日吉西量寺・水掛観音
★水掛けて春水かがやく仏なる 正子
水に濡れかがやく仏様のお顔が、まぶしく微笑まれているようで、春のよろこびに包まれます。 (宮地祐子)
○今日の俳句
湖の青空の青へと辛夷の芽/黒谷光子
「湖の青」「空の青」というから、何かと思えば、「辛夷の芽」と来る。この読み手の期待感に、湖や空の青を背景に、辛夷の芽が尖り、輝いている姿、花が咲いたときの景色を想像させてくれる。(高橋正子)
○花冠4月号後記
★はやも、四月号。厳しい冬の寒さを越えて
春を迎えるのは、やはりうれしいものです。
今年は、特にそのことを実感しました。雪国
の方は、なおさらのことと思います。本号編
集中の今日、建国記念の日は、雪です。行き
つ戻りつ、春がやってくるようです。
★「俳句の風景」を連載していますが、今回
は、第四回となります。そして、四人の方の
登場です。雑草地を開墾に取り組んでおられ
る名古屋の古田敬二さん、キリマンジャロも
踏破され、毎日250メートルほどの増位
山を登って「散歩」に出かけられている姫路
の多田有花さん、広島牡蠣で有名な地御前に
お住いで、牡蠣の水揚げの様子など活き活き
と伝えてくださる佃康水さん、花冠の創刊の
地、俳都松山にお住いで、瀬戸内の冬の気候
を叙情豊かに綴っった藤田洋子さん、それぞ
れの「俳句の風景」です。力作です。「俳句
と生活」を掲げている花冠にとって、俳句の
生まれる風景、背景を知ることは、鑑賞の深
み、次への創作の深みの糧のなることと思い
ます。ご味読ください。
★ネット句会の金賞、一月月間賞を二十ペー
ジに掲載しています。句を拝見しますと、継
続が、洗練と深みをもたらしてくれるという
ことを知らされます。あまり、張り切らず、
緩めず、やはり、細く長くを続けて参りまし
ょう。
★正子の俳句日記に正子俳句の鑑賞をお寄せ
くださって、ありがとうございます。お一人
お一人、お礼を申し上げたいのですが、あっ
という間に過ぎる日にちに追いつかず、お礼
を書き込んでおりませんが、鑑賞文を日記に
貼り付けてお礼に代えさせていただきます。
★私は、今年ほど、「探梅」と称して近隣を
歩いたことはありません。さほど立派な梅林
があるわけでもなく、庭や畑隅の梅、境内の
梅などを咲いていないか見て歩くだけのこと
ですが、それぞれ、面白いところがあって、
楽しんでいます。
★二月十日には、信之先生がネットで検索し
て、神奈川宿の梅見に出かけました。二〇〇
二年の梅の素晴らしい写真を頼り出かけたわ
けですが、本陣跡の滝の川の遊歩道の梅十本
ほどが、京浜国道の下で、幹は哀れに煤けて
おりました。でも匂いは、さすが、遠くから
も漂ってきており、散った花びらが川を流れ
ておりました。わずかに、松並木が残ってお
りますが、「東海道」と呼ばれた面影はとっ
くに消えているようでした。ヘボン博士が施
術所として使った宋興禅寺も、現代風な切り
妻屋根の洋風な建物の寺に建て替えられてお
りました。これも、探梅のひとつでした。
(正子)
★おしばなの紅梅円形にて匂う 正子
おしばなとして、なお仄かな香りを残す紅梅。枝々に咲き匂う花をありありと思い浮べる、新鮮な香おりです。おしばなの一枚となりながら、より鮮やかで艶やかな、小さな円形の花びらです。(藤田洋子)
○今日の俳句
街筋の昼月ほっと梅開く/藤田洋子
街筋の空を見上げれば、白く透明感のある昼の月が浮かんでいる。昼月を遠く梅が開いて、昼月と梅との美しい出会いがある。(高橋正子)
★春浅し立ちたる草の鳴りづめに 正子
立春間もない頃の風、つまり東風が枯れ色をしたままで立っている草に吹きつけ、枯れ草同士が擦れてカサカサと鳴っている。この音が新芽を促す音なのかも知れない。枯れ草の根元から少しづつ新芽が出て来る様なそんな気配を感じます。(佃 康水)
○今日の俳句
包み紙少し濡れいて蕗の薹/佃 康水
蕗の薹を包んでいる紙がうっすらと濡れている。朝早く採られた蕗の薹だろうか。蕗の薹の息吹であろうか。しっとりとした命の、春みずみずしさがある。(高橋正子)
★梅の花遠きに咲きて白さ満つ 正子
高みから見ていらっしゃるのでしょうか。満開の梅の花の白さが際立っています。梅の花の香りも漂ってきそうな気がします。(黒谷光子)
○今日の俳句
拝観を終え紅梅に集まれり/黒谷光子
集ってお参りに出かけた。拝観を済ませたものが順次、誰彼となく、紅梅のもとに集まった。うららかな日の紅梅の見事さ、和む人の心がおのずと知れる。(高橋正子)
○二人吟行:
5日の土曜日は、6日の立春句会の句を作りに、信之先生と近隣を吟行。一時の寒さが緩んでからは、探梅と称して、住んでいる3丁目から、2丁目、5丁目と歩き回った。土曜日は晴天で、駒林神社、天台宗の西光院、おなじく天台宗の西量寺を訪ねる。2丁目の西光院は、小さなお堂がある、実に小さなお寺。庭には金柑の実があまるほど成って、地に落ちている。一粒いただく。白木蓮の蕾が良く太って、立派な樹である。お賽銭をあげて去る。
駒林神社の梅を見に寄る。この前来たときは白梅がみずみずしかったが、今日は、はや散りかけている。まだ咲かない梅もあるが、蕾が固い。気をつければ、神社の御手洗の後ろ、本堂の横と、紅梅や白梅がある。かわいらしいのは、同じ境内のお稲荷さんの狐。今日は、お稲荷さんの狐にお賽銭をたくさんあげる。たくさんと言っても知れてるが。鳥居のそばには大きな樅の木。ご神木で幣を巡らしている。
駒林神社の坂を下ればすぐ、駒林小学校だが、小学校をぐるっと回って、しばらく歩くと高台に墓が見える。墓地の下に、紅梅が終わりかけ。そこが西量寺らしいので、表へ回る。門前に寺の碑があって、階段がある。上ると、さんさんと降り注ぐ春の庭。花が少ないところを歩いたので、庭の水仙、葉牡丹がうれしいほどだった。一メートルほどの池に30センチ足らずの小さな観音様が祀ってある。水掛観音とあって、言われが書いてある。地元日吉の何とかという子供が川で泥石を見つけ、母親が水を掛け洗い清めると観音様が現れ、なお開眼供養をして祀られたというらしい。何度も杓で水をかける。水を掛けると観音様はずぶ濡れで春日に輝く。が、すぐ乾いてもとに。また水を掛けて輝かす。
水掛けて春水かがやく仏なる 正子
高台の寺の水仙濃く匂う 正子
小さいお寺だが、お寺の人らしい生活があって、面白かった。
○立春ネット句会入賞発表/2月6日
◆ご挨拶
今年は寒さがことのほか厳しい冬でした。あたたかい地方まで大雪となったり、雪深い地方では、豪雪となったりでした。ようやく立春の日を迎え、ほっとした気持ちです。立春ネット句会にご参加いただき、ありがとうございました。節分の句、立春の句、その他の句、どの句もレベルが高く、厳選となりました。入賞の皆さま、おめでとうございます。頂いた互選、コメントも水準を上げており、大変うれしく思いました。日々のご精進の賜物と思います。互選の集計は藤田洋子さんにお願いしました。句会の管理運営は信之先生にしていただきました。お世話になりありがとうございました。まだまだ寒い日もあることでしょうが、ご健吟ください。これで、立春ネット句会をおわります。
次回は、3月3日(木)の<雛祭ネット句会>です。ご参加をお待ちしています。(主宰 高橋正子)
◆入賞発表ブログ
http://blog.goo.ne.jp/kakan15/
○花冠3月号発送
http://blog.goo.ne.jp/kakan12/
★たらの芽のまだ枯色で棘ばかり 正子
たらの芽は山道など身近な所でも見かけられ、山菜の王として良く知られている。立春間も無い頃のたらの芽は未だ未だ枯色で鋭い棘ばかりが目立つている。しかし春の到来でこれからは幹の先端から伸びて来る薄みどり或いは薄むらさきの柔らかい芽を見るのが楽しみ。その時期のたらの芽との出合いを今から心待ちにされている作者の気持が思われます。(佃 康水)
○今日の俳句
白梅の萬の蕾の薄みどり/佃 康水
梅の蕾みもしだいにふくらんでくると、花の色が見え始める。白梅は、どの蕾みも、いっせいに薄みどりを見せて、開く日を待っている。薄みどりに花のういういしさがある。(高橋正子)
東山・法然院
★春寒し木を打ち人を呼び出せり 正子
春寒の季節、寂びた佇まいの森閑とした禅寺を訪れる。玄関に着くと魚の形の板が吊るされている。修行僧に食事や起床の時刻を知らせるのに打ち鳴らす魚板の名残りだろうか。家人を呼ぼうと置いてあった木槌で板を叩くと、樹々に反響して、静寂な境内の奥深くから木の音が響いてきます。思いがけない魚板の音に迎えられ旅の妙味や修行僧の生活などが思われます。(柳原美知子)
○今日の俳句
白梅の香りとともに明るさも/迫田和代
白梅の香りには気品があって、だれにでも愛でられるところ。香りだけでなく、陽があたれば白い花はかがやくように明るい。「明るさも」と見てとったのは秀逸。
★春立ちてものの影踏むこと多し 正子
春の訪れが感じられるのはまず光から。光が強くなり、すべてのものの影が濃さをまし、おのずとそれを踏むことにも意識が向きます。(多田有花)
○今日の俳句
立春大吉梅の小枝はまっすぐに/多田有花
「立春大吉」は目出たい上に、朗らか。梅のずわいが真っ直ぐ伸びて、躊躇なし。目出たく、朗らかで、躊躇なし。こう行きたい。(高橋正子)
◇生活する花たち「梅」(横浜日吉本町)

鎌倉・報国寺
★竹林に踏み入るところ冬椿 正子
竹の寺とも言われる報告寺の竹林。一歩踏み入れると別世界に感じる竹の庭ですが、その竹林ではなく、踏み入るところの冬椿を見つけた嬉しさを感じさせてもらいました。(高橋秀之)
○今日の俳句
輝ける夜空の星や豆を撒く/高橋秀之
「輝ける夜空の星」に託された気持ちが、晴れ晴れとして広い。高く放って撒いた豆は、星屑のなかに散らばってしまいそうだ。(高橋正子)
◇生活する花たち「ふきのとう」(横浜日吉本町)

★白木蓮冬芽の銀の日にまぶし 正子
銀色の毛に包まれて厳しい寒さの中で春を待つ白木蓮。ふかふかとした感触と暖かさとさらにその向こうにある白い花の姿が見えてきます。(多田有花)
○今日の俳句
やわらかき色を置きたり寒卵/多田有花
寒卵はきびしい寒さの中で産み落され、白色の厳しさもあるが、それがテーブルなどに置かれると、命あるもののやわらかさ、やわらかき色を呈す。そこをユニークな視点で捉えた。(高橋正子)
◇生活する花たち「パンジー」(横浜日吉本町)

★枯木立星のあおさに揺れもせず 正子
風も無く枯木立は星の青さに魅了されたかの様に深閑として立ち上がっている。その枯木立を透けて広がる澄み切った夜空には冴え冴えと青い星が煌めいている。冬銀河である。枯木立と相俟って美しく雄大な冬の夜空が目に浮かんで参ります。昔歌った「冬の星座」を懐かしく思い出させて頂きました。 (佃 康水)
○今日の俳句
山里に戸ごと掻かれし雪盛らる/佃 康水
一戸一戸が散らばる山里。雪掻きの山が戸ごとにあって、山里らしい暮らしぶりが覗えて、雪の日の景色が読み手によく見える。(高橋正子)
◇生活する花たち「パンジー」(横浜日吉本町)
