7月4日(月)

★蜜豆に夜の会話の間がありぬ  正子

○今日の俳句
隣家の窓に今朝より青簾/河野啓一
隣家の窓を見ると、今朝からは、青簾がかかって目にも涼しげ。隣家も夏支度が整って、夏本番を迎える。(高橋正子)

○四季の森公園
七月三日、日曜日。このごろは早く目が覚める。夏は朝が来るのが楽しみだった田舎暮らし。庭に出て掃除や水遣り。西窓に朝顔を一杯咲かせていたので、これを外から見る楽しみがあったし、山鳩もくうくう鳴いていた。

だから朝、信之先生と久しぶりに四季の森公園へ出かける。九時に家を出発、中山駅まで地下鉄。駅からはズーラシア行のバスで長坂というところまで。その停留所から徒歩十分ほどで、公園の南口に着く。南口には、花壇があるので、そこから入る。百日草、ベゴニア、マリーゴールドが植えられて、噴水を中心にシンメトリーに設計されている。花壇を見て、森へ入る。

森へ入るや、楮(こうぞ)の赤い実を見つけた。くわ科の木なので、桑の実のような実だが、食べられない。さらに歩くと、ゴンズイという木があって、青い実が付いている。山ぼうしも、青い丸い粒粒が集まったような実をつけていた。むらさきの蛍袋がある。ムラサキシキブの花が咲いているが、葉も大きく、木の姿も、普段見ている形とは違って、枝が乱れて自生のものか。ゴンズイという木に初めて出会う。青い実がたくさんできている。

山を下って降りたところに、夏椿と合歓の花が咲いている。広場になってベンチもあるので、持参のお茶とスライスケーキで涼みながら一服。合歓を撮ろうとするが、ズームすると、どのあたりがズームされているか良く分からないし、手振れするうえに風が吹いて枝をあおるので、なかなか焦点が合わない。一休みした後さらに下る。平地になったところの山肌にオカトラノオの群生を見つける。向こうに目を移せば、夏草の中にひときわ目立ってノカンゾウ。盛りを過ぎた感じだが、紅カンゾウもある。菖蒲田には、まだぽつぽつ花が咲き残っている。菖蒲田を木道伝いに巡る。時期を逸した花、ちょうどタイミングよく出会った花や実など、出会えば幸運である。自然界は一時も休まず変化している。われわれは、光に乗って、彼方へ行っているのかなという風にも思える。

今日は、日曜日なので、公園内にはスケッチをする人たちが二十人ほど、かわせみを狙ってカメラに収めようとする人たちが十三人。(数えたのです。)それを見物する人も。北口には、七夕飾りが山からの涼風にさらされ揺れている。北口のベンチは、白樫と桂の木陰にあって、涼しい風が吹いてしばらく居れば汗が引く。正午には、中山駅ビルの軽食喫茶に行く予定で、公園を出る。暑いこと。去年尾瀬に行った経験から、暑い時は薄手の長袖シャツに限ると自分に言い聞かせていたので、今日はそのいでたちで出た。(思い出した。)尾瀬を持ち出す間でもなく、暑い盛りは、薄手の長袖シャツ一枚が一番ということは、田舎暮らしでよく知っていたのに。

◇生活する花たち「楮(コウゾ)の実・山ぼうしの実・水木の実」(横浜・四季の森公園)

7月3日(土)

★長き柄に団扇の風のぱっさぱっさ  正子
ばっさばっさと扇ぐのは天狗の団扇でしょうか。天狗の団扇で自由自在に飛んで行けたら面白そうです。以前は夏のお店の景品は団扇が定番でしたが、最近は無くなりました。実用的なものから飾っておきたいような絵柄のものなど団扇も幅が広く、大らかな「ばっさばっさ」を楽しませて頂きました。(後藤あゆみ)

○今日の俳句
梅落とす姿はすっぽり葉隠れに/後藤あゆみ
梅をぱらぱらと落している。しかし、当の落す人は、梅の葉叢にすっぽり隠れて見えない。梅の実もぎのおもしろいところを捉えた。(高橋正子)

◇生活する花たち「蛍袋・カシワバアジサイ・山ぼうし」(横浜日吉本町)

7月2日(金)

★鎌倉へ合歓の一樹の花盛り  正子
紅を含んだ彩りの合歓の花は繊細で絹糸の様な刷毛または花火の形に咲き、また緑の葉が生い茂る中に明かりを灯しているかの様にも見えとても印象深い花です。「鎌倉へ」の措辞で古都鎌倉も合歓の一樹も響き合い尚更光り輝いている合歓の大樹が印象付けられます。(佃 康水)

○今日の俳句
白山の寸時雄姿を梅雨晴れ間/佃 康水
梅雨が晴れたほんの少しの間、白山の雄姿に会え、感動しきり。梅雨に隠れた神秘的な白山が暗に示されている。(高橋正子)

◇生活する花たち「石榴・紫つゆ草・サルビアとキンシバイ」(横浜日吉本町)

7月1日(木)

★松林に白百合まばら富士裾野  正子
 富士の裾野に広がる松林、ひんやりとした涼しい風を感じながら歩いていますと、白百合がまばらに咲いているのに出合いました。大きな景の中にあって、白百合の純真で清楚な美しさに安堵されたことと思います。(藤田裕子)

○今日の俳句
梅雨晴れ間四方は鳥の奔放に/藤田裕子
梅雨の晴れ間は、空が明るくなって、人だけでなく、鳥たちもよろこび、自由奔放に飛び交う。「四方は」というほど、多くの鳥が舞う。(高橋正子)

◇生活する花たち「エンジェルトランペット・百合・ビオウヤナギ」(横浜日吉本町)

6月30日(木)

★透き通るバケツにあふる朝の百合  正子
一読して、白百合という印象を持ちました。清楚な百合が透明なバケツに溢れるほどある。その香りが満ちている、清楚で、豪華で、心楽しくなります。(多田有花)

○今日の俳句
雲の峰四方八方立ち上がる/多田有花
ぐるりと空を見渡すと、四方八方から雲の峰が立ちあがり、まさに夏をそれに感じる。四方八方の雲の峰は勇壮なことである。(高橋正子)

◇生活する花たち「石榴・しもつけ草・昼顔」(横浜日吉本町)

6月29日(水)

★さくらんぼみどりあかるき茎が縦横  正子
美味しそうなさくらんぼが盛り上がっている。同じ方向ばかりではなく、みどりの茎も実も美しく縦横に入り混じっていて、ついつまんでしまいそうです。 (祝恵子)

○今日の俳句
植田には水の出入りの音つづく/祝恵子
植田には、いつも水があるが、入る水と、出る水とが静かに動いている。その出入口には静かな水音が絶えない。(高橋正子)

◇生活する花たち「日々草」(横浜日吉本町)
◇生活する花たち「夏椿・アジサイ(隅田の花火)・紫式部」(横浜日吉本町)

6月27日(月)

★紫陽花を剪るに真青き匂いたち  正子
色鮮やかな紫陽花を切った時思いがけづその青い香りに紫陽花の生命力を強く感じる句だと思いました。(上島祥子)
 
○今日の俳句
幾たびも雨に洗わる青芭蕉/上島祥子
芭蕉の巻き葉は梅雨のころになると、解けて大きな青い葉を広げ、ばっさりとしてくる。雨になんども洗われると、その度に、すがすがしさが増してくる。(高橋正子)

○全国俳誌協会総会
全国俳誌協会総会の本年度の第48回定期総会がおととい、6月25日(日)に、秋葉原の東京都中小企業振興公社会議室であった。総会終了後は、俳句大会、懇親会と続き、午前11時の受付開始に始まり、懇親会の終了は、午後7時を過ぎていた。

総会では、IT事業部長を兼務する常任幹事に選出された。IT事業部は今年度新設された部で、俳句は、高齢者、女性が多数を占めるので、パソコン、ネットなどIT関係は、大変な仕事となる。多くは信之先生にやっていただけるので、心強い。

懇親会では、信之先生のお隣に日銀OBの三上孝さんが居られ、終戦時の旧制中学時代を懐かしんで盛り上がっていた。当時お二人は、東北の青森と中国大陸の大連におられ、ともに陸軍幼年学校受験中の、文武両道の秀才であったらしい。文武両道が今頃の秀才と違うところで、それが自慢らしい。三上孝さんも協会の常任幹事のお一人で、協会役員に対しても気骨のある意見を述べられていた。80才になるという高齢者が健康でお元気なのも嬉しい。

午前10時過ぎに横浜の自宅を出て、帰宅は、午後8時半を過ぎていたので、少々草臥れた。

○神田川
全国俳誌協会総会は秋葉原であった。秋葉原駅から徒歩数分の、神田川河岸の東京都中小企業振興公社会議室である。

神田川は、東京都を流れる一級河川。荒川水系の支流。フォークグループかぐや姫の「神田川」で有名である。東京都三鷹市井の頭恩賜公園内にある井の頭池に源を発し東へ流れ、台東区、中央区と墨田区の境界にある両国橋脇で隅田川に合流する。都心を流れているにも拘らず全区間にわたり開渠である。かつては「神田上水」を取水し、江戸の水道として利用されていた。

この神田川、東京吟行のときは、たびたび出会っている。お茶の水駅に集合して、神田川に架かる聖橋を渡り、湯島聖堂へ行ったり、また戻って、ニコライ堂のある坂を下り、神保町へ出て、古本屋を覗きさらに歩いて九段下へ。九段下から皇居北の丸まで行って花見をしたこともある。

早稲田大学(新宿区)の近くにある関口芭蕉庵の吟行も何回もしたが、そのときも神田川に出会っている。芭蕉庵は神田川を越えてすぐにある。神田川を渡れば文京区。芭蕉庵は、芭蕉が神田川の改修工事の監督をしたために住んだのだから、当然の神田川近くにあるわけだが。6月12日に句友の堀川さんを案内したときには、神田川は清流といってよいほど澄んで鴨や白鷺がいた。東京都民の生活用水の川で、都内を吟行で歩けば出会う川である。神田を流れ出た神田川は、隅田川に合流する。対岸は両国である。この両国から深川芭蕉記念館あたりもわれわれの吟行俳句会でよく行ったところだ。

◇生活する花たち「石榴・蛍袋・ゼニアオイ」(横浜日吉本町)

6月26日(日)

★キャベツ剥ぐ水ころころと流しつつ  正子
キャベツは中から中から玉を作り太ってしっかりと巻いていきます。そのキャベツをボールの中で水を流しながらそしてキャベツをころころ回しながら一枚ずつ剥がしていらっしゃるのでしょう。「水ころころと流しつつ」の措辞で水を弾く様な新鮮なキャベツを連想し、また厨事を楽しんでいらっしゃる様子が窺え読み手の方も楽しく鑑賞させて頂きました。(佃 康水)

○今日の俳句
清らかや飛騨路に出合う朴の花/佃 康水
朴の花は、大ぶりな白い花でよい香りがする。山深い飛騨路に出合えば、「清らかさ」が印象的。(高橋正子)

◇生活する花たち「むらさき露草・ランタナ・カシワバアジサイ」(横浜日吉本町)

6月25日(土)

★梅雨空に星あることを見て眠る  正子
梅雨空にも目をこらすと星が一つ、二つと見えることがあります。充実したひと日をおえ、眠る前に空を見上げる心しずかなひととき。あるいは、心象風景として「星あること」を見てとられたのかもしれません。 (小川和子)

○今日の俳句
南国に来しこと然り花蘇鉄/小川和子
蘇鉄は、南国の植物だが、その「花」を見れば、なおさら、南国に居ることが、実感される。上五中七の措辞が明快で、「花蘇鉄」を印象づけている。(高橋正子)

◇生活する花たち「紫陽花・クチナシ・さつき」(横浜日吉本町)

6月25日(金)

★アスパラガス大地のみどりを一束に  正子
束にされるほどの、たくさんのアスパラガス。その一束を手に取れば、鮮やかな色彩に、生まれ育った土を想います。此処にはなくとも、確かな「大地」を映す、アスパラガスのみどりです。(川名ますみ)

○今日の俳句
空青く紫陽花はみな色を待つ/川名ますみ
晴れた空に、まだ色づかぬ紫陽花は、どの花もそれぞれが咲く色を待っている。水色に、青に、ピンクにと、そのときも間近。「色を待つ」は作者の期待でもある。(高橋正子)

◇生活する花たち「百合・キンシバイ・薔薇」(横浜日吉本町)