●添削1月④●

[1月20日~31日]

▼1/31

●藤田 洋子
山の日を弾く一輪梅早し★★★
梅早し街空広く澄みいたる★★★★
生活する街に、青空が広がる暖かい日だったのだろう。早くも梅がほころんだ。澄んだ空の色と真っ白な梅の花がきよらかな風景となっている。(高橋正子)

膝の上たたむ干し物日脚伸ぶ★★★

●小西 宏
白過ぎ行く枯枝を鷺ゆうるりと★★★
小鳥肥え谷戸の林を探梅す★★★
西空に富士探す日や春近し★★★

●桑本 栄太郎
寒禽の声やモールス信号と★★★
つぼみより笑みこぼれ居り梅早し★★★
足もとの鳩の動ぜず日脚伸ぶ★★★

●多田 有花
明け初めし紺青の空月冴ゆる★★★
一月の逝くや明るき光充つ★★★
日脚伸ぶ夕空紫紺のグラデーション★★★

●河野 啓一
咲き遅れひっそり白き花八手★★★
寒木瓜の木陰に紅い花を着け★★★
UFOを見たとのうわさ春近し★★★

●黒谷 光子
冬日向どこかの子猫うずくまる★★★
眩しくて鴨の着水見損なう★★★
湖青く対岸を消す冬霞★★★

●小口 泰與
日脚伸ぶ梢も揺れぬひと日かな★★★
良寛の無心の詠や春を待つ★★★
いかんせん老いの一徹春を待つ★★★

▼1/30

●川名ますみ
寒禽の腹の丸さの耀けり★★★
眩しさの二重に三重に寒の月★★★
雪のいろ富士の手前の連山に★★★

●下地 鉄
潮風に吹かれて淋し蕗の薹★★★  
波音を追う波音の島の春★★★
青芝に寝てみる空の広さかな★★★
      
●黒谷 光子
雪の田をいっせいに発つ村雀★★★★
竹林の奥のざわめく冬の土手★★★
友の声なつかし冬の夜の電話★★★

●桑本 栄太郎
探梅や堅きつぼみのかたき風★★★
探梅や堅きつぼみにかたき風(正子添削)
堅いつぼみを吹く風が、また「かたさ」を持っている。「かたさ」の繰り返しのようであるが、「かたき風」に実感がある。(高橋正子)

寒つばき嶺から丘へ風強し★★★
嬌声のグランドゴルフや春隣り★★★

●多田 有花
竹林を飛び立つ鳥や春隣★★★
六甲も淡路も隠し寒霞★★★
門先で大縄跳びの家族かな★★★★
どこかで、かって見たことのある風景で、特に珍しいことでもないが、快い風景だ。この快さがいい。(高橋信之)

●河野 啓一
待春の木々の梢や展望台★★★
レース越し朝日煌めき春近し★★★
日脚伸ぶ大川に長し橋の影★★★

●古田 敬二
冬耕の畝はまっすぐ森へ伸び★★★
風吹くも梢は柔らか春隣り★★★
森に鳴く鳥声増えて春隣り★★★

●迫田 和代
濁りつつ雪解け水の川流れ★★★
川沿いの道歩く人頬寒し★★★
春近く木々の命よ立ちあがれ★★★

●小口 泰與
こみあげる咳に震えし髪膚かな★★
迫りくる激しき咳やしぶき雨★★★
大根の土付きたるを提げて来し★★★

▼1/29

●古田 敬二
マンサクや幼子よちよち走りくる★★★
冬木立揺れて巣箱は主を待つ★★★
風花の庭へ遠き鈴鹿嶺より★★★

●小西 宏
寝転んで空何もなし冬の窓★★★
澄む空に枝尖りたり冬の麗★★★
梅探る鳥の騒ぎを見上げつつ★★★

●黒谷 光子
雪の門閂はずす音軋む★★★
雪原の行く手の道はくろぐろと★★★
暖房を出でてしばしの心地よき★★★

●桑本 栄太郎
探梅や堅きつぼみの揺れもせず★★★
弾けたるつぼみ真白く梅早し★★★
山茶花や鳥の宴を樹下に聞く★★★

●河野 啓一
冬滝の流れ静かに箕面山★★★
枯蔦に捉えられたる柿落葉★★★
寒明けを待ちて離せぬちゃんちゃんこ★★★

●多田 有花
遠山にかかる雪雲寒日和★★★
ナビの声確認しつつ日脚伸ぶ★★★

霜の朝通学の列の短さよ★★★★
霜の置く朝は、通学の列が短い。風邪で休む子がいるのか、寒いので、二、三人が集まったら出発するのか、よい季節とは違って短い通学の列である。俳句でこそ表現できる内容であろう。(高橋正子)

●小口 泰與
蝋梅や山風浴びぬ日もありぬ★★★
水仙や眼間に起つ妙義山★★★
寒紅を刷きたる如き地平線★★★

▼1/28

●古田 敬二
吾子遠しピアノは鳴らず冷えており★★★
鈴鹿嶺の風花庭に舞う朝★★★
山茶花へメジロを待ちて蜜柑刺す★★★

●下地 鉄
老いてなおセーターは赤を選びおり★★★  
長々と居座る寒の面の皮★★  
妹逝っていまやうからの独りかな

●佃 康水
起き抜けの窓に耀う松の雪★★★
踏ん張って歩むも滑る慣れぬ雪★★★ 
からだ毎反らし浚える寒蜆★★★

●多田 有花
追儺会の支度に竹を伐り出しぬ★★★★
社寺で行われる追儺会の豆撒きのためであろうか。具体的には何に使われる竹がよくわからないが、「追儺会」と「伐り出した竹」の取り合わせがよい。冬が終わり春を迎える行事に使われる竹に、快い生命感がある。(高橋正子)

寒の陽を浴びつオープンカーを駆る★★★
しずしずと車の進む雪の朝★★★

●桑本 栄太郎
寒禽の声高らかに今朝の晴れ★★★
極上の空の青さや寒土用★★★
音消えて鎮もる街よ雪の朝★★★

●黒谷 光子
除雪車の音響きくる夜明け前★★★
鐘撞きに長靴一歩づつ雪へ★★★
鐘を撞く合図のように雪起し★★★

●河野 啓一
庭草の形のままに今朝の雪★★★
寒中の日光瞳を射る如く★★★
受験子よ進め三寒四温かな★★★

●小口 泰與
探梅や濁り初めたる川の水★★★
春近し洋間の魚拓躍動す★★★
噴煙の西に伸びけり日脚伸ぶ★★★

▼1/27

●古田 敬二
どっしりと大地をつかんで冬木立★★★
ふかふかの産毛膨らむ春のひな★★★
ふかふかと産毛寄りあう春のひな★★★

●小西 宏
丸餅のごとく手水の厚氷★★★
空の青陽の明るさに枯木立★★★
風和む日向の声や寒雀★★★

●高橋 秀之
大空の晴れ間に風花ゆらり舞う★★★★
おでん鍋ふたつありしの昨日今日★★★
太陽を浴びて冬芽は上を向く★★★

●川名ますみ
梅冬芽一つ花弁の色を見せ★★★
垂直に冬芽の割れて梅の色★★★
しだれ梅冬芽開きて紅いつそう★★★

●桑本 栄太郎
飛び来れば吾に寄り添う冬の虻★★★
ひと時の晴れのち曇り寒土用★★★
天辺の青の欠け落ち風花す★★★

●黒谷 光子
新雪に足跡をおき門開ける★★★★
門前の道は広くと雪を掻く★★★
午後よりの陽射しの力雪解ける★★★

●祝 恵子
おでん食ぶマラソン待つ間の温もりに★★★
走者待つ時折雪の舞いおりぬ★★★★
駅伝の応援だろう。走る者も応援する者も、時折雪が舞う寒さを享けて楽しんでいる。日本人らしい明るさがあると思う。(高橋正子)

冬ざくら恥らいそうな色を持ち★★★

●多田 有花
寒風に応えて揺れし竹百幹★★★
幹直立寒の日差しを受け止めて★★★
風やめば寒暁さらに深まりぬ★★★

●河野 啓一
真白なる雪屋根照らし朝日かな★★★
ジュリアンも門辺に雪をかぶりたり★★★
寒禽のすがた絵本に見当たらず★★★

●小口 泰與
雪浅間一朶の影を映しおり★★★
しののめの汽笛定かや冬深し★★★
自転車の女(ヒト)や北風まむかえり★★★

▼1/26

●古田 敬二
東天紅鳴かず寒気に鋭き眼★★★
柵に寄る牛の鼻先濡れて寒★★★
鳥小屋の土に転がる寒卵★★★

●高橋 秀之
熱燗の銚子を包む両の手に★★★
ただいまの声高らかに日脚伸ぶ★★★★
一月も終わり近くなると、「日脚伸ぶ」を実感するころ。外から帰る子どもの「ただいま」の声も元気よく大きい。「日脚伸ぶ」気配に、楽しく元気に活動した証拠だ。(高橋正子)

大根に隠し包丁柔らかし★★★

●小西 宏
北風に丹沢迫り黒き襞★★★
冬蒼し飛行機雲の大き円弧★★★★
白線の頬刺すしじま寒の月★★★

●下地 鉄
青芝を啄む鳩に春日かな★★
薄雲のいすわる空や春隣り★★★
ごっくりと水飲む音や暖房器★★★

●桑本 栄太郎
ラジオ聞き夢にも倦みぬ風邪寝かな★★
”また後で”下校の子等に春近し★★★
子供等の呼び合い遊び日脚伸ぶ★★★

●河野 啓一
朝空に鳥声止まず春隣★★★
春隣人との出会い積み重ね★★★
枯木道辿ればそこに青き芽も★★★

●黒谷 光子
入相を撞く冬月のしらじらと★★★
北側は雪を貼り付け木々の幹★★★
蹲踞の指で動かす薄氷★★★

●小口 泰與
背をまるめ寒鯉釣りの動かざる★★★
山風や鳶を襲いし寒鴉★★★
赤城より空風出でて吹き行けり★★★

●迫田 和代
空青く雪道青く映すよう★★★
句集手に外は静かな風花や★★★
近くから遠い嶺まで冬の虹★★★

▼1/25

●小西 宏
陽を受けて双葉小さき冬の畑★★★
寒林を透けて白濃き昼の月★★★
夕富士や雪吹き捲ける季節風★★★

●桑本 栄太郎
障子戸の明暗しきりや春隣り★★★★
障子のある部屋に籠れば、一日にいくども変わる空の照り曇りがそのまま障子戸を通してわかる。その明るさ暗さに春が近いことが感じられる。春隣を受け止めた感覚がよい。(高橋正子)

虚ろなる夢にまどろみ風邪籠り★★★
病癒え窓を開ければ寒の晴れ★★★

●多田 有花
冬深しノンカフェイン茶の身につきぬ★★★
陽はさらに明るし寒風つのれども★★★
ぎいぎいと木々を軋ませ北風つのる★★★

●黒谷 光子
苞割って白を覗かせ枇杷の花★★★
隣りとの境界ひそと枇杷の花★★★
庭履きをつっかけ裏へ枇杷の花★★★

●下地 鉄
寒風に小花の揺れて訃のしらせ★★★
島跨ぎやがて消えゆく寒の虹★★★
干し物の春日にゆれるビルの窓★★★

●祝 恵子
寒日和川舟下る真昼時★★★
丸大根抜きしばかりを届けらる★★★
厨には冬菜青々横たわる★★★
青々と冬菜厨に横たわる(正子添削)

●河野 啓一
近づけばみどり溢れて冬菜畑★★★
ランチには冬菜サラダをひとつまみ★★★
風一陣木々きらめかす冬日かな★★★

●小口 泰與
浅間山冬青空へ悠然と★★★
遠山の雪嶺定か鳶の笛★★★
山風や肥料に応う冬の薔薇★★★

▼1/24

●古田 敬二
歳時記のページへ光日脚伸ぶ★★★
おひたしに鮮やか菜の花黄と緑★★★
残業の子へ湯たんぽの湯を沸かす★★★

●河野 啓一
野の池に来たり遊べるコハクチョウ★★★
苑の池鴨の集いいて波静か★★★
梢みな夕日を受けて春近し★★★★

●多田 有花
寒朝日まず照らしおり丘の家★★★
霜踏んで今日の工事の始まりぬ★★★★
土木工事に携わる人たちは、霜がまだ固い内に仕事を始める。バリバリと霜を踏み工事に取り掛かる様子が力強い。その時間帯に現場に来るには、まだ薄暗いうちに家を出たのであろうと思うとなおさらだ。(高橋正子)

身の内に綻ぶものや寒ぬくし★★★

●桑本 栄太郎
青空に筋目競いぬ枯木立★★★
雪をんな出会いしよりの熱高し★★
ひと部屋にひねもす臥しぬ流行風邪★★★

●藤田裕子
朝晴れて寒椿まぶし花も葉も★★★
姿なく寒禽高き声放つ★★★
枝先まで日差し含めり梅冬芽★★★

●黒谷 光子
堰音を聞きに冬野へ万歩計★★★
白鷺の降りれば狭き冬の川★★★
時報鳴る厨に冬日の差す正午★★★

●小口 泰與
身の締まる赤城颪や露天風呂★★★
ごうごうと北風吹くや利根河原★★★
日脚伸ぶ開く新書の香りかな★★★

▼1/23

●高橋 秀之
雑炊の湯気に眼鏡は真っ白に★★★
風邪の子や母は優しく頭なで★★★
大空に翼端灯と冬の星★★★

●多田 有花
湯あがりに一息に飲む寒の水★★★
寒茜ホットケーキにキウイジャム★★★★
詰め物がとれて歯医者へ寒の内★★★

●佃 康水
初春や空を真澄に句集成る★★★ 
大寒や安芸路疾駆の脚光る★★★ 
花びら餅仕上げ懐紙に盛り分ける★★★

●河野 啓一
校庭に陽光注ぐ霜の朝★★★
にび色の雲分けて飛ぶ寒烏★★★
竹造り巳を象れる冬花壇★★★

●桑本 栄太郎
故郷の夢みるばかり風邪寝かな★★★
寒つばき沖の白波途切れざる★★★

焼藷を子等分け合いて秘密基地★★★
秘密基地は子どもの世界。焼芋を分けあって、仲よしの子どもたちが嬉しそうにしている。こんな光景が、今も昔と変わらずあってよいことだと思う。(高橋正子)

●小口 泰與
尺もある氷柱朝日を弾きけり★★★★
ひと筋の轍の跡や霜畳★★★
今朝も来し二羽の鶯忽と翔つ★★★

▼1/22

●古田 敬二
竹林の影の一つに冬の我★★★
陽の温し独り枯れ木に寄り添えば★★★
北風に抗して枯木は青空に★★★

●小西 宏
冬枯の池に動かぬ鯉の紅★★★
冬かすみ池より立てる鴨の群★★★
氷雨止み霞に沈む街景色★★★

●河野 啓一
冬暁や空紺青に染まりいて(原句)
寒暁や空紺青に染まりいて★★★★(正子添削)
寒暁は夜明け。日の出前の空の緊張感と透明感が「紺青」でよく表現され、大変美しい空となっている。(高橋正子)

寒禽の舞うや晴れたる丘の上★★★
初場所や櫓太鼓が風に乗り★★★

●黒谷 光子
蹲いに水輪の交差冬の雨★★★
音もなく降りてひねもす寒の雨★★★
木蓮の冬芽きっぱり天を指す★★★

●桑本 栄太郎
ひたすらに風に問い居り枯尾花★★★
雪雲の嶺を去りゆき銀世界★★★
凍滝や筋道通す吾が半生★★★

●小口 泰與
水仙の花のふるえや水迅し★★★
あけぼのの郷に降りたる軽き雪★★★
上州の冷たき風を浴びにけり★★★

●迫田 和代
尖ってるあたりに響く牡蠣打ちや★★★
ガラス戸に差し込む陽ざし冬ぬくし★★★
川波に揺れる牡蠣船橋近く★★★

▼1/21

●藤田裕子
大寒の静けさにある夕月よ★★★
霜の夜句集の温もり手に残る★★★
寒暁を裂き鳴りつづくサイレン音★★★

●佃 康水
砂利鳴らす禰宜の木沓や淑気満つ★★★★ 
弓始木沓滑らせ矢を絞る★★★ 
向き変える渡船へ渦巻く寒の潮★★★

●小西 宏
長靴を履いてわざわざ雪を踏む★★★
冬木みな枝先まるき芽を空に★★★★
鳥遊ぶ冬芽の枝を啄ばみつつ★★★

●多田 有花
梅が枝のまっすぐに指す寒の空★★★
冬帽子その下にあるつけまつげ★★★
寒禽の羽根の散らばる森の道★★★

●桑本 栄太郎
干菜吊る母屋の軒の深さかな★★★★
ぽつくりの雪に二の字の立ち往生★★★
海鳴りを聞きつ眠ればすきま風★★★

●河野 啓一
霜の朝窓に陽光温かき★★★
土佐沖で獲れしと云うや目刺買う★★★
和歌山の国産レモン紅茶にと★★★

●古田 敬二
梅林はつぼみの色に広がれり★★★
やや白く割れて万朶の梅つぼみ★★★★
寒中の寒さに堪えて咲く梅であるが、咲く兆しが見えると非常に嬉しい。白梅の蕾に白が認められる。しかも万朶の蕾に。待春の気持ちが明るくてよい。(高橋正子)

さんしゅゆの陽にまだ固きつぼみかな★★★

●小口 泰與
しんしんと蹠に沁みる寒さかな★★★
日脚伸ぶ薄むらさきの赤城かな★★★★
浅間から榛名に冬日移りけり★★★

▼1/20

●川名 麻澄
優しさは鉢へ積もれる初雪に★★★
玻璃窓に吹雪のあとの珠模様★★★
車椅子掻かれし雪の間を往きぬ★★★★

●小西 宏
雪屋根より水の滴り光り散る★★★★
凛と空に桜冬木の紅く照る★★★
球追って駆ける子の影日脚伸ぶ★★★★

●黒谷 光子
畑の葱洗い白根の光り合う★★★★
「光り合う」は、何気ない表現ながら、葱のかがやく白さ、瑞々しさをよく表現している。夕餉の美味しい一品となったことであろう。(高橋正子)

葱一把ぬた和えにして夕餉膳★★★
ストーブに小豆ことこと躍り出す★★★

●多田 有花
大寒の空へ立ちたり時計塔★★★
大寒の街へ電車は影落とし★★★★
大寒の河川敷を走る人★★★

●桑本 栄太郎
竹林の笹を撥ね上げしづり雪★★★
にび色の日輪ありて風花す★★★
淀川の湾処あまたや蘆枯るる★★★

●河野 啓一
陽光に明るき力寒の朝★★★
受験子はさぞ寒かろう大寒に★★★
寒明けはあと旬日と空を見る★★★

●小口 泰與
山風の畦や底冷えさとりたり★★★
黒雲を湖面に乗せし寒さかな★★★
利根川の風や底冷え身に覚ゆ★★★

1月21日(月)

★寒椿そよげる竹の葉にふれて  正子
春に先駆けて咲く椿。周りの風景はまだ荒涼としている中に鮮やかな色を放つ椿。赤い椿と風に揺れる竹の葉の緑と言う組み合わせは絵を思い出させる。 (古田敬二)

○今日の俳句
寒禽の影滑る野に鍬を振る/古田敬二
野に懸命に鍬を振っていると、寒禽の影が滑っていった。土と我との対話があって、寒禽がそれに色を点じて景がたのしくなった。添削は、「冬禽」を「寒禽」として、鳥のイメージを際立たせ句に緊張感をもたせた。(高橋正子)

○角川書店の短歌・俳句新年会
1月18日(金)の角川書店の短歌・俳句新年会に家族3人、私たち夫婦と娘で参加。場所は、東京会館。4時から俳句・短歌の角川賞の贈呈式があり、受賞作品の選者の講評を聞いた。日本の俳句、そして短歌も含めて、進むべき道について考えさせられた。贈呈式から会場を移して新年会に出たが、300人は、出席者がおられただろうか。この人数のなかから、初めての面識ながら、10名ほどの方に名刺を交換いただいた。お土産に角川ソフィアブックスの『古事記』をいただいた。新年だから思うのか、一家に一冊『古事記』があってもいいのかと。

○寒菊

[寒菊/横浜日吉本町] 

★寒菊や粉糠のかかる臼の端 芭蕉
★寒菊や古風ののこる硯箱 其角
★霜の菊杖がなければおきふしも 嵐雪
★寒菊やしづがもとなる冬座敷 土芳
★寒菊や村あたたかき南受 子規
★寒菊の小菊を抱いて今日ありぬ 亞浪
★寒菊やつながれあるく鴨一つ 水巴
★寒菊にいぢけて居ればきりもなし みどり女
★寒菊は白き一輪狸汁 青邨
★わが手向け冬菊の朱を地に点ず 多佳子
★寒菊に憐みよりて剪りにけり 虚子
★冬菊のまとふはおのがひかりのみ 秋櫻子
★我に返り見直す隅に寒菊赤し 汀女
★弱りつつ当りゐる日や冬の菊 草城
★寒菊にふれし箒をかるく引き 立子
★寒菊に文字生きしまま灰の紙 静塔
★寒菊の臙脂は海の紺に勝つ 風生
★寒菊の雪をはらふも別かな 犀星

 大辞林 第三版の解説では、寒菊は、冬に咲く菊の総称。霜に強く,花は小輪で観賞用に栽培される。冬菊。
 デジタル大辞泉の解説では、寒菊は、菊の一品種。花も葉も小形。霜に強く、12月から翌年1月にかけて黄色い花を咲かせる。こがねめぬき。しもみぐさ。
 web茶花歳時記の解説では、キク科の多年草。菊の一品種。中国原産。開花期によって春菊、夏菊、秋菊、寒菊とわけ、一般的に12月から1月に咲くものを寒菊と呼ぶ。花期が他のキクの仲間に比べて遅く、寒くなってから咲くので寒菊の名があり、秋咲きのコギクを改良したもので、丈も低く、花つきも少ない。霜にあって葉が色づいたものを照葉(てりは)といい、葉が紅葉した寒菊を、照寒菊(てりかんぎく)といい、風情があるのでその時を好んで使われる。 ただ、永禄7年(1564)に堺の茶人 直松斎春渓が筆録した 『分類草人木』 には 「花ニ不生花アリ、太山樒ナドノ様ナル盛リ久シキ花嫌也。花柘榴モ不入。寒菊ノ葉ノ紅葉シタル不入。」、貝原益軒の元禄7年(1694)『花譜』に「寒菊 葉も花も常の菊より細なり。十月に黄花を開きて、臘月に至る。花なきときひらく故、花賞するに堪たり。京都は寒き故、其葉もみぢして、葉もみるに堪たり。菊と同類なれども、花の時節かはる故に、別に記す。」とある。

◇生活する花たち「辛夷の花芽・水仙・千両」(横浜日吉本町)

1月20日(日)/大寒

★水仙を活けしところに香が動く  正子
水仙は冬も終わりになったころから春にかけて咲きます。清楚な姿とそれにふさわしい香り、庭の水仙を切って活けられたのでしょうか。香りの動きは人の動きでもあり、寒中の一日を大切に過ごされる様子が伝わります。(多田有花)

○今日の俳句
髪洗う耳に木枯し届きけり/多田有花
髪を洗うときに耳の辺りが一番ひんやりするが、そこに木枯らしが吹く音が届いた。「耳に届く」は、リアル。季語は「木枯らし」。(高橋正子)

○大寒
★寒浄し床に白磁の観世音/川本臥風
★大寒や転びて諸手つく悲しさ/西東三鬼
★大寒の床におさまり静かな土鈴/高橋信之

大寒(だいかん)は、二十四節気の一つ。冬至から1/12年後で1月21日ごろ、期間としては、この日から、次の節気の立春前日までである。今年は、大寒の入りが1月20日、立春前日の節分が2月3日で、その間の15日間を大寒という。この頃は、冬の内でも寒さのはげしい時期である。

★大寒の水道水の真すぐ落つ/高橋正子  
★大寒の障子のそばの日の移ろい/高橋正子

○冬の梨園

[冬の梨園/横浜市緑区北八朔]        [花の梨園/横浜市緑区北八朔]

★梨園の今寒中の静けさに/高橋信之
★梨棚に白とも言えぬ花咲けり/高橋正子

 梨の花と林檎の花が同時くらいに咲いた。これは、瀬戸内にある生家の庭と竹藪の話である。梨は、多分鑑賞用に、長十郎が庭に、林檎は竹藪の端に、何のためかあった。梨は実を付けたが、林檎は花を咲かせるだけだった。冬はそれぞれ、雪が降る日も、氷雨の日も、木枯らしが吹く日も、枝ばかりであった。それでも冬の終わりを告げる節分のあと、子どもながら、これらの花が咲くまだまだ先の日を思って暮らした。私が冬が好きなのは、こういう春のことを思えることも一つである。

 冬はもっぱら剪定です。剪定とは、古くなった枝を取り、来年実をならせる枝、樹が力をつけるための枝など、一本一本の樹の状態を見て決め、配置していくのです。みなさんもお気づきかと思いますが、梨園の天井には格子状に針金が設置されています。梨の樹は本来、上へ上へと伸びていくのですが、作業がしやすいように、針金の棚に縛っていくのです。剪定の手順としては、まず、電動の剪定ハサミとノコギリで、いらない枝を切り落とします。
あまりにも量が多いので、機械を使わないと疲れますし、腱鞘炎になってしまいます。そのあと、間隔を空けて枝を配置する場所を決め、棚に縛っていきます。使うひもは、植物性繊維の土に還るものを使用しています。縛った後は、樹の切り口に薬を塗っていきます。これは、菌が入らないようにし、癒合を早めるためです。剪定は時間がかかり、一日に5,6本できたらいい方です。梨の樹は400本…。これを3月いっぱいで終わらせなければいけません。冬の間も忙しいのです。こうして3月後半になると、花芽が開き始めます。(web「下田梨園*冬の梨園のお仕事*」より)
 しょうぶの梨100年記念園(しょうぶのなし ひゃくねんきねんえん)は、埼玉県久喜市が設置、管理・運営する公園である。このしょうぶの梨100年記念園は1994年(平成6年)3月に完成した公園である。この公園は「菖蒲の梨」が歩んできた歴史を記念すると同時に、五十嵐八五郎の功績をたたえて整備されたものである。園内には旧南埼玉郡菖蒲町(現:久喜市菖蒲区域)の梨の歴史が彫刻された碑文や、俳句の碑・短歌の碑などが彫刻された石碑が所在している。このほかあずまやが所在しており、小規模な梨園も整備されている。(ウィキペディア)

◇生活する花たち「蝋梅①・蝋梅②・芽柳」(横浜・四季の森公園)

1月19日(土)

 早稲田大学
★学生喫茶ジャズと会話と暖房と  正子
軽やかなジャズの流れる中、楽しく談笑する学生たち。若人の活気あふれる、心地良い暖房の喫茶に、明るく自由な空気が漂います。青春時代の一ページをふと思い起こさせてくれる学生喫茶なのでしょう。(藤田洋子)

○今日の俳句
一路澄み石鎚見ゆる寒の晴/藤田洋子
行く手の一路の道が澄んで、その先に雪を冠った石鎚山が見える。寒晴れがくれたすっきりと、晴れやかな景色。(高橋正子)

○慈姑(くわい)
くわいを掘りにゆくからついてくるように言われたのは、もう半世紀以上も前。母の里には、蓮根やくわいが植えてあって、泥の中から青いくわいを伯母が掘りだして見せてくれた記憶がある。丸くて青いくわいは子供心にも魅惑的だった。これは、備後地方のこと。四国松山では、青くなく、その形も扁平である。正月料理に芽が出ていることから目出度いということで使われる。正月料理用には、一個150円から200円近くで売られているが、値段のことを言ってはおれないので買うのだが、私は、普段でもこのくわいを食べたい。しかし、正月を過ぎるとこのくわいが八百屋の店頭からも姿を消してしまうので、残念なのだ。昔、昔夏休みのころ食べた菱の実の味に似ていると思う。くりっとして、ほっこりしている味である。

○冬桜

[冬桜/横浜日吉本町]

★冬櫻飛ぶ鳥の影当りけり 宮津昭彦
★冬桜日当りて花増えてきし/大串章
★一葉の晩年日記冬桜/深見けん二
★冬桜咲いては空を曇らしむ/有働亨
★咲きつづくほかなき白さ冬桜/山田弘子
★冬ざくら朝日しづかに射しわたる/阿部ひろし
★陵や静もる朝の冬桜/青木政江
★冬桜日差せば母と在るごとし/松田雄姿
★汲みたての水ほのめくや冬桜/三橋迪子
★この深き空の青さよ冬桜/西山美枝子

★冬桜咲きいて空の美しき/高橋信之
★冬桜風受けやすき丘に咲く/高橋信之
★冬桜見ている眼を風が過ぐ/高橋正子
★冬桜どれも高くて雲に見る/高橋正子

 冬桜は、元日桜、寒緋桜などの別名がある。桜にはめずらしく緋色をしているが、一般には、冬にさく桜を冬桜と呼んでいる。
冬桜として印象が深いのが、鎌倉報国寺にあるもので、緋色ではなく、桜色をしたもの。外国人が、枝にほちほちと咲いた小さな桜をいとおしそうに、目を近づけて見ていた。そのあと、私も近づいて眺めたが、消え入りそうに、でも確かに咲いている。あまり多く花をつけないのが見どころであろう。背景に青い空があると、いかにも、儚く美しい。
 冬桜は、バラ科サクラ属の落葉高木で、学名は Prunus x parvifolia cv.Parvifolia。「オオシマザクラ(P. speciosa)」と「マメザクラ(P. incisa)」との種間交雑種と考えられている。江戸時代の後期から栽培され、「コバザクラ(小葉桜)」とも呼ばれている。冬桜と同様に、秋から冬にかけて咲く桜に「十月桜」がある。冬桜と同じバラ科サクラ属。秋や冬に、「季節はずれに桜が咲いてるな」というときは、この十月桜であることが多い。十月桜も含めて、秋から冬にかけて咲く桜のことを総称して「冬桜」と呼ぶこともある。

◇生活する花たち「冬椿・冬の梨園・冬田」(横浜市緑区北八朔)

1月18日(金)

★日は燦と冬芽の辛夷生かしめて  正子
日が燦々とあたり、これからの辛夷の芽も育ち、花が咲くのが待たれます。「生かしめて」素敵なことばです。(祝恵子)

○今日の俳句
初採りの冬菜根を持ち土落とす/祝 恵子
秋に蒔いた菜が寒さの中にようやく育った。引き抜いた菜の根を持ち土をほろほろ落とす。寒そうな土と丈夫な根に冬菜の元気が見える。(高橋正子)

○白菜
★白菜を夜は星空の軒蔭に  正子

白菜は、鍋に漬物に大根に劣らず日本で多く食される野菜のひとつ。白菜の漬物が美味しい。白菜に丸ごとに包丁を根もとのほうだけ入れ、あとは割いて四等分なり八等分なりして、太陽の恵みがありますようにと日向で干す。日向で干すことにより白菜に甘味が増す。一日では十分でなく夜は霜露がかからないように軒下に入れる。こうしてしんなりしてきた頃漬物につける。十分な重石がなければ、おいしいものができない。目下の悩みは、漬物に十分な重石を持っていないこと。それでも小さい漬物器で初めから小さく切って漬物を楽しんでいる。

○辛夷の花芽

[辛夷の花芽/横浜日吉本町(2013年1月12日)][辛夷の花蕾/横浜日吉本町(2012年3月25日)]

★晴ればれと亡きひとはいま辛夷の芽/友岡子郷
★風の日の白の際立ち花辛夷/鷹羽狩行
★朝空のすでにおほぞら花辛夷/林誠司
★墓のみとなりしふるさと辛夷咲く/山田暢子
★夕空にさざなみたちぬ花こぶし/貞吉直子
★こぶし咲く坂登りゆくバスの数/辻のぶ子
★花辛夷やまびこゆきてかへるかな/坂田和嘉子
★花辛夷朝の光りにふるへ咲く/勝又寿ゞ子
★人を待つ辛夷の光見上げつつ/高橋正子

 コブシ(辛夷)の花芽(広島市植物公園2月14日)
 辛夷の花芽が柔らかくひかっていた。開花期は地域の気候に左右され3~5月と幅がある。自分の住む広島県西部の山に自生しているのは、「コブシ(辛夷)」ではなく「タムシバ(匂辛夷)」だから、これは植栽されたものである。両者にほとんど違いはないが、辛夷は花の付け根に小さな葉が一つついているのに対し、タムシバの場合は葉がつかない。この地方では4月上旬に開花することが多い。いっせいに咲いて咲き終わり、また山に紛れてしまう。(ブログ「山野草、植物めぐり」より)

 コブシ(辛夷、学名:Magnolia kobus)は、モクレン科モクレン属の落葉広葉樹の高木。早春に他の木々に先駆けて白い花を梢いっぱいに咲かせる。別名「田打ち桜」。

◇生活する花たち「辛夷の花芽・水仙・千両」(横浜日吉本町)

1月17日(木)

★寒厨卵も餅も白ほのと  正子
寒卵にお正月のお餅、寒中の台所には、優しい白い食べ物がありました。底冷えのする寒厨に、小さなぬくもりを見つけられた明るさ。思い描くと、ほっといたします。 (川名ますみ)

○今日の俳句
富士山と冬夕焼の中に居る/川名ますみ
富士山はいつもしっかりと座っている。さびしさもあるけれど、あたたかさのある冬夕焼けに包まれて過ごすとき、大きく、偉大なものといる安心感がある。(高橋正子)

○葱
★折鶴のごとくに葱の凍てたるよ/加倉井秋を
★葱太る日が高々と駅裏に/高橋信之
★葱剥けばすぐ清冽な一本に/高橋正子

広島の備後地方に育った私は、葱は子どものころ嫌いな野菜であった。父母の世代までは、葱というより根深と呼んでいたような記憶がある。根元に深く土を寄せていた。土から掘り上げて、枯れた葉や薄皮を剥くと、葱の匂いがぷんとして、手に泥がかたまったように黒くつく。一皮むけば、葉葱ながらまっ白い茎が現れた。すき焼きにもこの葉葱が使われる。みそ汁や、ただ葱を油揚げや豆腐と炊いたような惣菜にも。霜の朝、家の前の畑に行くと、加倉井秋をの句のように、葱の葉は、くの字に折れている。折鶴を連想させるのも無理もない。根の白い部分を食べるものを、「東京葱」と呼んでいたが、田舎では見たことはなかった。今は横浜に住んでいるので、もっぱらこの白い根を食べるものを使っている。葉葱の代表の九条葱も売られているが、これは、めったに買わない。小葱と呼ばれる薬味に入れる葱は冷蔵庫に切らすことはなく、この小葱は普段大活躍。厚焼き卵に入れるし、小葱の小口切りにしたものだけをいっぱい入れたみそ汁もたまに作る。これがまた美味なのだ。葱は、地方によってさまざまの品種があるようだ。焼き鳥の肉の間に挟んだ焼いた葱もおいしい。焼いたり、煮たり、刻んだままで、嫌いだった葱も好きとは言わないがよく食べている。

○寒林

[寒林/横浜・四季の森公園]          [寒禽/横浜・四季の森公園]

★冬木立いかめしや山のたたずまひ 才磨 
★斧入れて香におどろくや冬木立 蕪村 
★郊外に酒屋の蔵や冬木だち 召波 
★冬木だち月骨髄に入る夜かな 几董 
★冬木立烏くひきるかづらかな 闌更 
★寒林の日すぢ争ふ羽虫かな/杉田久女 
★学園の寒林の中牧師棲む/松本たかし 
★牛乳の噴きこぼれをり冬木立/長谷川櫂 
★野の入日燃えて寒林の道をはる/水原秋桜子

★寒禽となり了んぬる鵙一羽/竹下しづの女
★寒禽の叫び古墳の揺るるほど/大串章
★寒禽の声の飛び交ふ雨の中/片山由美子
★寒禽の声はお隣かも知れぬ/稲畑汀子
★影と来て影一点となる寒禽/豊田都峰  
★寒禽の嘴をひらきて声のなき/長谷川櫂

★寒林を行けばしんしん胸が充つ/高橋正子
★寒禽の止まりし枝の丸見えに/高橋正子

 寒林とは、冬枯れの、寒々とした林。(デジタル大辞泉の解説)

 「寒いですね」というと「寒中だから」という。そう云われれば、冬であり、寒中だから寒さも厳しくて当り前なのでしょう。これで気温が35℃もあったりしたら「どうなってっの」と気候変動を心配しなければなりません、寒くていいのでしょうね。寒林、冬木立が寒に入った状態だそうですが、あえて説明するならば「葉を落とし尽くしてしまった落葉樹の冬の林の蕭条(しょうじょう)したさま」ということになるようです。木だって寒いでしょうから(?)、寒くないように家の中に入れてあげました。すこしでも温かくなるようにというささやかな気持ちなのですが「小さな親切大きなお世話」なのかもしれませんね。やはり、冬木立、冬木群(ふゆこむれ)は自然のままがいいようです。(ブログ「as time goes by」より)

◇生活する花たち「蝋梅①・蝋梅②・芽柳」(横浜・四季の森公園)

1月16日(水)

★水仙の香をすぎ山路急となり  正子
水仙の香りを楽しみつつの山歩きも、その場を過ぎると一気に山道に入りました。ゆったりとした気持ちから山路を行く気持ちに切り替わる瞬間を感じます。(高橋秀之)

○今日の俳句
冬草に海の青さが押し寄せる/高橋秀之
海の岸辺近くの冬草。日にかがやく海の青が強くて、冬草にまでその光が及んでいる景。テーマは「冬草」。(高橋正子)

○蕪(別名スズナ) 
★雪降らぬ伊予の大野や緋の蕪/高浜虚子

 カブ(蕪)はアブラナ科アブラナ属の越年草。代表的な野菜(根菜類)の一つで、別名はカブラ、カブナ、カブラナ、スズナ(鈴菜、菘)など数多い。「カブ」の語源は諸説あり、頭を意味する「かぶり」、根を意味する「株」、またはカブラの女房詞である「オカブ」からとされている。
 正月七日に七種類の若菜を食べると万病を除くと考えられ平安時代の初めごろはじまったものらしい。七種の菜は、せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな(蕪)・すずしろ(大根)である。
 蕪は絵になる。大根もなるかもしれないが、蕪のほうが形と葉に面白みがある。信之先生が絵を描くときは、野菜は絵になったあと台所へ回される。小蕪は、寒い時期なら、まるごと煮て葛あんをかけるのが評判がいい。あとは、ポトフやみそ汁に入れたり、漬物や酢の物になっている。最近男の子は酢の物を嫌うので、蕪の酢の物はあまり作らなくなった。酢の物はサラダにとってかわられている。
 大根と呼ばれながら、蕪としか思えないものもある。さくらんぼのような赤い二十日大根、千枚漬けの聖護院大根。私のイメージでは、この二つは蕪の仲間に入っている。聖護院大根は、子供のころ、冬の保存食として、京都の千枚漬けとは違っているが、薄く銀杏切りにして甕いっぱい酢漬けにされていた。今思えば、寒い季節のわりに酢が強すぎたという感じだが、この聖護院大根をかぶらを呼んでいた。
 子供にとっては、蕪といえばロシアの民話の「大きなかぶ」の話だろう。佐藤忠良の挿絵の「大きなかぶ」の絵本を何度も子供に読まされた。

○桜冬芽

[桜冬芽/横浜市緑区北八朔(2013年1月9日)]_[桜の花/横浜日吉本町(2011年3月27日)]

★蔵したる桜冬芽の守る句碑/稲畑汀子
★雨雫桜冬芽に小宇宙/堀佐夜子
★城跡へ桜冬芽の未だ固し 惟之
★尖りしは桜冬芽の力なり/高橋正子
★青空に桜冬芽の赤味帯ぶ/高橋正子

 2月9日に海老谷桜の再生状況について、専門家や地元の皆さんと検討会を開催しました。その内容について報告します。
 再生状況について
 海老谷桜の状況は、各枝の色あいや艶(つや)も良く、新しい枝も延びてきていますし、枝には冬芽(とうが 花や葉のもとになる芽)もしっかりと付いて膨らみ、春に向けた準備が確認できます。全体的には、順調な回復をみせていると言えます。しかし、根や幹枝の状況や冬芽の付き方を細かく観察すると、現在の再生は、人間の助力によるところが大きく、今後も引き続き支えていかなければならない状況であると判断され、依然として、その再生には予断を許さない状況にあります。
 今春の開花について
 開花のためのエネルギー消費は、大きなものがありますが、最も大量に消費するのが、開花後の「実」を付ける営みです。そのため、「実」を付けさせないように人間がコントロールすることが大切であるとの認識で一致しました。その方法としては、海老谷桜自身の力を引き出すために、自然な形で開花させた後、速やかに花を摘み取る方法と最初から人間がコントロールする形で花芽(はなめ)を摘み取り、花を咲かせない方法があります。この点について検討した結果、市としては、冬芽が成長して花芽と葉芽(はめ)に識別できる3月後半の段階で、花芽の量や付き方を調査し、最終的に判断することにしました。
多くの皆さんが花咲く海老谷桜の姿を思い、ご支援、ご心配をいただいておりますが、引き続き見守っていただきたいと思っております。(浜田市のホームページより)

◇生活する花たち「冬椿・冬の梨園・冬田」(横浜市緑区北八朔)

1月15日(火)

★寒空の青に鳥らの飛ぶ自由  正子
冬枯れとなった荒涼とした野外の空は青々と晴れ渡っている。「寒空もものかは」と言わんばかりに活き活きと飛び回っている鳥達を眺め、森羅万象の中に共に有る事を喜ばれ、「鳥らの飛ぶ自由」と詠われた作者の晴れ晴れとした気持が伝わってまいります。 (佃 康水)

○今日の俳句
牡蠣揚がる瀬戸の潮(うしお)を零しつつ/佃 康水
広島は牡蠣の産地として知られているが、牡蠣の水揚げを詠んだ句。潮を零しながら、しかも瀬戸の、と具体的な詠みに情景がくっきりと浮かび上がり、臨場感が出た。(高橋正子)

○すずしろ(大根)
★流れ行く大根の葉の早さかな/高浜虚子
虚子写生の代表な句で、昭和3年11月10日、九品仏吟行のときの作品。句の対象が「大根の葉」のみで、そこに焦点が絞られ、他が切り捨てられているので、作者の思いが何処にあるか、見極め難い。そこが評価の分かれるところであろうが、私は、この句をよしとした。俳句というものを教えてくれる佳句である。(高橋信之)

 「すずしろ」は大根の昔の呼び名で、1月7日の七草粥では大根のことを今でも「すずしろ」という。大根は日本でもっとも消費量の多い野菜と聞く。大根が昔ながらの食生活を牽引しているとも言えるのではなかろうか。日本の食卓から大根が消えるときがあろうか。
 大根の食べ方もいろいろ。ごく最近では、朝食のポトフに蕪ではなく、大根を入れた。朝食用なので、野菜は小さめに切った。大根はいちょう切り。キャベツとともに、あっさりとして体が温まる。ポトフに大根を入れるのは、私のアイディアではなく、伊豆の今井浜のホテルに泊まったときに、地元野菜を使った料理がいろいろと出されたがそのうちのひとつ。
 これもごく最近のぶり大根。おなじみの料理だが、大根は皮を剥かずに乱切り。ほんの少し甘味だが、大根くささ、苦味などがほとんどなく、しかも確かに大根の味がする。子どもから大人まで楽しめる味だと思う。料理家の土井善晴さんのレシピをネットからダウンロード。
 それから、秋には、大根を千六本に切ったものに、ちりめんいりこをトッピングして昆布ポン酢で食べる。浅漬け大根も寒い朝にはさわやかでよい。信之先生は、千六本に切ったものを湯豆腐に入れるのが好きで、たまに、そういう食べ方もしている。

○梅冬芽

[梅冬芽/横浜日吉本町(2013年1月6日)]_[梅の花/横浜日吉本町(2012年2月2日)]

★細幹の冬芽の滲み出す如し/行方克己
★冬芽粒々水より空の流れゐつ/野澤節子
★人眠る頃も一気の冬芽かな/阿部みどり女
★雪割れて朴の冬芽に日をこぼす/川端茅舎
★高空の風の冬芽となりにけり/川合憲子

★雲刷かれ梅の冬芽の枝真すぐ/高橋正子
★剪定の木口あたらし梅冬芽/多田有花

▼梅冬芽/2012年12月11日(多田有花)
寒波は和らいだようです。ここ数日で落葉が進みました。冬至まであと十日、まだ日は短くなっていきますが、日没が最も早いのはここ二三日ほどのことです。落葉樹が裸になってしまうと、あとは「春を待つ」という感覚になります。
増位山の梅林のまわりの木々も落葉しました。梅も11月の間はまだ葉を残していましたが、今日見ると、すっかり葉を落としつくしていました。早生から晩生までいろいろな種類の梅があります。葉を落とすのもやはり早生が先です。葉を落とした梅の間を歩いていると、もう花芽が準備を整えて整然と枝に並んでいました。
★散り終えし枝にはしかと梅冬芽/多田有花

▼梅冬芽/2009年1月9日(多田有花)
今日も穏かで風も無く日中は暖かな一日でした。早朝はそれなりに寒いのかもしれませんが、出勤しないので、その寒さも昔のことになりました。ペットボトルに入れたぬるま湯をフロントガラスにかけて、霜を溶かしたのもなつかしい思い出です。
増位山の梅林の梅が膨らんでいます。紅梅と白梅、それぞれに花の色がはっきりわかり、もう間もなく綻ぶというところまてきています。春の接近を告げてくれる花ですね。楽しみです。(多田有花)
★紅白を見せて膨らむ梅冬芽/多田有花

▼梅冬芽/2007年1月9日(gogogobar)
ちょっと遅い仕事始めの日。岐阜まで朝、往復しました。朝6時前はまだ夜。月と星が輝いていました。一宮あたりで日の出。名神から東海北陸自動車道に分かれると目の前には恵那山、ちょっと左手に御岳、乗鞍。白く大きな姿が遠望できる。岐阜の茜部では暖かい朝。恵那の雪景色とは全く別世界でした。私の家のまわりでは、杉も檜木も白砂糖をまぶしたお菓子のようにおいしそう。梅の木は冬芽を大事に春の準備をしているようだ。

◇生活する花たち「辛夷の花芽・水仙・千両」(横浜日吉本町)

●添削1月③●

[1月13日~19日]

▼1/19

●古田 敬二
穏やかに花の香溜めて枇杷畑★★★
青空へ花の香放つ枇杷畑★★★
西の風枯れ葦原のまっ平ら★★★

●小西 宏
亀島の松雪こぼす鳥の声★★★
雪道に雀降り来て餌のあるや★★★
鶺鴒の黒駆け抜ける池氷★★★
この句に詠まれたのは背黒鶺鴒で留鳥である。薄く氷の張った池を背黒鶺鴒がつつつつっと走り抜けた。池の氷と鶺鴒の走り方に、「薄く、軽やかな」感覚を感じる。(高橋正子)

●桑本 栄太郎
やわらかく信貴や生駒嶺冬がすみ★★★
十字架の峰に白きや山眠る★★★
ハイウェイの朝や日差しの寒ともし★★★

●河野 啓一
六甲の雪道はるか神戸港★★★
名湯へ辿りゆく道霜の道★★★
枯れ葎林を囲み風に揺れ★★★

●小口 泰與
十州に囲まる国や桜鍋★★★
ふたまわり靴も大きく冬休★★★★
丑三つに起きるや霜夜覚ゆなり★★★

●迫田 和代
霜焼けの手をこすりつつ走る人★★★
土手道の木々の冬芽に動きあり★★★
雲も無く冬の夕焼遠山や★★★

●多田 有花
たなごころ天に向けたり六花★★★★
雪の舞う頂に立てば光る海★★★
寄鍋をつつけば学生時代なり★★★

▼1/18

●藤田 洋子
寒禽の丘高々と広々と★★★★
高々と、また広々としているのは、寒禽の丘。寒禽がよく鳴き、自由に飛ぶ丘が想像できる。鳥たちの自由な世界は、作者ののびやかな心の証と言える。

枯芝の丘踏みしめて日の匂い★★★
丘晴れて桜冬芽の枝の張り★★★

●佃 康水
掬い揚ぐ鋤簾へ光る寒蜆★★★ 
寒風に吹かれて傾ぐ蜆舟★★★ 
日の光り抱き咲き満つ寒桜★★★

●桑本 栄太郎
雲上がる嶺はうつすら雪の山★★★
トンネルを出でて京菜の冬の畑★★★
降り止みてよりの茜や寒夕焼け★★★

●河野 啓一
風寒し風花は地を転びゆく★★★
雪花の舞えば箕面の山暗し★★★
寒苺ハウスでぬくぬく育てられ★★

●小口 泰與
金星を支えし日の出霜柱★★
我が里へ風花放つ遠嶺かな★★★★
朽舟の風に揺れけり綿氷★★★

●多田 有花
ケータイ変更待春の街に出る★★★
室咲きは名札をつけて並びおり★★★
(阪神淡路大震災忌日)
灯火を集めて祈る厳寒に★★★

▼1/17

●祝 恵子
裂けし樹に見事に咲いて冬ざくら★★★
山茶花やおみくじ白くしろく結い★★★
なで牛の黒ぐろと坐しどんどの火★★★

●桑本 栄太郎
寒晴れの車窓広がり睡魔来る★★★
青々と家並みに近し葱畑★★★
高階の寒拆遠き夜更かな★★★

●黒谷 光子
店先に選る花春を先駆けて★★★
街に出て雪の伊吹の真正面★★★★
伊吹山はがっしりとした男性的な山で、日本百名山の一つに挙げられる霊峰。世界一の積雪を記録した豪雪地帯とも聞く。街に出ると、真正面に伊吹山が捉えられる。深く雪を冠った霊峰に真向かったとき、心に大きくわき立つものがある。(高橋正子)

留守うちのポストに句集冬ぬくし★★★

●河野 啓一
歌会の声朗々と小正月★★★
寒林を映し野の池鳥集う★★★★
冬灯し昆陽池(こやいけ)巡る震災忌★★★

●古田 敬二
冬耕す草は深きへ根を伸ばす★★★★
霜解けて畑に光りうまれけり★★★★
向かい風赤き尖りの薔薇冬芽★★★

●小口 泰與
寒暁の空いっぱいを紅に染め★★★
ラガー等の影の長きや利根河原★★★★
ラガー等の広場狭しと長き影★★★

▼1/16

●小西 宏
池凍り小鷺寄せ合う丸い肩★★★
白菜の鉢巻ならぶ雪の畑★★★
雪原に深深と影桜木々★★★

●佃 康水
手造りを惜しみ放りぬ飾り焚き★★★ 
青竹の爆ぜて傾げりとんど焚き★★★★
青竹が組まれて立っていたのが、燃えて爆ぜ、節の力をなくして傾ぐ。つやつやとした青竹さえも崩れる淋しさ。正月もすっかり終わり、歳月は新しく進む。(高橋正子)

牛の背に止まりて啼きぬ寒鴉★★★ 

●桑本 栄太郎
追い越して枯野過ぎ行く新幹線★★★
くだら野や三川集い淀川に★★★
まだ蒼き空に尖りし寒の月★★★

●河野 啓一
黄昏の小道を二人日脚伸ぶ★★★
冬空を見やる明るく白きかな★★★
寒椿照り葉の陰に蕾見ゆ★★★

●古田 敬二
靴底へごつごつ当たる霜の土★★★
手袋の指先攻め来る霜の土★★★
凍て土をつかんで雑草緑濃し★★★

●多田 有花
寒月がテニスコートにかかりけり★★★
午後八時寒気一段強くなり★★★
熱々のシリアルを食ぶ寒暁に★★★

●藤田裕子
紅茶の香やさしき夜の寒の雨★★★
朝の空気山茶花の白を色濃くし★★★
小正月午後は美容院の人の和に★★★

●小口 泰與
熱燗や山風荒き松林★★★
青空へ入日の紅や寒紅梅★★★
湯豆腐や山風荒き里に住み★★★

▼1/15

●古田 敬二
黒々と優しき土よ冬耕す★★★
冬眠のミミズを起こす畝作り★★★
白き根が土掴みいる葱を抜く★★★★

●川名ますみ
次々と花芽は雪を弾きけり★★★★
寒さのなか、花をつけるものはしっかりと花芽をつけている。降る雪を花芽は弾いて、花芽に積もることはない。花芽の尖り、花芽の力を思う。(高橋正子)

初雪を光らせ黒し梅の枝★★★
初雪を載せし花芽のまるまると★★★

●河野 啓一
奥丹波山また山の雪なれば★★★
水音の低く箕面の山眠る★★★
どんど焼き鄙の社の賑わいに★★★

●桑本 栄太郎
ハウス戸を開けて寒肥畑の昼★★★
鉄柱を叩く金具や冬の風★★★
塊まつて緋を誇りけりピラカンサ★★

●多田 有花
トルコより届きし絨毯やわらかく★★★
この冬はストーブひとつで過ぎにけり★★★
雲晴れて遠嶺は雪の化粧かな★★

●小西 宏
夜となれば雪想うだけ窓明り★★★
雪掻きの手のほこほこと温みくる★★★
光るもの鈍(にび)なるものもみな冬芽★★★★
光の当たる冬芽はよく光っている。一方光りの当らない冬芽は鈍い光を放っている。それらは、どちらも冬芽で、日向にも、日陰にも、冬芽が「今」をしっかりと育っている。(高橋正子)

●迫田 和代
古戦場無縁仏に冬日さし★★★
窓近くつぎつぎ咲ける春の花★★★
何処までも広くて澄んだ冬の空★★★

●小口 泰與
雲ひとつ無き空に聳ゆる雪浅間(原句)
雪浅間聳ゆ雲一つ無き空に★★★★(信之添削)
白鳥の羽根いっぱいに入日かな★★★
白鳥の荒れ起つ波へ夕日射す★★★

▼1/14

●古田 敬二
眼の隈の見える近さに冬目白★★★
豊かなる胸の丸さや冬目白★★★
寒禽の寄りくる心静まれば★★★★
「心静まれば」がよい。静かなところ、穏やかなところに、鳥たちは安心して寄ってくる。厳しい寒さの中を生きていれば、なおさらのことと思う。(高橋正子)

●高橋 秀之
ネットから成人の日の晴れ姿★★★ 
冬木立向こうは大空薄日差す★★★ 
膨らんで餅を片手に持ちきれず★★★

●多田 有花
瀬戸内の冬山霞をまといけり★★★
ステンレスマグの温か寒の雨★★★
画材買い寒夕焼けを見て帰る★★★

●小西 宏
軽やかに雲つぎつぎと寒椿★★★★
里山の薄墨影や雪の薙ぐ★★★
雪載せて屋根黄昏に沈みゆく★★★

●桑本 栄太郎
寒晴や早も花菜の無人店(だな)★★★
ゆさゆさと風に起さる枇杷の花★★★
枯草の刈られし畦の風のまま★★★

●河野 啓一
枯れ枝のしとどに濡れて春を待つ★★★
雨止むや柿の古木に鳥の影★★★
一輪の小さきバラの開き初め★★★

●小口 泰與
枯芝に影を伸ばせし大廂★★★
郷住みは風を友とす冬菫★★★
冬麗や赤城の松の深みどり★★★

●藤田 洋子
葉牡丹の雨後のきらめき朝始まる★★★
水仙の揺れるがままに香りくる★★★
一月におろす俎板木の香り★★★★

▼1/13

●桑本 栄太郎
剪定の瘤跡白き冬の庭★★★
南天の黄色もありぬ冬館★★★
溜まりいる水のさざ波冬田晴れ★★★

●川名ますみ
俎板に林檎さりさり切られけり★★★★
「さりさり」が林檎の本質をよく表している。俎板に薄く切られた林檎は、色も香も爽やかである。(高橋正子)

林檎煮てバニラエッセンスの甘さ★★★
とろとろと杓文字に混ざる林檎ジャム★★★

●多田 有花
頂に車座餅入りラーメンを★★★
殻つきの牡蠣なら三日は大丈夫★★★
寒入日ヨットハーバー照らしおり★★★

●河野 啓一
窓開けて飛びこむ朝日春隣★★★
日脚伸ぶ古木の幹も肌色に★★★
冬ぬくし餅焼く網の光りいて★★★

●小口 泰與
葱畑の畝の深さや猫の道★★★
寒暁の三日月紅の帯に浮く★★
湖の風低きを流れ年流る★★★

1月14日(月)

 石鎚山
★雪嶺にこだま返すには遠き  正子
石鎚山を近くから見たことはないのですが、峻厳な、神性を感じさせる山だと聞いています。とりわけ、雪をまとう姿は荘厳なものなのでしょう。こだまが返ってくる(あるいは、こだまを求めて呼びかける)には遠く感じるというのは、単に距離のことだけではなく、そうした深い思いを秘めてのことなのだろうと思います。連帯止めの余韻が響きます。(小西 宏)

○今日の俳句
枯原を高さ自由に熱気球/小西 宏
広い枯原の上に熱気球が、さまざまに浮いている。「高さ自由に」はのどかな景色で、夢がある。(高橋正子)

○寒椿

[乙女椿(寒中に咲く椿)/横浜日吉本町] [寒椿(山茶花との交雑種)/ネットより]

★竪にする古きまくらや寒椿 野坡
★折り取つて日向に赤し寒椿 水巴
★瀞の岩重なり映り寒椿 石鼎
★寒椿少しく紅を吐きにけり 青邨
★寒椿咲きたることの終りけり 風生
★寒椿落ちたるほかに塵もなし 悌二郎
★寒椿月の照る夜は葉に隠る 貞
★寒椿線香の鞘はしりける 茅舎
★ことごとに人待つ心寒椿 汀女
★くれなゐのまつたき花の寒椿 草城
★何といふ赤さ小ささ寒椿 立子
★寒椿けふもの書けて命延ぶ 林火
★園丁の昼煙草寒椿かな/村山古郷
★寒椿落ちたるほかに塵もなし/篠田悌二郎

★寒椿というや雪の公園に/高橋正子

寒椿は、広辞苑によれば、(1)寒中に咲く椿と(2)ツバキ科の常緑中低木とに分けられている。(1)寒中に咲く椿は、乙女椿(おとめつばき)・大神楽(だいかぐら)・侘助(わびすけ)などであり、(2)ツバキ科の常緑中低木は、椿と山茶花の交雑種とされるツバキ目ツバキ科ツバキ属のひとつの「寒椿」である。ツバキ目ツバキ科ツバキ属の「寒椿」は、「山茶花」との区別が難しく、低木で枝と葉に毛がある。花は紅色の八重咲きで、やや小さく、11月~1月頃開花する。

◇生活する花たち「蝋梅①・蝋梅②・芽柳」(横浜・四季の森公園)