★銀色の椿の蕾となっており 正子
○今日の俳句
輝ける夜空の星や豆を撒く/高橋秀之
「輝ける夜空の星」に託された気持ちが、晴れ晴れとして広い。高く放って撒いた豆は、星屑のなかに散らばってしまいそうだ。(高橋正子)
○節分
★かきけむりけり節分の櫟原/石田波郷
★節分の火の粉を散らす孤独の手/鈴木六林男
昔は四季の移り目をそれぞれ節分といったが、今は立春の前日だけが節分と呼ばれる。冬の節から春の節に移る分岐点。この夜。寺社では悪魔を追い払い、春を迎える意味で追儺が行われる。民間でも豆を撒いたり、鰯の頭や柊を戸口に飾ったりする。
節分の夜の豆まきは、特に幼い子どもたちにとっては楽しい行事。なんしろ、悪い鬼を豆をぶつけてやっつけるのだから。「福は内、鬼は外」の「鬼は外」は、大人には闇にひそむ姿の見えない鬼へ向かっての礫投げ。戸口に飾る鰯の頭、柊も庶民らしい追儺のしつらい。「鰯の頭も信心から」ということわざもあるが、これはどこから出てきたのか。
★節分の豆がひしめく子の拳/高橋信之
◇生活する花たち「パンジー・椿・桜花芽」(横浜日吉本町)

★白木蓮冬芽の銀の日にまぶし 正子
春が近づいていることを感じる御句です。白木蓮の冬芽はひときわ大きく銀色に息づいています。(多田有花)
○今日の俳句
やわらかき色を置きたり寒卵/多田有花
寒卵はきびしい寒さの中で産み落され、白色の厳しさもあるが、それがテーブルなどに置かれると、命あるもののやわらかさ、やわらかき色を呈す。そこをユニークな視点で捉えた。(高橋正子)
○探梅
探梅や天城出て来し水ゆたか/飯田龍太
早梅を探って山野を歩きまわるのが探梅、また探梅行である。今日の午前、信之先生とご近所の金蔵寺へ探梅に出掛けた。二輪の梅は咲いたばかりの瑞々しさがあって美しい。桜の花芽、桃の花芽もカメラに収めた。
◇生活する花たち「梅」(横浜日吉本町・金蔵寺)

★枯木立星のあおさに揺れもせず 正子
冬夜の澄み透るような星のあおさが、枯木立の輪郭をより際立たせてくれます。煌く星の輝きに、惑うことなく凛と佇む姿に、枯木立のいのちの美しさを見る思いがいたします。 (藤田洋子)
○今日の俳句
葦原の枯れ尽くしても水の上/藤田洋子
「枯れ尽くしても水の上」は、意表をついて、新しい発見。蓮や菖蒲などは、枯れると茎や葉が折れて水に浸かってしまう。葦原の葦は、枯れながらもまっすぐに立ち、水には影を落とすのみ。なるほど、枯れ尽くしても水の上ある。(高橋正子)
○河豚
★河豚の皿燈下に何も残らざる/橋本多佳子
河豚は、河豚の刺身、河豚刺で食べるのが一番河豚を食べたらしい。大皿に透き通った河豚の身が花のように並べられる。牡丹の花というのだろう。それを一枚一枚はがしてもみじおろしを添えたポン酢で食べる。さば河豚と呼ばれるものは松山では、スーパーでも売られている。東京に住まうようになった息子が、店に河豚の刺身を売っていないと電話をよこしたことがある。下関に近い松山に住んでいたならばこそ普段さば河豚なら食卓に載せることができた。
河豚の思い出といえば、子供のころ魚釣りの好きな伯父がいて、ときどき海へ釣りにゆくので付いて行った。釣れる魚は、熱帯魚のようなキザミ、キス、それに釣る目的もないらしい河豚。釣りあげられたは河豚ぷうっと膨れている。河豚が膨れるのは危険を感じたときのようだ。釣って帰っても河豚は捨てられる羽目になるのだが、捨てられるまでは、口に麦わらを差し込んで風船のように膨らませて遊んだ。戦後おもちゃなどない時代。膨らんだ河豚は愛嬌がある。
夏海にどこかに河豚がいて釣られ/高橋正子
大皿の藍の透けたる河豚刺身/高橋正子
◇生活する花たち「蝋梅・サンシュの実・冬桜」(横浜四季の森公園)

★手袋に手を入れ五指を広げみる 正子
手袋なしには外出もしにくい寒さです。手を入れてその温かさを感じながら、指がちゃんと入っているか五指を広げて見る。誰もが思い当たる微笑ましい一こまです。 (河野啓一)
○今日の俳句
寒椿膨らみ嬉しわが門に/河野啓一
節分も近くなり、春が待たれる。わが門に寒椿の蕾が膨らむと嬉しさも増してくる。(高橋正子)
○切山椒
★わかくさのいろも添えたり切山椒/久保田万太郎
「正月用の餅菓子。しん粉に白砂糖を加え、水でとろとろ加減にこねて、山椒の実を熱湯に浸した汁を少量混ぜ、蒸してから臼で搗いたものを、小さく蒸しって、さらにもう一度蒸しなおしたものを、長方形に切った餅の一種。食用紅で淡赤色に染めたものと、白いのをつくるのが普通で、ほのかな山椒の香味が喜ばれる。蒸羊羹に添えて出したりする。」(角川歳時記)
歳時記にこうはあるものの、切山椒を初めて食べたのは、横浜に越してきて初めての正月だと思う。だから、6年ほど前。切山椒を売る店も少なくなったようで、年中売られているのは、鎌倉の長島屋だけらしい。年中といっても夏場あるかどうかわからないが。鶴岡八幡様に初詣に出かけた折にお土産で買った。その日は雪だった。雪の寒さとともに切山椒が思い浮かぶ。買ってかえって食べると、まずいとも、美味しいとも言えないような味。たしかに紅白そろって長方形に切られていた。風邪引きの予防になるらしい。味がほんとうによくわからないので、もうひとつ、もうひとつと食べているうちに、この奇妙な味に病みつきなった。しばらく鎌倉に行っていないので、節分の前のこの寒さに切山椒を食べてみたくなった。浅草では2月に売られると聞いた記憶がある。
★切山椒買ってふたたび雪に出る/高橋正子
★やわらかに紅白そろう切山椒/高橋正子
◇生活する花たち「寒椿・三椏の蕾・柳の冬芽」(横浜四季の森公園)

鎌倉・報国寺
★竹林に踏み入るところ冬椿 正子
色の乏しくなった厳冬にあって、竹林は新鮮な緑を見せてくれます。目指すところは竹林であったのでしょう。しかし、その竹林の道に入る直前に偶然に出会った冬椿に、作者は喜びを隠すことができません。椿の花のあでやかな色が際立ちます。(小西 宏)
○今日の俳句
辛夷冬芽の散り輝ける空の晴/小西 宏
空が晴れれば、日が耀き、枝に散らばっている辛夷の冬芽の姿がよくわかる。「散り輝く」は辛夷の冬芽を詠んで的確。(高橋正子)
○火鉢
★ちちははの桐の火鉢でありしかな/高橋将夫
★瀬戸火鉢大勢家族佳かりけり/岡本眸
★夕餉待つひまの火鉢に手をあぶる/瀧春一
灰を入れ、炭火を熾し、暖を撮る器具。木製、金属製、陶磁器製などがある。電熱・ガス・石油などを利用した暖房器が一般化された現在は、陶器の丸火鉢もあまり見られない。
◇生活する花たち「寒椿・冬桜・枯芦」(横浜四季の森公園)

★あたらしき薪を傍積み暖炉燃ゆ 正子
薪を燃やして暖をとる。いまブームになっているようである。化石燃料や電気の熱にない優しさを持った熱であり、何より熱源が目に見えることがうれしい。ストーブの横に切り口の新しい薪を積んでゆったりとした時間を過ごす。至福の時である。(古田敬二)
○今日の俳句
清冽な山水流れ山眠る/古田敬二
原句は、「流して」であるが、これでは、山が片目を開けて眠っているような印象なので、写生句として添削した。山は眠っているが、それでも清冽な水は、流れ続けている。これがよい。写生は、俳句の初心。初心を大切にしていただきたい。(高橋正子)
○第4回きがるに句会入賞発表!
ご挨拶
新年からはじめたきがるに句会も第4回の入賞発表となりました。大勢の皆さまにご参加いただいて驚いていますが、大変ありがたいことです。大寒もそろそろ終わり、日脚も伸びて寒いながらも明るい気分になります。冬の終わりから春へ微妙に変化する季節を詠んだ句がたくさんあって、楽しませていただきました。特別招待選者の皆さま選とコメントをありがとうございました。これで、第4回句会を終わります。次回第5回句会のご投句をお待ちしています。
【最優秀/2句】
★葦原の枯れ尽くしても水の上/藤田洋子
「枯れ尽くしても水の上」は、意表をついて、新しい発見。蓮や菖蒲などは、枯れると茎や葉が折れて水に浸かってしまう。葦原の葦は、枯れながらもまっすぐに立ち、水には影を落とすのみ。なるほど、枯れ尽くしても水の上ある。(高橋正子)
★野に覚めし淡きみどりや蕗の董/佃 康水
「野に覚めし」によって、淡い蕗の董のみどりが目に強く焼きつく。初めて見つけた蕗の董であろう。驚きと嬉しさを隠せない。(高橋正子)
http://blog.goo.ne.jp/kakan02c/
○綿入
綿入れ半纏というものが、今も健在で売られているので、今年は信之先生のものを新しくコープで購入した。柄は、「文人柄」と称して、紺地に白い小さな長格子が織り込んであり、お尻まですっぽり隠れる長めのもの。最近新聞広告に若い男性が綿入れ半纏を着てパソコンを使う姿が大きく載っていた。(パソコンの広告だが)日本の冬にはこれが一番、なかなかかっこよい。受験期の子供二人も半纏の愛用者だった。信之先生は、大連育ちで、ドイツ文学者であるが、読書に物書きには半纏やちゃんちゃんこが一番よいようで、長年愛用している。ほっこりと体を包み、中の体は自由に動く。こういう半纏を着て炬燵に足を入れれば心地よい。足を温め、頭は冷やす。故人の知恵はいまも我が家で暮らしに生きている。ちなみに子供たちのは、女の子はピンクに兎の柄、男の子は黒に、詳しは忘れたがスポーツチームのマーク。もっと小さいときは、かわいい汽車が裾回りを走っているもの。思い出しても懐かしい。
◇生活する花たち「寒椿①・寒椿②・木瓜の花蕾」(横浜日吉本町)

★レモンの香潮の香混じり牡蠣を食ぶ 正子
○今日の俳句
何もない寒空を昇ってゆく鳶/川名ますみ
何もない寒空は、雲さえも、音さえもないということ。澄みきった寒の青空に吸い込まれように昇る一羽の鳶が、静謐な寒青空を印象付けている。
○咳
★咳の子のなぞなぞあそびきりもなや/中村汀女
★誰か咳きわがゆく闇の奥をゆく/篠原梵
おもに気管や喉頭の粘膜が寒さの刺激を受けて起こるものだが、結核によるもの等もあり、その原因は複雑である。俳句での「咳」は冬の季語となっているので、俳句に詠まれる「咳」は風邪の咳となる。
★上の子が咳して下の子が咳を/高橋信之
◇生活する花たち「寒椿①・寒椿②・木瓜の花蕾」(横浜日吉本町)

★枝打ちの銀杏冬芽が地に弾み 正子
銀杏の枝打ちの音が、力強く明るく地に響き聞こえてきます。落とされた銀杏の、冬芽にある漲る生気が「地に弾み」に込められているようです。 (藤田洋子)
○今日の俳句
千両のひと色壷に豊かなり/藤田洋子
壺には千両だけ挿されているのか。そういうのもいい。あるいは、正月の花のなかに千両があって、赤い実の色があることで壺が豊かになる。
○四季の森公園
横浜市緑区に県立四季の森公園がある。JR中山駅南口から徒歩約15分のところである。豊かな緑の里山をそのまま生かした公園で、横浜の中心部に近いことや、四季折々の自然に出会えることなどから多くの人が訪れる。
寒中の四季の森公園は、葉のあるものが葉を落とし、川に架かる橋なども初めて見る橋のようである。今日は、四季の森には中山駅から「よこはま動物園」行のバスに乗り、いつもなら「長坂」で降りるところを、一つ手前の中山中学校入口で降りた。すぐ公園の敷地内に入るが、浅い池は全面薄氷が張り、先日降った雪も残り、皐月には霜がきれいについていた。さくらの園には、奇しくも十月桜という冬桜が咲いていた。山桜の花は三月だそうだが、花芽もかなり大きくなっていた。蝋梅、みつまたの花の蕾、サンシュの赤い実などが見られた。鴨も氷が融けはじめた池に4,5羽かたまるように浮いていた。尾長らしい鳥がいた。葦原を一巡する。山肌には、植物の標識のみが立っているところがある。「シモツケ」「オタフク」などとあっても、植物は枯れ果ててしまっている。この大寒の午前中というのに、散歩を楽しむ人が多くいた。二時間ほど園内にいた。
http://www.kanagawaparks.com/shikinomori/
○枯芦
★葦枯れて空と水とに月ふたつ/福田蓼汀
芦は葉が枯れてからいつまでも浅水や湿地に茎を残して、冬の水辺の風景を侘びしく見せる。芦原に日が差し込んでくれば、日の光を抱え込み、直立した茎の並びは、ほの赤くて美しい。
★葦枯るる葦原奥に雪残り/高橋正子
★枯るる葦そよがぬときはほの赤し/高橋正子
◇生活する花たち「寒椿・冬桜・枯芦」(横浜四季の森公園)

★大寒の水道水の真すぐ落つ 正子
「大寒の水道水」が新鮮です。寒の水は薬用効果もあるといいます。蛇口から真すぐに落ちる寒中の水がきりりと冷たく、身も心も清められるようです。私の子供の頃は水道管がよく凍りました。(小川和子)
○今日の俳句
寒中の樹に日当るを触れてみる/小川和子
何もかもが寒中の寒さにある中、日当る樹がいかにも暖かそうに思える。つい手に触れてみたのだ。
○ネット短信
22日に129号をメールで送った。ネット短信は、俳句ニューズレターを引継ぐもので、俳句ニューズレターは、2001年6月7日発行の第1号から第108号(2008年7月1日)までの7年の間、発信した。ネット短信の歴史は、12年を越え、随分長く続いたものと思う。
▼ネット短信保存版
http://blog.goo.ne.jp/kakan107
▼俳句ニューズレター保存版
http://www.suien.ne.jp/0005/newsletter/
○ネット短信129号
■ネット短信No.129/2012年1月22日発信
□発信者:高橋正子(花冠代表)
□電話:045-534-3290
■□花冠年間賞
2011年の最優秀は、藤田洋子さん、多田有花さん、黒谷光子さん、佃康水さんの4名の句に
決まりました。賞品は、後日お送りしますので、お待ちください。
http://blog.goo.ne.jp/npo_suien105/
■□きがるに句会入賞発表!
第3回きがるに句会の入賞発表をいたしました。下記のブログをご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02c/
■□きがるに句会投句箱
第4回きがるに句会のご投句は、下記アドレスの投句箱にお願いします。締め切り
は、1月28日(土)です。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02/
■□フェイスブック立春句会のご案内
第9回フェイスブック句会は、2月4日(土)にフェイスブック立春句会として
開催いたします。
http://blog.goo.ne.jp/kakan106/
●高橋正子の俳句日記(ブログ)
多くの方にお訪ねいただき、16日連続ランキング入りしています。これは今までにない
ことです。ご訪問ありがとうございます。毎日が楽しみです。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02/
●インターネット俳句センター
グーグルで「俳句」と検索すれば、それぞれのパソコンの設定によって違いがありますが、
「インターネット俳句センター」がウィキペディアの次、第2位の位置に来ています。お
かげさまです。
http://kakan.info/
○マスク
★マスクして我を見る目の遠くより/高浜虚子
★マスクして北風を目にうけてゆく/篠原梵
冬になると白いマスクで鼻・口を覆っている人を多く見かける。欧米では、こうした習慣がないので、医者が街にあふれていると思い、驚く。
★マスクして互いに目を見てあい話す/高橋正子
◇生活する花たち「寒椿・三椏の蕾・柳の冬芽」(横浜四季の森公園)

★波立てば鴨の勇みて泳ぎけり 正子
海や池などで波の意のままに気持良さそうに穏やかに漂っている鴨を見かけます。しかし、上げ潮か或いは何かの理由で、そこに波が立つとその波に勇んで乗ろうとする一瞬の鴨の動きを可愛く活き活きと描写されて居る様に思います。 (佃 康水)
○今日の俳句
ジャムを煮る夕べの窓に寒の月/佃 康水
ジャムをことこと煮る夕べの静かな時間。厨の窓をのぞくと寒そうな月が懸っている。なおさら、ジャムを煮る時間の豊かさを思う。
○手袋
★雪白の手袋の手よ善きことを為せ/中村草田男
冬の生活に身近なもの。布や毛糸、皮で作られ、防寒・保温のために手指を包む。手袋をはめて手を広げてみることがある。てぶくろの模様とか、指の長さとかがよく見える。私が小学生のころ、中学生や高校生は自分の手袋、マフラーは自分で編んでいた。マフラーは小学生でも編めるが、手袋はちょっとむずかしい。バスで10分ほどのところに母の実家があって、そこに高校生の従姉がいた。冬休みにゆくと、残り毛糸をいろいろ取り出してミトンを編んでくれたことがあった。親指ができるのがなんとも不思議だった。できたミトンは二つが離れないように、紐がつけられて、首にかけられるようになった。手袋って、ふたつが離れやすい。
★手袋に手を入れ五指を広げみる/高橋正子
◇生活する花たち「蝋梅・サンシュの実・冬桜」(横浜四季の森公園)
