★森奥のたんぽぽ大方は絮に 正子
鮮やかな黄のたんぽぽもほぼ絮となり、森の奥の静けさの中、その白い球形の柔らかさに、ふと心安らぎます。春から夏へ、森の木々も若葉があふれ、新たな明るい季節の始まりです。(藤田洋子)
○今日の俳句
朝掘りの筍どさり土間湿る/藤田洋子
朝掘ったばかりの筍は、大地の湿りを含んで重い。土間にどさりと置かれ、土間を湿らせる勢い。「どさり」が効いた。(高橋正子)
○黄菖蒲

[黄菖蒲/横浜都筑・ふじやとのみち]
★花菖蒲夕べの川のにごりけり/桂信子
★かへり来し命虔しめ白菖蒲/石田波郷
★黄菖蒲に薄き汗かくころとなり/高橋正子
黄菖蒲(帰化)と似たものに菖蒲、花菖蒲(栽培) 、それにアヤメ、カキツバタ、シャガ、イチハツ(帰化、栽培)アイリス、ジャーマンアイリス等があるが、見分けるのが難しい。菖蒲を除き、これらのすべては、黄菖蒲と同じアヤメ科アヤメ属の植物だが、菖蒲だけは、ショウブ科(サトイモ科に分類する体系がある)のショウブ属に属する。
黄菖蒲(学名: Iris pseudacorus )は、アヤメ科アヤメ属の多年草。帰化植物。花茎の高さは60-100cmになる。葉は幅2-3cm、長さ60-100cm、剣形で中脈が隆起し明瞭で、縁は全縁。花期は5-6月で、アヤメやノハナショウブと同じ、外花被片が大型の広卵形で先が下に垂れ、内花被片が小型で直立した、黄色の花を咲かせる。外花被片の中央に茶色がかった模様がある。西アジアからヨーロッパ原産の植物で、明治頃から栽培されていたものが日本全国の水辺や湿地、水田脇に野生化している。観賞用に栽培されているハナショウブには黄色系の花がないため、その貴重性から重宝されたが、湖沼や河川などへの拡散が問題となっている。環境省は「要注意外来生物」の一種として警戒を呼びかけている。
黄菖蒲は日本のものかと思っていたが、帰化植物ということだ。生まれたときから、生家の裏の小さい池に黄菖蒲が咲いた。生家は明治時代に建て替えられて、裏庭の西に榎があり、その下に池があった。榎は大きくなりすぎたのであろう、枝や幹は大きく切られていたので、日は差し込んでいた。池の水が淀みがちで湿気が上がるので、かなり前に埋められ、榎も切り倒されている。子どものころは、雨の日などに、裏の縁側から黄菖蒲を眺めて、黄色い色に目を止めていた。
◇生活する花たち「牡丹・白藤①・白藤②」(鎌倉・鶴岡八幡宮)


★いつ見ても雪割草のつめたかり 正子
雪を割って花咲く「雪割草」の姿に小さく又可憐な中にも力強さを感じます。今は花の時期を終わって三つ葉の形の濃いみどりの葉が残って居るばかりです。「雪割草」の名から来るイメージが雪を想像させ、この「時期、「いつ見ても」「つめたかり」と感じられたのでしょうか。今年は咲かなかった家の鉢植えの「雪割草」も今は静かに眠っています。 (佃 康水)
○今日の俳句
真青なる空や吉備路に桃の花/佃 康水
吉備、岡山は桃の産地。吉備路を歩くと桃の花が咲き満ち、青空が広がる。青空と桃の花の対比がよく、心地よい路である。(高橋正子)
○芹の花

★底見せて流るる川や芹の花/石塚友二
★芹咲いて遠くに群れているを見る/高橋信之
芹は、セリ科の多年草で、春の季語であるが、芹の花は、季語となっていない。湿地やあぜ道、休耕田など土壌水分の多い場所や水辺の浅瀬に生育することもある湿地性植物である。高さは30cm程度で茎は泥の中や表面を横に這い、葉を伸ばす。葉は二回羽状複葉、小葉は菱形様。全体的に柔らかく黄緑色であるが、冬には赤っぽく色づくこともある。花期は7~8月といわれるが、晩春にも咲く。やや高く茎を伸ばし、その先端に傘状花序をつける。個々の花は小さく、花弁も見えないほどである。北半球一帯とオーストラリアに広く分布する。
★せせらぎはあまたの芹の花揺らす/高橋正子
◇生活する花たち「黄菖蒲・睡蓮・芹の花」」(横浜都筑・ふじやとのみち)

★八十八夜のポプラに雀鳴きあそぶ 正子
八十八夜、まさしく陽光あふれ、若葉が目に沁みる頃。ポプラのそよぎ、雀の囀り、その軽やかな明るさ、心楽しさに、春から夏への確かな季節の歩みが快く伝わってきます。(藤田洋子)
○今日の俳句
子が発ちし八十八夜の月明り/藤田洋子
「八十八夜の月明かり」の美しい抒情に、旅立つ子を送り出す母の一抹の寂しさが添えて詠まれた。(高橋正子)
○山吹
★雨脚の舞ってゐるなり山吹に/清崎敏郎
★西側の垣の山吹黄が明るし/高橋信之
★降りかかる雨の山吹窓越しに/高橋正子
山吹の花が咲くころは、降るともなく、降らぬともなく、雨が細い雨脚を見せて降ることが多い。山吹の花の記憶はいつも雨とある。一重ではなく、記憶の山吹は八重だ。「七重八重・・」の大田道灌の古歌も今では言う人もいないだろうが、雨降りの記憶とともに脳裏にある。
白山吹という白い花を咲かせる山吹もあって、これは一重で黒い実を結ぶ。我が家では、白山吹は、高い曇り空の下に咲いて表の庭にあった。日吉には、見事に垣根をなして白い花咲かせている家があって、しゃれているので、山吹とも思えない感じだ。
山吹は、低山の明るい林の木陰などに群生する。樹木ではあるが、茎は細く、柔らかい。背丈は1mから、せいぜい2m、立ち上がるが、先端はやや傾き、往々にして山腹では麓側に垂れる。地下に茎を横に伸ばし、群生する。葉は鋸歯がはっきりしていて、薄い。晩春に明るい黄色の花を多数つける。多数の雄蕊と5~8個の離生心皮がある。心皮は熟して分果になる。北海道から九州まで分布し、国外では中国に産する。古くから親しまれた花で、庭に栽培される。花は一重のものと八重のものがあり、特に八重咲き品種(K. japonica f. plena)が好まれ、よく栽培される。一重のものは花弁は5枚。白山吹もあるが別属である。日本では岡山県にのみ自生しているが、花木として庭で栽培される事が珍しくない。こちらは花弁は4枚。
◇生活する花たち「藤・シャガの花・花水木」(横浜市緑区中山)


★聖書繰る野の青麦を思いつつ 正子
「一粒の麦もし死なずば」という聖書の言葉を思い出しました。青麦が揺れる季節、その心地よさの中で聖書の言葉を読んでおられます。(多田有花)
○今日の俳句
春の沖へ沖へとヨットのきらめく帆/多田有花
ヨットの観察をよくすべきなので、添削。春の沖へ出てゆくヨットの帆がきらめいて、沖にはもう夏が近づいている感じがする。(高橋正子)
○福山へ
昨日午前8時前の新幹線で娘の句美子と広島の福山へ。母の入院による見舞いのため。新横浜駅から福山駅までは、3時間22分の旅。二人の妹には鎌倉長島家の「切山椒」を土産に持参した。
○藤
★暮れ際に茜さしたり藤の花/橋本多佳子
★白藤や揺りやみしかばうすみどり/芝 不器男
★今日晴れて吾に空の青藤の白/高橋信之
藤は、つる性の落葉木本である。毎年4月から5月にかけて淡紫色または白色の花を房状に垂れ下げて咲かせる。園芸植物としては、日本では藤棚に仕立てられることが多い。白い品種もある。つる性であるため、樹木の上部を覆って光合成を妨げるほか、幹を変形させ木材の商品価値を損ねる。このため、植林地など手入れの行き届いた人工林では、フジのツルは刈り取られる。これは、逆にいえば、手入れのされていない山林で多く見られるということである。近年、日本の山林でフジの花が咲いている風景が増えてきた要因としては、木材の価格が下落したことによる管理放棄や、藤蔓を使った細工(籠など)を作れる人が減少したことが挙げられる。
◇生活する花たち「牡丹」(鎌倉・鶴岡八幡宮)

★スイートピー眠くなるほど束にする 正子
○今日の俳句
すかんぽの赤き穂が伸び揺れにけり/桑本栄太郎
すかんぽの穂は、伸びて来たばかりのころは、茶色がかった赤い色がやわらかで美しい。そよ風に揺れると、色に動きが出て楽しいものである。(高橋正子)
○鎌倉八幡宮の牡丹
★白牡丹といふといへども紅ほのか/高濱虚子
句集では、<はくぼたんというといえどもこうほのか>、と読ませている。その音が白牡丹の気品を表している。牡丹は四君子のひとつであるが、それを背景に「はく」「こう」と音読みにした意味もあろう。白い牡丹の花びらが重なり、重なると、ほのかに紅が差しているように見える。白牡丹のやわらかな花びらのかさなりと気品ある富貴の姿が美しく詠まれている。(高橋正子)
★牡丹のあとかたもなく花終へし/稲畑汀子
★林立の牡丹の裏側を歩く/岡本眸
★牡丹の香の流れ来るそこへと歩く/高橋信之
★牡丹の百花に寺の午(ひる)しじま/高橋正子
★ゆさゆさと百の牡丹も風のまま/黒谷光子
鎌倉の鶴岡八幡宮へ、昨日、信之先生は、一人吟行に出かけ、境内のぼたん園で牡丹の写真を撮って帰った。自宅から百メートル程西の日吉本町駅で横浜市営地下鉄グリーンラインに乗る。そこから四つ目の駅、センター北でブルーラインに乗り換え、新横浜駅、横浜駅等を過ぎ、戸塚駅で下車。戸塚駅からは、JR横須賀線で三つ目の駅、鎌倉駅まで。鎌倉駅から八幡宮までは徒歩、二の鳥居から三の鳥居へと、そこそこの道程があるが人波の絶えることがない。
鶴岡八幡宮(つるがおか はちまんぐう)は、神奈川県鎌倉市にある神社。武家源氏、鎌倉武士の守護神。鎌倉八幡宮とも呼ばれる。境内は国の史跡に指定されている。宇佐神宮、石清水八幡宮とともに日本三大八幡宮のひとつに数えられることもある。参道は若宮大路と呼ばれる。由比ヶ浜から八幡宮まで鎌倉の中心をほぼ南北に貫いており、京の朱雀大路を模して源頼朝が自らも加わり築いた。二の鳥居からは段葛(だんかずら)と呼ばれる車道より一段高い歩道がある。そこを抜けると三の鳥居があり、境内へと到る。境内へと入れば、すぐ右に、神苑ぼたん庭園の入口がある。源平池の池畔に造られた回遊式庭園の、ぼたん園である。源平池のほとりに内外の牡丹の名花、約1千株を集める。源平池の旗上弁天社では、藤の花が見頃を迎え、見事な白藤の盛りであった。
◇生活する花たち「牡丹・白藤①・白藤②」(鎌倉・鶴岡八幡宮)

★囀りに子の片言の鳥を呼び 正子
子供の幼児期を思い出します。一生懸命に鳥に呼び掛ける片言、かわいい時期でしたね。 (祝恵子)
○今日の俳句
花主と見上げふさふさ藤の房/祝恵子
「花主」は、風流。原句は、「見上げておりぬ」であったが、藤の房の観察をもう一歩進めて、「ふさふさ」と添削した。ふさふさとした藤房の豊かさが感じられる。(高橋正子)
○花水木
★松屋通りアメリカ花水木の盛り/宮津昭彦
★花水木われらはいつも下歩く/高橋正子
★花水木世の中いつか軽くなり/高橋正子
花水木(ハナミズキ、学名:Benthamidia florida)は、ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉小高木。北アメリカ原産。別名、アメリカヤマボウシ。ハナミズキの名はミズキの仲間で花が目立つことに由来する。また、アメリカヤマボウシの名はアメリカ原産で日本の近縁種のヤマボウシに似ていることから。樹皮は灰黒色で、葉は楕円形となっている。花期は4月下旬から5月上旬で白や薄いピンクの花をつける。秋につける果実は複合果で赤い。庭木のほか街路樹として利用される。日本における植栽は、1912年に当時の東京市長であった尾崎行雄が、アメリカワシントンD.C.へ桜(ソメイヨシノ)を贈った際、1915年にその返礼として贈られたのが始まり。なお、2012年に桜の寄贈100周年を記念して、再びハナミズキを日本に送る計画が持ち上がっている。
◇生活する花たち「梨の花・林檎の花・木蓮」(横浜市緑区北八朔)
★牡丹の百花に寺の午(ひる)しじま 正子
○今日の俳句
柿若葉吹き出す窓の明るさよ/安藤智久
桜が終ると、柿若葉が「吹き出す」ように燃え出てくる。柿若葉の明るい輝きに、窓は明るい季節へと変身する。(高橋正子)
○牡丹
★白牡丹といふといへども紅ほのか/高濱虚子(句集「五百句」大正時代)
句集では、<はくぼたんというといえどもこうほのか>、と読ませている。その音が白牡丹の気品を表している。牡丹は四君子のひとつであるが、それを背景に「はく」「こう」と音読みにした意味もあろう。白い牡丹の花びらが重なり、重なると、ほのかに紅が差しているように見える。白牡丹のやわらかな花びらのかさなりと気品ある富貴の姿が美しく詠まれている。(高橋正子)
原産地は中国西北部。元は薬用として利用されていたが、盛唐期以降、牡丹の花が「花の王」として他のどの花よりも愛好されるようになった。栽培は、春に花付の鉢植えが、秋に、苗木が売られるので、それで育てる。被子植物なので種からも育てられるが、開花まで時間がかかるので、一般的ではない。そのため、流通する苗のほとんどは、芍薬を台木に接ぎ木にしたものである。秋の苗木は根を切っているので、植えた翌春に咲いても、その後は株が弱り、次に咲くまで時間がかかる。あるいは枯れてしまう。そのため、花を惜しんで幹を切り二年後に期待するという方法がある。花付のものも花が終わると秋には鉢増しをする。土は腐葉土をたくさん含んだ肥沃なものを使用する。なお夏には休眠するので、葉は取る。
◇生活する花たち「藤・鈴蘭・牡丹」(横浜日吉本町)


★明け初めし空の丸さよ柿若葉 正子
柿の若葉は小さく丸く萌え始め、だんだん茂と柔らかく萌黄色となって目を引き、明け初める空の初夏の景は素晴らしいですね。その対比が素敵な句だと思います。 (小口泰與)
○今日の俳句
さえずりや忽と眼間昼の火事/小口泰與
テーマは「さえずり」。気持ちよくさえずりを聞いていると、忽然と火事が見えた。現実であるが、さえずりの中にあってまぼろしのような火事である。(高橋正子)
○鈴蘭
★鈴蘭を掘りて鍬さげ汽車に乗る/高浜虚子
鈴蘭は、戦後の少女にとって、夢のような花であった。鈴蘭のように清らかに可憐な少女が実際に好もしいと思われた。しかし、私も友達も小学生のころは、鈴蘭の花を実際見たことはなかった。そして長じて実際に見たとき、花よりも葉の多さに驚いた。鈴蘭が咲くと、JAL便で日赤に鈴蘭が届いたということもニュースで報道された。この花を私の母親が好きで(好きであったことにも驚いたが)、わざわざ玉葱やじゃが芋を送ってくる荷物にドイツ鈴蘭を送ってきたことがあった。身近にあると、初夏のさわやかさがあって、和む花である。
★鈴蘭を束ねて翠の葉がきしむ/高橋正子
★鈴蘭の小さき花を振ってみむ/〃
◇生活する花たち「牡丹・さつき・藤」(横浜日吉本町)

小石川植物園
★たんぽぽの草の平らに散らばりぬ 正子
草萌えてまだ間のない原をあちこちに黄に染める、それがタンポポの力強さの一つだろうと思います。高く盛り上がるでもなく、ただ平らに草原を飾り、それも間をおいて散らばり咲いています。「草の平らに」の表現にタンポポの花の姿が生き生きと広がって見えます。(小西 宏)
○今日の俳句
蒲公英の花せめぎあい光りあい/小西 宏
蒲公英が明るい日差しの中に、びっしりの咲いている様子。一つ一つの花は可憐でありながら、せめぎあうほどの花の力。せめぐだけでなく、また、互いに光りあっている。確かな目である。(高橋正子)
○風船
★金の吹口虫の音籠り紙風船/中村草田男
★畳みぐせどほりに紙風船たたむ/加倉井秋を
★風船売り風船ふくらませば浮かぶ/高橋正子
広島の生家にて
★夏まつりの風船浮かせ子ら眠る/高橋正子
風船は、俳句の歳時記では春の季語で、ゴムなどの薄い膜でできた袋の中に気体を入れて膨らました後、その口を縛るなどして閉鎖し使用する玩具であるが、そのほか、販促(PR)、ギフトやイベントなどのバルーンデコレーション・風船飛ばし(バルーンリリース)、スポーツ応援、大道芸を含むバルーンアート、手品、科学実験イベント、風船バレー・風船割りなどのレクリエーションスポーツや遊戯施設、食品包装、医療分野などに使われている。もっとも用途が広いのはゴム製の風船。
◇生活する花たち「あけびの花・げんげ・白山吹」(横浜日吉本町)

小石川植物園
★やわらかに足裏に踏んで桜蘂 正子
桜が散ってしまったころからお天気は安定しはっきりと暖かい感覚になります。一年で最も過ごしやすい時期になり、そのころの伸びやかで心浮き立つような感覚が御句から伝わってきます。。(多田有花)
○今日の俳句
時はいまゆっくり流れ蝶の昼/多田有花
蝶の飛ぶ真昼。蝶の飛ぶ辺りは蝶の空間と時間となって、ゆっくりと時が過ぎている。春昼の気だるく長閑な時間が詠まれている。(高橋正子)
○虎杖(いたどり)
★紅斑ある虎杖思ふのみに酸し/山口誓子
★いたどりを折りとる時の音たしか/高橋正子
★いたどりの新芽の紅の尖りたる/ 〃
★川水を透かしいたどり群生す/ 〃
いたどりは、タデ科の多年生植物。別名は、スカンポ、イタンポ、ドングイ。ただし、茎を折るとポコッと音が鳴り、食べると酸味があることから、スイバをスカンポと呼ぶ地方もある。茎は中空で多数の節があり、その構造はやや竹に似ている。三角状の葉を交互につけ、特に若いうちは葉に赤い斑紋が出る。雌雄異株で、雄花はおしべが花弁の間から飛び出すように長く発達しており、雌花はめしべよりも花弁の方が大きい。夏には、白か赤みを帯びた小さな花を多数着けた花序を出す。
秋に熟す種子には3枚の翼があり、風によって散布される。そして春に芽吹いた種子は地下茎を伸ばし、群落を形成して一気に生長する。路傍や荒地までさまざまな場所に生育でき、肥沃な土地では高さ2メートルほどまでになる。やや湿ったところを好む。北海道西部以南の日本、台湾、朝鮮半島、中国に分布する東アジア原産種。昔の子供の遊びとして、イタドリ水車がある。切り取った茎の両端に切り込みを入れてしばらく水に晒しておくと外側に反る。中空の茎に木の枝や割り箸を入れて流水に置くと、水車のようにくるくる回る。
いたどりは、子どものころのおやつ代わりだったが、自分で採ったのを食べた記憶はない。田舎で育ったとはいえ、家の近くにいたどりが生えている場所はなく、山や沢などしかるべきところに行かなければない。あけび同様、いつも友達はどこで見つけるのだろうかと、半分、くやしい思いでいた。分けてもらったり、父親が山へいったときなど採って帰っていたのだろう、斑点のある茎をぽきっと折って、塩をつけて食べたが、酸っぱい。節を真ん中にして短く切って水に放しておくと、切り目を入れなくても、蛸の脚のように反るので、それを水車にして遊んだ。話は別だが、水車で遊んだのは、柿の花も水車にしてよく遊んだ。水車は小川の流れなどに持って行って遊ぶのだが、けっこうおもしろかった。
大人になっては、日本画に描かれたものをよくみた。新芽の紅や、斑点の面白さがよいのであろう。先日横浜市の鶴見川の土手に群生しているのを見た。2本折って持ち帰って、水に挿してある。「少し暑くなりかけた季節」が家内にある。
◇生活する花たち「豌豆の花・いたどり・梨の花」(横浜市緑区北八朔)
