★蕗の花まつげあるごとひらきけり 正子
蕗のとうを見つけるとああ春が来たと嬉しいものです。気がつけばあっという間に花が咲いていて驚きます。「まつげあるごと」と花を詠まれ、優しく、かつ鋭い写生の素晴らしさを感じました。(後藤あゆみ)
○今日の俳句①
蕗のとう地を出たばかり摘まず置く/後藤あゆみ
ようやく地を出た蕗のとうへのいとおしみ。さみどりの蕗のとうの美し色とともに、ころんとした幼い形に「摘まず置く」の気持ちが働いた。それがよい。(高橋正子)
○今日の俳句②
春浅し六郷川に常夜灯/高橋正子
下萌えの六郷川の水青し/ 〃
六郷川流れて青し春の雲/ 〃
○2月17日、信之先生のお供で、川崎宿に出かける。信之先生は先日すでに川崎宿に出かけて、川崎駅バスターミナルから、旧東海道を六郷の渡しまで歩いている。遺跡と言われるものはないが、本陣跡、中本陣跡、などという跡だけがわかって、標が立っている。道中に砂子(いさご)の里資料館があって、広重の東海道53次の浮世絵や葉書などを学芸員が作って売っている。そこで売っている、一冊千円の「広重二大街道浮世絵展」を手に入れるためと、私を案内するために出かけたわけだ。本の発行はNHKプロモーションとなって、240ページある。それと、絵葉書を2枚買った。
川崎宿の行き当たりは、六郷川(多摩川)で、たもとに川崎大師から寄付された常夜灯と、明治天皇が東京遷都で、この川を渡られた記念碑がある。舟を川幅に23艘並べ、その上に板を渡して、渡られたということだ。そのときの絵がレリーフとしてあるが、川の蛇行の具合は、今とちっとも変わっていない。広重の浮世絵の六郷の渡しの川の曲がり方も同じである。絵から見る地形は、変わっていないのも面白いことだ。六郷川のたもとに立って見ると、羽田があるあたりは、六郷川の蛇行する水が青く見えて、のどかな雲が浮かんでいる。ここから渡しに乗れば、向こうは江戸。大田区となる。
六郷橋を渡って、東京都側へ。結構長い。670mくらいか。河川敷には、野球のグランドが4面、テニスコートが5面ある。橋を下ってすぐに、小さな公園あるので、立ち寄る。小便小僧の噴水がある。長くも居れないので、帰りの駅を探す。街を少し歩いて聞けば、京急線の「六郷川土手駅」がすぐそこにあるという。ガード下の切符を売るだけの駅で、向かいに、これもガード下だが、コーヒーが飲める店がある。清潔そうなので入ってみる。コーヒー一杯210円、ドーナツ130円。あんぱん110円。こういったものを注文。主婦やちょっとした旅行者、サラリーマン風の人がいて、電気スタンドも用意されている。小休憩のあと、この駅から川崎まで乗った。バスは駅西口からだが、すぐ傍にミューザ川崎という立派な音楽ホールがある。
帰宅してから、浮世絵の本を冒頭から読む。「江戸庶民の臥遊の山水ーー街道浮世絵の楽しみ」(小林忠 文)には、面白かった。臥遊とは、絵を見てそこに遊んだ気持ちになることであるらしいが、旅にあこがれた庶民に広重の絵が受けたようだ。広重の先に英泉という浮世絵画家の絵があったが、この人の絵は人物中心の風俗を描いていたので、広重の風景中心のほうに人気が移ったらしい。広重の絵のシンプルさと哀愁を帯びたところが人気を得たようだ。
★二月はや雛の鼓笛を持たさるる 正子
実にうまいと思います。技巧のすぐれた句は、余韻の無いさ末主義におちいりやすく、ただ興がっただけの、空疎な嫌味の句になりかねないものですが、この句は、そうならない前、ぎりぎりの句のように思えます。(川本臥風)
○今日の俳句
街筋の昼月ほっと梅開く/藤田洋子
街筋の空を見上げれば、白く透明感のある昼の月が浮かんでいる。昼月を遠く梅が開いて、昼月と梅との美しい出会いがある。(高橋正子)
★銀色の椿の蕾みな固し 正子
先日も、山裾にある「花の寺」に椿の開花を調べに訪れました。急坂の参道に高い椿の木があり、椿の時季には側溝に椿の落花が積重なり、それは見事な光景なのです。しかし、早春の為か固くて真っ白な蕾ばかりで「春浅し」そのものでした。「みな固し」との措辞に、早春の景が良くくみ取れ素敵です。(桑本栄太郎)
○今日の俳句
海苔掻や潮目沖へと流れおり/桑本栄太郎
沖へと流れる潮目を見ながらの海苔掻きに、春の磯の伸びやかな風景が見えて、素晴らしい。(高橋正子)
横浜港
★港湾の動きに満ちて春浅し 正子
大型船のゆっくりした動き、ちいさな船舶の活発な動き、岸壁でのガントリークレーンのゆっくりした動き船の上で動く人影などいろいろな動きが見える早春の港。その向こうにはキラキラ光る波。吹く風はまだ冷たいが確かな春の気配。本格的な春の到来を予感させる句である。(古田敬二)
○今日の俳句
耕しに土の中なる根のさみどり/古田敬二
「耕し」は、春の季語。春になると、種まきの準備など、田畑を耕す。耕していると、土の中に白い根ではなく、さみどりの根があることに驚く。土の中にもすでに春の息吹がある。(高橋正子)
★青空の果てしなきこと二月なる 正子
立春をすぎた頃の晴れた空は、うすみずいろに、春浅い二月ならではの軽やかさに充ちています。二月のひかりを伴い、果てしなく春へと向かう青空です。(小川和子)
○今日の俳句
二月の陽を反射させつつバス来たる/小川和子
バスを待っていると、向こうから陽を反射させながらバスがやって来た。光は、早くも明るい二月の光。二月の光を連れて来たバスである。(高橋正子)
慶大日吉キャンパス
★煙る銀杏芽吹く気配を一心に 正子
春になり芽吹きが新鮮に感じる時期となりました。 煙る銀杏が春の兆しが一気に訪れを感じさせてくれます。(高橋秀之)
○今日の俳句
食卓を彩る一輪挿しの梅/高橋秀之
毎日の食事が並び、家族の団欒がある食卓。食卓の一輪挿しの一枝の梅が今日という日を清々しく、ことに季節の新しさを知らせてくれる。さりげなく梅の花がある生活がそのまま句となった。(高橋正子)
★菜の花へ風の切先鋭かり 正子
菜の花が咲き始めたころでしょうか。まだ春は浅く、ときに冷たい風が野を吹き抜けます。風に大きく揺れ動く菜花にはらはらさせられている作者の気持が端的に詠まれていると思います。(河野啓一)
○今日の俳句
水音して箕面連山春浅し/河野啓一
「水音して・・春浅し」の感覚がいい。箕面連山を行くと、ころころと水音が絶えずしている。自然に身を入れると、確かに春が来ている。(高橋正子)
★歩けばある梅咲くところが登り口 正子
お住まいの近くの歩いて行ける所の坂を登った場所に、神社か或いはお寺があるようですね!。その登り口にある梅も、もうそろそろ開花なのでは・・?と、春めいた陽気に心が逸っている作者です。心が弾む心情が想われ、素敵な一句です。(桑本栄太郎)
○今日の俳句
★自転車の籠に紅梅つぼみもち/桑本栄太郎
停めてある自転車の籠につぼみをもっている紅梅を見た。どこかでもらった紅梅か、ここにもつぼみがついた花がある驚きと喜びがあって、句が生きいきしている。(高橋正子)
★さきがけて咲く菜の花が風のまま 正子
早春のまだ吹く風の冷たい中、さきがけて咲く菜の花。黄色の色彩があたりを明るくし、風のままに揺れる菜の花のみずみずしさが、まっすぐに伝わってくるようです。(小川和子)
○今日の俳句二月の陽を反射させつつバス来たる/小川和子
バスを待っていると、向こうから陽を反射させながらバスがやって来た。光は、早くも明るい二月の光。二月の光を連れて来たバスである。(高橋正子)
★梅の花いつもきれいな青空に 正子
寒さの中に、仄かな香をまとい凜と咲く可憐な梅の花。見上げるといつも澄みきった青空が花とともにあります。早春のみずみずしい空気と春を迎える静かな喜びが感じられます。(柳原美知子)
○今日の俳句
とりどりの遊具整い風二月/柳原美知子
遊具のペンキを塗りかえられたり、整備されて、子供たちが遊びに来るのを待つばかりとなっている。「風二月」がよく効いている。(高橋正子)
○神奈川宿散策
横浜そごうに用があるので、出かけた。そごうで用を済ませたあと、午後2時ポルタの鳩居堂で2時信之先生と待ち合わせで、探梅に。出かけた先は、横浜市神奈川区にある神奈川宿。ネットの検索では、ここの遊歩道に紅白の梅があって素晴らしいというこことだ。横浜駅から横浜線に乗って、次の東神奈川で下車。そこから神奈川区役所の方へ歩く。途中には、帆布販売店とか、板金店がある。寺を目安に、歩く。東海道の松並木が50メートルほどであろうか、残る。バスがようやく通るほどの道。その松並木を見て、さらに滝の川という川を目指す。浄瀧寺があり、その近くの橋を渡ると、梅の香りが漂ってきた。川には、鴨が泳いで、梅の花びらが流れている。ここが目当ての場所であった。
梅の香を息に吸い込みあるきけり 正子
梅散って花びら流る滝の川 正子
神奈川宿紅梅白梅匂いけり 正子
宗興寺
牡丹の芽ヘボン博士のレリーフに 正子
神奈川公園
下萌えは大樹の太る根もとより 正子
○ウェブサイト「横浜線沿線 街角散歩」に「神奈川宿歴史の道」というページがある。
①横浜線沿線 街角散歩
http://www.natsuzora.com/may/town/index.html
②神奈川宿歴史の道
http://www.natsuzora.com/may/town/kanagawa-aoki.html
○神奈川宿(横浜市神奈川区)は、日本橋(東京都中央区)を起点とする東海道の宿場の一つで、東海道五十三次の品川宿(東京都品川区)、川崎宿(川崎市川崎区)に次ぐ、三番目の宿場として賑わった。今ではすっかりビルの建ち並ぶ市街地に変貌し、ところどころに神奈川宿の面影や横浜開港期の歴史のひとこまを伝える場所も残っている。それらの史跡などを繋いで整備された散策コースは、東は新町の神奈川通東公園から西は台町の上台橋までの、約四キロほどで、「神奈川宿歴史の道」という。「神奈川宿歴史の道」の東の起点は京浜急行の神奈川新町駅の横にある神奈川通東公園で、この場所は横濱開港時にオランダ領事館として使われた長延寺のあった場所でもあり、この辺りが神奈川宿の東の入口に当たる。西の起点は、横浜駅近くの台町の上台橋である。