2月13日(月)

★日当たって山の椿の花であり   正子
早春の穏やかな日差しを受けて、里山に咲く椿は花弁と黄色いしべのコントラストが美しく、素晴らしい春の景ですね。 (小口泰與)

○今日の俳句
榛名富士むらさきに明けクロッカス/小口泰與
榛名山が紫色に明ける。雄大な山にも、小さなクロッカスが咲いて足元にも春が来ている。クロッカスも紫色であろうか。(高橋正子)

○菜の花
★菜の花や月は東に日は西に/与謝蕪村
★菜の花や小学校の昼げ時/正岡子規
★菜の花の遙かに黄なり筑後川/夏目漱石
★菜の花や旅路に古りし紺絣/沢木欣一

春、一面に広がる菜の花畑は壮観で、代表的な春の風物詩である。菜種油採取用のアブラナ畑はあまり見られなくなったが、その他のアブラナ属の野菜も黄色い「菜の花」を咲かせ、その種子採取用の畑が菜の花畑として親しまれている。早春のアブラナのほかに野菜類(カブやハクサイ)が、油用のセイヨウアブラナ、ノザワナがそれぞれ5月に開花する。切り花用として利用されるものは、チリメンハクサイや改良品種で、葉が白っぽく縮れている。セイヨウカラシナは、丈夫で川原や荒れた土地にも繁茂するため、河川敷や堤防、空き地に播種し、菜の花畑を作るケースがある。
★山の斜面切り開き菜の花満開/高橋信之

★群青の湖までの土手花菜風/黒谷光子
土手伝いに菜の花の風を受けながら湖まで歩くと、湖は群青の色に。その色への驚きがある。菜の花の黄色をイメージさせる花菜風と、湖の群青のコントラストが美しい。(高橋正子)

★まんまるい蕾もろとも花菜漬け/藤田裕子
まんまるい、黄色も少し見える蕾もろとも漬物に付け込むには、心意気がいる。日常生活が身の丈で表現された句。(高橋正子)

◇生活する花たち「梅・水仙・三椏の花」(伊豆修善寺梅林2011)

2月12日(日)

★梅の花いつもきれいな青空に   正子
寒さの中に、仄かな香をまとい凜と咲く可憐な梅の花。見上げるといつも澄みきった青空が花とともにあります。早春のみずみずしい空気と春を迎える静かな喜びが感じられます。(柳原美知子)

○今日の俳句
とりどりの遊具整い風二月/柳原美知子
遊具のペンキを塗りかえられたり、整備されて、子供たちが遊びに来るのを待つばかりとなっている。「風二月」がよく効いている。(高橋正子)

○第5回句会入賞発表

ご挨拶
一日寒い日でした。インフルエンザも流行っているようです。第5回のきがるに句会にご参加いただき、ありがとうございました。入賞の皆さまおめでとうございます。毎日、力のこもった俳句をご投句いただいて圧倒されています。切磋琢磨という言葉がぴったりの状況と思います。次回は第6回句会となります。ご投句をお待ちしています。これで、第5回きがるに句会を終わります。

【最優秀/2句】
★福の豆受けて明るき音鳴らす/佃 康水
福の豆をいただくことは、福をいただいたようでうれしい。「明るき音」は、作者の明るく気持ちが出て、句がかろやかなのがいい。(高橋正子)
★雪晴れの空へ明るき鳥の声/井上治代
学生俳句のよさが出た句で、率直でこだわりのない明るさがよい。(高橋正子)

▼その他の入賞句
http://blog.goo.ne.jp/kakan02c/

◇生活する花たち「梅・ミモザの花蕾・桃花芽」(横浜日吉本町・金蔵寺)

2月11日(土)

★下萌えは大樹の太る根もとより   正子
大きな素晴らしい樹のもとから、早春、地中から草の芽が萌えて出て、春が来た事を知らせてくれますね。素敵な句ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
利根川に道真っすぐや蓬摘む/小口泰與
利根川は関東平野を延々と流れる大河であるのは言うまでもないが、利根川に沿う道がまっすぐであること、それほどの川であることに意外性がある。真っ直ぐな土手道に蓬を摘む楽しさは、どんなであろうか。(高橋正子)

○辛夷
風摶つや辛夷もろとも雑木山/石田波郷

高さ6-9メートルに達する落葉喬木。新葉の出ぬ前白色の花を、梢頭樹間に開く。雨に濡れたり、土埃をかむったりすると、退色して、紙屑のようにきたなくなる。古名をヤマアララギ、コブシハジカミという。

辛夷は、私にとっては、堀辰夫の小説のイメージが強い。横浜に転居するまでは、辛夷は、希に、もしくはほとんどと言っていいほど見たことがなかった。どんな花だろう、この目で見てみたいと思っていたものだ。似ている花の白木蓮は、庭木などで、家々によく咲いていた。新しい住宅が建つなどすれば植木にも流行があるのか、どの家にも同じ木が植えられる。白木蓮もその一つではなかったかと思う。横浜に転居してからは、近所に始まり、至るところに辛夷を見かける。旅をすれば、雑木山に辛夷が咲いているのが目撃できる。辛夷の花が咲くころは風がたしかによく吹く。風に雑木山ごとなぶられるようなこともある。白木蓮のように明らかな形で咲かないで、くしゃくしゃと咲く。この決まりなさがいい。スケッチするなら、白木蓮より辛夷がいい。風に打たれやすく、雨に傷みやすくて、儚く美しい文人好みの花であろう。シデコブシというのがあって、いい花だと思う。

◇生活する花たち「黄水仙・椿・桃花芽」(横浜日吉本町・金蔵寺)

2月10日(金)

★おしばなの紅梅円形にて匂う   正子
おしばなとなりながらも、「円形にて匂う」紅梅。丸い五弁の花びらの可憐さも、馥郁とした香りもとどめた美しさです。紅梅の何ともいえない愛らしさが、そこはかとなく漂う香りとともに伝わります。(藤田洋子)

○今日の俳句
街筋の昼月ほっと梅開く/藤田洋子
街筋の空を見上げれば、白く透明感のある昼の月が浮かんでいる。昼月を遠く梅が開いて、昼月と梅との美しい出会いがある。(高橋正子)

○蓬 蓬摘む
★蓬萌ゆ憶良・旅人に亦吾に/竹下しづの女

春になると、祖母が「墓原(はかわら)へ蓬を摘みにいこう」と、竹かごと鋏と用意して連れて行ってくれた。墓原は、墓地ではなくて、裏山の裾の村の墓地の隣りにある柿の木がある畑である。夜は怖くて決して行けないが、昼間は、丘になっているので瀬戸内海が見渡せ、汽笛を鳴らしてゆく船が遠くかすんで見えるうららかなところである。竹かごは「ほぼろ」と呼んでいた。鋏はじゃんけんのチョキに似た握り鋏と呼ばれる鋏で、これで萌え出た蓬をちょきちょきと摘みとる。蓬は爪でたくさん摘みとると爪が真黒になって、痛くなる。摘んだ蓬は、雛祭の菱餅になったし、蓬餅、蓬団子となって、春が来たら食べられる嬉しいものであった。

これまで住んだところには、摘もうと思えば摘める蓬がいつでもあった。埃を冠っていない山裾などで、子供たちと遊びながら蓬を摘んで持ち帰って蓬団子にした。ただ摘むだけのこともあった。夏草となり埃っぽくなった蓬は、もういやだけれど。(しかし、梅雨の季節、水に倒れた蓬を牛車が轢くと芳しい香をあげるという枕草子にもあるような場合は別にして。)若草を摘む喜びは、万葉の時代から、日本人の心のどこかにあるのではと思う。

★利根川に道真っすぐや蓬摘む/小口泰與
利根川は関東平野を延々と流れる大河であるのは言うまでもないが、利根川に沿う道がまっすぐであること、それほどの川であることに意外性がある。真っ直ぐな土手道に蓬を摘む楽しさは、どんなであろうか。(高橋正子)

◇生活する花たち「梅①・梅②・蝋梅」(横浜日吉本町・金蔵寺)

2月9日(木)

★春浅し立ちたる草の鳴りづめに   正子
早春の野原や山には未だ冬枯れした萱の様なやや長めの草が立ったままに残っています。
カサカサと軽い音をたて東風に靡き続けている景を想い浮べます。その音は新芽を促がす音の様にも思われます。枯れ草の根元から青々とした新芽が出て一面青い野原になるのも間近いことでしょう。場所によっては野焼きが行われるのもこの頃でしょうか。(佃 康水)

○芹
★薄曇る水動かずよ芹の中/芥川龍之介

俳句の季語では、春の芹と新年七草の芹とは、別である。芹は、水田や、小川のほとりや湿地などいたるところに生えている。また食用のためにも栽培される。葉茎ともに特殊の香気がある。
先日、朝食のみそ汁に芹を入れた。豆腐と芹の単純なみそ汁だが、まだよく目が覚めない家族のひとりが「この三つ葉はおいしいね。」と。よく目が覚めている家族のひとりが「この芹はうまいなあ。」という。三つ葉と言った家族には、芹と訂正し、芹は今が一番おいしい時と説明した。
子どものころは、まだ川の水がきれいで、水は手を切るように冷たかったが、子供たちも遊びながら芹を摘んだ。芹が食用に栽培される時代ではなかったので、本格的に芹を食べるときは、大人の出番で、大人が摘んできた。うどんにもすき焼きにも芹が入っていた。早春のかぐわしい食べ物で子どもにもその香気がうれしかった。

○今日の俳句
包み紙少し濡れいて蕗の薹/佃 康水
蕗の薹を包んでいる紙がうっすらと濡れている。朝早く採られた蕗の薹だろうか。蕗の薹の息吹であろうか。しっとりとした命の、春みずみずしさがある。(高橋正子)

◇生活する花たち「クリスマスローズ・椿・へくそかずら」(横浜日吉本町)

2月8日(水)

★花丈の揃い真白なシクラメン   正子
シクラメン、そういえば花の丈がそろっています。白い花であればそれがいかにも清楚で美しく感じられます。 (多田有花)

○今日の俳句
紅白を見せて膨らむ梅花芽/多田有花
梅の花芽が、はや膨らんで花の色が見えている。それに白と紅があって、咲いたときの華やぎを待つ楽しみの心がいい。(高橋正子)

○三椏の花
三椏は、蕾の期間が長いようだ。初詣に行けば神社の境内に蕾の三椏を見つけることがある。私は長い間、この蕾を花と思い違っていた。去年修善寺の梅林を訪ねたときに、それは二月下旬だったが、梅林の入口のバス停の近くに三椏の花が咲いていた。蕾がはじけて山吹色が内側に見えて、毬のように咲いていた。大変可憐な花である。横浜の四季の森公園のせせらぎ沿いに植えられているのが、いま最も身近にある三椏である。
三椏の花でもっとも印象に残っているのは、四国八十八か所のお寺出石寺の山門の脇に咲いていたものである。ふもとからバスで山道をうねうねと登ると雲海の上に寺がある。雲海が寄せてくるところの三椏の花は、それが和紙の原料であるということも考えれば、生活の花として別の意味合いやイメージが湧いてくる。事実ふもとの大洲市は和紙の産地である。

◇生活する花たち「パンジー①・パンジー②・蝋梅」(横浜日吉本町)

2月7日(火)


★梅の花遠きに咲きて白さ満つ   正子
遠くに見える白梅は満開だったのでしょう。遠くから見る方が白さが際立つのでしょう。香りも漂ってくるようです。(黒谷光子)

○今日の俳句
拝観を終え紅梅に集まれり/黒谷光子
集ってお参りに出かけた。拝観を済ませたものが順次、誰彼となく、紅梅のもとに集まった。うららかな日の紅梅の見事さ、和む人の心がおのずと知れる。(高橋正子)

○土筆
まま事の飯もおさいも土筆かな/星野立子

土筆はトクサ科の植物。たしかにトクサに似ている。茎に筋があり、袴と普通呼んでいる節のようなところも似ている。土手や野原で土筆が見つかると、どんなに風が冷たくても春が来たと実感する。子どものころ、土筆を見つけるのは容易ではなかった。野原に出ても、土筆が出そうな場所が見当もつかない。もっと大きい子や大人に連れて行ってもらって、土筆がでそうなところがわかるのだろうと思う。ところが、大人になってみると雑事に追われて、近所にも土筆が出そうなところがあるとわかっても、あっという間に杉菜になっている。残念至極である。数年前、町田市の里山にでかけたおり、山から田んぼに出たところに、土筆が刈り取れるほどたくさん生えていた。日当たりのよい至るところに見つけられる土筆であるが、里山がよく保存されている環境では、たくさんの土筆が野に見つけられた。

土筆を摘んで食べることだが、シーズンになると四国ではスーパーに土筆が売られていたが、買わなくても一握りも摘めばば、梅干しを入れて卵とじによくした。梅干しで土筆の茎の色が紅色になる。胞子の緑がかったねず色と卵の黄色で春らしい一品になる。また、凝った人は、妹などはよく作って送ってくれていたが、土筆の砂糖煮というものもある。お茶うけにする。

◇生活する花たち「椿・苺・桜花芽」(横浜日吉本町)

2月6日(月)

★水掛けて春水かがやく仏なる  正子
春日が差すような明るい景が目にうかびます。お地蔵様に水を掛けられたのでしょうか。水には古来けがれを洗い流す力があると信じられていたとか。仏様に掛けられた水は、春の光をあびてかがやいていたことと拝察いたします。 (小川和子)

○紅梅
紅梅は白梅よりも晴れた空が似合う。50年以上前のある風景について鮮明に記憶がよみがえる。生家の隣に分家があって、そこに立派な紅梅が咲く。その季節は、分家(分家には慶応3年生まれ、漱石や子規と同い年の百歳のおばあさんが健在であった)の法事があり、遠い親戚の黒衣の人たちまでもがうららかな日差しに出入りする。そいうときの紅梅は、ひときわあでやかに見えた。まだ私は小学校低学年で非常に人見知りであっから、遠くから紅梅を眺めていた。故人の忌日は変わりなく、紅梅の咲く日も変わらない。
 紅梅は高くて黒衣まぶしかり/高橋正子

○今日の俳句
二月の陽を反射させつつバス来たる/小川和子
バスを待っていると、向こうから陽を反射させながらバスがやって来た。光は、早くも明るい二月の光。二月の光を連れて来たバスである。(高橋正子)

◇生活する花たち「黄水仙・梅・枝垂れ梅の花芽」(横浜日吉本町・金蔵寺)

2月5日(日)

 東山・法然院
★春寒し木を打ち人を呼び出せり   正子
春寒い季節、京都の鄙びた法然院をお訪ねになったのですね。山門の脇に吊るされた木板を叩いて訪ねた事を知らせるのでしょうか。境内に一歩潜ると深閑として身の引き締まる思いが致しますが、その中にあって木槌で知らせるその木の音の温かさ、それに応え迎え入れてくださる法然院の温かさまで伝わって参ります。春寒い日、法然院での心豊かな一時を楽しまれた事でしょう。 (佃 康水)

○今日の俳句
★野に覚めし淡きみどりや蕗のとう/佃 康水
「野に覚めし」によって、淡い蕗のとうのみどりが目に強く焼きつく。初めて見つけた蕗の董であろう。驚きと嬉しさを隠せない。(高橋正子)

○フェイスブック立春句会入賞発表

ご挨拶
今年は厳しい寒さに見舞われておりますが、それでも立春の名を聞くと、冬から解放される嬉しさがわいてきます。立春句会には、大勢の皆さまにご参加いただき、最近では一番多いご投句がありました。立春らしい明るい俳句に元気が湧いてきました。入賞の皆さまおめでとうございます。いつもながら、信之先生には管理運営を、洋子さんには集計をお願いしました。大変お世話になりありがとうございました。これで、立春句会を終わります。(主宰 高橋正子)

【最優秀】
★雪原の鉄路陽に映え陽に交じる/黒谷光子
雪原に伸びる鉄路を想像するとこうだ。日が散らばる雪原に黒い鉄路が伸び、日に映え、陽に交じってしまうほど輝く。雪原が明るく、春も隣の感が強まる。(高橋正子)

★立春や光と翳と飛ぶ鳥と/矢野文彦
立春となると光がにわかに明るく感じられる。身辺にも光があり翳がある。空を見れば、自由に飛ぶ鳥も。光と翳と自由な鳥が立春の日に明るく詠まれた。(高橋正子)

▼その他の入賞作品は、下記アドレスのブログをご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan106/

◇生活する花たち「椿・苺・桜花芽」(横浜日吉本町)

2月4日(土)/立春

★春立ちてものの影踏むこと多し   正子
すでに寒中から日差しが力を増してきています。それがいよいよ立春ともなれば、はっきりと「光の春」に入り、すべてのものの影がくっきりとしてきます。そのさまを的確に詠まれています。(多田有花)

○今日の俳句
立春大吉梅の小枝はまっすぐに/多田有花
「立春大吉」は目出たい上に、朗らか。梅のずわいが真っ直ぐ伸びて、躊躇なし。目出たく、朗らかで、躊躇なし。こう行きたい。(高橋正子)

○立春
★立春の米こぼれをり葛西橋/石田波郷
★立春の海よりの風海見えず/桂 信子

陰暦では、1年360日を二十四気七十二候に分けたが、立春はその二十四気の一つで、陽暦では2月4日か5日、節分の翌日に当たる。節分は冬の季語となっている。節分を堺に翌日は春となる。あくまでも暦の上だが、この切り替えがまた、人の心の切り替えにも役立って、立春と聞くと見るもの聞くものが艶めいて感じられる。冬木もいよいよ芽を動かすのだろうと思う。寒禽と呼ばれていた鳥も鳴き声がかわいらしく聞こえる。そういえば、林の木々の枝を渡る小鳥がよく目に入るようになった。今年の寒さはめったに雪の降らない地方にも雪を降らせていて、来週はまたぐっと冷え込むらしい。

★立春の夜道どこからか水の匂い/高橋信之

◇生活する花たち「黄水仙・梅・枝垂れ梅の花芽」(横浜日吉本町・金蔵寺)