11月27日(火)

★ストーブの出されしばかりが炎の清し  正子
寒さに耐えかねてストーブを出して火をつけると新鮮な炎の火に満たされて、その火の暖かに心も休まりますね。(小口泰與)

○今日の俳句
きらきらと浅間の星や冬に入る/小口泰與
「浅間」が効いている。冬に入って浅間の夜空がきりっと澄むと、星が神秘的なまでにきらめく。山国の羨しい星空である。(高橋正子)

○句美子の句集
句美子の句集『手袋の色』の件で、句美子と出版社の文學の森を訪問。林誠司編集長と室伏スタッフと句集の打ち合わせをした。打ち合わせは1時間ほど。大井恒行編集顧問にもお会いでき、来客者の写真をブログに載せているので、といって句美子と二人の写真を撮ってくださった。文學の森は、高田馬場にあって、日吉本町の自宅から1時間ほどで着いた。初校は年末か、新年早々となる予定。
○文學の森編集部のブログ
 <橋正子・句美子両氏来訪>の題で、文學の森編集部のブログに顧問の大井恒行さんの記事が載った。
昼過ぎ、「花冠」の代表・高橋正子女史と句美子穰がわざわざ訪ねてこられた。句集制作の相談にみえたのだ。編集長・林が対応して、愚生は挨拶のみ。
 過日お宅にお伺いして、高橋信之氏と楽しくも有意義な時間を過ごさせていただいた。そのときにお会いしたのが初めてであったのだが、お名前だけは、30数年前から知っていた。かつて小西昭夫や東沙逍など、「花綵列島」の母体となった俳句会の指導者だったように記憶している。
 初めての拝謁であったが、80歳を越えられてなお、年齢を感じさせない、俳句に対する情熱が溢れていた。いち早くインターネットも活用されていたように思う。ともあれ、娘さんの句美子氏の句集、どのような句集になるのか楽しみに待ちたい。名前からして、俳句を創るために名付けられたような感じだ。
http://editor.bungak.com/

○実葛(サネカズラ)

[実葛/ネットより]                [実葛/東京白金台・自然教育園]

★葉がくれに現れし実のさねかづら/高浜虚子
★境内か否かを知らずさねかづら/森田 峠
★木洩日や美男葛の葉がくれに/山下渓水
★行きすぎて戻りて美男葛の実/川崎展宏
★悔い多し美男葛の実を数え/小堤香珠
★下心ありやに美男葛の実/阿部寿雄
★人恋し美男葛に風吹けば/大野温子
★雨脚のときをり烈し実葛 しじみ

★さねかづらの赤く熟れたる実を見つけ/高橋正子

 実葛(サネカズラ、学名:Kadsura japonica)は、マツブサ科サネカズラ属の常緑つる性木本。別名、ビナンカズラ(美男葛)。葉は長さ数cmでつやがあり互生する。ふつう雌雄異株で、8月頃開く花は径1cmほど、10枚前後の白い花被に包まれ、中央におしべ、めしべがそれぞれ多数らせん状に集まる。雌花の花床は結実とともにふくらみ、キイチゴを大きくしたような真っ赤な丸い集合果をつくる。花は葉の陰に咲くが、果実の柄は伸びて7cmになることもあり、より目につくようになる。単果は径1cmほどで、全体では5cmほどになる。果実は個々に落ちてあとにはやはり真っ赤なふくらんだ花床が残り、冬までよく目立つ。関東地方以西、西日本から中国南部までの照葉樹林によく見られる。庭園に植えることもある。ビナンカズラともいうが、これは昔つるから粘液をとって整髪料に使ったためである。盆栽として栽培もされる。果実を漢方薬の五味子(チョウセンゴミシ)の代わりに使うこともある。
 古歌にもしばしば「さねかづら」「さなかづら」として詠まれ、「さ寝」の掛詞として使われる。
名にし負はば 逢坂山のさねかづら 人に知られで くるよしもがな (藤原定方、百人一首25/後撰和歌集)

◇生活する花たち「柚香菊・野竹・紫式部」(東京白金台・国立自然教育園)

11月26日(月)

★山茶花の高垣なればよく匂う  正子

○今日の俳句
山の端は冬夕焼けにはっきりと/上島祥子
山の端をはっきりと見せる冬の夕焼け。一日を確かに終える、きっぱりとした気持ちが潔い。(高橋正子)

○昨日の午前、5丁目の丘に信之先生と吟行に出かけました。はや木瓜が咲き、辛夷の花芽もすっかり膨らんでおりました。青空の中に、はっきりと銀色の花芽が見えます。山茶花は花盛りでした。

★今朝の空あおあおと山茶花咲けば/高橋信之
★庭の樹の間に咲けり初あらし/高橋正子
★青空の光りを弾き辛夷花芽/高橋正子
★山茶花の白に晴れたる空の青/高橋正子

○花冠1月号/ブログ版
花冠1月号の校正を済ませました。12月の上旬には印刷が出来上がり、発送を終えます。
http://blog.goo.ne.jp/kakan12/

後記/正子・洋子記
★あけましておめでとうございます。本年もどうぞ、よろしくお願いいたします。今年は花冠創刊三十周年を迎えます。区切りの年となり、句集刊行など記念事業を計画しております。九月には、三十周年記念大会を横浜で開催いたしますので、多くの皆様のご参加をお待ちしています。皆様とお会いできることを心待ちにしています。
★本号は創刊三十周年の新年号でもありますから、それに相応しく信之先生の「総合俳句論第一部(二)第一章芭蕉の誠」をいただき、掲載しました。芭蕉の「風雅の誠」は、『三冊子』の中の「赤冊子」の冒頭に書かれています。その口語訳も書かれていますので、じっくりとお読みください。花冠の目指すのは、このところです。花冠創刊当時は、インターネットは全く一般には知られていませんでした。今花冠が成り立っているのは、ITのお陰といっても過言ではありません。それほどの世の中は変わってきました。しかし、花冠の求める俳句は不易流行において、本質は創刊より変わっておりません。
★「私の吟行地(四)」として、今回は四国今治にお住まいの柳原美知子さんに登場いただきました。最近は松山にも家を新築され、今治、松山と私には懐かしい、風光明媚な瀬戸内の暮らしと風景を書いてくださいました。世界に誇るべき風景とその俳句をお楽しみください。
★本号から、藤田洋子さんにも編集後記を書いていただくことにしました。洋子さんには、フェイスブック句会の集計などでお世話いただいていますが、もう一つお役を引き受けていただくことにしました。よろしくお願いいたします。
★本号から、編集人が高橋句美子さんになりましたので、よろしくお願いいたします。(正子)
★新年明けましておめでとうございます。今年はいよいよ「花冠」創刊三十周年を迎えます。創刊より一号の欠号もなく発刊を続けていただき、その歳月を思うと、感謝の念に堪えません。「花冠」の大きな節目となる明るく清々しい年の始まりを感じています。
★創刊時は、ご長女句美子さんのご誕生の月とお聞きしています。ご淑女のご成長とともの「花冠」の歩みと思われます。創刊記念事業の一つとして、句美子さん始め、同人の方々の句集が刊行されます。九月に横浜で予定される「創刊三十周年記念俳句大会」と合わせ、心待ちにしております。
★毎月開催される「フェイスブック句会」もすでに一八回となり、充実したネット句会として定着し、楽しませていただいています。今年もどうぞよろしくお願いいたします。(洋子)

○紫式部

[紫式部の実/東京白金台・自然教育園]     [紫式部の花/横浜・四季の森公園]

★渡されし紫式部淋しき実/星野立子
★雨後あまだ雲のたゆたふ実むらさき/能村登四郎
★むらさきしきぶ熟れて野仏やさしかり/河野南畦
★うしろ手に一寸紫式部の実/川崎展宏
★天気地気こぼれそめたる実むらさき/池田澄子

 ムラサキシキブ(紫式部、Callicarpa japonica)はクマツヅラ科の落葉低木で、日本各地の林などに自生し、また果実が紫色で美しいので観賞用に栽培される。高さ3m程度に成長する。小枝はやや水平に伸び、葉を対生する。葉は長楕円形、鋭尖頭(先端が少し突き出すこと)、長さ6-13cm。細かい鋸歯がある。葉は黄緑で洋紙質、薄くて表面につやはない。初めは表側に細かい毛があることもある。花は淡紫色の小花が散房花序をつくり葉腋から対になって出て、6月頃咲く。秋に果実が熟すと紫色になる。果実は直径3mmで球形。栽培品種には白実のものもある。名前の由来は平安時代の女性作家「紫式部」。ムラサキシキブ(コムラサキ、シロシキブ)の名所として、京都・嵯峨野の正覚寺が有名である。
 砥部の庭にコムラサキがあった。我が家にあったのは園芸種のコムラサキだが、それが紫式部が違う木であるとは、最近まで知らなかった。隣家との境のブロック塀を隠すようにフランスヒイラギの隣に植えていた。 コムラサキとムラサキシキブの違いは、果実の付き方では、ムラサキシキブは比較的疎らに付くが、コムラサキは果実が固まって付く。葉柄と花柄の付く位置では、ムラサキシキブは近接しているが、コムラサキは少し離れて出る。葉の鋸歯は、ムラサキシキブでは全葉にあるが、コムラサキには上半分にしかない。樹高は、ムラサキシキブの方が高く(3~4m)、コムラサキの方が低い(2~3m)。枝垂れでは、ムラサキシキブは枝垂れるが、コムラサキは枝垂れない。 分布では、ムラサキシキブは山野の林に自生し、コムラサキは家庭の庭先に植栽されている。

★小紫揺れてばかりよ鳥が来て/高橋正子
★子がすり抜けコムラサキの実が落ちる/〃

◇生活する花たち「白ほととぎす・茶の花・むべの実」(東京白金台・国立自然教育園)

11月25日(日)

 鎌倉報国寺
★冬の水ひたすら澄みて金魚飼う  正子
鎌倉報国寺には竹林の傍に大きな鉢が置いてあって、そこに金魚が幾匹も飼われているのですね。水はいつも澄んで清らかです。その「冬の水」に飼われた金魚の姿はひたすらに鮮やか、清新です。(小西 宏)

○今日の俳句
欅立つ落葉きらめく陽の中に/小西 宏
情景がよく整理されている。陽を受けてきらめきながら散る落葉。その中心に黄葉した大きな欅の存在が示されている。(高橋正子)

○キク科

[磯菊/横浜日吉本町]             [泡黄金菊(アワコガネギク)/東京・自然教育園]

 磯菊(イソギク、学名:Chrysanthemum pacificum)は、キク科キク属の植物の1種。磯の菊ということからイソギク(磯菊)の名がある。多年草で地下茎を出して株立ちになる。葉は楕円形から倒楕円形で、大きく丸い鋸歯が入る。葉は厚く、表は緑色だが、裏側は白い毛が密生する。花期は10〜11月頃、多数の頭花を散房状につける。花は筒状花のみで舌状花はない。つまり外側に花びら状の花が並ばない。千葉県〜静岡県、伊豆諸島の海岸に自生するが、各地で栽培されている。そっくりの姿で、花がやや大きいシオギク (D. shiwogiku (Kitam.) Kitam.) は四国の徳島県から高知県の海岸に産する。また、その変種のキノクニシオギク(キイシオギク、D. s. var. kinokuniense (Shimotomai et Kitam.) Kitam.)は両者の中くらいの大きさで紀伊半島南側の海岸線に分布する。
 泡黄金菊(アワコガネギク、学名:Chrysanthemum boreale)はキク科キク属の多年草である。本州の岩手県から九州の北部にかけて分布し、やや乾いた山麓や土手などに生える。海外では、朝鮮半島や中国大陸にも分布している。和名の由来は、密集している花が泡のように見えることからきている。命名者は牧野富太郎博士である。環境省のレッドリスト(2007)では、「現時点では絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては『絶滅危惧』に移行する可能性のある種」である準絶滅危惧(NT)に登録されている。なお、レッドリストでは別名の菊谷菊(キクタニギク)が用いられている。これは、自生地(京都府菊谷)からきている名前である。草丈は100センチから150センチくらいである。茎はよく枝分かれをする。葉の形は栽培菊に似ていて深い切れ込みがあり、裂片は尖らない。葉は互い違いに生える(互生)。開花時期は10月から11月である。頭花は舌状花も筒状花も黄色で、ひしめき合うように密につく。花径は15ミリから18ミリくらいと小さい。

◇生活する花たち「冬薔薇①②・ウィンターコスモス」(横浜いずみ野/カフェ・ド・ダラ)

11月24日(土)

★枯草を踏みおり人に離れおり  正子
冬の野山は雑草が枯れつくし、物寂しい感じがします。その枯草を踏みながら歩いて行っていますと、だんだん人から離れてゆき、静かな冬の自然の光景に吸い込まれてゆくように感じました。「踏みおり」、「離れおり」とリズムよく詠まれていて、楽しいひとときを過ごされたことと思います。 (藤田裕子)

○キク科

[野紺菊/横浜市港北区松の川緑道]_[白嫁菜(シロヨメナ)/東京・自然教育園]

★黄と白の小花が好きで野の菊よ/高橋信之

 野紺菊(ノコンギク、学名:Aster microcephalus var. ovatus)は、キク科シオン属の多年草で、ごくありふれた野菊の1つ。道ばたでもよく見かける植物である。ヨメナに非常に似ている。ただし種内の変異は大きく、同種とされるものにはかなり見かけの異なるものがある。地下茎が横に這い、あちこちから枝を出すので、まとまった群落を作りやすい。茎は立ち上がって枝を出し、高さは50-100cmに達するが、草刈りをされた場合など、はるかに小さい姿でも花をつけている。根出葉は柄があって卵状長楕円形、茎葉は柄がなくて卵状楕円形から卵形で三行脈、縁には粗くて浅い鋸歯が出る。いずれも葉の両面ともに短い毛がある。根出葉は花時にはなくなる。花は8月から11月頃まで咲く。茎の先端の花序は散房状で、頭花は径2.5cmほど、周辺の舌状花は細長くて紫を帯びた白から薄紫、中央の管状花は黄色。痩果は長さ1.5-3mmで先端には4-6mmの冠毛が多数ある。名前の由来はコンギクが紺菊で、ノコンギクは「野生のコンギク」とのこと。なお、伊藤左千夫の小説『野菊の墓』の野菊がこれではないかとの説がある。
 もっともよく似ているのはヨメナである。葉の形、花の色形まで非常によく似ている。ヨメナは時に野菊の代表とされ、辞典等では野菊をヨメナの別称とする例もあり、はるかに知名度が高い。しかし実際には両者はよく似ている上に分布も重複しており、同じような環境によく見かけられるから、両者混同されてヨメナと呼ばれていることが多いと思われる。もっともはっきりした違いは、ヨメナの種(果実であるが)には冠毛がないことで、花期が終わった花序があれば一目でわかる。葉の両面に毛があることも、ほぼ無毛のヨメナとは異なるが、あまり目立たない。
 白嫁菜(シロヨメナ、学名:Aster ageratoides subsp. leiophyllus)は、キク科シオン属の多年草である。いわゆる「野菊」の仲間で、主として林縁などの半日陰になるような場所に自生する。草丈50cm前後、しばしば1m近くになり、上部で花茎を分け、初秋から秋の初めまで、茎頂で花茎を分けて径1.5~2cm前後のやや小さい白色のキク型の花を皿型(散房状)につける。葉は、長さ10cmほどの長楕円形で葉先は鋭三角形で、粗い鋸歯(葉の縁のギザギザ)がある。名は「ヨメナ」だが「ヨメナ属」ではなく「シオン属」。ノコンギク(Aster ageratoides)の亜種(subsp. leiophyllus)とされ、シロヨメナには数種の変種が知られていて、神奈川県には葉が細長い「サガミギク(var. harae)」が分布する。関東地方には、ノコンギク、カントウヨメナ、ユウガギク、シラヤマギク、シロヨメナやリュウノウギクが分布する。リュウノウギクも分布する。なお、「シオン」は本来中国地方~九州・北東アジアに自生していたとされるが、美しいので平安時代に日本各地に植栽されたようである。

○今日の俳句
桜紅葉園児らの声透りくる/藤田裕子
園児の声が透るほど、桜紅葉が色美しい。空気が澄んでいるためであろうし、昼夜の温度の差が桜紅葉を美しく仕上げたことにもよるだろう。かわいい声が桜紅葉をさらに美しくした。(高橋正子)

◇生活する花たち「冬薔薇①②・ウィンターコスモス」(横浜いずみ野/カフェ・ド・ダラ)

11月23日(金)

★あかるさは林檎の花の帰り咲く  正子
冬に入る今頃は、空がぐんと暗くなり、緊張が高まります。そんな中、小春日和に誘われて、うっかり咲いた帰り花は、冬のほほ笑みのよう。秋に実を赤くした、林檎の木なれば尚のことでしょう。白い花びらが、木の深さ、実の光、透徹した蒼空、それぞれに映え、あかるいばかりです。(川名ますみ)

○今日の俳句
脱稿をこの日と決めし一葉忌/川名ますみ
「一葉忌」に託す思いが知れる。ここを踏ん張って脱稿にこぎつけようという意思の強さが、一葉に通じるようだ。(高橋正子)

○キク科

[ユリオプスデージー/横浜日吉本町]   [アゲラタム/横浜日吉本町]

★ユリオプスデージー大きな鉢が店先に/高橋信之

 ユリオプスデージーは、キク科ユリオプス属の常緑低木で、小さいうちは草花のような姿ですが、年を経ると茎は太くなって表面がごつごつした樹木らしい姿になる。葉は羽状に深く切れ込んで表面に柔らかい毛が密生し、灰白色に見える。冬~春の花の少ない時期に一重の黄色い花を咲かす。花径は3cm-4cm、花茎を15cm前後伸ばして先端に1輪をつける。日本へは昭和40年代に渡来し、鉢花として普及した。性質強健で、寒さにも強いので平地や暖地では露地で低木状に茂った株もよく見られ、生垣にも利用できる。属名のユリオプスはギリシア語で「大きな目をもつ」の意で、花姿に由来する。南アフリカ原産で、南アフリカを中心にアラビア半島にかけて、60種以上の仲間が知られているが、ペクティナツス種〔E. pectinatus〕のことを指して「ユリオプスデージー」と呼ぶのが一般的である。代表的な園芸品種に八重咲き種の’ティアラ・ミキ’があり、苗が広く出回っている。本種以外にはバージネウス種〔E. virgineus〕が「ゴールデンクラッカー」の名前で鉢花として流通している。
 アゲラタムは、カッコウアザミ属(カッコウアザミぞく、学名:Ageratum)の別名で、キク科の1属である。学名よりアゲラタム属、アゲラタムと呼ばれる。属名は a(否定の接頭語)+ geras(古くなる)で、長い間鮮やかな青紫の花色が保たれることによる。戦前から栽培されていたのは、カッコウアザミ Ageratum conyzoides であったが、現在栽培されているのは、ほとんどがオオカッコウアザミ Ageratum houstonianum である。メキシコ原産の、半耐寒性常緑多年草または亜灌木であるが、園芸上は春播き一年草としている。草丈は、F1(一代交配種)の矮性種で15〜20cm、切り花用種や四倍体の「ブルーミンク」などは、70cmくらいになる。全草に粗い毛が生えている。茎は直立だが、根元からよく分枝し、匍匐状になることもある。葉は直径10cmくらい、ほぼ円形で対生する。花は、1cm位の頭花が円錐状に十数輪またはそれ以上まとまって咲く。花の色は、明るい青紫が基本であるが、白やうす桃色の品種もあり、最近かなり濃い紅色のものも出ている。

◇生活する花たち「桜落葉・ドウダン紅葉・欅黄葉」(横浜日吉本町)


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11月22日(木)

 広島福山
★亥の子の子らまた坂道を上の家へ  正子
四国地方も地域によっては、今もなお農作物の収穫祭と結びついて行われる「亥の子」の行事です。亥の子を搗きながら坂道を上る子どもたちの情景がありありと思い浮かべられます。故郷、福山の心に残る風景として、あたたかな思いが感じとれます。 (藤田洋子)

○今日の俳句
ペダル踏む籠に落葉とフランスパン/藤田洋子
専業主婦としての日常生活を詠んで、読み手も楽しませてくれる。季語「落葉」が効いて、生活の実感を伝えてくれる。(高橋正子)

○竜胆(りんどう)

[竜胆/横浜日吉本町]             [竜胆/東京白金台・自然教育園]

★竜胆や風落ち来る空深し 龍之介
★山の声しきりに迫る花竜胆 亞浪
★山ふところの ことしもここに竜胆の花 山頭火
★龍胆の太根切りたり山刀 かな女
★龍膽をみる眼かへすや露の中 蛇笏
★かたはらに竜胆濃ゆき清水かな 風生
★好晴や壺に開いて濃竜胆 久女
★銀婚の妻のみちべに濃竜胆 青邨
★竜胆や月雲海をのぼり来る 秋櫻子
★野に出でて龍胆愛でしけふも暮れぬ 誓子
★竜胆の蕾それぞれ花にそひ 立子
★龍胆を畳に人の如く置く かな女
★竜胆の花のあいだに立つ葉かな 素十
★子へ供華のりんだう浸す山の瀬に 貞
★雲に触れ竜胆育つ美幌越 林火
★稀といふ山日和なり濃龍膽 たかし

リンドウ(竜胆)とは、リンドウ科リンドウ属の多年生植物である。1変種 Gentiana scabra var. buergeri をさすことが多いが、近縁の他品種や他種を含む総称名のこともある。古くはえやみぐさ(疫病草、瘧草)とも呼ばれた。本州から四国・九州の湿った野山に自生する。花期は秋。花は晴天の時だけ開き、釣り鐘型のきれいな紫色で、茎の先に上向きにいくつも咲かせる。高さは50cmほど。葉は細長く、対生につく。かつては水田周辺の草地やため池の堤防などにリンドウやアキノキリンソウなどの草花がたくさん自生していたが、それは農業との関係で定期的に草刈りがなされ、草丈が低い状態に保たれていたためだった。近年、そのような手入れのはいる場所が少なくなったため、リンドウをはじめこれらの植物は見る機会が少なくなってしまい、リンドウを探すことも難しくなってしまっている。園芸植物として、または野草としてよく栽培されるが、園芸店でよく売られているのは別種のエゾリンドウの栽培品種のことが多い。生薬のリュウタン(竜胆)の原料の1種である。

◇生活する花たち「石蕗の花・花八つ手・百両」(横浜日吉本町)

11月21日(水)

★冬泉手にやわらかに旅半ば  正子
どちらを旅されたのだろう、と想像が膨らみます。風が冷たい時期の旅、そんなときに触れた泉の水が意外にも暖かく感じられました。ふと気持ちが暖かくなる、そんな瞬間を思います。(多田有花)

○今日の俳句
山茶花の長き季節の始まりぬ/多田有花
抒情が削ぎ落とされ、大変シンプルで一筋通った句である。山茶花は早いものは、十月ごろから咲く。本格的に咲き始めるのは、立冬を過ぎてからであろうが、冬の間中の「長き季節」を咲き続ける。今その咲き始めのとき、花あって身辺楽しい季節が過ごせるであろう。 (高橋正子)

○地縛 (じしばり)

[地縛/横浜日吉本町]

 地縛 (じしばり、学名 Ixeris stolonifera)は、キク科ニガナ属の多年草。日当たりの良い山野や田の畦などに自生する。名前の由来は、茎が地面を這っている様子が、地面を縛っているように見えることから。4-7月にタンポポに似た花を咲かせる。花茎の先に2cm程の黄色の頭花を1-3個つける。葉は1-3cmの卵円形。よく似るオオジシバリとの見分けは葉の形が、ジシバリは丸い卵形、オオジシバリの葉は細長い楕円形。別名の「岩苦菜(いわにがな)」は、岩場にも生え、茎葉は苦いことから。
 ジシバリ(地縛り)の花は、雨の日や曇りの日には開かず、太陽が昇ってくると開き始め、夕方になると萎んでしまうという睡眠運動を繰り返す。茎を折ると白い乳液が出て手につくとべとべとし、やがて黒く変色する。原産地(原生地)は、日本、朝鮮半島、中国。花言葉は人知れぬ努力、忍耐である。

★じしばりの黄花に秋の陽が高し/高橋信之

◇生活する花たち「貴舟菊・山茶花・柘榴」(横浜日吉本町)

11月20日(火)

★咳こぼし青年ふたり歩み去る  正子
初冬の頃、たまたま目にされた景でしょうか。見ればふたりは咳をしながら歩み去ったという。余韻があり、解釈は読み手に委ねられているのでしょう。 (小川和子)

○今日の俳句
風寒き河辺に立てば吾は旅人/小川和子
ソウルの河辺は特に風の寒さが身にしみる。寒さが旅の身であることを意識させる。(高橋正子)

○アロエの花

[アロエの花/横浜日吉本町]        [アロエの花/神奈川藤沢]

★アロエ咲くジョン万次郎生まれし地/右城暮石
★干大根細りきつたりアロエ咲き/清崎敏郎
★アロエ咲く島のくらしに富士一つ/行方克己
★硝子屋のアロエの鉢に冬の月/横山房子
★冬あたたかアロエの花を咲かす家/高橋正子

 キダチアロエ(学名:Aloe alborescens)は、原産地が南アフリカ共和国、開花期が11月~1月。キダチの名は「木立ち」から原産地では数mの樹木状となる。日本の気候によく馴染み日本でアロエといえばこのキダチアロエを指す。花は赤橙色、環境によって濃淡がでる場合がある。開花株より1本の花穂を出し、数百の小さな花を咲かせる。開花期は2ヶ月ほど。花は無臭、蜜はあり天ぷらなどに利用される。食材・加工食品・染料・調味料・化粧水など用途は広い、地元の女性はアロエの焼酎漬けを寝酒にしたり、化粧水に加工したりして楽しんでいます。基本的に全葉を用いるが、外皮を剥いたゼリー質には苦味が少なく,、皮をむいた後湯通ししてアロエ刺身としても利用できる。アロエ属は全般に多量に食べるとおなかが緩くなる場合があるので注意が必要である。
 日本の気候に馴染み、よく育つキダチアロエは伊豆の特産で、出荷量は静岡県が日本一。中でも伊豆のアロエは品質の高いことで知られています。伊豆白浜、アロエの里にはこのキダチアロエ以外にも、アロエアフリカーナ、アロエ不夜城、アロエベラ、アロエサポナリアなどが各所に植栽されています。伊豆にアロエの話が出てくるのは石廊崎の石室権現にある碑文に1300年前に飢饉・疫病に苦しむ村人を役の行者がアロエをもって救うとあるのが最も古いものです。伊豆は湯出ずる国が語源であるとか、再生を意味する「いず」より伊豆となったなどとする説もあり、無病息災を司る薬師如来を奉る神社仏閣の密度が濃いことでも知られています。温泉などが豊富である事も癒しの伝説多い理由でもあるそうですが、いずれにせよ千年の昔より癒しに縁のある土地柄で、伝説とはいえ、アロエ伝説が残る事も、何かしらロマンある話です。
 伊豆白浜に自生するアロエはキダチアロエという品種で、原産地は南アフリカです。地球の裏側から海を渡ってきたとも、陸の口シルクロードを渡ってきたとも言われています。伊豆下田には、自生している水仙やアオギリの漂着伝説もあり、その伝播も歴史ロマンとなっています。
 伊豆白浜はアロエが多く自生していて、民家の軒先などにも必ずといっていいほど植えられている土地柄です。20数年前にこのアロエを使って村興しをしようと、伊豆白浜でも特にアロエの多く自生していたこの場所をアロエの里と名づけて村人が手入れしたものです。伊豆に多く見られるアロエはキダチアロエと言い、木のように立つアロエが和名の語源と言われています。地名では下田市白浜の板戸一色(いたどいちき)という場所にあって、小さな漁師村です。ほとんどの民家の軒先にはキダチアロエが植えられていて庭先の救急箱として重宝されています。(伊豆白浜アロエ栽培地のホームページより)

◇生活する花たち「山茶花・千両・万両」(横浜日吉本町)

11月19日(月)

★水鳥を見ていて一つが潜りけり  正子
都会の公園にも水鳥が現れるようになりました。静かに群を見ていると、その内の「一つ」が潜る瞬間に出遇います。その時を捉えられた喜び、それを景色のまま詩になさった洗練が、うかがわれる一句です。水鳥の前に坐し、一羽が潜った折の発見に、ご一緒させて頂いたような温かい気分になります。 (川名ますみ)

○今日の俳句
一棟をきらきらと越す落葉風/川名ますみ
落葉を連れて風がマンションの一棟を越えていった。きらきら光るのは、落葉も、風も。明るく、高みのある句だ。(高橋正子)

○満天星紅葉(どうだんもみじ)

[ドウダン紅葉/横浜日吉本町]

★ここ西湖満天星紅葉朱を尽くし/林翔
★満天星の紅葉明りに茶室あり/熊岡俊子
★紅葉して満天星小さし女坂 永見博子
★亀の池囲む満天星紅葉かな 清子
★ささやかな満天星紅葉まなかひに 後凋庵

★満天星紅葉垣根となせる日吉村/高橋正子

 11月14日、兵庫県豊岡市但東町相田の安国寺のドウダンツツジの紅葉が見ごろを迎え、多くの観光客が訪れ、にぎわいました。ドウダンツツジは、明治37年に本堂が再建されたときに裏庭に植えられたもので、樹齢約150年といわれ、高さ・幅共に約10メートルあります。本堂から裏庭を眺めると、ドウダンツツジが見事に深紅に染まり、絵画を見るようで、観光客らは、秋を感じながら、写真を撮っていました。住職の真田義永さんは、「今年も鮮やかに色づきました。生命あるものは尊いので、自然を大切に守っていこうと思います。皆さんにもそういう観点で見ていただきたい」と話していました。日没から午後8時まではライトアップされ、見ごろは20日ごろまでということです。(豊岡市のホームページより)

◇生活する花たち「白椿・茶の花・千両」(横浜下田町・松の川緑道)

11月18日(日)

★夕寒き街のはずれに花屋の燈  正子

○今日の俳句
短日の灯をはや夕食の前に/迫田和代
だれでも気づいてはいるが、言葉になかなかできにくいところをずばりと捉えた。「短日の灯」が日常生活を詩と成した。(高橋正子)

○欅黄葉(けやきもみじ)

[欅黄葉/横浜日吉本町]

★色付や豆腐に落て薄紅葉 芭蕉
★小原女の足の早さよ夕もみぢ 蕪村
★日の暮れの背中淋しき紅葉哉 一茶
★山に倚つて家まばらなりむら紅葉 子規
★瀑五段一段毎の紅葉かな 漱石
★阿賀川も紅葉も下に見ゆるなり 碧梧桐
★たかあしの膳に菓子盛り紅葉寺 虚子
★紅葉してしばし日の照る谷間かな 鬼城
★山門に赫と日浮ぶ紅葉かな 蛇笏
★岩畳をながるゝ水に紅葉かな 石鼎
★黄葉一樹輝きたてり紅葉山 泊雲

★仰ぎ見る欅黄葉と青空を/高橋信之
★欅黄葉いま北国の空が欲し/高橋正子

 千葉公園には、イロハモミジ、イチョウ、トウカエデ、ケヤキ、カツラ、ニワウルシ、シマサルスベリ、トチノキ、ハナミヅキ、ヒメシャラ、ドウダンツツジなどの紅葉・黄葉する樹木があります。10月中~下旬からケヤキ、サクラ、カツラなどが色づきはじめ、11月上旬から中旬にイロハモミジ、トウカエデ、トチノキが見ごろになり、11月下旬から12月上旬にはボタン園の大イチョウが見事な黄葉を見せます。
 今年の紅葉の見ごろ時期は、(社)日本観光振興協会の予想によれば「例年よりやや遅くなる見込み」だそうです。因みに東京(明治神宮外苑)の見ごろ時期は、12月上旬~中旬(例年11月下旬~12月上旬)の予想です。
 紅葉は最低気温が8度になると始まり、5~6度以下になると色づきが進むといわれます。前記の予想は、9月の平均気温から予想する気象庁作成の予測式を用いており、今年は9月の平均気温が例年より高かったため、紅葉の見ごろが「やや遅れる」予想結果となっています。
 紅葉・黄葉の色は樹種によって概ね同じですが、ケヤキの場合は、黄~橙~赤と樹木によって紅葉の色が異なります。同一の樹木が年によって紅葉色が変わることはなく、樹木の個体ごとに紅葉する色が遺伝的に決まっていることが分かっています。千葉公園でも、黄色のものから赤色のものまで色とりどりのケヤキが見られます。(千葉市のホームページより)

◇生活する花たち「白ほととぎす・茶の花・むべの実」(東京白金台・国立自然教育園)