今日の秀句/1月11日~1月20日

1月20日(2句)

★雪の熔岩黒き煙を吐きにけり/小口泰與
この句は、雪と熔岩という対照的なイメージを結びつけています。熔岩が雪の中で黒い煙を吐く様子は、自然の力強さと神秘を感じさせます。熔岩の熱さと雪の冷たさ、黒い煙と白い雪というコントラストが魅力的です。(AIのコメント/引用責任髙橋正子)

★ 水仙の廻りを掃きて日暮かな/廣田洋一
この句は、水仙の花を取り巻く日常の一コマを切り取ったものです。夕暮れ時に水仙の周りを掃除する様子は、静かな日常の美しさや穏やかな時間の流れを感じさせます。水仙の花がもたらす柔らかな明るさと夕暮れの静けさが、心に響く句です。(AIのコメント/引用責任髙橋正子)
1月19日(1句)
★山茶花の花は夕陽に彩を増し/上島祥子
山茶花の花は昼間は賑やかな印象で咲いているが、夕陽が差すころになると、一つ一つの花が葉むらから浮き上がって、陰影深く見える。夕陽に照らされ彩を増す。その細やかな変化をよく捉えている。(髙橋正子)
1月18日(1句)

★竹筒の灯かりに祈る阪神忌/桑本栄太郎
阪神・淡路大震災で亡くなった人々への、素直で素朴な祈りの姿が、あたたかく伝わってくる。(髙橋正子)
1月17日(1句)
★鐘鳴らししのぶ未明や阪神忌/桑本栄太郎
 阪神・淡路大震災から30年経った。1995年 (平成 7年) 1月17日 (火曜日)5時46分52秒に発生した 。その朝は私は信之先生と松山に居て揺れで目を覚まし、次第に死者が増えるニュースに釘付けだった。近所の娘さんも遺体となって帰ってきた。寒中の未明の地震にさまざまな記憶が蘇り、追悼の気持ちが深くなる。(髙橋正子)
1月16日’(1句)

★松納静かな雨が屋根濡らす/多田有花
地方によって違うが、現在では松の内は1月7日までとされている。正月の飾りを取り払うのが松納。その時期には寒に入り、冷たい雨が降ることもある。「屋根を濡らす」静かな雨になることもある。松納の静かな寂しさがしっとりと伝わる。(髙橋正子)
1月15日(1句)

★少しずつ膨らみきたり冬芽かな/廣田洋一
「少しずつ」に作者のやさしい気持ちがよく現れている。少しずつ膨らんでいる
冬芽への期待が感じられる明るい句。(髙橋正子)
1月14日(1句)

★日を浴びて葉牡丹の渦広がりぬ/廣田洋一
正月には葉牡丹の中心はしっかり巻いていた。日々、日を浴びて葉牡丹の渦はゆるみ広がってきた。葉牡丹の渦の弛みに、日が過ぎて行くことが思われる。(髙橋正子)
1月13日(1句)

★蘇るや雪の浅間へ朝日差し/小口泰與(正子添削)
蘇る雪の浅間へ朝日かな/小口泰與(原句)
「蘇る」のは、雪の浅間山が朝日を受けたからそのように感じたのではないだろうか。そこをはっきりさせるために添削した。雪の浅間が朝日をうけて神々しいまでに「蘇った」のがうれしいのだ。(髙橋正子)
1月12日(1句)

★寒餅や軒に吊るせし昭和の日/廣田洋一
正月の餅が寒中まで残ることは多い。黴ないようにいろいろ工夫されるが、寒い地方では藁でしばり軒に吊るしておく。私の育った瀬戸内は水に入れて保存する水餅にする人が多かった。水は毎日取り換えなければいけないが、こうすると柔らかさを保て、黴が防げた。それも昭和の日のこととなった。洋一さんは昭和の日、どこにお住まいだったのだろう。懐かしい光景。(髙橋正子)
1月11日(1句)

★一木のくぬぎ枯葉を纏うまま/桑本栄太郎
くぬぎは、落葉広葉樹。落葉といいながらも、紅葉後に完全な枯葉になっても、離層が形成されないため枝からなかなか落ちず、「枯葉を纏うまま」の状態になる。もしゃもしゃと枯葉が枝についているのをよく見かける。この句は当たり前の様子を述べただけで、欲のない表現がいい。(髙橋正子)

1月11日~1月20日

1月20日(4名)
小口泰與
ラガー等の雨の中なる顔の艶★★★
短日の狼藉物の鴉なり★★★
雪の熔岩黒き煙を吐きにけり★★★★

廣田洋一
水仙の廻りを掃きて日暮かな★★★★
人気無く水仙だけが並びおり★★★
蠟梅や小雨を浴びて香を放つ★★★

多田有花
大寒や布団に残る身の形★★★
大寒の雀膨れるだけ膨れ★★★★
身の内もどこか伸びやか日脚伸ぶ★★★
桑本栄太郎
大寒といえど眩しき日差しかな★★★
降り止みて路面光りぬ朝しぐれ★★★
まんさくの枯葉を纏い備え居り ★★★

1月19日(名)
小口泰與
よろず枯る中に青竹冬空へ(原句)
「よろず枯る」があるので「冬空」の「冬」がない方が「枯れ」のイメージが強くなります。(髙橋正子)
よろず枯るる中の青竹空へ伸び(正子添削)

あけぼのの鷹の治めし美空かな★★★
凩や如何に世渡る孫二人★★★

多田有花
気が付けばいつも後半一月は★★★
寒の昼Web会議で同窓会★★★
日脚伸ぶともに若き日を語る★★★

廣田洋一
陽の当たる小枝に群れて寒雀★★★★
門前にすっくと立ちて冬薔薇★★★

いつも通る道に沿いたる寒椿(原句)
いつも通る道に沿い咲く寒椿(正子添削)
「沿いたる寒椿」(ただ沿っている寒椿)では、すこしイメージが弱いように思います。鮮やかに咲く花を強調すると句がいきいきするのではないでしょうか。(髙橋正子)

桑本栄太郎
あおぞらに喜びいさむ冬木の芽★★★
日差し浴び歩み伸び居り春隣★★★
くいくいと桜冬芽のあおぞらへ★★★
上島祥子
冬晴れに重ねる声やサッカー子(原句)
冬晴れにサッカーの子ら声重ね(正子添削)

山茶花の花は夕陽に彩を増し★★★★

川を越え山茶花満ちる家の前 
「川を越え」と「家の前」があるので、山茶花がどこにあるのか、位置がわかりにくいです。(髙橋正子)
1月18日(6名)
小口泰與
藁仕事戸の隙間より川の風★★★
枝垂れ木の枝に数多の寒雀★★★
一羽発ち続けて数羽冬木より★★★

弓削和人
雪だるまわが家を見ている小石の目★★★
レースよりわずか雪晴ありがたし
「レース」は、カーテンのレースなのですか。(髙橋正子)
血の通う朝の目覚めに霜の声
「霜の声」は霜の降りた夜の、冷たくさえてしんしんと更けゆく様子を言います。(髙橋正子)

土橋みよ
人来ねど庭は清めて大中寺(原句)
庭清し人来ぬ寒の大中寺(正子添削)
季語がないので、季語を入れました。(髙橋正子)

孫遠しピーナツ包む寒の朝(原句)
遠き孫へピーナツ包む寒の朝(正子添削)
「ピーナツ包む」がなんのために包むのかよくわかりませんので、添削しました。(髙橋正子)

廣田洋一
蠟梅の香り確かめ法の庭(原句)
蠟梅の香り確かに法の庭(正子添削)

左義長や火を掲げたる禰宜来たる★★★★
どんど焼き団子分け合う親子かな★★★

多田有花
湯上りの喉に麗し寒の水★★★
極楽や湯たんぽの待つ布団に入る★★★
歯をクリーニングして待春の夕べ★★★

桑本栄太郎
竹筒の灯かりに祈る阪神忌★★★★
風のなく日差しまぶしく春近し★★★
遠峰のうすく連なる冬かすみ★★★
1月17日(3名)
小口泰與
山風の強き朝や太氷柱★★★
ほうとうを賜わる宿や枯木山★★★
売出しの目玉は鮪十日市★★★

多田有花
松過の日ごと明るくなる光★★★
寒波来る外の蛇口にタオルを巻く★★★
寒波ゆるむほっと一息つく心地★★★★

桑本栄太郎
鐘鳴らししのぶ未明や阪神忌★★★★
山膚を雲影走り春近し★★★
みぞれ止み遥か遠嶺の白きかな★★★
1月16日(4名)
小口泰與
山風の強き朝や太氷柱★★★
ほうとうの賜わる宿や枯木山(原句)
「ほうとうの賜る」の「の」の使い方について。長く俳句を作っていると「の」をつい使ってしまう方が結構おられます。気を付けて使ってください。この句の場合は意味がとれません。(髙橋正子)
ほうとうを賜わる宿や枯木山(正子添削)

売出しの目玉は鮪十日市★★★

多田有花
松納静かな雨が屋根濡らす★★★★
北の山は雲に隠れて寒波急★★★
湯たんぽのぬくもりに触れ眠りおり★★★★
桑本栄太郎
あおぞらの驚くばかり寒晴るる★★★★
雲の間の日差しまぶしく春隣る★★★
黄をきわめ狭庭明るき柚子橙★★★

上島祥子
夜を越して無事を喜ぶ雪だるま★★★★
互選終え大きく息吐く初句会★★★
寒水に浸して榊生き生きと★★★★
1月15日(3名)
小口泰與
早朝の冬山雀の声高き★★★
赤赤と冬日すなおや利根川原★★★★
雪催い赤城ははやも雲の中★★★

廣田洋一
少しずつ膨らみきたり冬芽かな★★★★
桜冬芽赤み増したり並木道★★★
星一つ上に控えて寒の月★★★★

桑本栄太郎
太陽の明るく滲み時雨止む★★★★
いそいそと妻の出掛けやどんど焼き★★★
しぐれ止む遠嶺の白くあらわるる(原句)
俳句の基本としては「切れ」は一か所にします。(髙橋正子)
しぐれ止み遠嶺の白くあらわるる(正子添削①)
しぐれ止む遠嶺の白くあらわれて(正子添削②)
1月14日(3名)
小口泰與
電線に並ぶ雀や冬ざるる★★★
木を叩くコゲラの嘴や森の朝★★★

風花の舞うや鳥声短きや(原句)
風花の舞うや短き鳥の声(正子添削)

廣田洋一
日を浴びて葉牡丹の渦広がりぬ★★★★
日を浴びて白々光る枯野かな★★★
大枯野ランナーたちの駆け抜けて★★★

桑本栄太郎
風なくば日差し明るく冬ぬくし★★★
葉牡丹の渦のむらさき更に濃く★★★
山茶花の紅白混じる垣根かな★★★
1月13日(3名)
小口泰與
しとしとと寒の雨かや朝まだき★★★

蘇る雪の浅間へ朝日かな(原句)
蘇るや雪の浅間へ朝日差し(正子添削)

上州は四方山充つ空っ風 ★★★

廣田洋一
松過ぎて庭の草々刈取りぬ★★★
初夢や巳年の主は現れず★★★
成人の日ミッキーマウスも祝いけり★★★

桑本栄太郎
連休の静寂なりぬ成人日★★★
季(とき)を待つ桜冬芽の並木かな★★★★
風花やみずいろ空の雲の間に★★★
1月12日(1名)
廣田洋一
人日の赤き実たわわ古き家★★★
通行人松の名問いて鳥総松★★★
寒餅や軒に吊るせし昭和の日★★★★
1月11日(3名)
小口泰與
赤城より風騒ぎたつ冬の雷★★★
湖へ竿出す老や冬の凪★★★ 
揺ぎ無き母と居りけり受験の子★★★★

桑本栄太郎
雲の間のみずいろ空や寒晴るる★★★
一木のくぬぎ枯葉を纏うまま★★★★
寒菊のうす紫の小菊かな★★★

弓削和人
白鳥の今年も降りぬ年新た★★★
足跡のうえを踏むなり雪の原★★★
夕暮や氷柱を降りて買い出しに
「氷柱を降りて」の情景がわかりにくいです。(髙橋正子)

自由な投句箱/1月1日~1月10日/2025年

※当季雑詠3句(新年・冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。 
    
     🍊🍊🍊 🍊🍊🍊 🍊🍊🍊 🍊🍊🍊 🍊🍊🍊
      今日の俳句『現代俳句一日一句鑑賞』(髙橋正子著)より
 右端に🌸の印が付いている句は、(現)または(元)花冠会員の句
     名前の右端に🍁の印が付いている句は、花冠に縁の深い方の句
1月10日
★乗鞍の雪嶺青くオリオン座       堀  幹夫(ほり みきお)
1月9日
★雪明かり牛まっくろに立ち止まる    志賀 たいじ(しが たいじ)
1月8日
★歌かるた読みつぎてゆく減らしゆく   橋本 多佳子(はしもと たかこ)
1月7日
★雪すべて降らせて戻る空の青      戸原 琴(とはら こと)🌸
1月6日
★林泉(しま)明るくところどころに石抱く雪 川本 征矢(かわもと せいし)🌸
1月5日
★獅子舞や蜑(あま)が門辺に笛吹ける   水原 秋櫻子(みずはら しゅうおうし)
1月4日
★ねんごろな伝言とどき初句会     中村 汀女(なかむら ていじょ)
1月3日
★誕生日正月三日の眉月に       髙橋 正子(たかはし まさこ)🌸
1月2日
★初明かりしたまひて慈母観音像    川本 臥風(かわもと がふう) 🍁
1月1日
★去年今年貫く棒の如きもの      高浜 虚子(たかはま きょし)

今日の秀句/1月1日~1月10日/2025年

1月10日

※該当句無し
1月9日(2句)

★行きゆきて深雪の山の鳥にあう/小口泰與
雪の山を奥深く進んでゆくと、雪の中の鳥に出会った。雪の中の別世界の鳥に出会った感嘆の気持ち読み取れる。(髙橋正子)

★白菜に刃が入る音のさっぱりと/川名ますみ
白菜のもつ清冽な印象が、さっぱりした音として捉えられている。冬野菜の代表の一つの白菜が野菜としてだけでなく、冬と言う季節のもつ清潔感ともつながっている。(髙橋正子)
1月8日(2句)
★投函の賀状に添いぬ雪の粉/弓削和人
牡丹雪でなくさらさらした粉雪も雪国の雪を想像させる。賀状を投函しようとすると、その間も粉雪が降り込んでくる。投函の様子が生き生きと伝わる。(髙橋正子)

★雪模様紅茶旨しと声になる/上島祥子
雪がいまにも降りそうな寒々とした天気。熱い紅茶を淹れると自分で淹れて自分で思わず「おいしい」と声に出してしまった。寒い時の紅茶のうまさがリアルに伝わってくる。(髙橋正子)
1月7日(1句)

★初日さし湖の昏さを破りけり/弓削和人
初日が射すまでの湖の昏さは、それが北の国であればあるほど、その対比が明らかだと思える。湖の昏さを明るさに変える初日の力強さが「破りけり」に読み取れる。(髙橋正子)
1月6日(1句)

★すずめ等のふつくら並び寒に入る/桑本栄太郎
すずめ等も寒いのだろう。丸く羽を膨らませ、身を寄せ合って並んでいる。寒中にもかかわらず、かわいらしい姿を見せてくれる。(髙橋正子)
1月5日(1句)

★初春の雪の山見ゆ滑走路/多田有花
滑走路は3000mから4000mの距離が必要とされる。そのため広大な土地に設置されているので、見通しはよい。雪山も新年ならば、すがすがしい「初春」の趣である。(髙橋正子)
1月4日(1句)

★水鳥や夕日沈みし山の端へ/小口泰與
この俳句は非常に美しい情景を描いています。夕日が沈みつつある山の端へと、水鳥が飛んでいく様子を詠んでいます。ここで、夕日と山の間に広がる静寂な自然の風景が目に浮かびます。水鳥は自由に飛び回り、その一方で夕日の沈む様子は一日の終わりを象徴しています。詩的で静かな美しさが感じられる作品ですね。(生成AIによるコメント/記事引用髙橋正子)
1月3日(1句)

★何となくきのうと違う初山河/桑本栄太郎
新年が明けてみれば、山河が昨日と違って見える。晴れやかに横たわる山河に、「きのうと違う」ものを感じた。それも言葉で言えない「何となく」なのだ。(髙橋正子)
1月2日(2句)

★降る雪が包む鳴子の年の夜/多田有花
年末から正月にかけて鳴子温泉に宿泊されたようだ。おりしも年の夜、降る雪にすっぽりと包まれた鳴子の情緒が偲ばれる。(髙橋正子)

  地元大原野神社
★神苑の高き木立や淑気満つ/桑本栄太郎
神苑の木立の高さには緊張感があり、それが淑気と感じられる。新年の清々しい気持ちがよく伝わる。(髙橋正子)

1月1日(1句)

★連弾の聞こゆる路地や年はじめ/小口泰與
年のはじめに路地に、連弾のピアノの音が聞こえる。仲むつまじい連弾の音色に心温まる新年となった。(髙橋正子)

1月1日~1月10日/2025年

1月10日(2名)
小口泰與
雪もよい洗濯物は三山あり★★★
行く方は常に同じや冬木の芽★★★
ゆくりなく森であいたる二羽の鴛鴦★★★

小口泰與
夕影の欄間へ伸びる冬日かな★★★
夕星や榛名に鳥の帰りける★★★
冬の沼夕映え長く映しける★★★

桑本栄太郎
冬晴れの水色天の被いけり(原句)
「天の」の「の」は「天が」となる主格の「の」です。天が何を被うのか、ということになります。(髙橋正子)
冬晴れの水色天被いけり(正子添削)

降り居れど日差し明るく雪催い★★★
落葉松の枯木となりて青空に★★★
1月9日(5名)
小口泰與
大雪をやり過ごしたる峠かな★★★
冬の虹行き交う子等の顔硬き★★★
行きゆきて深雪の山の鳥にあう★★★★

桑本栄太郎
寒晴れや鉄塔三基嶺の端に★★★
寒風の嶺の端白くなりにけり★★★
あおぞらに伸びる梢の冬芽かな★★★★

廣田洋一
眠らざる黒熊出でし北の町★★★ 
晴れやかに笑顔を見せし初句会★★★
松過ぎのコーヒー喫す朝かな ★★★

川名ますみ
年越や棚の奥まで拭きあげる★★★
猫亡くて猫のくすしの賀状来ぬ★★★
白菜に刃が入る音のさっぱりと★★★★

弓削和人
賀客来てまだ来ぬ明日の話題かな★★★
食積や湖の碧さも詰めたなら★★★
たましいを潤し浸かる初湯かな★★★★
1月8日(6名)
小口泰與
冬の日の沼に差したる光かな★★★
オルガンの寒林の中より聞こゆ★★★
餌求め冬翡翠の行くやらん★★★

多田有花
銀杏落葉鼠小僧の墓に降る★★★
冬の夕あんかけ焼きそばを食す★★★
冬空に聳える櫓太鼓かな★★★

廣田洋一
結びたる俳縁深め去年今年★★★
寿ぎの気分を残し鳥総松★★★
寒餅や罅に覆われ水の中★★★
弓削和人
こぞの息吐ききり今年は新たなり★★★
淑気いま過ぎ去るなかれ朝の湖★★★
投函の賀状に添えし雪の粉(原句)
投函の賀状に添いぬ雪の粉(正子添削)
桑本栄太郎
寒風に骨の錆つき軋み居り★★★
落葉松の枯木となりて青き空★★★
寒晴れや鉄塔三基嶺の端に★★★

上島祥子
傘の花爪先冷えし初仕事
「傘の花」と「爪先冷えし初仕事」の関係がよくわかりません。

雪模様紅茶旨しと声になる★★★★
朱塗り椀箱に収めし四日の朝 ★★★
1月7日(6名)
小口泰與
らんらんと光る三國の雪の嶺★★★
降る雪に身を包まれし山の寺★★★
雪浅間のぞみて祈る朝かな★★★

土橋みよ
坂道を登りし先に大中寺(原句)
季語を入れるほうが、句に広がりがでますので、例えば「新年」の季語をいれました。(髙橋正子)
新年の坂を登れば大中寺(正子添削)

ツキ直しし餅ありがたや大中寺★★★
蝋梅の香に目をつむる大中寺★★★

廣田洋一
凍てし道きらきら光る朝かな★★★
新鮮な野菜を揃え七草粥★★★
ちりちりと破魔矢の鈴とすれ違い(原句)
「ちりちりと」は「すれ違い」に係って(修飾して)いますので、意味として不自然になっています。(髙橋正子)
ちりちり鳴る破魔矢の鈴とすれ違い(正子添削)

多田有花
吉良邸の跡に山茶花咲きにけり★★★
裸木の桜や海舟生誕地★★★
冬晴に粋な墓石回向院★★★

桑本栄太郎
人の日の待合込みて席もなし★★★
みずいろの空どこ迄も寒晴るる★★★
木枯や寄る辺なき世の厳しさに★★★

弓削和人
眠りから醒めてまどろむ去年今年★★★
元日に厚き手袋はめりけり★★★
初日さし湖の昏さを破りけり★★★★
1月6日(3名)
廣田洋一
小吉の籤をひきたる四日かな★★★
甥子らの畏まりたる御慶かな★★★
汚れたる台所拭く六日かな★★★

桑本栄太郎
すすき枯れ中洲占め居り桂川★★★
戸を開けてうそぶくように冬の雨★★★
すずめ等のふつくら並び寒に入る★★★★

多田有花
上空より新春の富士を寿ぎぬ★★★
初富士に続き眼下に南アルプス★★★
迎春の旅路を思う萩の月 ★★★
1月5日(4名)
小口泰與
鴛鴦の二羽にて発つや沼の夕★★★
寒菊へ耐へよと風の当たりけり★★★
雪催いまこと赤城は雲の中★★★

廣田洋一
友来たりこれ幸いと年酒酌む★★★
読初めや一日一句を開きたる★★★
小寒の日はうすうすと散歩道★★★★

多田有花
夜の風に少し傾いで注連飾り★★★★
元日の雪の鳴子を後にする★★★
初春の雪の山見ゆ滑走路★★★★

桑本栄太郎
<京都四条大橋界隈>
鴨川の河畔明るき淑気かな★★★
見渡せば遥か北山冬かすみ★★★
せせらぎに沿いて冬芽や高瀬川★★★★
1月4日(4名)

小口泰與
枝枝へ雪の帽子や朝まだき★★★
山風に落葉連れられ消え去りし★★★
水鳥や夕日沈みし山の端へ★★★★

多田有花
ロビーにもレストランにも鏡餅★★★
栗きんとん黒豆伊達巻ずんだ餅★★★
紅白のテーブルで供す節料理★★★

廣田洋一
年酒酌む母はお燗に大忙し★★★
初夢や大金運ぶ白き蛇★★★
オリオンを見上げる家路凍てつきぬ★★★

桑本栄太郎
駅伝と映画に過ぎる三が日★★★
あはあはと鴉の笑ふ御慶かな★★★
四日はやエンジン噴かす駐車場★★★
 
1月3日(4名)
小口泰與
風も無き群馬の山河三日かな★★★
三日はや孫は上京致しける★★★
上州の地より見ゆるぞ初富士よ★★★

多田有花
去年今年ともに湯にあり健やかに★★★
新年のあいさつ鳴子こけしにも★★★
朝の雪やみて初日がさしにけり★★★

桑本栄太郎
何となくきのうと違う初山河★★★★
ボール蹴る子等公園に初御空★★★
バス降りて家族そろいぬ正月会★★★

弓削和人
大雪は農村一過覆いけり★★★
菜園の灯籠雪におぼろかな★★★
見送りて雪の刹那に暮れにけり★★★
1月2日(4名)
多田有花
年の夜の料理を目にも楽しみぬ★★★
かき揚げを載せて鳴子の年越蕎麦★★★
降る雪が包む鳴子の年の夜★★★★

桑本栄太郎
<地元大原野神社へ初詣>
朱の鳥居拝礼したる初詣★★★
神獣の鹿と云うとや初参★★★
神苑の高き木立や淑気満つ★★★★

上島祥子
シリウスの光は確か去年今年★★★★
定年の挨拶手書きで年男★★★
謹賀新年深夜に送るスマートフォン★★★

弓削和人
すき焼きや箸を短くしてつつき★★★
霜やけや風呂をあたため血は巡り★★★

1月1日(3名)

小口泰與
年かわる時やひと風呂阿鼻にける★★★
連弾の聞こゆる露地や年はじめ★★★★
「露地」は茶庭、あるいは露地栽培と言う場合に使います。「路地」は庭の通路、家と家の狭い路に使います。句意は「路地」に読み取れますが、どちらでしょうか。(髙橋正子)
早きかなああお正月お正月★★★

廣田洋一
ビルの窓燦と光りて初日の出★★★★
白き富士凛然として淑気満つ★★★
老いたれば一つで良しと雑煮餅★★★

多田有花
大晦日北の国への列車に乗る★★★
大歳の駅に降り立てば硫黄の香★★★
除夜に降る雪眺めつつ露天の湯★★★★

自由な投句箱/12月21日~12月31日

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。 
       🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄
      今日の俳句『現代俳句一日一句鑑賞』(髙橋正子著)より
  名前の右端に🌸の印が付いている句は、(現)または(元)花冠会員の句
     名前の右端に🍁の印が付いている句は、花冠に縁の深い方の句
12月31日
★冬の虹隠岐の海より立ち上がる     加納 淑子(かのう としこ)🌸
12月30日
★許したちしづかに静かに白息吐く    橋本 多佳子(はしもと たかこ)
12月29日
★冬霧やしづかに移る朝の刻       谷野 予志(たにの よし)
12月28日
足袋つぐやノラともならず教師妻     杉田 久女(すぎた ひさじょ)
12月27日
★こきこきと海鼠を食めば海の底     守屋 光雅(もりや みつまさ)🌸
12月26日
★冬の海越す硫酸の壺並ぶ        谷野 予志(たにの よし)
12月25日
★書を読むや冷たき鍵を文鎮に      中村 草田男(なかむら くさたお)
12月24日
★堪へてゐる冷え歯痛とひとつになる  川本 臥風(かわもと がふう)🍁
12月23日
★くらがりに傾きて立つ炭俵      谷野 予志(たにの よし)
12月22日
★誰か咳きわがゆく闇の奥をゆく      篠原 梵(しのはら ぼん)🍁
12月21日
★広告塔かけのぼる冬至の夜空      川本 臥風(かわもと がふう)🍁

今日の秀句/12月21日~12月31日

12月31日(1句)

★猟犬の山懐を駆けにけり/小口泰與
「狩」「猟犬」は冬の季語。自然ゆたかな山懐を駆けまわる猟犬の躍動感ある姿が目に見えるように詠まれている。(髙橋正子)
12月30日(1句)

★着衣ごと皆洗濯に煤おさめ/桑本栄太郎
年末の大掃除は、かなり徹底して、身支度もそれなりにして、徹底して掃除をする家庭も多い。掃除が終わると、着ているもの一切合切を洗濯する。さっぱりと汚れを落として新年を迎えたい。その心持。(髙橋正子)
12月29日(1句)

★あけぼのの沼にやすらう真鴨かな/小口泰與
餌を食べに出かける前の曙の刻。沼にはしずかに安らう真鴨の姿が見られる。
曙の沼の静けさ、安息の水鳥の姿に、眺める者の心が安らぐ。(髙橋正子)
12月28日(1句)

★安けくて雪の浅間を拝みける/小口泰與
「安けくて」の気持ちがあれば、自然に「拝みける」になるのが人の心だと思う。静かにもどっしりと聳える雪の浅間山の美しさに畏敬の念さえ湧く。(髙橋正子)
12月27日(1句)

★稚けなきいろはもみじの落葉踏む/桑本栄太郎
「稚けなき」と言いたい気持ちになるのが、いろはもみじの葉の姿。降り積もる落葉はやむを得ず踏んでいくが、稚いものをふんでいるような罪悪感も湧く。赤ん坊の手を「もみじのような手」と呼んだ大正世代の女性たちがいた。(髙橋正子)
12月26日(1句)

★冬空を隠す大樹や城址跡/上島祥子
城跡には冬空を隠すほとの大樹が残っている。城はなくなっているが、大樹の樹齢はどれくらいだろうか。堂々たる姿。この句の良さは、詠み手が対象に向き合う姿勢の良さである。まっすぐである。(髙橋正子) 
12月25日(1句)

★冬の野に水青々と遊水池/廣田洋一
冬の野に遊水池があるのが、うれしい。冬の野に水が「青々と」している。この煌めくような青さに人は魅了される。(髙橋正子)
12月24日(1句)

★俳句一句慎ましく添え賀状書く/廣田洋一
賀状には、一言自分の近況を書き添えたりするが、端に一句を「慎ましく」そえたりする。大きく書かないのである。このあたりに心遣いが偲ばれる賀状である。(髙橋正子)
12月23日(2句)
★冬晴れや鳶は十迄数えたり/上島祥子
「鳶は十迄数えたり」は、鳶がピーヒョロと十回鳴く意味。「十」は実際「十」でなくても、そのくらいの数を言葉の彩で「十」と言うことがある。冬晴れの青空に鳶が鳴きながらゆったりと舞う姿が詠まれている。(髙橋正子)
★新宿見ゆ冬空澄める謙信平/土橋みよ
謙信平は栃木市にあって、そこからは関東が一望できると言う。名前の由来は下の※に示したことによるのであるが、「冬空澄める」に作者の気持ちの晴れやかさが読めて気持ちがいい。(髙橋正子)
※謙信平:戦国時代の頃、関東平定を競い対立した越後の上杉謙信と、小田原の北条氏康は、当時の大中寺住職虎溪和尚(こけいおしょう)の斡旋により、永祿11年(1568)9月、大中寺において和議を結んだ。
そのあと、上杉謙信は太平山に登り、兵馬の訓練を行い太平山上から南の関東平野を見渡し、あまりの広さに目を見張ったという故事から謙信平の地名が生まれたといわれる。 (栃木市観光協会ホームページより)
12月22日(1句)

★雲低く但馬は雪と思う午後/多田有花
兵庫県でも有花さんが住んでいる瀬戸内側と北部の但馬は1000m級の山を境に気候がちがってくる。瀬戸内側に雲が低く垂れると北部の但馬は雪だろうと思う午後である。情緒ある但馬の景色が目に浮かぶ。(髙橋正子)
12月21日(1句)

★霜夜なり玄関の戸を開け放ち/弓削和人

霜夜は霜が降るほどに寒い夜のこと。風もなく静かで空気が澄んでいる。日本には霜夜に玄関を開ける風習がある。いまでは、住宅環境の変化でこのような風習を知らない人も多いだろう。これは、霜除けのため。霜が玄関の扉に付着するのを防ぐため、また換気のため、また、静かで美しい霜夜の景色や雰囲気を楽しむためである。
この句はこれをそのまま詠んだ句だが、美しい霜夜の自然との一体感が感じられる。(髙橋正子)

12月21日~12月31日

12月31日(4名)
小口泰與
山風や冬鳴く鳥の声かすれ★★★★
猟犬の山懐を駆けにけり★★★★
表札も古りし我が家や冬の星★★★★

桑本栄太郎
玄関に飾りをつけて年おさめ★★★
外に出れば年末帰省の家族かな★★★
日差し受け鉢に水遣る大みそか★★★★

多田有花
車窓より富士くっきりと小晦日★★★
門松立つ国技館の門前に★★★
年の瀬の快晴の空へスカイツリー★★★
弓削和人
暖房のぬくさののこる家路かな(原句)
「のこる」がどこに残っているのははっきりさせる方が良いと思います。(髙橋正子)
暖房のぬくさ身にある家路かな(正子添削)

東北に来てひさかたに霜やけて★★★
湯豆腐のくずれるままに宵の友 ★★★
12月30日(3名)
小口泰與
草原の八千草枯れし冬さなか★★★
冬ぬくし我柔らかく絵具塗る★★★★
山峡の雪に埋もれし山家かな ★★★

桑本栄太郎
年用意今日はぬくきや玻璃磨く★★★
煤掃きの仕上げとしたる正午かな★★★
着衣ごと皆洗濯に煤おさめ★★★★

土橋みよ
寒きにも咲くアスパラ菜に励まされ★★★
掛け替えしカレンダーより思い新た ★★★

12月29日(4名)

小口泰與
大雪や鳶のやすらう森ふかし★★★
安けくて暖炉の間より雪見酒★★★
あけぼのの沼にやすらう真鴨かな★★★★

多田有花
置き薬入れ替えに来る年の暮★★★
年越しの旅の用意をしておりぬ★★★
年深し本年最後の洗濯す★★★

桑本栄太郎
煤掃きやすればするほどキリも無く★★★
冬日背の眠くなりたる昼餉あと★★★
冬雲に出入り激しき日差しかな★★★

上島祥子
年の瀬や杖つく足も速くなり★★★
大掃除終えてスリッパ新しく★★★
古暦晦予定は多く晦日まで(原句)
「古暦予定は多く晦日まで」?

12月28日(5名)

小口泰與
安けくて雪の浅間を拝みける★★★★
枯庭へ雨音高き石畳み★★★★
一面の雪にやすらう社かな★★★★

多田有花
数え日の時刻表を確かめる★★★
年用意髪をすっきり切りにけり★★★
葉牡丹の植替えをするボランティア★★★

廣田洋一
整髪の予約を入れる年の暮★★★
年の暮お酒一本賜りし★★★
魚屋の大声通る年の暮★★★★

桑本栄太郎
ひと風に落葉駆けゆく坂の道★★★★
こつ然と想い出うかぶ綿虫よ★★★
校庭の静寂となりぬ冬やすみ ★★★

弓削和人
水禽の湖面の揺れに合わせけり
「水禽」は「湖面の揺れ」に何を合わせるのですか。それをはっきり示す必要があり、省略はできないです。視点はとてもいいです。(髙橋正子)

手袋のあるとこになし外暮れて(原句)
「あるとこになし」は読みにくい欠点があります。面白い視点です。(髙橋正子)
手袋のあるところになし外暮れて(正子添削)

マスクして特急を待つ星の数 
「マスクして特急を待つ」と「星の数」の関係をはっきりさせましょう。発想や視点はいいです。(髙橋正子)

12月27日(4名)
小口泰與
上州の風にかしずく冬の山★★★
雪覆う利根源流の流れかな★★★
山裾の雪をかぶりし御社★★★

多田有花
よいお年をと言いて別れし年惜しむ★★★
仰向いて懐炉を背骨に当てている★★★
門松立つ昨日ツリーのありし場所★★★

桑本栄太郎
稚けなきいろはもみじの落葉踏む★★★★
綿虫や想い出忽と浮かび居り★★★
寒風に実を晒しけりさるすべり★★★

弓削和人
雪うさぎ突と車を横切り来★★★
セーターに隠れるような切符かな★★★
白鳥の雪片になり舞い降りぬ★★★
12月26日(6名)
多田有花
着膨れて平均台をしておりぬ★★★
駐車場にたい焼き移動販売車★★★
白南天の実のほのかなる黄色★★★

小口泰與
蜜柑盛る笊や卓袱台祖母の物(原句)
蜜柑盛る笊置く卓袱台祖母の物(正子添削)

もぎ取りて貰う蜜柑の日の温み★★★★
風の吹く様子は如何に冬赤城★★★

土橋みよ
クラリネット聴けば軽井沢の夏★★★
クリスマスケーキ果物だけ食べおり★★★
正月へ孫待ちて人参切り飾る★★★

桑本栄太郎
踏みしだき片方に寄りぬ落葉かな(原句)
踏みしだくのは自分で、片方に寄るのは落葉 と言う意味になっています。(髙橋正子)
踏みしだかれ片方に寄る落葉かな(正子添削)

入日背に雨の上がりぬ冬の虹★★★
波の花ふるさと想う日本海★★★

廣田洋一
花舗の前紅く光れる実南天★★★
千両が店を明るく年の内★★★★
賜りし暦並べて年の内★★★

上島祥子
氷上の靄吹き飛ばすフェイスオフ★★★★
冬空を隠す大樹や城址跡★★★★
旅先の泥を落として冬日和★★★
12月25日(5名)
小口泰與
寒雷や帯のようなる峠道★★★
ようやくに赤城鍋割雪景色★★★
枯れきって沼の顕わや山の径★★★

多田有花
バッハ弾きバッハを聴いてクリスマス★★★
生きてこそ幸いあれとクリスマス★★★
行く年のひと日ひと日を楽しみぬ★★★★

廣田洋一
土までも乾きて白き冬野かな★★★
冬の野に水青々と遊水池★★★★
約束の検診残す年の内★★★

桑本栄太郎
先急ぐ老いの人ゆく息白し★★★
白き実をからす啄む霜の晴れ★★★
早々と投函したり賀状書く★★★
弓削和人
冬将軍峠のさきに居座りぬ★★★
米兵の祝う聖樹や三沢基地★★★
ブラックを飲みほし越えん冬山路★★★
12月24日(4名)
小口泰與
赤城より物狂いして空っ風★★★
深山の古木ふとぶと青鷹(もろがえり)★★★
枯草や誤算だらけの人の世よ★★★

弓削和人
竜の玉冬の厳しさ耐えており★★★
雪原や沓のあとさき消え去りぬ★★★
軽トラの雪野かなたへ融けており(原句)
軽トラの雪野のかなたへ融けており(正子添削)

廣田洋一
喪中通知無きを確かめ賀状書く★★★
良い年をと声掛け合える年の暮★★★
俳句一句慎ましく添え賀状書く★★★★

桑本栄太郎
それぞれの想い出めぐり賀状書く★★★
約束の君は来ずなりイブの夜★★★
カップルの街にくりだす聖夜かな ★★★
 
12月23日(5名)

小口泰與
山の沼冬翡翠のもとおり来(く)★★★
利根川の河原もとより空っ風★★★
もののふの顔して釣らる冬鯰★★★

桑本栄太郎
路面濡れ光る朝やしぐれ虹★★★
しぐれ雲あがり白きや嶺の膚★★★
冬日背に思案して居り句の推敲★★★

土橋みよ
自動ドア踏み出す足元枯葉舞う★★★
サンタ服子ども歩けば人とまる★★★
謙信平/冬空澄みて/新宿見ゆ(原句)
新宿見ゆ/冬空澄める謙信平(正子添削)
俳句は一般的に、三段切れといって、一句のなかで切れが二か所になるのを嫌います。(髙橋正子)
新宿見ゆ冬空澄める謙信平(正子添削)

廣田洋一
川に沿い川を見下ろし冬野行く★★★
数え日や産土神へお礼参り★★★
数え日や入れ歯の型を整えし★★★

上島祥子
冬晴れや鳶は十迄数えたり★★★★
冬座敷猫の爪痕そのままに★★★
冬の朝鈴音さやかに地域猫★★★★

12月22日(5名)
小口泰與
もどかしく青空見やぐ冬の夕★★★
利根川も荒荒しきや空っ風★★★
忽然と風の物言い冬深し★★★

弓削和人
寒鴉降りてましろき原野かな★★★
除雪機の壊れしままに雪根づく★★★
言の葉をのこして冬のベンチかな★★★

廣田洋一
街の川細く流れて冬野かな★★★
多摩川の煌めく光冬野かな★★★
納め句座一つを残す年の内★★★

多田有花
冬至南瓜さっくり割って塩蒸しに★★★
冬至過ぎ夜明けはさらに遅くなる★★★
雲低く但馬は雪と思う午後★★★★

川名ますみ
落つる日を待ちて冬至の富士黒し★★★★
凩を追ってぴくりと猫の耳★★★
聖橋渡り冬紅葉の街へ★★★
12月21日(5名)

小口泰與
位ある古木に鷹の止まりけり★★★
冬の沼藻屑の中に魚住めり★★★
空風や集いし人はみんな黙(原句)
空風や集いし人のみな黙る(正子添削)

多田有花
やや雲の多かり一陽来復の朝よ★★★
雲晴れて冬至真昼の陽がさしぬ★★★
たっぷりと蕾蓄え山茶花は★★★

廣田洋一
浮かびたる柚子をかき分け湯に入る★★★
冬至とて早めに門灯灯しけり★★★
気が付けば夕日落ちてる冬至かな★★★

桑本栄太郎
濯ぎもの干すや眩しき冬至の日★★★
枯木なるあまた鴉の止まりけり★★★
まんさくの枯葉のままに冬芽かな★★★

弓削和人
重ね着の子らのてのひら白きもの★★★
霜夜なり玄関の戸を開け放ち★★★★
底冷の廊下のさきの灯しかな★★★

自由な投句箱/12月11日~12月20日

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。 
       🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄
      今日の俳句『現代俳句一日一句鑑賞』(髙橋正子著)より
  名前の右端に🌸の印が付いている句は、(現)または(元)花冠会員の句
     名前の右端に🍁の印が付いている句は、花冠に縁の深い方の句
12月20
★冬菊のまとふはおのがひかりのみ     水原 秋櫻子(みずはら しゅうおうし)
12月19日
★枯草の一人の幅の径下る         篠原 梵(しのはら ぼん)🍁
12月18日
★たっぷりの真水に冬菜解かれけり     脇 美代子(わき みよこ)🌸
12月17日
★玻璃越の凩の顔とわかれたり       加藤 楸邨(かとう しゅうそん)
12月16日
★今ぬぎし足袋冷やゝかに遠きもの     細見 綾子(ほそみ あやこ)
12月15日
★立ちしものに光りを注ぎ冬満月      碇  英一(いかり えいいち)🌸
12月14日
さむきわが影とゆき逢う街の角       加藤 楸邨(かとう しゅうそん)
12月13日
★冬曙六人の病床うかびそむ        石田 波郷(いしだ はきょう)
12月12日
★咳の子のなぞなぞあそびきりもなや    中村 汀女(なかむら ていじょ)
12月11日
★きしあとわが白息の豊かなる       橋本多佳子(はしもと たかこ) 

今日の秀句/12月11日~12月20日

12月20日(1句)

★湧水の音絶え間なく年迫る/廣田洋一
本格的な句。年が迫りあわただしい世間に対し、湧水はこんこんと湧き出し、水音も絶えない清浄な世界がある。(髙橋正子)
12月19日

※該当句無し
12月18日(1句)

★柚子の黄の日向占め居り庭の隅/桑本栄太郎(正子添削)
庭の隅の柚子の実が冬の日が受けて、冬の日を一人占めするかのように明るく照っている。(髙橋正子)
12月17日(1句)

★冬の駅汽笛は線路を走りけり/弓削和人
とくにローカル線の冬の駅は、寒々としてホームに立てば線路が遠く続くの見える。汽笛は「線路を走りけり」の印象で、汽笛の音は線路づたいに抜けていく。空気の緊張感も感じさせて、言い得ている。(髙橋正子)
12月16日(1句)

★短日の入日が窓を輝かす/多田有花
「短日の入日」だけで、詩になっている。「窓を輝かす」は作為がないのがいい。(髙橋正子)

★吹かれきし木の葉も共に掃きにけり /廣田洋一
枝についている枯葉も、落葉のも「木の葉」と言う。吹かれてきた木の葉を今掃いている木の葉と一緒に掃く。せっかく掃いたところへ、また飛んでくる。誰のものでもない木の葉の掃除はこの季節の仕事。(髙橋正子)
12月15日(1句)
友と居て言葉飛び去る空っ風(原句)
「友と居て」の部分は、「友」を意識すれば当然そこに「友が居る」ことになるので、「居る」が必要かどうか考えないといけないです。(髙橋正子)

★空っ風友の言葉を奪い去る(正子添削)
「空っ風」は、晴れた日に吹く北西の乾燥した季節風で、北陸に雪を降らせ山を越えて上州や関東に吹き下ろす。
空っ風が吹いてきて友の言葉がよく聞き取れなかったのだろう。空っ風が友の言葉を奪い去った。空っ風には非情な部分もあるのだ。(髙橋正子)

12月14日(1句)

★外套のまま召し上がれ中華そば/小口泰與(原句)
外套のままに食うなり中華そば/小口泰與(正子添削例)
原句は、面白い視点で詠んでいる。外套のままに着ぶくれて、湯気に顔を埋めて食べる姿に、庶民の哀歓が見える。(髙橋正子)

12月13日(1句)

★古釘を少し磨きて注連飾る/廣田洋一
古釘は注連飾りを取り付けるために、取り外さないで打ち付けたままなのだろう。それが古釘になって錆が付いている。新年を迎える気持ちが、錆を少し落として注連を飾らせるのだ。「少し」が自然体で好もしい。(髙橋正子)
12月12日(2句)
★ジャングルジムの中より見上げ冬の空/多田有花
ジャングルジムの内側に入って空を見ると、空に交錯する線が引かれているように見える。線描画のような、都会的な景色が見える。冬空が一番似合う。(髙橋正子)

★山眠る湖底のウグイもこんこんと/弓削和人
魚類は水温が5度C以下になると仮眠状態になるという。これを魚の冬眠とも言っている。湖水の水温が下がり、あるい氷が張っているのかもしれないが、湖の山が眠るそばで、湖底ではウグイも眠っている。冬の寝息の聞こえるようなひそやかな世界。(髙橋正子)
12月11日(1句)

★溝川のこぼこぼ落つる冬田べり/桑本栄太郎
「ごぼごぼ」落ちる溝川の水が、冬田のへりで力強く聞こえる。ものが枯れるなかの、水のいきいきとした力強さである。(髙橋正子)