今日の秀句/3月1日~10日

3月10日(1句)
★ヘリコプター春の雲間に旋回す/古田敬二
実物のヘリコプターが旋回していながら、句に詠まれて、模型のヘリコプターのようになっている軽やかな面白さ。(高橋正子)
3月9日(1句)
★2Bの鉛筆削りて春吟行/古田敬二
暖かくなったので、吟行に出かけるのも億劫でなくなった。鉛筆と手帖を携えての吟行。立ち止まりながら書くのなら、柔らかい芯の鉛筆がいい。削ることは、出かける前の心準備。(高橋正子)
3月8日(2句)
★春の闇浅間火柱眼間に/小口泰與
春の闇に、浅間の噴火の火柱が眼間に迫って見える。春の闇が妖艶にさえ思える。(髙橋正子)
★さみどりに太りて尖る辛夷の芽/古田敬二
辛夷の花芽は、うぶ毛のようなさみどりの毛のつつまれている。そして太くて、逞しく尖っている。開けばひらひらと風に舞うような花の花芽とは思えないが、実際はこうなのだ。(高橋正子)
3月7日(1句)
★初桜演奏帰りの山の辺に/多田有花
何を演奏されたのか。舞台の高揚感はいつしか覚め、山の辺にさしかかれば、初桜が目に止まる。舞台の成功をささやかに祝福するようだ。(高橋正子)
3月6日(1句)
★畦道の右も左揚雲雀/小口泰與
畦道を歩くと、右からも左からも雲雀が飛び立つ。驚かされつつ見て居れば、あれよと言う間に雲間にいる。こんなにも雲雀がいて、豊かな自然だ。(高橋正子)
3月5日(2句)
★山茱萸の花の明かりの軒端かな/桑本栄太郎
料峭の花、山茱萸は、研ぎすまされたようなきれいな黄色。それが軒端にあると軒端は花明かりに浮き立つようだ。(高橋正子)
★風光る新生児抱く父親へ/川名ますみ
抱くことに慣れない父親が新生児をこわれそうなものを抱くように大事に抱いている。それを風がきらきらと吹いてゆく。命の輝きを見るようだ。(高橋正子)
3月4日(2句)
★轟ごうと谷川揺るや杉の花/小口泰與
杉の花が咲くころ、谷川は雪解け水に水量を増して、轟ごうととどろきながら身を揺らして流れる。谷川に迫る杉木立も谷川の音に揺れるほど。堂々とした男性的な句。(高橋正子)
★離れ住むわが娘(こ)へ運ぶ雛料理/古田敬二
離れ住むわが娘に、幼いころを姿を重ね、いまも変わらぬ愛情で、ひな料理を運ぶ。懐の深さと温かさが父親たるところ。(高橋正子)
3月3日(2句)
★一枝の桃の節句てふ厨かな/廣田洋一
厨に桃の花の一枝をさした。一枝の桃の花で厨はすっかり桃の節句の雰囲気となる。ささやかながらも心華やぐ。(高橋正子)
★ひな祭りよく晴れ朝のまだ寒し/多田有花
ひな祭の朝は、晴れた朝なら、特に寒さが残る。昼間はあたたかくなるであろうが、ひな祭りの華やぎに凛とした空気が加わる。(髙橋正子)
3月2日(1句)
★ランドセル光らせ下校春日和/多田有花
低学年の児童であろうか。まだ日が高いうちの下校。ランドセルに春の日が当たっててらてらと光っている。のどかな下校風景を少し離れて見守る作者のあたたかさがいい。(高橋正子)
3月1日(2句)
★おぼろ月夕餉のしたくしておれば/多田有花
夕餉の支度をしながら窓をみるとおぼろ月が懸かっている。夕餉の支度さえも艶めいて思えるおぼろ月。(高橋正子)
★春立てば梢の天へなお高し/古田敬二
春になった。そのことで梢は天へさらに伸びようとし、天は梢をはるか下にしてなお高くある。万物は高く、明るく、春へ動き始める。(高橋正子)

3月1日~10日

3月10日(4名)
廣田洋一
引鶴や螺旋に飛びて北を向く★★★
引鶴の前を向きたる長き首★★★
引鶴や友の訃報に献杯す★★★★
小口泰與
板塀をひそかに渡る猫の夫★★★
暖かや金平糖の角まるき★★★
支流よりひたと出で來る雪解水★★★★
桑本栄太郎
春風の水面を渡りさざ波に★★★★
紅白の源平咲きや落つばき★★★
青空にもくれん開き摘み見る★★★
古田敬二
ヘリコプター春の雲間に旋回す★★★★
山茱萸の主なき庭に光浴ぶ★★★
犬ふぐり畑に残し草を引く★★★
3月9日(4名)
小口泰與
縄文の出っ尻土偶風光る★★★
畦道へ土塊落とす燕かな★★★★
久方の空へ浅間の雪解かな★★★
廣田洋一
春の野や光さんさん子らの声★★★
春の野や笑顔こぼれる家族連れ★★★
春の野の小川とろとろ流れけり★★★
桑本栄太郎
木蓮の千のつぼみや咲き初むる★★★★
想い出の房のピンクや馬酔木咲く★★★
べんがらの板塀褪せし春半ば★★★
古田敬二
今年又初音を妻に先越され★★★
2Bの鉛筆削る春吟行★★★★
刈り込まれ低きに咲き初むイタチ草★★★
3月8日(4名)
小口泰與
春の闇浅間火柱眼間に★★★★
たぶたぶと湯舟溢れし春の宵★★★
雉啼くや土煙上ぐ耕運機★★★
廣田洋一
雨空に明るき墓碑や立子の忌★★★★
春塵や銀杏並木にクリーニング店★★★
啓蟄や動き出したる団子虫★★★
桑本栄太郎
ほろほろと房のピンクや馬酔木咲く★★★
雨上がる朝の日差しや桜芽木★★★★
みな見上げ通り過ぎ居り白木蓮★★★
古田敬二
菜の花や田原の町の長屋門★★★
青空へこぶしの蕾さみどりに★★★
さみどりに太りて尖る辛夷の芽★★★★
3月7日(5名)
小口泰與
君子欄影をひきいる応接間★★★
鳥雲にズームレンズの重さかな★★★
小綬鶏や大河ドラマの始まりぬ★★★

廣田洋一

遠景色色変りたる砂嵐★★★
春塵に巻かれつつ行く散歩道★★★
駆ける子を追ひかけ上がる春の塵★★★
多田有花
啓蟄や人みな野辺に繰り出しぬ★★★
鶯や朝の体操しておれば★★★
初桜演奏帰りの山の辺に★★★★

桑本栄太郎

乙訓の丘の田道や揚ひばり★★★
橡の芽のてらてら芽吹く日差しかな★★★★
白壁の築地の塀やしだれ梅★★★
古田敬二
雪消えてシルエットとなる鈴鹿嶺★★★
草原の青き草食む羊かな★★★
どこからか公園に飛ぶなシャボン玉(原句)
どこからか公園に飛ぶシャボン玉★★★★(正子添削)
3月6日(5名)
小口泰與
畦道の右も左も揚雲雀★★★★
大いなる浅間控える桜かな★★★
春暁の禽の鋭声や藪の中★★★
廣田洋一
草餅や思ひ出したる野の香★★★★
絶え間なく白き花舞ふ立子の忌★★★
鳥の声一声高く立子の忌★★★
桑本栄太郎
白れんの今に飛翔や咲き初むる★★★★
陸橋の開き初めたる白木蓮★★★
春雲の嶺を奔りて止まらず★★★
多田有花
うぐいすの囀り繁くなる朝★★★
ポストまで駆けてゆくなり春の雨★★★
さんしゅゆの花や遠くで人の声★★★★

古田敬二

鴨引けりさざ波の無き池となる★★★
葦の芽のさざ波来れば見えぬほど(原句)
葦の芽にさざ波来れば見えぬほど★★★★(正子添削)
雪柳咲けり夕べの雨の後★★★
3月5日(6名)
小口泰與
活写せる五羽の白鳥帰りける★★★
諸子魚釣先頭駆ける女の子★★★
白梅や風の秀づる利根川原★★★
廣田洋一
露天湯の雲の流れて日永かな(原句)
露天湯に雲の流れて日永かな★★★★(正子添削)
帰り来て襟元払ふ春の塵★★★
春埃食事の度に拭き清め★★★
桑本栄太郎
淡々と雨にピンクや馬酔木咲く★★★
山茱萸の花の明かりの軒端かな★★★★
料峭の花、山茱萸は、研ぎすまされたようなきれいな黄色。それが軒端にあると軒端は花明かりに浮き立つようだ。(高橋正子)
蘂のみな上に襤褸やつばき落つ★★★
川名ますみ
風光る新生児抱く父親へ★★★★
抱くことに慣れない父親が新生児をこわれそうなものを抱くように大事に抱いている。それを風がきらきらと吹いてゆく。命の輝きを見るようだ。(高橋正子)
葉のうらにましろき莟シクラメン★★★
菜の花の下にサフラン五つ六つ★★★
多田有花
あたたかき雨の降る音春未明★★★
春の空映せる池に鷺来る★★★
雲行くや芽吹きの時を待ちし木々(原句)
雲行くや芽吹きの時を待てる木々★★★★(正子添削)

古田敬二

煮えたぎる湯へしゃぶしゃぶの蛍烏賊★★★★
残雪も消え影絵となる鈴鹿嶺★★★星
二ン月の時刻の過ぎる早さかな★★★

3月4日(5名)
小口泰與
楤の芽の天ぷらに沸く都会っ子★★★
華やかに沼を囃すや春の鴨★★★
轟ごうと谷川揺るや杉の花★★★★
杉の花が咲くころ、谷川は雪解け水に水量を増して、轟ごうととどろきながら身を揺らして流れる。谷川に迫る杉木立も谷川の音に揺れるほど。堂々とした男性的な句。(高橋正子)
古田敬二
離れ住むわが娘(こ)へ運ぶ雛料理★★★★
離れ住むわが娘に、幼いころを姿を重ね、いまも変わらぬ愛情で、ひな料理を運ぶ。懐の深さと温かさが父親たるところ。(高橋正子)
長男が上手に裁く細魚かな★★★
蛍烏賊入れ歯に堅き目玉かな★★★

廣田洋一

窓際の机うっすら春埃★★★
霞立つ足音だけの人が行く(原句)
「霞立つ」と「行く」の二か所に切れがあります。これは避けたいです。このごろは、このように切ってしまった句を俳句総合誌でも見かけますが、もともと切れは付かず離れずの関係です。(高橋正子)
霞立つ足音だけの人が行き★★★★(正子添削)
丹沢の山々霞む朝かな★★★
桑本栄太郎
溝川の楽となりたる犬ふぐり★★★
休耕の畑を占めたり花なずな★★★
芽柳の佳人のように腰揺るる★★★

多田有花

恋猫の声夜更けにも夜明けにも★★★
遠目にも煙のごとく柳の芽★★★★
はくれんの花芽のほぐれ初めにし日★★★
3月3日(5名)
小口泰與
春の夕秀つ枝下枝に雀かな★★★
初蝶のゆたにたゆたに草の間を★★★
落椿五目並べの手が止まる★★★
廣田洋一
雛飾る形ばかりの雛祭★★★
一枝の桃の節句てふ厨かな★★★★
厨に桃の花の一枝をさした。一枝の桃の花で厨はすっかり桃の節句の雰囲気となる。ささやかながらも心華やぐ。(高橋正子)
遅き日や今日の工程終へにけり★★★
桑本栄太郎
風を避け植え込みに沿い木の芽吹く★★★
陽菜人(ひなと)とう直売所あり春の畑★★★
ものの芽や山里光るさみどりに★★★★
多田有花
ひな祭りよく晴れ朝のまだ寒し★★★★
ひな祭の朝は、晴れた朝なら、特に寒さが残る。昼間はあたたかくなるであろうが、ひな祭りの華やぎに凛とした空気が加わる。(髙橋正子)
雉鳴くや昼餉を終えしその窓辺★★★
雛の日やピアニカで吹くアベマリア★★★

古田敬二

春炬燵きょうから薬一つ増え★★★
寒烏木の天辺に鎮座する★★★
つがい鴨北へ飛びゆく時を待つ★★★★
3月2日(4名)
廣田洋一
シクラメン葉陰に伸びる蕾かな★★★
シクラメン白斑の花の群咲けリ★★★
シクラメンきりりと顔を上げたりき★★★
小口泰與
白鳥帰る声高らかに華やかに★★★
ばらの芽の和紙の如くにほぐれけり★★★
梅の香や縁側に食む塩せんべい★★★
多田有花
ランドセル光らせ下校春日和★★★★
低学年の児童であろうか。まだ日が高いうちの下校。ランドセルに春の日が当たっててらてらと光っている。のどかな下校風景を少し離れて見守る作者のあたたかさがいい。(高橋正子)
春一番吹いて午後には雨あがり★★★
春キャベツ今日の目玉と積まれおり★★★

桑本栄太郎

春荒や傘を斜めに登校生★★★
春一番吹いて雨降る午後の冷え★★★
春睡の赤子のように雨の午後★★★
3月1日(5名)
小口泰與
狂暴の巨花の去りけり春の沼★★★
白鳥の引きゆく沼へ目を張るや★★★
春夕べほつ枝取り合う雀かな★★★
廣田洋一
ものの芽や花壇に秘めし花の色★★★
新築の家に新車や春の風★★★
春塵や道を隔てて舞来たる★★★
多田有花
おぼろ月夕餉のしたくしておれば★★★★
夕餉の支度をしながら窓をみるとおぼろ月が懸かっている。夕餉の支度さえも艶めいて思えるおぼろ月。(高橋正子)
明けてくる窓辺に初音響きおり★★★★
三月や池の畔でピアニカを★★★

桑本栄太郎

山里の地道に迷う春日かな★★★
春日さす南茶屋とや辻看板★★★
UFOと見たるさみどり土佐みずき★★★
古田敬二
陽が落ちるキャベツ畑を黒くして(原句)
春日落つキャベツ畑を黒くして★★★★(正子添削)
キャベツは歳時記では、夏の季語です。キャベツは露地栽培しかできないので、採れる時期によって冬キャベツ、春キャベツ、グリーンボール(夏)、高原キャベツ(夏)があり、今の時期なら春キャベツということになりましょう。
午後からの風に打たれて畑を鋤く★★★
春立てば梢の天へなお高し★★★★
春になった。そのことで梢は天へさらに伸びようとし、天は梢をはるか下にしてなお高くある。万物は高く、明るく、春へ動き始める。(高橋正子)

自由な投句箱/2月21日~28日

※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/2月21日~28日

2月28日(1句)
★さわさわと菜の花に吹く海の風/古田敬二
菜の花に吹く海の風を「さわさわ」と表現しているので、菜の花の柔らかさ、その匂いが現実感をもって快く伝わってくる。菜の花と海の取り合せが明るい。(高橋正子)
2月27日(1句)
★茶箪笥に紙の雛の置かれけり/小口泰與
紙の雛は、思うところに、どこにでも飾れるよさがある。家族がくつろぐ茶の間の茶箪笥に、紙雛を置く。とたんに明るく艶めいて、暮らしを美しく彩ってくれる。(高橋正子)
2月26日(1句)
★二階より紙飛行機や春の宵/小口泰與
思わぬ方向の二階から紙飛行機が飛んできた。ふいのことに驚いた。紙飛行機を飛ばした二階の少年に幼いころの自分を重ねたのだろう。浪漫的な感傷の漂う春の宵のことだから。(高橋正子)
2月25日(1句)
★雉啼くや山火事いまた収まらず/小口泰與
時事の山火事を詠んだ句。栃木県足利市の山火事が5日目となるが、赤城颪の風も吹いてか、燃える区域が広がっている。消火には10日から2週間かかるとみられる。山に棲む雉の鳴き声も哀しげに尾をひいて聞こえる。鎮火を祈る。(高橋正子)
2月24日(2句)
★風吹けば風の行方になずな咲く/桑本栄太郎
風が吹いて行く方へ、歩いて行くとそこになずなが咲いていた。風の案内を受けて歩いた野道がやさしく詠まれている。(高橋正子)
★紅梅を仰げば空のみずいろに/多田有花
紅梅が咲く空は、真っ青ではなく、みずいろ。春の空は青く見えながらも、霞がかかっていて淡い。紅梅の紅とみずいろの取り合わせが若々しい。(高橋正子)
2月23日(2句)
★大小の水車廻りて水温む/廣田洋一
流れにある大小の水車。大きい水車はたくさんの水を、小さい水車は少しの水を汲み流している。のどかな光景に水の温みを感じる。遠近感とリズム感があり、景色が生きている。(高橋正子)
★荷造りの紐の緩みや春菜着く/桑本栄太郎
荷物は遠くから運ばれ来た。人の手に渡り、車に揺られ、しっかり縛っていた紐が緩んでいる。荷には故郷の春菜がいろいろと。「緩み」と「春菜」の関係がいい。(高橋正子)
2月22日(1句)
★根元には日色を残しほうれん草/廣田洋一
ほうれん草の根元の赤い色は、緑濃い葉に対比されて、印象に残る。その赤い色をこの句では、「日色」と言った。太陽のもとに育ち、日の色を溜めたとも言える。生き生きとしたほうれん草だ。(高橋正子)
2月21日(1句)
★びょうびょうと風が耳過ぎ揚げひばり/桑本栄太郎
ひばりが鳴く野に出ると、耳元を風がびょうびょうと過ぎる。野を吹く強い風の中、高揚がるひばりの姿が力強い。(高橋正子)

2月21日~28日

2月28日(5名)
小口泰與
松風や四つの古墳へ春日影★★★★
日おもてを好む小犬や犬ふぐり★★★
雪岱の余白の挿絵春の波★★★
廣田洋一
ものの芽の緑を秘めし花壇かな★★★
西天に春満月の冴々と★★★★
一人でて春満月を仰ぎたる★★★
多田有花
春寒を戻りて熱きポトフ食ぶ★★★
雨あがる未明の街を春疾風★★★
枝垂梅風を誘いて枝垂れおり★★★★

桑本栄太郎

U・F・Oと見たる思いや土佐水木★★★
かすみ立つ遥か彼方や淀川に★★★
けぶり立つ畑となりたる二月尽★★★
古田敬二
落日にその影はっきり春の雪★★★
さわさわと菜の花に吹く海の風★★★★
菜の花に吹く海の風を「さわさわ」と表現しているので、菜の花の柔らかさ、その匂いが現実感をもって快く伝わってくる。菜の花と海の取り合せが明るい。(高橋正子)
一斉に菜の花なびく海風に★★★
2月27日(3名)
小口泰與
公魚や見えて遥けき湖の舟★★★
大試験家の哀歓ひひめける★★★
茶箪笥に紙の雛の置かれけり★★★★
紙の雛は、思うところに、どこにでも飾れるよさがある。家族がくつろぐ茶の間の茶箪笥に、紙雛を置く。とたんに明るく艶めいて、暮らしを美しく彩ってくれる。(高橋正子)
廣田洋一
妖艶な桃色光る椿かな★★★
小さき木に一輪咲きし椿かな★★★
走り根を紅く挟みて落椿(原句)
「紅く挟み」の「挟み」が気になりす。
走り根の間をうづめ落椿★★★★(正子添削)
桑本栄太郎
こつ然と天の静寂や雲雀落つ★★★
春寒のほつえにありぬ青き空★★★★
もくれんのにつと微笑み咲くばかり★★★
2月26日(3名)
小口泰與
春荒やいつもの事よ上州は★★★
夕食の会話弾みぬ大試験★★★
二階より紙飛行機や春の宵★★★★
思わぬ方向の二階から紙飛行機が飛んできた。ふいのことに驚いた。紙飛行機を飛ばした二階の少年に幼いころの自分を重ねたのだろう。浪漫的な感傷の漂う春の宵のことだから。(高橋正子)

廣田洋一

ものの芽の色に染まりし花壇かな(原句)
「色に染まり」では、読み手は「色」が具体的にイメージしにくいので、句が漠然とします。なにか想像の手がかりが欲しいです。
参考までに草田男の句を挙げます。
「青もかち紫も勝つ物芽かな 中村草田男」
ものの芽の色いろいろに花壇かな★★★★(正子添削例)
着古せし衣類を捨てて2月尽★★★
積まれし本地震にも耐え2月尽★★★
桑本栄太郎
目覚めても追憶つづく朝寝人★★★
竹の枝の支柱立てらる花ゑんどう★★★★
春風のパタパタ叩くトタン屋根★★★
2月25日(4名)
小口泰與
囀りや風吹かぬ日の厩橋★★★
雉啼くや山火事いまた収まらず★★★★
時事の山火事を詠んだ句。栃木県足利市の山火事が5日目となるが、赤城颪の風も吹いてか、燃える区域が広がっている。消火には10日から2週間かかるとみられる。山に棲む雉の鳴き声も哀しげに尾をひいて聞こえる。鎮火を祈る。(高橋正子)
山茱萸の花かたまりて毬の如★★★
廣田洋一
公園を駆けまわる子ら春めきぬ★★★
春めくや名を知らぬ花咲きにけり★★★
マンションの工事の音や春めけり★★★
多田有花
紅梅の後ろも紅梅色さかん★★★
陽を透かす高き梢の藪つばき★★★★
ピアニカを奏でておれば春の鳥★★★

桑本栄太郎

レシピ添え花菜売らるる無人店★★★
揚ひばり畑の真中にいちご園★★★★
春風のトタンの屋根を叩きけり★★★
2月24日(4名)
小口泰與
春眠の中に入りくる猫の声★★★
春泥や次つぎ庭へ群雀★★★
春疾風端山へ対う鳥の群★★★
廣田洋一
庭の草はたと揺れ止み冴返る★★★
濃紅梅白梅に割り込みにけり★★★
枝垂梅一輪残る枝の先★★★
桑本栄太郎
パンジーの蝶となる日か日差しけり★★★
風吹けば風の行方になずな咲く★★★★
風が吹いて行く方へ、歩いて行くとそこになずなが咲いていた。風の案内を受けて歩いた野道がやさしく詠まれている。(高橋正子)
青空を透いて並木や銀杏の芽★★★
多田有花
春の夜懐かしき人の夢を見る★★★
あけぼのの春山ぎわの空を見る★★★
紅梅を仰げば空のみずいろに★★★★
紅梅が咲く空は、真っ青ではなく、みずいろ。春の空は青く見えながらも、霞がかかっていて淡い。紅梅の紅とみずいろの取り合わせが若々しい。(高橋正子)
2月23日(3名)
小口泰與
赤城はや雪解水はも放ちける★★★
自転車の通学女子へ春疾風★★★
雨後の庭朝日賜わる牡丹の芽★★★
廣田洋一
指文字を書きたる水の温みけり★★★
鯉の群広がる淵の水温む★★★
大小の水車廻りて水温む★★★★
流れにある大小の水車。大きい水車はたくさんの水を、小さい水車は少しの水を汲み流している。のどかな光景に水の温みを感じる。遠近感とリズム感があり、景色が生きている。(高橋正子)
桑本栄太郎
花びらの一重楚々たり薮椿★★★
川べりにひそと番いや残り鴨★★★
荷造りの紐の緩みや春菜着く★★★★
荷物は遠くから運ばれ来た。人の手に渡り、車に揺られ、しっかり縛っていた紐が緩んでいる。荷には故郷の春菜がいろいろと。「緩み」と「春菜」の関係がいい。(高橋正子)
2月22日(4名)
小口泰與
浅間刷く霞の波や鳥の声★★★
春の宵土偶の尻の豊かにて★★★
外にも出よ春満月を浴びてみよ★★★
廣田洋一
川の鯉大きく跳ねて春動く★★★
温度差の大きな日々や春動く★★★
根元には日色を残しほうれん草★★★★
ほうれん草の根元の赤い色は、緑濃い葉に対比されて、印象に残る。その赤い色をこの句では、「日色」と言った。太陽のもとに育ち、日の色を溜めたとも言える。生き生きとしたほうれん草だ。(高橋正子)
多田有花
観梅の人の数多に陽のやさし★★★
家島の影ぼんやりと春霞★★★
天をさすまだ枝のみの山桜★★★★
桑本栄太郎
嶺の端に送電塔やかすみ立つ★★★
こつ然と空の静寂や雲雀落つ★★★
菜の花を供華と抱きたる祠かな★★★
2月21日(4名)
小口泰與
着水の禽の飛沫へ春日影★★★
黄水仙朝日含みて向きむきに★★★★
春の日や芝のおちこち醜草よ★★★
廣田洋一
梅祭日帰り旅に出かけたり★★★
光る海遠くに見つつ梅見かな★★★★
この辺で一寸一服梅見茶屋★★★
多田有花
観梅の人の数多に陽のやさし★★★
家島の影ぼんやりと春霞★★★
天をさすまだ枝のみの山桜★★★★
桑本栄太郎
枝垂れ梅しだれ軒端に日差しけり★★★
びょうびょうと風の耳過ぐ揚ひばり(原句)
びょうびょうと風が耳過ぎ揚げひばり★★★★(正子添削)
ひばりが鳴く野に出ると、耳元を風がびょうびょうと過ぎる。野を吹く強い風の中、高揚がるひばりの姿が力強い。(高橋正子)
ほろ苦き菜の花和えの夕餉かな★★★

自由な投句箱/2月11日~20日

※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆花冠発行所◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan100
◆月例ネット句会
https://blog.goo.ne.jp/kakan02d
◆俳句日記/高橋正子◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/2月11日~20日

2月20日(2句)
★春きざす窓に風音空の青/川名ますみ
窓辺に聞こえる風の音、窓から見える空の青にたしかに「春のきざし」を感じた。形としてとらえられない音や色にまず季節の変化が現れると言っていいだろう。(高橋正子)
★俳句誌を開きたるまま春の宵/古田敬二
春の宵。それまで読んでいた俳句雑誌を開けたまま宵の時が過ぎる。明るく艶めいた浪漫的な感傷の漂う俳句がありそうな俳誌なのか。(高橋正子)
2月19日(1句)
★春きざす園児らはしゃぐ庭一杯/桑本栄太郎
庭一杯に広がってはしゃぐ園児がかわいらしく、にぎやかで、春のきざしの確かさがある。(高橋正子)
2月18日(2句)
★紙雛を共に飾りて賑やかに/廣田洋一
雛飾りは、女子のすこやかな成長を願い、また季節の美しさを愛でて飾られる。桜や橘の木木、菱餅や白酒を供え、桃の花を飾って、華やかな節句である。段飾りの雛の周りに紙雛も飾って、にぎやかにする。さびしくないようにの親心であろう。心のこもった雛飾り。(高橋正子)
★春泥の靴に重たく残りけり/古田敬二
春泥は、おのずから柔らかく、てらてらと光る感じがする。雪解けや凍てが緩み雨が降ると泥濘はあちこちに生じる。靴につくと粘って靴から離れず重い。それは、春泥特有の重さだ。(高橋正子)
2月17日(1句)
★渓流の音の方へと蕗の薹/小口泰與
渓流は、雪解け水に嵩を増して岸辺を濡らしながら流れている。蕗の薹は湿ったところを好むのか、水ぎわへと芽生えている。渓流のそばの蕗の薹が清冽な印象で詠まれている。(髙橋正子)
2月16日(1句)
★余寒あり蕪とろとろに煮えて/多田有花
余寒の寒さは身にしみて、温かいものが食べたくなる。ポトフなどに煮込んだ蕪がとろとろに甘く煮えて、一口食べれば、身も心も温まる。蕪がとろとろに煮えたイメージが余寒の空気感によくマッチしている。(高橋正子)
2月15日(1句)
★せせらぎの音涼やかに山笑ふ/廣田洋一
「山笑ふ」を遠くから眺めたのではなく、近くで実感した意義が大きい。山川のせせらぎの音が涼やかに音を立てて、木々の芽も吹くらんできている。日差しが明るく、にこやかな光景。(高橋正子)
2月14日(1句)
★さざ波の立ちて薄氷流れけり/桑本栄太郎
さざ波が立っていると川を覗けば、薄氷が溶けながら流れている。小さな波とうすうすとした氷の、儚いものの世界に作者の好みが読める。(高橋正子)
2月13日(1句)
★春きざす我を追い抜きトラクター/桑本栄太郎
春が来ると畑仕事が忙しくなる。出会ったトラクターも人が歩くを追い越して勢いをつけて農道を走っている。こんなところにも春のきざしが見えてうれしいものだ。(高橋正子)
2月12日(1句)
★淀川の下流かすみぬ菜の花忌/桑本栄太郎
菜の花忌は、2月12日の司馬遼太郎の命日。今、有名な忌日の一つとなったかもしれない。イメージの親しみやすさ、明るさや優しさがあるせいだろう。この日、淀川の上流から遠く下流をながめれば、かすんでいる。かすんでいるあたりに故人の姿がありそうである。(高橋正子)
2月11日(1句)
★畔青む農婦の足の軽やかに/廣田洋一
農婦へのまなざしが温かい。田の畔の草が青く萌えだすと、それまでの寒さから幾分開放されて、農婦の足取りも軽やかに。(高橋正子)

2月11日~20日

2月20日(5名)
小口泰與
湖の面へ夕日差しける日永かな★★★★
暖かや芝に座りて醜草を★★★
放たるる犬の躍動春兆す★★★
廣田洋一
ものの芽のつんつん伸びて光りけり★★★
ものの芽や乳呑児あやす母の声★★★★
ものの芽の一つ大きくほぐれけり★★★
川名ますみ
春浅しレースのカーテン越しの空★★★
春きざす窓に風音空の青★★★★
窓辺に聞こえる風の音、窓から見える空の青にたしかに「春のきざし」を感じた。形としてとらえられない音や色にまず季節の変化が現れると言っていいだろう。(高橋正子)
拾いきし梅一輪の香を卓に★★★★
桑本栄太郎
すすぎもの干すや霾る峰を背に★★★
乙訓の丘を歩めば風光る★★★
あぢさいの芽の艶やかに風生忌★★★★
古田敬二
夕暮れに畑に一人冴え返る(原句)
「夕暮れに」の「に」が説明的に思えます。
夕暮れの畑(はた)に一人や冴え返る★★★★(正子添削)
俳句誌を開きたるまま春の宵★★★★
春の宵。それまで読んでいた俳句雑誌を開けたまま宵の時が過ぎる。明るく艶めいた浪漫的な感傷の漂う俳句がありそうな俳誌なのか。(高橋正子)
春の雪縦横無尽に吹かれけり(原句)
主語「春の雪」と述部「吹かれけり」の不一致が気になります。
春雪に縦横無尽に吹かれけり★★★★(正子添削①)
春の雪縦横無尽に吹きにけり(正子添削②)
2月19日(4名)
小口泰與
さくさくと土踏む音や冴返る★★★
沛然と利根川の雨春寒し★★★★
笛太鼓控ふ雛を飾りけり★★★
廣田洋一
春の川鯉の動きのおほらかに★★★★
水切りの石の伸び行く春の川★★★
丹沢の山青くして春の川★★★
桑本栄太郎
春きざす園児らはしゃぐ庭一杯★★★★
庭一杯に広がってはしゃぐ園児がかわいらしく、にぎやかで、春のきざしの確かさがある。(高橋正子)
鳴き声の背ナをくすぐる猫の恋★★★
いよいよと日差し向き居り桜芽木★★★
古田敬二
春灯をともし俳句誌三月号★★★★
落日にその影くっきり春の雪★★★
落日に行きつ戻りつ春の雪★★★
2月18日(4名)
小口泰與
あらあらと窓を刷きたる春の雪★★★
くねくねの径を歩みて蓬かな★★★
家長我父の年忌や春暖炉★★★
廣田洋一
逝きし子の雛人形を飾りけり★★★★
紙雛を共に飾りて賑やかに★★★★
雛飾りは、女子のすこやかな成長を願い、また季節の美しさを愛でて飾られる。桜や橘の木木、菱餅や白酒を供え、桃の花を飾って、華やかな節句である。段飾りの雛の周りに紙雛も飾って、にぎやかにする。さびしくないようにの親心であろう。心のこもった雛飾り。(高橋正子)
雛あられ買ふ気もなしに見やりたる★★★
桑本栄太郎
目覚むればすでに明るき春障子★★★★
すずめ等のふくらみ群るる凍返る★★★
愛ありて愛人同居のかの子の忌★★★
古田敬二
薄氷に風の風紋残りけり★★★
春泥の靴に重たく残りけり★★★★
春泥は、おのずから柔らかく、てらてらと光る感じがする。雪解けや凍てが緩み雨が降ると泥濘はあちこちに生じる。靴につくと粘って靴から離れず重い。それは、春泥特有の重さだ。(高橋正子)
潮干狩りかがむ姿の二三人★★★
2月17日(4名)
小口泰與
火の山の匂いや春の佐久の鯉★★★
春寒や選挙カーの次つぎと★★★
渓流の音を頼りや蕗の薹(原句)
「頼り」のところを「写生する」といいと思います。
渓流の音の方へと蕗の薹★★★★(正子添削)
渓流は、雪解け水に嵩を増して岸辺を濡らしながら流れている。蕗の薹は湿ったところを好むのか、水ぎわへと芽生えている。渓流のそばの蕗の薹が清冽な印象で詠まれている。(髙橋正子)
廣田洋一
露店湯の湯気を浴びたり蕗の薹★★★★
道路工事終へたる土手に蕗の薹★★★★
蕗の薹焼くか揚げるか決めかねて★★★

多田有花

あたたかや久々にするストレッチ★★★
虹置いて春のしぐれの去りにけり★★★★
春疾風ショパンの英雄ポロネーズ★★★

桑本栄太郎

冴返る想い出ばかりの夢見かな★★★
登校の児童の列に春の雪★★★★
群青の高嶺となりぬ春の宵★★★
2月16日(5名)
小口泰與
フロントのガラスに斜め春驟雨★★★
鳶舞いて湖華やぐや春シール
「春シール」は春ショールでしょうか。
麦踏や夕べの赤城茜色★★★
廣田洋一
けきょけきょと練習中の鶯かな★★★
川べりに潜む鶯高き声★★★★
古き家の庭に紅白梅の花★★★
桑本栄太郎
春寒料峭マルチはためく畑かな★★★
カタカタと校旗はためく春の風★★★
料峭のさざ波走るにはたづみ★★★
多田有花
余寒あり蕪とろとろに煮えて★★★★
余寒の寒さは身にしみて、温かいものが食べたくなる。ポトフなどに煮込んだ蕪がとろとろに甘く煮えて、一口食べれば、身も心も温まる。蕪がとろとろに煮えたイメージが余寒の空気感によくマッチしている。(高橋正子)
地に開く星の瞬きいぬふぐり★★★
咲き初めてやさしき香りフリージア★★★
2月15日(4名)
小口泰與
公魚のはつかに光り遡上せる★★★
山風に紛るる初音はつはつに★★★
「はつはつに」は意味としてはよいのですが、古語ですので、句が浮いて、実感がなく無くなっているので惜しいです。(高橋正子)
橋桁の朽ちし抜け道川鴉★★★
廣田洋一
青空に剪定の音弾みけり★★★
せせらぎの音涼やかに山笑ふ★★★★
「山笑ふ」を遠くから眺めたのではなく、近くで実感した意義が大きい。山川のせせらぎの音が涼やかに音を立てて、木々の芽も吹くらんできている。日差しが明るく、にこやかな光景。(高橋正子)
盛土せし道路開通山笑ふ★★★

桑本栄太郎

雨脚の上がり滴や春日さす★★★
揚ひばり遥か彼方にヘリコプター★★★★
言い訳のこの頃増えし冴え返る★★★

多田有花

春眠から覚めてこの世に戻りけり★★★
赤ペンで卒業試験を採点す★★★
頂のうえに出ている春の雲★★★
2月14日(3名)
小口泰與
榛名富士朝日賜り雪解かな★★★★
雨後の庭朝日に恥じず牡丹の芽★★★
丹精の薔薇一斉に芽吹きける(原句)
「丹精」は省略しましょう。説明になっています。
一斉に芽吹きぬ薔薇の赤き芽よ★★★★(添削例)
廣田洋一
散歩道横にそれたり犬ふぐり(原句)
散歩道横にそれれば犬ふぐり★★★★(正子添削)
春耕や畝の溝をば切り込みぬ★★★★
春耕を終へし畑に佇みぬ★★★
桑本栄太郎
さざ波の立ちて薄氷流れけり★★★★
さざ波が立っていると川を覗けば、薄氷が溶けながら流れている。小さな波とうすうすとした氷の、儚いものの世界に作者の好みが読める。(高橋正子)
溝川の細き流れや犬ふぐり★★★
芽柳の土手に日差しや川の風★★★
2月13日(3名)
小口泰與
父の忌や同胞集ひ蕨餅★★★
初めての山や鳥鳴き木の芽晴★★★
校庭に大樹はだかり残る雪★★★
廣田洋一
日溜りに空を映して犬ふぐり★★★★
畦道に枝をさしかけ梅の花★★★
紅白の枝を交わせり梅の花★★★
桑本栄太郎
春暑し煙まつすぐ野に立ちぬ★★★
畦道に茎の伸びたり仏の座★★★
春きざす我を追い抜きトラクター★★★★
春が来ると畑仕事が忙しくなる。出会ったトラクターも人が歩くを追い越して勢いをつけて農道を走っている。こんなところにも春のきざしが見えてうれしいものだ。(高橋正子)
2月12日(3名)
小口泰與
佐保姫と一献組みし夜半の夢★★★
諸子魚釣る子らよ榛名へ雲一朶★★★★
山祇や谷川岳の雪崩れ★★★
廣田洋一
下萌えや風柔らかき街の川★★★★
春霜や日を返したる駐車場★★★
鎮まりしままの畑や春の霜★★★
桑本栄太郎
淀川の下流かすみぬ菜の花忌★★★★
菜の花忌は、2月12日の司馬遼太郎の命日。今、有名な忌日の一つとなったかもしれない。イメージの親しみやすさ、明るさや優しさがあるせいだろう。この日、淀川の上流から遠く下流をながめれば、かすんでいる。かすんでいるあたりに故人の姿がありそうである。(高橋正子)
ものの芽や川べり歩み日差し居り★★★
春宵や嶺の端ほのと赤くあり★★★
2月11日(4名)
小口泰與
春の日や河原の子らの声高き★★★★
蕗の芽やゲートボールの打球音★★★
春光に包まれて居る二人かな★★★

多田有花
春の霜駆けぬけてゆく女子高生★★★
建国記念日真昼の風のやわらかし★★★
河川敷春の芝生に球追う人★★★

廣田洋一
吾が帰宅待ちたる如し犬ふぐり★★★
通り道少しよけたる犬ふぐり★★★
畔青む農婦の足の軽やかに★★★★
農婦へのまなざしが温かい。田の畔の草が青く萌えだすと、それまでの寒さから幾分開放されて、農婦の足取りも軽やかに。(高橋正子)

桑本栄太郎

来てみれば密とは知らず梅見かな★★★
遅き日やひと眠り後の窓明かり★★★
海苔掻やの潮のたゆとう岩の間に★★★★

自由な投句箱/2月1日~10日

※当季雑詠3句(冬の句・春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆花冠発行所◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan100
◆月例ネット句会
https://blog.goo.ne.jp/kakan02d
◆俳句日記/高橋正子◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/2月1日~10日

2月10日(2句)
★蕗味噌や魚の腹へたっぷりと/小口泰與
たっぷりの蕗味噌と食べる魚の美味。故郷の味がぎっしりと詰まって、心底故郷の良さを味わう。(高橋正子)
★楢の木の幹が吸い上ぐ春の水/古田敬二
春になると、実際、大きな木の幹に耳を当てると、木が水を吸い上げる音が聞こえる。楢の木の芽吹きの美しさがはやも想像できる。(高橋正子)
2月9日(2句)
★春風やスクランブルの交差点/廣田洋一
スクランブル交差点。ここには人が入り乱れているが、春風も自由に吹いている。スクランブル交差点の賑わいが春の明るさに満ちている。(高橋正子)
★春立てば樹影は高し青空へ/古田敬二
春の声を聞くと、人の心もおのずと明るくなる。木木も黒々と樹影を空へ伸ばしている。伸びあがる樹影がたのもしく思える。(高橋正子)
2月8日(句)
2月7日(2句)
★春の夜やポートレートを撰定す/小口泰與
寒さも少し和らいだ春の夜。春の灯の下に写したポートレートの数々。その中のどれにするかの撰定作業は、厳しいといえば厳しいが楽しい時でもある。納得の作品が選ばれたことだろう。(高橋正子)
★ものの芽やときには句帳開きつつ/桑本栄太郎
芽吹きのとき、散歩しつつも、心を打つものがあり、時に句帳を開く。「ときに」が余裕。がむしゃらでも、必死でもない。余裕から見えてくるものがある。(高橋正子)
2月6日(2句)
★川岸を駆けるD51春の朝/小口泰與
川岸の草が萌え、川の水が雪解けに急ぐ春の朝、D51が力強く駆ける。見ていて元気が湧く一句。(高橋正子)
★堰水の飛沫きらめく猫やなぎ/桑本栄太郎
堰の水が落ちるところの猫やなぎ。堰の水の飛沫がかかり、赤い芽も、義い色の花もきらめいている。早春のまぶしい景色がいい。(高橋正子)
2月5日(1句)
★縄文の土偶の乳房春兆す/小口泰與
縄文時代の土偶。ふっくりと丸い乳房の素朴さに、春の兆し、生まれ出るものの命の素朴さを思う。(高橋正子)
2月4日(1句)
★三和土土間薪ストーブの終夜燃ゆ/古田敬二
三和土に、古い民家の土間を想像する。薪ストーブを終夜焚いて暖をとる寒いところの、新しい暮らしがあたたかく伝わる。(高橋正子)
2月3日(2句)
★春寒をほぐす青空明かるけり/廣田洋一
春の寒さは疑いないけれど、青空の明るさを見れば、寒さがほぐれる気がする。光はまぎれもなく春の光となっている。(高橋正子)
★春立つ日小さき焚火でコーヒーを/多田有花
寒が明け今日から春だと思うと、気持ちがうきうきして来る。焚火の小枝を集め、焚火でお湯を沸かし、焚火の炎をたのしみ、コーヒーの香りを楽しむこと、外の空気を吸うこと。コーヒー一杯に至福の時間が生まれている。(高橋正子)
2月2日(1句)
★護摩の炎や豆を撒かざる節分会/廣田洋一
新型コロナウィルスの感染が収まらなく、節分も、11都道府県に非常事態宣言が出された。人の混雑を避けて豆撒くをやめた寺などがあった。その事態下の句。護摩の炎に、厄病退散を願う。(高橋正子)
【追記】
この句の「護摩の炎」は、「ごまのほ」と読ませています。
俳句では、慣例的に炎(ほのお)を「ほ」と読ませることが多くあります。
理由は炎の説明として「炎(ほのお)は、火の中でも、気体が燃焼するときに見られる穂のような、光と熱を発している部分を指す。語源は火の穂(ほのほ)から由来していると言われている。」に元があるようです。炎を「ほ」と読ませるかどうかは、問題もあると思われますが、今回の添削は慣例の多くに従いました。(高橋正子)
2月1日(1句)

★日脚伸ぶ松の葉末の青あおと/小口泰與
日脚に明るさを感じ、辺りを見れば、ものみな生き生きとして見える。常緑の松も緑が青あおと、真冬とは違っている。春に向かっているのは、確か。その嬉しさ。(高橋正子)恵