自由な投句箱/1月1日~10日(2019年)


※当季雑詠3句(新年・冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
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今日の秀句1月1日~10日(2019年)


1月10日(1句)

★北の峰雪化粧している朝/多田有花
きのうと一変した朝の景色、北の峰の雪化粧に、はっきりと目が覚める。雪化粧がもたらす新しい思い。(高橋正子)

1月9日(1句)

★橋の上川べり広き初景色/廣田洋一
いつも通る橋の上から見る川べりの初景色。川には鯉がいたり、鴨が数羽泳いでいたりするところかもしれないが、そうでない川でも、年が改まると、緑も見えて、景色が新しくなる。(高橋正子)

1月8日(1句)

★北の峰雪化粧している朝/多田有花
きのうと一変した朝の景色、北の峰の雪化粧に、はっきりと目が覚める。雪化粧がもたらす新しい思い。(高橋正子)

1月7日(2句)

★小寒の午後の窓辺に鳥の影/多田有花
寒は寒さが極まるときであるが、同時に一番静かな季節であると思う。小寒の午後の窓辺。うららかに鳥の影が映る。その明るい静けさは捨てがたい。(高橋正子)

★竹林の節の白さよ寒に入る/桑本栄太郎
竹林の竹の節が白く際立つ。張りつめた寒気の中の竹節の白さに、今日の寒の入りを思う。(高橋正子)

1月6日(1句)

★裸木や青一色の空の中/多田有花
裸木が真っ青な空に伸び、枝を広げている様子は、全く無駄というものがない。すっきり、はっきりしている。人の気持ちも時には、こうありたいものだ。(高橋正子)

1月5日(3句)

★新春の山新しき靴でゆく/多田有花
新春は、そのままでもちろん、あたらしい。新春の山を歩くのに真新しい靴で行く。新しい靴の匂い、履き心地の快感。それらは、新春をさらに明るくさせてくれる。(高橋正子)

★冬萌や大河の土堤の何処までも/桑本栄太郎
冬萌の緑の鮮やかさ。それは大河の土手のどこまでも続く冬萌えなのだ。その眺めに、どっしりと心が座る気がする。(高橋正子)

★初乗りや窓には空の青ばかり/川名ますみ
今年初めての外出に車に乗る。車窓からは、空の青ばかりが目に入る。外出の嬉しさも手伝ってか、初空の青さに今年の明るさを感じ取った。(高橋正子)

1月4日(1句)

★透き通る朝の冷気や雪浅間/小口泰與
雪の浅間山が透き通る朝の冷気を送ってくる。雪の浅間山からの朝の冷気は、実際触れて見てこそ、「透き通る」感じがするのであろうと思う。(高橋正子)

1月3日(2句)

★三が日きれいに晴れてよき始め/多田有花
三が日が良い天気ならば、この一年、きっとよいことがあるであろうと予感する。「きれいに」の言葉が、素直で、このことを真実にしてくれそうだ。(高橋正子)

★神門をくぐりて仰ぐ淑気かな/廣田洋一
神門をくぐれば、そこより。神域。空も、社の屋根の反りにも、仰げば淑気が満ちている。清々しい新年である。(高橋正子)

1月2日(1句)

★家々はまだ静かなり注連飾り/多田有花
二日の朝。家々はまだ物音もなく、人の動く気配もない。注連飾りは静かに、正月であることをしめしている。句は、二日と限定していないが、この雰囲気は、二日の朝の独特の静けさだ。年期のある句だ。(高橋正子)

1月1日(2句)

★利根川の流れ清らや年始/小口泰與
いつも流れている利根川が、年の始め、あたらしく、清らかになる。そう思う作者がいることで、利根川の流れが、清らかになるのだ。(高橋正子)

★高層ビルの玻璃きらきらと初明かり/廣田洋一
高層ビルの窓の玻璃は、空の光を様々に映す。初明かりに窓がきらきらと輝く。都会の初明かりが瀟洒に捉えれて、新しい。(高橋正子)

1月1日~10日(2019年)


1月10日(4名)

多田有花
北の峰雪化粧している朝★★★★
きのうと一変した朝の景色、北の峰の雪化粧に、はっきりと目が覚める。雪化粧がもたらす新しい思い。(高橋正子)

寒四郎ところどころに青空が★★★
二度寝してすでに明るし寒の朝★★★

廣田洋一
湯豆腐や酒好きの友集まれり★★★
湯豆腐や思ひの外に飲み過ごし★★★★
湯豆腐や友のいつもの自慢話★★★

小口泰與
鉢巻に気風の良さや達磨市★★★
冬草や白波たつる利根瀬尻★★★
てらてらと燃ゆる枯芝鳥の声★★★★

桑本栄太郎
剪定の幹の白さや冬ざるる★★★★
川べりの地道歩めり枯真菰★★★
もうもうと煙たちをり冬の畑★★★

1月9日(4名)

小口泰與
朝日受くるる榛名十峰寒紅梅★★★★
枯枝に十二三羽の雀かな★★★
山風に捻り鉢巻達磨市★★★

多田有花
初打ちのテニスを終えて戻る夜★★★
冬深し稜線の木々空に透け★★★★
会う人にまず新年の挨拶を★★★

廣田洋一
松過ぎて賀状来たれり日の暮れぬ★★★
橋の上川べり広き初景色★★★★
いつも通る橋の上から見る川べりの初景色。川には鯉がいたり、鴨が数羽泳いでいたりするところかもしれないが、そうでない川でも、年が改まると、緑も見えて、景色が新しくなる。(高橋正子)

富士に向かふ一本道や初景色★★★

桑本栄太郎
うなりたる音に目覚めり虎落笛★★★
初雪の里に間なしや嶺の上★★★
寒禽のばさと払いぬ白き枝★★★★

1月8日(4名)

小口泰與
白鳥を迎かふる沼をあけており★★★★
葉牡丹やプールを歩む姥桜★★★
仰ぎたる奇岩の山や葱畑★★★

廣田洋一
寒鯉や石の隙間に静まれり★★★
寒鯉や眼だけ動かす池の底★★★
寒鯉や水面の光つつきけり★★★★

多田有花
はてこれで良きものなるか寒ぬくし★★★
葉牡丹に差す陽日ごとに明るくて★★★★
松の内古き旅行記読み返す★★★

桑本栄太郎
朽野や畑も田んぼも眠り居り★★★★
嶺々のぼんやり見ゆる冬霞★★★
千年の眠りに在りぬ古都の冬★★★

1月7日(4名)

小口泰與
裸木の枝へとけ込む雀かな★★★★
透き通る暁のみ空や冬の月★★★
日と風をたっぷり含む菘かな★★★

多田有花
寒の入夜明け最も遅きころ★★★
小寒の午後の窓辺に鳥の影★★★★
寒は寒さが極まるときであるが、同時に一番静かな季節であると思う。小寒の午後の窓辺。うららかに鳥の影が映る。その明るい静けさは捨てがたい。(高橋正子)

枝先にひとつふたつや寒の梅★★★

廣田洋一
七草の詰め合わせ買ふサラダの如く★★★★
七草をとんとんとんと刻みけり★★★
残飯を七草粥に炊きにけり★★★

桑本栄太郎
竹林の節の白さよ寒に入る★★★★
竹林の竹の節が白く際立つ。張りつめた寒気の中の竹節の白さに、今日の寒の入りを思う。(高橋正子)

天に透く古墳の森や枯木立★★★
冬萌や田毎にせめぐ畦青し★★★

1月6日(4名)

小口泰與
山を分け大河となるや三ツ星座★★★
あけぼのの山迫りけり仏の座★★★★
山風や朝日受けたる冬柏★★★

多田有花
初東風に吹かれて立てり頂に★★★
裸木や青一色の空の中★★★★
裸木が真っ青な空に伸び、枝を広げている様子は、全く無駄というものがない。すっきり、はっきりしている。人の気持ちも時には、こうありたいものだ。(高橋正子)

五日はや売場すっかり日常に★★★

廣田洋一
門柱の紐をほどきて松納★★★
明日よりは仕事に励む松納★★★★
平成の世変わらんとす松納★★★

桑本栄太郎
青空のまつたき空の淑気かな★★★
峰の間の青きけぶりや山はじめ★★★
冬萌や大河に添いて河川畑★★★★

1月5日(5名)

小口泰與
楪や日当りの良き一軒家★★★
寒暁やきりりと在す赤城山★★★
鴉鳴きいよよ暮色の冬木立★★★★

廣田洋一
洗濯機初めて回す五日かな★★★
ヨガ教室再開したり五日かな★★★
仕事始め気合を入れるお神酒かな★★★

多田有花
新春の山新しき靴でゆく★★★★
新春は、そのままでもちろん、あたらしい。新春の山を歩くのに真新しい靴で行く。新しい靴の匂い、履き心地の快感。それらは、新春をさらに明るくさせてくれる。(高橋正子)

干支の絵馬買い求めたる初詣★★★
正月の梅はや咲いている梢★★★★

桑本栄太郎
五日にはパソコン仕事の喫茶店★★★
冬帽のキャッチャー被りの少女かな★★★
冬萌や大河の土堤の何処までも★★★★
冬萌の緑の鮮やかさ。それは大河の土手のどこまでも続く冬萌えなのだ。その眺めに、どっしりと心が座る気がする。(高橋正子)

川名ますみ
天辺の一際蒼し冬夕焼★★★
三日はや風呂の掃除に友来たる★★★
初乗りや窓には空の青ばかり★★★★
今年初めての外出に車に乗る。車窓からは、空の青ばかりが目に入る。出の嬉しさも手伝ってか、初空の青さに今年の明るさを感じ取った。(高橋正子)

1月4日(4名)

小口泰與
山風に負けず雄叫び老の春★★★
あけぼのの三山仰ぐ淑気かな★★★
透き通る朝の冷気や雪浅間★★★★
雪の浅間山が透き通る朝の冷気を送ってくる。雪の浅間山からの朝の冷気は、実際触れて見てこそ、「透き通る」感じがするのであろうと思う。(高橋正子)

多田有花
鍋料理囲んで三が日終わる★★★
生活の音の始まる四日かな★★★★
新暦にありぬ月日の重みかな★★★

廣田洋一
舞ひ来たる木の葉挟みて初氷★★★
流氷の果てを見んとて砕氷船★★★★
氷上の人混み流れ輪となれり★★★

桑本栄太郎
四日早やエンジン始動や駐車場★★★
青空の何処(いずこ)もあおく蒲団干す★★★★
夫婦とも家事忙しき四日かな★★★

1月3日(5名)

多田有花
三が日きれいに晴れてよき始め★★★★
三が日が良い天気ならば、この一年、きっとよいことがあるであろうと予感する。「きれいに」の言葉が、素直で、このことを真実にしてくれそうだ。(高橋正子)

雑煮には丸餅三つと決まりけり★★★
初夢は忘れるもののひとつかな★★★

小口泰與
ライオンの満腹顔や三が日★★★
三日はや赤城は早やも風の神★★★
太初より流れし利根の淑気かな★★★★

廣田洋一
知る人の誰にも会わず初詣★★★
神門をくぐりて仰ぐ淑気かな★★★★
神門をくぐれば、そこより。神域。空も、社の屋根の反りにも、仰げば淑気が満ちている。清々しい新年である。(高橋正子)

朝食はパンに戻れり三日かな★★★

桑本栄太郎
お出ましの陛下御慶の参賀かな★★★
平成の御代を惜しむや参賀人★★★★
娶らざる息子来たりて寝積かな★★★

川名ますみ
いそいそと友来て風呂の初掃除★★★
カーテンを開けヘルパーと初富士を★★★★
応えたり亡き家族への年賀状★★★

1月2日(4名)

小口泰與
あけぼのの浅間仰ぐや年新たな★★★★
艶つやの犬の鼻なりお正月★★★
二日はや掃除機(ルンバ)の動き活発に★★★

多田有花
前山の姿新し初日の出★★★★
新年の挨拶LINEにて届く★★★
家々はまだ静かなり注連飾り★★★★
二日の朝。家々はまだ物音もなく、人の動く気配もない。注連飾りは静かに、正月であることをしめしている。句は、二日と限定していないが二日の朝の独特の静けさだ。年期のある句だ。(高橋正子)

廣田洋一
屋根瓦白く光れる初日かな★★★★
初御空白さくっきり富士の山★★★★
店長が法被で迎へる初荷かな★★★

桑本栄太郎
未明より救急車来る二日かな★★★★
初夢は想い出せずにしまいけり★★★
外つ人の深き眼や淑気満つ★★★

1月1日(5名)

小口泰與
透き通る暁の大気や初浅間★★★
利根川の流れ清らや年始★★★★
いつも流れている利根川が、年の始め、あたらしく、清らかになる。そう思う作者がいることで、利根川の流れが、清らかになるのだ。(高橋正子)

初浅間白き正装しておりぬ★★★

多田有花
有明の峰に差しけり初明り★★★
新年や古き写真をデジタル化★★★
元日の午後より少し風の出て★★★★

廣田洋一
高層ビルの玻璃きらきらと初明かり★★★★
高層ビルの窓の玻璃は、空の光を様々に映す。初明かりに窓がきらきらと輝く。都会の初明かりが瀟洒に捉えれて、新しい。(高橋正子)

窓際の亥の皿光る初明かり★★★★
朝風呂に手足伸ばせば初明かり★★★

桑本栄太郎
新た世の御代ことほぐや大旦★★★
平成の御代を惜しむや初御空★★★★
青空の空まつたきに初明かり★★★

川名ますみ
富士山をビルを包める初御空★★★
初空の光に富士の溶け入りぬ★★★★
折紙のいのしし親子お年賀に★★★

◆生活する花たちー俳句歳時記ー/高橋正子編著◆

※上記の日付けは、実際の日付けと異なっています。

◆◇◆

2018年春の里山ガーデンフェスタ(3月24日~5月6日:撮影/4月7日)
   --里山ガーデン:横浜市旭区上白根町・横浜動物園ズーラシア隣接ーー

◆◇◆

大倉山梅園(2018年2月24日)

甘酒に梅ひとひらの散りにけり  正子
霞たる方に富士指す方位盤    正子
富士見えず街を覆える青霞     正子
梅林の谷となりたり日が溜まり  正子   
紅梅の紅を浮かせて漆喰塀    正子
谷水の勢いつけて梅林へ     正子

◆◇◆

●鶴見川源流の泉(町田市小山田・田中谷戸)2017年6月18日

◆◇◆

●5月21日 アメリカの3大「紳士録・人名事典」であるマーキスの「Who’s Who(2017-2018)」版に信之先生が認定登録された額が送られてきた。「who’s who in the world」は「世界人名事典」。次の写真をご覧ください。また、7月には、VIPとして登録された。VIPナンバーをもらった。
〇認定登録額(世界人名事典 who’s who )

◆◇◆

◆入賞発表/第3回漱石忌ネット句会◆
http://blog.goo.ne.jp/siki2013n

◆デイリー句会投句箱◆
下記アドレスのブログにあります。
http://blog.goo.ne.jp/kakan003

◆伝言板/花冠発行所◆
※花冠発行所宛の伝言を下の<コメント欄>にお書きください。

2018年、ご投句ありがとうございました。


2018年も、毎日ご熱心なご投句をありがとうございました。
日々の生活を詠んで、このような精神性の高い句がたくさん生まれたことを、大変うれしく思います。「平凡から離れれば真理から遠ざかる」ということをラジオで耳にしました。利休が好んだ茶碗の、一見なんでもない、平凡な茶碗で、銘を何とかいったか失念しましたが、その茶碗の感想だということでした。気になる言葉でした。

2019年の来年もご投句をよろしくお願いいたします。よい年をお迎えください。
                                     高橋正子

自由な投句箱/12月21日~31日


※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
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※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆俳句添削教室◆
http://www.21style.jp/bbs/kakan02
◆俳句日記/高橋正子◆
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今日の秀句/12月21日~31日


12月31日(3句)

★大利根の流れに朝日年送る/小口泰與
利根の流れに朝日が射し、朝日が利根の流れと共に流れ過ぎて行く。「年送る」気持ちが利根の流れと共にある。(高橋正子)

★大晦日暮行く富士を仰ぎけり/廣田洋一
めでたさに一富士・二鷹・三茄と俗に言われるが、洋一さんの生活には富士山が見える生活があるが、大晦日の富士山の暮行く姿を仰ぐと特別の感懐が湧くというものだろう。(高橋正子)

★大歳の嶺の白きや今朝の窓/桑本栄太郎
大歳の今朝の窓の景色が様変わり。嶺に雪が白く積んでいる。いよいよ新年を迎える空気が張りつめてくるようだ。(高橋正子)

12月30日(3句)

★松飾る我が家の灯り灯りけり/廣田洋一
松を飾った我が家に灯り灯り、清らかな静けさに包まれる。新年を迎える人住む家の清らかさいい。(高橋正子)

★妻が撒く日毎の餌や寒雀/小口泰與
妻が撒く餌に毎日やって来る寒雀。寒雀の愛くるしさはもちろんだが、妻のやさしさや少女のような面差しさえもが見えてきてほのぼのとした句だ。(高橋正子)

★北風吹きて空の碧さを授かりぬ/川名ますみ
北風が吹き、雲を吹き払った。寒さが増して、空の碧さが磨かれ、珠のような青空となる。その碧さを授かったと思う心。(高橋正子)

12月29日(2句)

★振り返る旅行の日々や古暦/廣田洋一
一年使った暦をしまうとき、めくりなおしてみると、様々なことを思い出されるが、旅行の日々が特にたのしく思い出される。楽しいことがあった一年は、よき一年としたい気持ち。(高橋正子)

母連れてお墓参りや年の暮/多田有花
老母を連れてのお墓参りは、なによりの親孝行途思う。健やかな母いてのこと。年の暮のお墓参りに一年の安寧を思う。(高橋正子)

12月28日(3句)

★力入れ年行く蕎麦を打ちにけり/小口泰與
年越し蕎麦となる蕎麦であろう。野趣味のある蕎麦は、力をもって打たれるのがいい。

★数え日の山を下れば墓に出て/多田有花
この事実。墓地は山裾にあって、山を下ればそこに墓があり、そこに暮らすひとびとの人家に繋がる。数え日だからこその思いだ。(高橋正子)

★異国語の祇園の路地や風花す/桑本栄太郎
風花の舞う祇園の路地を異国の観光客が行き来する。風花も異国語も寒い祇園にいっそう艶やかにしている。(高橋正子)

12月27日(1句)

★裏白を採る人に会う山路かな/多田有花
年末山路を歩くと、正月用の裏白を採る人に出遭う。それを見ると正月がくるなあと、思う。裏白のさわさわとした音が聞こえそうだ。(高橋正子)

12月26日(1句)

投函を終へて安堵や冬入日/桑本栄太郎
歳晩の済まさなければならない事の一つに御礼状や、賀状を書くことがある。そんな手紙をポストに入れて、冬の入日に迎えば安堵の気持ちが湧く。安堵の気持ちに冬入日が決め手となった。(高橋正子)

12月25日(1句)

★年の瀬の稜線笹に覆われて/多田有花
年の瀬の山はどうなっているのか、興味が湧くが、有花さんが歩いた稜線は笹に覆われていたのだ。生家の父は、年末には山に羊歯や松の枝を取りに出かけたが、わが生家の山も思い出した。落葉の重なる道を挟むような笹の稜線。笹音もその風景は私も好きだ。(高橋正子)

12月24日(2句)

★雨上がり雲かき分けて冬満月/廣田洋一
冬の雨があがり、雲をかき分けてのぼる満月。寒さも寒さ。洗われたような冬満月の光がきれいだ。(高橋正子)

★青空の高き梢や枯木立/桑本栄太郎
枯木立が聳え、青空に梢がレース模様のようにくきりと見える。高き梢の先々まで、瑞々しい命が届いている。(高橋正子)

12月23日(2句)

★雨の中梢(うれ)より立たぬ寒雀/小口泰與
雨の中、濡れながらもじっと梢に止まったままの寒雀。シルエットのようになって、じっと耐えている寒すずめに心寄せた句。(高橋正子)

★水脈長く左右に曳けり鴨の群/桑本栄太郎
鴨の群が寒さにも拘わらず、水脈を左右にのびのびと曳いて泳いでいる。それぞれが泳ぐ水脈が交差し、水面はにぎやかである。(高橋正子)

12月22日(3句)

★朝風呂や柚子二つ入れ浸かりけり/廣田洋一
柚子二つが面白い。家庭の柚子湯なら二つで必要十分。柚子湯の朝風呂が粋でさわやか。(高橋あmさ子)

★裸木にくっきりと啄木鳥の影/多田有花
啄木鳥は意外にも小さい鳥だが、止まり方といい、特徴ある鳥だ。裸木にその正体を透かしている。それを見つけた驚きと楽しさ。(高橋正子)

★青畝忌の植えたるように田のみどり/桑本栄太郎
植えたるような田のみどりは、ひつじ田のみどりだろう。青畝忌はその「青畝」の号のごとき、田のみどりがさわさわと育っている。(高橋正子)

12月21日(1句)

★一条の日矢の的なり浮寝鳥/小口泰與
水面に浮く浮き寝鳥。照り陰りに浮寝鳥も照ったり曇ったり。今は一条の日矢が射して、浮寝鳥の羽の色、その寝姿がくっきりと浮かび上がった。「日矢」なので「的」なのだ。(高橋正子)

12月21日~31日


12月31日(4名)

小口泰與
大利根の流れに朝日年送る★★★★
利根の流れに朝日が射し、朝日が利根の流れと共に流れ過ぎて行く。「年送る」気持ちが利根の流れと共にある。(高橋正子)

あおあおと年越す赤城風もなし★★★
大利根の瀬尻瀬頭年歩む★★★

多田有花
過ぎし日のアルバム整理大晦日★★★
写真とはすべて過去なり大晦日★★★
大歳や記憶ばかりが鮮やかに★★★

廣田洋一
大晦日暮行く富士を仰ぎけり★★★★
めでたさに一富士・二鷹・三茄と俗に言われるが、洋一さんの生活には富士山が見える生活があるが、大晦日の富士山の暮行く姿を仰ぐと特別の感懐が湧くというものだろう。(高橋正子)

海老天の蕎麦を啜れり大晦日★★★
大年の汗を流せり露天風呂★★★

桑本栄太郎
大歳の嶺の白きや今朝の窓★★★★
大歳の今朝の窓の景色が様変わり。嶺に雪が白く積んでいる。いよいよ新年を迎える空気が張りつめてくるようだ。(高橋正子)

切り上げて散髪へ行く大晦日★★★
しぐるるやフード被りて警備員★★★

12月30日(5名)

廣田洋一
家中を掃き清めしや松飾る★★★
注連を張るお神酒の香り漂へり★★★★

松飾る我が家の灯り灯りけり★★★★
松を飾った我が家に灯り灯り、清らかな静けさに包まれる。新年を迎える人住む家の清らかさいい。(高橋正子)

小口泰與
妻が撒く日毎の餌や寒雀★★★★
妻が撒く餌に毎日やって来る寒雀。寒雀の愛くるしさはもちろんだが、妻のやさしさや少女のような面差しさえもが見えてきてほのぼのとした句だ。(高橋正子)

歳晩やジャクージの泡むくむくと★★★
数え日や酔うて話すは過去の事★★★

多田有花
鉄塔の上の青空年暮るる★★★★
カフェオレに餡パンひとつ年惜しむ★★★
ベランダに差す陽明るし小晦日★★★

桑本栄太郎
カレンダーの一日を残し年迫る★★★
平成の御代の終いや年惜しむ★★★★
準備終え手抜き夕餉や小晦日★★★

川名ますみ
北風吹きて空の碧さを授かりぬ★★★★
北風が吹き、雲を吹き払った。寒さが増して、空の碧さが磨かれ、珠のような青空となる。その碧さを授かったと思う心。(高橋正子)

進むほど静かになりぬ年用意★★★★
小晦日急いて挨拶して別る★★★

12月29日(4名)

廣田洋一
ひととせの禍福あざなふ古暦★★★
振り返る旅行の日々や古暦★★★★
一年使った暦をしまうとき、めくりなおしてみると、様々なことを思い出されるが、旅行の日々が特にたのしく思い出される。楽しいことがあった一年は、よき一年としたい気持ち。(高橋正子)

古暦日めくり締める七福神★★★

小口泰與
パソコンを仕舞て仕事納めかな★★★
大利根に釣する人や年惜しむ★★★★
鯉のえらゆったり動き十二月★★★

多田有花
母連れてお墓参りや年の暮★★★★
老母を連れてのお墓参りは、なによりの親孝行途思う。健やかな母いてのこと。年の暮のお墓参りに一年の安寧を思う。(高橋正子)

北の山終日雪の雲の中★★★
年の瀬のフロントガラス天気雨★★★

桑本栄太郎
数へ日や予定の一つづつ消えて★★★
一つ終へ又想い出す年の暮れ★★★★
年の瀬や駐車スペース無き店舗★★★

12月28日(4名)

小口泰與
数え日や餅つく音もなかりける★★★
力入れ年行く蕎麦を打ちにけり★★★★
年越し蕎麦となる蕎麦であろう。野趣味のある蕎麦は、力をもって打たれるのがいい。

彫り深き赤城の襞や松迎★★★

廣田洋一
濡れティシュー各自に配る仕事納★★★
用済みの書類を捨てて御用納め★★★
掃除機の音の静まり仕事納め★★★★

多田有花
数え日の山を下れば墓に出て★★★★
この事実。墓地は山裾にあって、山を下ればそこに墓があり、そこに暮らすひとびとの人家に繋がる。数え日だからこその思いだ。(高橋正子)

年の瀬の沖輝かしく晴れて★★★
ゆっくりと年惜しみつつ山路ゆく★★★

桑本栄太郎
異国語の祇園の路地や風花す★★★★
風花の舞う祇園の路地を異国の観光客が行き来する。風花も異国語も寒い祇園にいっそう艶やかにしている。(高橋正子)

水仙の香る車内の家路かな★★★★
疼く歯に目覚む朝や寒波来る★★★

12月27日(4名)

廣田洋一
駐輪場少し潰して飾売★★★★
松の枝輪飾り付けて買ひにけり★★★
一つ売り一つ取り出す飾売★★★

小口泰與
濃紺の朝の赤城や枯尾花★★★
仰ぎ見る師走の夜空万華鏡★★★

社会鍋喇叭の音も風に消ゆ(原句)
社会鍋喇叭の音の風に消ゆ★★★★(正子添削)
「も」ではなく、一つに焦点を絞り、はっきり言うのが効果的と思います。句に余情がでます。(高橋正子)

多田有花
産土の社の前に門松立つ★★★
数え日の山に登りて海を見る★★★
裏白を採る人に会う山路かな★★★★
年末山路を歩くと、正月用の裏白を採る人に出遭う。それを見ると正月がくるなあと、思う。裏白のさわさわとした音が聞こえそうだ。(高橋正子)

桑本栄太郎
煤逃げのパチンコ店やご同輩★★★
暮れ泥むビルに入日や冬燈し★★★
喧騒の中の孤独や冬の街★★★★

12月26日(4名)

小口泰與
冬ばらの梢(うれ)に雀や山の風★★★
榛名嶺へ一朶の雲や冬黄葉★★★★
覆いたる牛舎の屋根の落葉かな★★★

廣田洋一
数へ日や米びつの中確かめる★★★
数へ日や正月ねぶた映されし★★★★
数へ日やつい夢を見し宝くじ★★★

桑本栄太郎
投函を終へて安堵や冬入日★★★★
歳晩の済まさなければならない事の一つに御礼状や、賀状を書くことがある。そんな手紙をポストに入れて、冬の入日に迎えば安堵の気持ちが湧く。安堵の気持ちに冬入日が決め手となった。(高橋正子)

うつすらとビルに茜や冬ともし★★★
剪定の瘤となりたる冬木かな★★★

川名ますみ
年の暮郵便受けに葉書増え★★★★
懐かしきひとの夫人へ賀状書く★★★
年の暮泣き出しそうな目は空を★★★

12月25日(5名)

川名ますみ
ヘルパーに夕べの柚子湯気付かれし★★★
散紅葉ひとひら窓にとどまりぬ★★★
持ち寄りし色のにぎやかクリスマス★★★★

小口泰與
噴煙の南へ伸ぶや年惜しむ★★★
撒かれたる餌や梢の寒雀★★★
山風に負けず雄叫び寒鴉★★★

廣田洋一
ケーキ買ひ赤ワイン酌む聖夜かな★★★
ヨガ終へて出でたる街は聖夜かな★★★
天皇の来し方映す聖夜かな★★★★

多田有花
<六甲全山縦走路・終盤三句>
極月の坂登りゆくサイクリスト★★★

年の瀬の稜線笹に覆われて★★★★
年の瀬の山はどうなっているのか、興味が湧くが、有花さんが歩いた稜線は笹に覆われていたのだ。生家の父は、年末には山に羊歯や松の枝を取りに出かけたが、わが生家の山も思い出した。落葉の重なる道を挟むような笹の稜線。笹音もその風景は私も好きだ。(高橋正子)

歳晩の六甲宝塚へ下る★★★

桑本栄太郎
灯芯にあぶら注ぐや蕪村の忌★★★
海鳴りや大鍋掛けて大根炊く★★★
寒柝や夜更けのビルに響きをり★★★★

12月24日(3名)

廣田洋一
雨上がり雲かき分けて冬満月★★★★
冬の雨があがり、雲をかき分けてのぼる満月。寒さも寒さ。洗われたような冬満月の光がきれいだ。()高橋正子)

金星に負けじと照らす冬の月★★★
休日のシャッター街や冬の月★★★

小口泰與
トラックの入庫数多師走かな★★★★
ジ゛ャクージに身体預けて年の暮★★★
数え日やへら浮子ぴくり動きける★★★

桑本栄太郎
青空の高き梢や枯木立★★★★
枯木立が聳え、青空に梢がレース模様のようにくきりと見える。高き梢の先々まで、瑞々しい命が届いている。(高橋正子)

暮れなずむ空にビルあり冬ともし★★★
宵空に星のきらめく聖夜かな★★★

12月23日(4名)

小口泰與
山風や木の葉時雨の九十九折★★★
雨の中梢(うれ)より立たぬ寒雀★★★★
雨の中、濡れながらもじっと梢に止まったままの寒雀。シルエットのようになって、じっと耐えている寒すずめに心寄せた句。(高橋正子)

冬の蜂丸くかたまり山の風★★★

廣田洋一
んの付く野菜数へる冬至の餉★★★
雨止まず日の入り見えぬ冬至かな★★★★
譲位する帝の涙か冬の雨★★★

多田有花
金物と紙に分別古暦★★★
歳末の六甲山を歩きけり★★★
山下りて播磨の魚で忘年会★★★★

桑本栄太郎
底冷や家具のみしみし軋み居り★★★
海鳴りや大鍋かけて大根炊く★★★

水脈長く左右に曳けり鴨の群★★★★
鴨の群が寒さにも拘わらず、水脈を左右にのびのびと曳いて泳いでいる。それぞれが泳ぐ水脈が交差し、水面はにぎやかである。(高橋正子)

12月22日(5名)

小口泰與
朗々と老師の読経寒牡丹★★★
日と風の育てる郷の掛大根★★★★
開かんとして固まりし冬のばら★★★

廣田洋一
朝風呂や柚子二つ入れ浸かりけり★★★★
柚子二つが面白い。家庭の柚子湯なら二つで必要十分。柚子湯の朝風呂が粋でさわやか。(高橋あmさ子)

柚子湯して柚子を絞れる独りかな★★★
柚子の香のふわりと満ちし湯殿かな★★★★

多田有花
まだ暗き冬至の朝へ起きだしぬ★★★
雨あがる冬至の山を歩きけり★★★★

裸木にくっきりと啄木鳥の影★★★★
啄木鳥は意外にも小さい鳥だが、止まり方といい、特徴ある鳥だ。裸木にその正体を透かしている。それを見つけた驚きと楽しさ。(高橋正子)

桑本栄太郎
青畝忌の植えたるように田のみどり★★★★
植えたるような田のみどりは、ひつじ田のみどりだろう。青畝忌はその「青畝」の号のごとき、田のみどりがさわさわと育っている。(高橋正子)

柚子の実とブリキ玩具や冬至の湯★★★★
身を放つ吾に寄り来る柚子湯かな★★★

川名ますみ
冬至風呂突つけば柚子のよく回り★★★
湯の中に気づけば柚子の寄り来たる★★★★
風呂出るも柚子を片付けかねており★★★

12月21日(4名)

小口泰與
一条の日矢の的なり浮寝鳥★★★★
水面に浮く浮き寝鳥。照り陰りに浮寝鳥も照ったり曇ったり。今は一条の日矢が射して、浮寝鳥の羽の色、その寝姿がくっきりと浮かび上がった。「日矢」なので「的」なのだ。(高橋正子)

寒蜆母の在所の味したり★★★
一筋の光の帯や浮寝★★★

廣田洋一
神楽終へ天の鈿女は婆となり★★★★
緋の袴あでやかに舞ふ巫女神楽★★★
稲わらの大蛇坐ませり神楽殿★★★

桑本栄太郎
海鳴りの遠くに聞こゆ懸け大根★★★★
冬日さす壁打ちコートや音弾む★★★
採り跡の葉つぱ襤褸や冬菜畑★★★

多田有花
枯蓮や池に溢れる日の光★★★★
冬の陽を背に頂に立ちぬ★★★
上着脱ぐ播磨灘には冬霞★★★

自由な投句箱/12月11日~20日


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今日の秀句/12月11日~20日


12月20日(2句)

★裸木の彼方に鉄骨の透けて/多田有花
裸木自体、鉄骨のように見えないでもないが、そのすっきりと葉を落とした裸木を透かして建設中のたてものであろうか、鉄骨が見える。裸木と鉄骨の取り合わせが愉快だ。(高橋正子)

★一枚の皿の孤食や石鼎忌/桑本栄太郎
12月20日は、原石鼎の忌日。島根県の医家に生まれる。作者栄太郎さんの故郷は、山陰鳥取。同じ参院の生まれで、孤独の影を持つ原石鼎に、今日の一枚の皿に食事に身を重ねて思った。単に妻の留守だったのかもしれないが。(高橋正子)

12月19日(1句)

★青々と笊に干したり葱洗ふ/桑本栄太郎
葱は九条葱などの葉を主に食べる葉葱であろう。冷たい水で洗われた葱は清冽というほど青々といきいきしている。笊にあげられ、水を切られるところだ。(高橋正子)

12月18日(2句)

★午後の日の五色の彩や沼の冬/小口泰與
午後の日差しに色を変える沼の水。午後の日差しの変化を沼の水に見た良さ。五色沼というのもあるが、それでなくても、冬の沼は日差しに色を変えやすい。(高橋正子)

★家々の壁薔薇色に冬落睴/多田有花
冬落暉の明るさに、家々の壁が幸せそうに薔薇色に染まる。瀬戸内の夕暮が、明るく詠まれて幸福感に満たされる句だ。(高橋正子)

12月17日(1句)

★冬山路明るき色で走る人/多田有花
冬は色が少なくなるとき。そんな冬の山路を明るい、原色のような色で走る人に出会うと、気持ちがぱっと華やぐ。(高橋正子)

12月16日(2句)

★瀬戸内や冬青空を友として/多田有花
瀬戸内に日々暮らし、日々瀬戸内海を見て暮らした私には晴れた日が多い瀬戸内は、その身になってみれば、冬青空を友としては、実感できること。それを見事に言った有花さんには、感服。(高橋正子)

★せせらぎにせり出し水に実南天/桑本栄太郎
南天の実が赤く熟れている。伸び放題の南天が水にせり出して、中には水に浸っているものがある。水に浸かる南天の赤い実のきれいなこと。水と南天の取り合わせの妙。(高橋正子)

12月15日(1句)

★座してすぐ灯火に染まり年忘/小口泰與
朋友や仕事仲間が集まって、今年の労を忘れ、無事を祝う年忘。用意された座に座ると、すぐに灯火にそまるように馴染み、心落ち着く。華やいだ灯火に染まる身に、今年の無事が思われる。(高橋正子)

12月14日(2句)

★水仙や思ひ出したる海の音/廣田洋一
水仙を見ていて、ふと海の音を思い出した。海の近くの水仙では、越前海岸の水仙が有名だが、そのようなところの水仙であろう。海の音を思い出すと同時にかつて見た水仙郷が思いされたのだ。水仙と海の音の取り合わせが清らかだ。(高橋正子)

★茹でものを待つて窓辺や冬の月/桑本栄太郎
台所で茹でている。茹で上がるまで、火の傍を離れるわけにはいかない。台所の窓辺からは冬の月が輝いているのが見える。厨仕事のあいだも、冬の月を楽しむ心がゆかしい。(高橋正子)

12月13日(1句)

★金色の星の瞬く聖樹かな/廣田洋一
聖樹に飾られた星。金色に瞬く星によって、聖樹がいきいきとして、金の星は、本当にベツレヘムの星となるようだ。(高橋正子)

12月12日(3句)

★あけぼのの障子明りに鳥の声/小口泰與
あけぼのの障子の明かりは、白の美しさを極めていると思える。ぴんと張った障子に冷気が迫り、あけぼのの光が透ける。耳には鳥の声。春でなくとも、冬のあけぼのも貴重なときである。(高橋正子)

★空仰ぎ日を吸ふ花や寒椿/廣田洋一
寒椿は花が平らで、空を仰いでいるようだ。その花の咲くままに日が当たり、日を吸い込んでいるようだ。日を吸った花が暖かい色に咲くのも道理だ。(高橋正子)

★柚子の実のたわわに黄なり山の畑/桑本栄太郎
山の畑に柚子の実がたわわ。その黄色がさびしい山の畑を明るくしている。見慣れて、一見平凡なような風景なのだが、平凡で、当たり前のような風景の良さがしずかに伝わってくる心惹かれる句だ。(高橋正子)

12月11日(2句)

★山茶花の散るほどにまた咲き続く/多田有花
山茶花の花は賑やかと思うほどに咲く。散るとそれ以上に花を咲かせているようにも見える。花の盛りの山茶花が詠まれた。(高橋正子)

★日本海の匂ふが如き鰤の背/廣田洋一
鰤一本の背の光が鋭い。日本海の海の匂いがしているかのようだ。鰤の美味な時がきて、刺身、鰤大根、照り焼きなど食の楽しみも広がる。それを思えば活きのいい鰤が日本海から釣り上げられた様子も目に浮かぶというもの。(高橋正子)