1月24日(火)

★北風吹ける湖を見ていて湖動く  正子
強く吹く北風のなかで湖を見ておられたのでしょう。空気が動いているのではなく、一瞬湖自身が動いているように感じられた、自身の感覚を忠実に詠まれていると感じました。(多田有花)

○今日の俳句
北風去れば静かに青き空残る/多田有花
「北風」と書き、俳句では慣例的に「きた」とも読ませる。北風が塵を吹き払い、後に青空が残る。「静かに青き」は作者の心境でもあって、静謐な青がよい。

○大寒
★寒浄し床に白磁の観世音/川本臥風
★大寒や転びて諸手つく悲しさ/西東三鬼
★大寒の床におさまり静かな土鈴/高橋信之

大寒(だいかん)は、二十四節気の一つ。冬至から1/12年後で1月21日ごろ、期間としては、この日から、次の節気の立春前日までである。今年は、大寒の入りが1月21日、立春前日の節分が2月3日で、その間の14日間を大寒という。この頃は、冬の内でも寒さのはげしい時期である。

★大寒の水道水の真すぐ落つ/高橋正子  
★大寒の障子のそばの日の移ろい/高橋正子

◇生活する花たち「椿・ひいらぎ南天・梅の花芽」(横浜日吉本町)

1月23日(月)

★北風吹ける湖を見ていて湖動く  正子
湖畔の北風に向かって立っておられるのではないでしょうか。漣が絶えることなく押し寄せてくる。そのとき、湖全体がゆっくりとこちらに向かって迫ってくるような錯覚にとらわれます。あるいは自分が湖に引き込まれていくような気もしてきます。 (小西 宏)

○今日の俳句
丘まるく夕日孕みし冬木立/小西 宏
なだからな丘の冬木立ちがいま夕日を孕んでシルエットのように美しく立っている。ずっと留めておきたいような冬景色。

○第3回きがるに句会入賞発表
昨日22日、第3回の入賞発表をした。最優秀は次の2句。以下はリンクからご覧ください。

【最優秀/2句】
★銀杏みな冬芽整い街筋に/藤田洋子
「街筋に」がこの句のイメージを鮮明にしている。整然と並んだ街路樹のどの銀杏にも冬芽がしっかりとついて、つまり、冬芽が整い、きりっとした冬の景色となっている。(高橋正子)

★冬の虹土手道駈ける児の上に/迫田和代
冬枯れの土手を無邪気に走る児たちに、冬の虹が懸って、幸せな子どもの情景が目に浮かぶ。(高橋正子)

ご挨拶
昨日は大寒の入りでした。風邪も流行っているようですが、皆さまは大丈夫でしょうか。
「きがるに句会」も今回が第3回の入賞発表となりました。今回は特別招待選者に同人会長の小西宏さんに加わっていただきましたので、さらに充実した句会になりました。次回第4回は、きがるに句会の過去に最優秀句をつくられた皆さんに特別選者に加わっていただきますので、よろしくお願いいたします。ご投句をお待ちしています。特別招待選者のみなさま、選とコメントをありがとうございました。これで第3回句会を終わります。(高橋正子)

▼その他の入賞作品は、下記アドレスをご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02c/

○室咲・温室
★室咲の花を戻して客間閉づ/稲畑汀子

室咲は、昔、春に咲く草木の花を室内に囲って炉などであたため早く咲かせたものをいう。いまでは、温室やビニールハウスが普及してそこで冬季でも咲かせる。

◇生活する花たち「梅の花芽・冬椿・千両」(横浜日吉本町)

1月22日(日)

★水仙の枯れし終わりを折りて捨つ  正子
庭に咲いているのでしょうか、可憐な水仙花、でもいのちあるものには最後があるのです。ありがとうの気持ちでしょうか。(祝恵子)

○今日の俳句
まず一本清楚に傾ぎ咲く水仙/祝恵子
水仙が咲くのは、意外と遅い。12月ごろは、ほとんどは蕾が固くて、正月が過ぎたころから一花二花と咲き始める。一月半ばすぎからが見ごろであろうか。まず、一本咲いた水仙が少し傾いで咲いている。「清楚に傾ぎ」が咲き始めの水仙らしい。

○寒林
★寒林を抜け青き海広き空/稲畑汀子

冬の木立や林のことで、寒々とした林である。寒の季節の林のことでもある。冬の林は、葉を落とし、常緑樹も寒さに耐えてみどりをかたくなにしている。葉を落とした林からは林の奥が見え、曲がった道が見える。何もない枝、しかし冬芽をしっかりつけた枝からは、萌えでた葉の色、茂った姿などいくつも想像できる。小鳥の声がきこえてはっと我に返るが。想像するのは、林の姿だけではない。林の動物たちのものがたり。あるいは、遠く離れている人たち、音楽、などが頭をよぎる。寒林には、色や音や人たちまでが登場する。

★寒林を行けばしんしん胸が充つ/高橋正子

◇生活する花たち「冬椿・侘助・ミモザ」(横浜日吉本町)

1月21日(土)

★日は燦と冬芽の辛夷生かしめて  正子
春に芳香のある白い六弁花をつける辛夷の蕾は冬の柔らかな日差しを受けて、春を迎える準備にいそしんでいる素晴らしい景ですね。 (小口泰與)

○今日の俳句
枯野にもほのかに朱かきもののあり/小口泰與
枯野となっても、枯一色ではなく、薄にしろ、ほかの草にしろ、ほのかに朱をもっている。「もののあり」と、多くを述べないので、却って句に膨らみと深みがでている。

○寒椿/冬椿
★寒椿つひに一日のふところ手/石田波郷
★木の葉中つき出て咲けり冬椿/松瀬青々

(寒椿)

早咲きの椿のこと。八重咲きの大神楽や、一重の侘助など、あるいは山椿の早咲きのものを、寒椿という。自宅のある横浜日吉本町の丘に探梅に信之先生と出掛けた。そこで寒椿と出会った。

★寒椿そよげる竹の葉にふれて/高橋正子
★寒椿葉が焼けながら咲いており/高橋正子

◇生活する花たち「茶の花・侘助・梅の花芽」(横浜日吉本町)

1月20日(金)

★水仙を活けしところに香が動く  正子
庭に咲いている水仙は、その辺りがとてもいい香りがしています。その水仙を部屋に活けると、また芳しい香りが漂ってきます。「香が動く」に感銘いたしました。 (藤田裕子)

○今日の俳句
寒念仏ひととき街が浄土なる/藤田裕子
寒の三十日の間、僧侶が修行のために、鉦や太鼓を叩き、念仏を唱えながら市中を巡る。僧たちの念仏が相重なり街に響きわたると、街がひととき、浄土となったような気持ちとなる。寒念仏を自分の生活に引きつけてよく捉えた。

○蕗のとう
涸滝のにじみそめたる蕗の薹/清崎敏郎

昨日、平成24年1月19日、寒中に蕗のとうを見つけた。農家の畑の隅には蕗の葉が小さくなってちらほら残っている。その葉の根もとに目を凝らして見ると予想にもしなかった蕗のとうが見つかった。丸みにはやや欠けるがふっくらとしている。早春の蕗のとうの黄みどり色と違って、緑が霜に当たったような色であった。
早春、蕗のとうが出るとやはり嬉しい。春が来たと思う。黄みどり色がうれしい。あのまるっこい形を摘んで手に収めるのもうれしい。蕗のとうにはよろこびがある。

蕗の葉の小さきに護られ蕗のとう 正子

◇生活する花たち「藪椿・冬椿・梅の花芽」(横浜日吉本町)

1月19日(木)

★寒林を行けばしんしん胸が充つ  正子
葉を落とし切り、枝をあらわにして鎮まる冬の林。地中深く根を張り近づいてくる春を待つ木々。想像力を刺激する冬の森で、詩人はいろいろな思いで胸を膨らませる。 (古田敬二)

○今日の俳句
寒禽の影滑る野に鍬を振る/古田敬二
野に懸命に鍬を振っていると、寒禽の影が滑っていった。土と我との対話があって、寒禽がそれに色を点じて景がたのしくなった。添削は、「冬禽」を「寒禽」として、鳥のイメージを際立たせ句に緊張感をもたせた。

○冬菫
★冬菫咲く万貫の巌を割り/藤井亘

「すみれは早春に花をつけるが、日当たりのより野山では野生のすみれは冬の半ばでも咲いているのを見かける。」と角川歳時記にある。金蔵寺の寺の裏山に登ったが、だれも人が来ぬらしく積もった落葉に埋もれてすみれが咲いていた。たったひとつということが多い。菫はかれんな花に似ず生命力が旺盛。子供のころ、畑にすみれが咲き喜んでいたら、すみれは瞬く間に増えて作物の邪魔になると、あっけなく抜き捨てられた。上掲の「万貫の巌割り」のすみれも、強靭な生命力を詠っている。
このごろは、パンジーも冬の花壇や鉢に植えられ、花の少ない季節に彩りを添えている。寒そうではあるが、生活の風景を変えている。

★冬すみれ日はしろがねに高くあり 正子

○グーグルの検索
グーグルで「俳句」と検索すれば、「インターネット俳句センター」がウィキペディアの次、2位の位置に来ている。昨夜の検索で驚いた次第。アドレスをkakan.infoに変えたので検索順位はぐんと下がったままではと思ったが、suien.ne.jp以上になった。おかげさまです。

インターネット俳句センター:http://kakan.info/

◇生活する花たち「梅の花芽・エリカ・蕗のとう」(横浜日吉本町)

1月18日(水)

 早稲田大学
★学生喫茶ジャズと会話と暖房と  正子
学生喫茶という言葉が若者が集い活気のある光景をうかがわせてくれます。ジャズの流れる中、きっと会話も弾んでいることでしょう。(高橋秀之)

○今日の俳句
冬草に海の青さが押し寄せる/高橋秀之
海の岸辺近くの冬草。日にかがやく海の青が強くて、冬草にまでその光が及んでいる景。テーマは「冬草」で、添削はテーマをはっきりとさせた。

○冬薔薇
★冬薔薇の一輪風に揉まれをり/高浜虚子

薔薇は花卉界の寵児でその種類が非常に多い。一般的には薔薇といえば初夏の花。初夏に薔薇展も多く開かれ、薔薇園も開放されて明るい季節にふさわしい花である。オールドローズもどこかの花園で咲いているのだろうと想像すると優美な気持ちになる。
冬の薔薇は、上掲の虚子の句のように、冷たい風に揉まれて、何かに耐えているが、自分を崩さない美しい女性の表情にも似ている。先日散歩の途中に、北側の窓の格子に黄色い冬薔薇を見たが、このような女性を思った。黄色い花弁の端が、寒さでほんのりオレンジがかって、完全に咲いて風に揺れていた。

★冬薔薇ほんのりオレンジ色の咲く/高橋正子

◇生活する花たち「冬薔薇・侘助・乙女椿」(横浜日吉本町)

1月17日(火)

★寒厨卵も餅も白ほのと  正子
寒中の寒々とした台所ですが、滋養に富む卵と餅のほのかな白さに、ほっと安らぐあたたかさを感じます。その白の優しい温もりは、寒厨ならではといえるのでしょう。(藤田洋子)

○今日の俳句
一路澄み石鎚見ゆる寒の晴/藤田洋子
行く手の一路の道が澄んで、その先に雪を冠った石鎚山が見える。寒晴れがくれたすっきりと、晴れやかな景色。(高橋正子)

○慈姑(くわい)
くわいを掘りにゆくからついてくるように言われたのは、もう半世紀以上も前。母の里には、蓮根やくわいが植えてあって、泥の中から青いくわいを伯母が掘りだして見せてくれた記憶がある。丸くて青いくわいは子供心にも魅惑的だった。これは、備後地方のこと。四国松山では、青くなく、その形も扁平である。正月料理に芽が出ていることから目出度いということで使われる。正月料理用には、一個150円から200円近くで売られているが、値段のことを言ってはおれないので買うのだが、私は、普段でもこのくわいを食べたい。しかし、正月を過ぎるとこのくわいが八百屋の店頭からも姿を消してしまうので、残念なのだ。昔、昔夏休みのころ食べた菱の実の味に似ていると思う。くりっとして、ほっこりしている味である。

◇生活する花たち「冬桜・水仙・万両」(横浜日吉本町)

1月16日(月)

★水仙の香をすぎ山路急となり  正子
寒い冬を待って咲き始める花。春の黄水仙と違って葉の割に花は小さい。群れて咲くとあたりに香りを溜める。その香りを横切って急な坂を登る。登りきった頂から眼下に海が広がる、そんなことを想像した。(古田敬二)

○今日の俳句
寒禽の影滑る野に鍬を振る/古田敬二
野に懸命に鍬を振っていると、寒禽の影が滑っていった。土と我との対話があって、寒禽がそれに色を点じて景がたのしくなった。添削は、「冬禽」を「寒禽」として、鳥のイメージを際立たせ句に緊張感をもたせた。

○白菜
白菜を夜は星空の軒蔭に  正子

白菜は、鍋に漬物に大根に劣らず日本で多く食される野菜のひとつ。白菜の漬物が美味しい。白菜に丸ごとに包丁を根もとのほうだけ入れ、あとは割いて四等分なり八等分なりして、太陽の恵みがありますようにと日向で干す。日向で干すことにより白菜に甘味が増す。一日では十分でなく夜は霜露がかからないように軒下に入れる。こうしてしんなりしてきた頃漬物につける。十分な重石がなければ、おいしいものができない。目下の悩みは、漬物に十分な重石を持っていないこと。それでも小さい漬物器で初めから小さく切って漬物を楽しんでいる。

◇生活する花たち「椿・蝋梅・ひいらぎ南天」(横浜日吉本町)

1月15日(日)

★波立てば鴨の勇みて泳ぎけり  正子

○今日の俳句
牡蠣揚がる瀬戸の潮(うしお)を零しつつ/佃 康水
広島は牡蠣の産地として知られているが、牡蠣の水揚げを詠んだ句。潮を零しながら、しかも瀬戸の、と具体的な詠みに情景がくっきりと浮かび上がり、臨場感が出た。

○水菜
★水菜洗う長い時間を水流し/高橋正子

水菜は、くじらといっしょにはりはり鍋にするのが関西風だろうが、さっぱりと食べたい菜ものだ。鍋にいれたり、漬物にしたり、油揚げとお総菜にたいたり。高橋家では代々、正月のお雑煮に水菜を入れる。水菜、里芋、人参、かまぼこ、ささみで東京風の味つけ。最近の水菜は生のままサラダに使われる。水耕栽培のようで、根元に土が噛んでいるいるよなことはない。畑に育った水菜は株も大き根元に土があって、これを落とすのに結構丁寧に冷たい水で洗わなければならなかった。上掲の句はその頃の句。

◇生活する花たち「百両・千両・万両」(横浜日吉本町)