑ましい場面である。(髙橋正子)

11月26日(5名)
小口泰與
眦に冬翡翠の居りにける★★★
まなぶたを閉じ雪の浅間を眼間に★★★
上州の風のまにまに冬帽子★★★

多田有花
戦闘機西へ飛ぶなり冬の雨★★★
午後の陽の翳りやすさよ石蕗の花★★★★
短日の日差しいっそう眩しかり★★★

廣田洋一
満天星冬紅葉燃え立つ道の端★★★
大山の豆腐頂く冬紅葉★★★★
低き空どんよりとして冬めける★★★

桑本栄太郎
三島忌のあたり色葉や金閣寺★★★
天辺の早やも裸や銀杏黄葉★★★
谷あいの赤く色為し山ねむる★★★

弓削和人
着ぶくれて信号待ちのベビーカー★★★★
咳ひとつマスクをかける親子かな★★★
椅子を重ね空いたところの冬日かな ★★★
今日の俳句
★白き息はきつゝこちら振り返る/中村草田男(なかむらくさたお)
 誰かを見送りに出た時の情景とも考えられる。見送られる人は、いくぶん遠くまで去って行って、ふと後ろを振り返ったが、振り返りざまに、その人の吐く息が真っ白く見えた。白い息に人間の温もりがあり、その人とのつながりに別れがたいような気持ちさえ湧いている。暖房の行き届かなかった時代、白息に冬の厳しさと人間の温もりが感じられる。(髙橋正子ーー『現代俳句一日一句鑑賞』より)

自由な投句箱/11月25日

今日の秀句/11月25日(3句)

★冬霧のまつわる松の青青と/小口泰與
冬霧がまつわるというのであるから、青々とした松葉の間にも冬霧がこまやかに入り込んでいるのだろう。冬霧のなかの松の青々と、また堂々とした姿が目に浮かぶ。(髙橋正子)

★道の辺に残るは冬菊ばかりなり/多田有花
「菊」と言っても栽培の菊ではない。野菊などの冬菊であろう。ほかの花は枯れても、咲き残る冬菊の姿には、健気にも、毅然とした雰囲気が感じ取れる。女性の一面に通じるように思われる。(髙橋正子)

★冬ざれの野を抜け駅舎一新す/弓削和人
冬ざれの野を抜けて来て、人の住む町の駅舎がそれまでの景色と打って変わって目に映る。実際に新しくなった場合も、ただ目に新しく映った場合も考えられるが、「一新す」が重要なのだ。(髙橋正子)

11月25日(4名)

小口泰與
冬霧のまつわる松の青青と★★★★
黒雲の間遠に居るや日向ぼこ★★★
眼間に日の落ちにけり冬浅間★★★

多田有花
烏瓜冬木に残り吹かれおり★★★
道の辺に残るは冬菊ばかりなり★★★★
孤高なり風に耐えたる木守柿★★★

弓削和人
裸木は陽光を一身に浴びにけり★★★
冬ざれの野を抜け駅舎一新す★★★★
熊出るぞ日つまる道の鈴の音★★★★

桑本栄太郎
又ひらり銀杏落葉の散りにけり★★★
綿虫の想い出おもいふわふわり★★★
陽にあたり爪を切りいる小春かな★★★
 
今日の俳句
★ラガーらの影より抜けてジャンプする/守屋光雅(もりやみつまさ)🌸
 ラグビーは冬のスポーツ。選手らの体躯の猛々しさ、大地を鳴らしてボールを追う切迫のシーンを目の当たりにするスポーツだ。この句は、冬の日が濃く射すグランドの影の濃い塊からボールを追ってすっとジャンプする瞬間をとらえて、躍動感にあふれる。ラグビーという激しいスポーツのナイス・ショットである。(髙橋正子ーー『現代俳句一日一句鑑賞』より)