2月14日(木)

 東海道53次川崎宿
★下萌えの六郷川の水青し   正子
春の訪れに、種々の草が緑の芽を出し陽に輝いています。そばを流れる川の水も青く輝き、草の緑と川の青が呼応し明るい世界が広がっています。(井上治代)

○今日の俳句
早も咲ける菜の花の丈低かりし/井上 治代
春も暦ばかりと思えるのに、早も菜の花が咲いて黄色い光を返している。先駆けの菜の花らしく「丈低かりし」であって、実在感がある花となっている。(高橋正子)

○浅蜊
★浅蜊に水いっぱい張って熟睡す/菖蒲あや

 淡水の多少混じった砂泥の浅海に埋没して棲息する二枚貝。潮干狩の最たる獲物である。川が流れ込む砂浜で、浅蜊はよく取れる。今は春に限らず、養殖の浅蜊が手に入り、砂出しの必要もないものが多くなった。我が家でもよく食べる貝で、一番好きなのは浅蜊のお汁。食べた後の殻はきれいに洗って乾かし、小布でくるんで遊んだことがある。中学生のときに、多摩美大から教生の先生が来られて、貝殻をデザインする授業だったが、熱心に描いた。教頭先生のご子息で、詰襟姿で教壇に立たれたが、本当の美術って、こんなのかなと中学生に思わせてくれた。
 小学2,3年の頃だったと思う。近所の人たちが数キロ先に浮かぶ無人島に浅蜊掘りに行くのに誘われた。この島は源平合戦のとき、義経が矢を放って浮き流れているのを射とめてその位置にとどまったという島で「矢の島」と呼ばれて、お椀を伏せたようなごく小さい島である。無人島なので、もちろん桟橋や舟着き場などない。小舟を砂浜に寄せて海水を歩いて島に上がる。子供の私には浅蜊はほとんど採れなかったと思うが、それはまだよい。帰るときその島に独りおいてきぼりにされかかったのだ。誰かが気付いて舟に乗せてくれた。海の水の緑ふかい青さと島の緑が異様に恐ろしく思えた。
 松山にいたころは、海辺に出かけて何気なく砂を掘ると小さな浅蜊を見つけることがあった。少し拾って、夜は申し訳程度の浅蜊汁にしたが、けっこう楽しいことである。

○ヘレボルス(クリスマスローズ)

[ヘレボルス/横浜日吉本町]

★クリスマスローズ咲かせる窪の家/松崎鉄之介
★クリスマスローズ仰向くことのなく/椋本一子
★クリスマスローズかかへて友を訪ふ/坂本知子

ヘレボルスとは、キンポウゲ科(Ranunculaceae)ヘレボルス(属)(helleborus)の植物。『ヘレボルス』というと、なんだか聞きなれない名前だが『クリスマスローズ』と言えばご存知の方も多いのではないか。実は、クリスマスローズとは通称で、本名はヘレボルスと言う。ヘレボルスの中の一種である『ニゲル』という原種がイギリスのクリスマス時期に咲くことからクリスマスローズと名付けられた。しかしほとんどのヘレボルスはクリスマスの時期には咲かず2月ごろからの開花となる。
 『クリスマスローズ』はローズと言ってもバラではなく、キンポウゲ科の多年草で、ギリシャ語の、殺す「helein」と食べ物「bore」が合わさって出来た名前だそうである。この植物には毒性があって狩などにつかわれていたという話もある。最近では、スーパーの花屋でも買い求めることができるほど人気がでてきたクリスマスローズ。花(本当はガク)の色がカラフルで、株分けやクローンでないかぎり2つとして同じものはないというのも魅力のひとつで、うつむき加減がしおらしい、日本人好みの花。

◇生活する花たち「福寿草・菜の花・紅梅」(横浜日吉本町)

2月13日(水)

★下萌えは大樹の太る根もとより   正子
早春になると、冬枯れの大地よりあちこちに草の芽が萌え始めます。大樹の太る根もとは落葉などで土が温かく、また朽た葉が肥料にもなり下萌えが早いのでしょうか。大樹の根もとに若芽の淡い緑の姿が見え春の到来に嬉しくなります。御句より広々とした公園を想像致しますが、辺りも次第に春の色合いが増す事でしょう。(佃 康水)

○今日の俳句
まんさくの丘へ親子の声弾む/佃 康水
まんさくは、「先ず咲く」の訛りとも言われる。春が兆したばかりの丘に、母と子が声を弾ませ、楽しそうである。春が来たと思う光景だ。(高橋正子)

○赤花満作

[赤花満作/横浜・四季の森公園]

★満作咲く丘の麓の空晴れて/高橋信之
★満作のひらひら咲くや寒波来て/高橋正子
★森に咲く満作の枝横伸びに/高橋句美子
★作紅し森の階段森奥へ/高橋句美子

 アカバナマンサク(赤花満作、学名:Hamamelis japonica var.obtusata)は、マンサク科 マンサク属の落葉小高木。別名はベニバナマンサク(紅花満作)だが、あまり使われない。花弁が赤色のマンサクだが、外国種や交配種の赤花もアカバナマンサクという名前で表示されていたり、売られていたりする。分類的には、本来の”アカバナマンサク”は在来の”マンサクの変種のマルバマンサクの一つの品種”のことを指す。外国種や交配種には別の学名がつけられている。分布:本州の日本海側、樹高:3~8m、花期:2~3月、果期:9月
 落葉の小高木で落葉樹の多いところに生えている。マルバマンサクの品種で花弁全体が暗い赤色を帯びる。枯れ葉が枝に残っていることがある。葉は単葉で互生し、長さ5~11cm。幅3~7cm。葉の先が半円形の菱形状円形または広卵形で基部は左右の形がちがう。葉縁は先半分に波状の鋸歯があり、基部半分は全縁。果は直径1cmほどの卵状球形。熟すと2つに裂けて光沢のある黒い種子を2個はじきとばす。葉の展開に先立って花を咲かせ、花弁は4枚、煤けたような暗い赤色で、鮮やかな赤色ではない。黄色い縁取りがあり、長さ1~1.5cm。萼片も4枚ある。花は良い香りはせず、生臭い香りがかすかにする。

◇生活する花たち「満満作①・満作②・蝋梅」(大船フラワーセンター)

2月12日(火)

★梅の花いつもきれいな青空に   正子
梅の花が咲き、ようやく暖かさを感じさせるようになった春の空の輝き。その大きな喜びが「いつもきれいな」に籠められて、私たちの心にも伝わってきます。(小西 宏)

○今日の俳句
枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
枝に止まった鳥が、枝移りをするのか枝が揺れる。それを見ていると、光も揺らしているのだ。枝を張る陽光に満ちた木、枝移りする鳥が、なんと早春らしいことよ。(高橋正子)

○ネット短信
■ネット短信No.178/2013年2月11日発信
□発信者:高橋正子(花冠代表)
□電話:045-534-3290
■□花冠4月号校正!
各自ご自分の俳句や原稿をご確認ください。訂正がありましたら、下記ブログの
<コメント>にお書き込みください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan12/
■□迫田和代句集『遠い日』/近日刊行 new!
下記アドレスの迫田和代さんのブログに句集原稿のファイルがリンクされていますので、
お読みください。書籍の句集は、花冠俳句叢書第30巻で、3月29日発行の予定です。
http://blog.goo.ne.jp/suien15/
■□第21回(立春)フェイスブック句会入賞発表
【金賞】
★枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
枝に止まった鳥が、枝移りをするのか枝が揺れる。それを見ていると、光も揺らしている
のだ。枝を張る陽光に満ちた木、枝移りする鳥が、なんと早春らしいことよ。(高橋正子)
その他の入省作品は下記アドレスのブログを御覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d/
■□高橋正子の俳句日記(ブログ)
以下の方の句をご紹介していますので、ご確認ください。
河野啓一(2/17)小川和子(2/16)祝恵子(2/15)佃康水(2/13)
http://blog.goo.ne.jp/kakan02/

●花冠創刊30周年事業案内句集出版など
http://blog.goo.ne.jp/suien60/
●花冠同人ブログ集
http://suien.ne.jp/0003/blog/haikublog.htm
●インターネット俳句センター
http://kakan.info/

○紅梅

[紅梅/横浜・四季の森公園]

★紅梅や見ぬ恋つくる玉すだれ 芭蕉
★紅梅や入日の襲ふ松かしは 蕪村
★紅梅や照日降日の中一日 暁台
★紅梅や大きな弥陀に光さす 太祇
★紅梅にほしておくなり洗ひ猫  一茶
★紅梅や雨のふりたるぬり盥 成美
★梅の中に紅梅咲くや上根岸 子規
★紅梅や文箱差出す高蒔絵 漱石
★紅梅や日和の影を雲の上/長谷川櫂
★坂下はすぐに汀や薄紅梅/小澤克己
★紅梅や湯上りの香の厨ごと/岡本眸
★紅梅に空あをくなれ青くなれ/林翔
★紅梅や庭に富士見の丘築き/宮津昭彦
★紅梅のつめたき枝をさしかはし/高田正子

四季の森公園へ行った帰り道、辛夷が無数に蕾を付ける街路樹のある歩道を脇に入ったところ。紅梅の匂いがした。紅梅のあることを知らなかった場所にこれも無数の蕾を付けた紅梅の木が立っている。二本。ふくよかな匂いがする。かすかに薔薇のような匂いがする。まじまじと見れば童女のようにあどけない。

★おしばなの紅梅円形にて匂う/高橋正子

日記帳にひそかに挟み、忘れたころに見つかる。押し花になってもいい匂いがする。自分の、誰に見せるわけでもない小さな宝物である。

★紅梅咲く隣家に黒衣の人出入り/高橋正子
うららかな紅梅日和、法事があるのだろう。黒衣が日にきらめいていた。

 梅 (うめ、学名:Prunus mume)は、薔薇(ばら)科。開花時期は、1月中旬頃から咲き出すもの、3月中旬頃から咲き出すものなど、さまざま。漢名でもある「梅」の字音の「め」が変化して「うめ」になった。中国原産。奈良時代の遣隋使(けんずいし)または遣唐使(けんとうし)が中国から持ち帰ったらしい。「万葉集」の頃は白梅が、平安時代になると紅梅がもてはやされた。万葉集では梅について百首以上が詠まれており、植物の中では「萩」に次いで多い。別名は「好文木」(こうぶんぼく)、「木の花」(このはな)、「春告草」(はるつげぐさ)、「風待草」(かぜまちぐさ)。1月1日、2月3日の誕生花。花言葉は「厳しい美しさ、あでやかさ」
 ウメにまつわる言葉
 「桜伐(き)る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」 春先に咲く代表的な花である桜と梅のふたつを対比しつつ、栽培上の注意を示したもの。桜はむやみに伐ると切り口から腐敗しがちであり、剪定には注意が必要。一方、梅の樹は剪定に強く、むしろかなり切り詰めないと徒枝が伸びて樹形が雑然となって台無しになるばかりでなく、実の付き方も悪くなる。花芽は年々枝先へと移動する結果、実が付く枝は通常数年で枯れ込んでしまう。実の収穫を目的とするのであれば、定期的に枝の更新を図る必要があるからである。 「東風(こち)吹かば にほひおこせよ梅の花 主なしとて 春な忘れそ」 菅原道真が大宰府に左遷されるとき、道真の愛した庭の梅の花に別れを惜しんで詠んだ歌。後に庭の梅木が道真を追って大宰府に飛んできた、という「飛梅伝説」がある。 「桃栗三年、柿八年、柚(ゆず)の馬鹿野郎十八年、梅はすいすい十六年」 種を植えてから実を収穫できるまでの期間を指す俚謡。本来は「桃栗三年柿八年」で一つの諺。「物事は簡単にうまくいくものではなく、一人前になるには地道な努力と忍耐が必要だ」という教訓である。

◇生活する花たち「さんしゅゆの花蕾・節分草・雪割草」(横浜・四季の森公園)

●添削2月②●

[2月10日~16日]

▼2/16

●黒谷 光子
苔むしし古寺の石垣春の雪★★★
墨塗らる門院の御影冴え返る★★★
泉水を臨み手かざす春火鉢★★

●佃 康水
残雪の光りへ杉の長き影★★★
ゆったりと四肢伸ぶ亀へ水温む★★★
新駅の普請の音へ春の雪★★★★

●小西 宏
ひと雨の土艶やかや梅の苑★★★
笹吹かれ青天深き春の寒★★★
春風の池かがやかせ寄せ来たる★★★

●河野 啓一
風花の舞うや朝日にきらきらと★★★
春寒し日差しの中に杖突きて★★★
けなげなる子持雀の太さかな★★★

●桑本 栄太郎
突風の嶺から里へ春の雪★★★
ワイパーに刷かれしずくや春の雪★★★
竹林の笹に春雪しづりけり★★★

●多田 有花
快晴の余寒の朝へ干し物を★★★★
春雪に姿隠して北の山★★★
早春やカリフォルニアの柘榴食ぶ★★★

●迫田 和代
我儘に朝湯を浴びる春の風邪★★
咲いて香り散って香れる梅日和★★★
春が来て窓からの音ゆったりと★★★

●小口 泰與
うららかに和紙に包まる和菓子かな★★★★(正子添削)
ほのかに透ける和紙に和菓子が包まれ、うららかな春そのもの。透けるものの美しさは、日本的な美であろう。(高橋正子)

空を見よ春のあけぼの赫に染め★★★
思うこと春朝焼けの紅の色★★★

▼2/15

●古田 敬二
土を掻けば団栗湿りて芽吹きけり★★★
梅林の一角先駆け咲く気配★★★
梅一輪咲き初む風の緩き日に★★★

●桑本 栄太郎
陽光のぱつと厨へ春きざす★★★
ワイパーの時折傾ぎ春しぐれ★★★
遅き日や雑木林の陽を背負い★★★

●多田 有花
春の雨春をすすめる雨の降る★★★
カラフルに並ぶ門先春雨傘★★★
雨の日の増えし播磨の春めきぬ★★★

●川名ますみ
川縁のしらうめ雨に耀きぬ★★★
白梅に川面に雨の降り注ぐ★★★
多摩川の流れて岸に梅真白★★★★
多摩川の流れと白梅の清潔さが、早春らしさを醸している。(高橋正子)

●河野 啓一
-熊本へ小旅行続-
高原の宿春空の広さかな★★★
春雨のつれづれ肥後の手毬唄★★★
春霖にけむる一望草千里★★★

●小口 泰與
摘草やきらら耀う水掬い★★★
春の日や金平糖の色さやか★★★
春暁や西に満月煌々と★★★

▼2/14

●小西 宏
木々の芽の日に日に太し明るさに★★★
薄っすらと蕾みどりに梅の苑★★★
土塊に緑まるまる蕗の薹★★★

●桑本 栄太郎
青空のうす雲ながれ丘の梅★★★
山茶花の地に花びらの囲みけり★★★
春北風や忽ち雨の降りきたる★★★

●多田 有花
春の眠り暁のころに目覚めけり★★★
春なれや播州平野を囲む山★★★
宅配で食材届く春の昼★★★

●古田 敬二
咲いたねと声掛け屈むいぬふぐり★★★
切り株に座して春の句を探す★★★
頬に優し樹間を縫って春の風★★★

●小口 泰與
利根川の流れ耀う春の朝★★★
うららなる漆細工の食器かな★★★
嬬恋の山や春星かぎりなし★★★★
嬬恋の名が、「春星かぎりなし」に効果的に働いている。嬬恋村の春星の夜が潤み情感豊か。(高橋正子)

▼2/13

●小西 宏
はち切れて白生まれんと梅蕾★★★
風吹くといえども野辺の麗らかや★★★
児の遊ぶ日差しに芝の青芽ぐむ★★★★
「青芽ぐむ」が、児の可愛らしさとよくマッチして芽ぐむ季節が楽しくなっている。(高橋正子)

●桑本 栄太郎
春北風にシャトル流るるバトミントン★★★
まんさくの空に綻び散らしけり★★★
竹林の千々に傾ぐや春北風★★★

●河野 啓一
阿蘇熊本へ一泊旅行
遠霞み窓覗き合うバスの旅★★★
春雨や九重連山阿蘇五岳★★★
花の頃また訪ねたき肥後の国★★★

●多田 有花
雨あがり空の青さの春めけり★★★
紅梅のしべにゆうべの雨しずく★★★
見上げれば青き空へと梅ひらく★★★

●迫田 和代
テーブルの白磁の花瓶菜の花を★★★
春の雨紫にけぶる道を行く★★★
春の海霞んだ沖から船の影★★★

●小口 泰與
早春の湖やわらかく耀へり★★★
蕗味噌をたっぷり腹へ魚焼く★★★
産土の赤城榛名と雪解かな★★★

▼2/12

●桑本 栄太郎
竹林の節々白く冴え返る★★★★
ほつほつとものの芽青む朝日かな★★★
蘂堅く風に香りて梅ひらく★★★

●古田 敬二
合格のベル鳴る春の陽の眩し★★★
忘れられし野良着に跳ねる春霰★★★
鳥多し春を探しに森に入る★★★

●佃 康水
(広島三原の達磨市・植木市)2月8~10日   
芽吹き山そびらに満の達磨売る★★★★  
植木市道へ蕾の枝張れる★★★
暮れ遅し魚網繕う船留まり★★★

●多田 有花
<鎌倉山行者道を歩く>
磨崖仏二月の日差しを正面に★★★★
春泥の獣の跡を踏んでゆく★★★★
<札幌ナンバーのライダーを目撃>
旅人は北の国から春淡し★★★

●川名ますみ
朝食の席にひかりと梅の香と★★★★
テーブルに朝陽の来たり梅が香も★★★
スプーンを置けば梅の香あたらしき★★★

●黒谷 光子
紅梅の枝を差し交す空は青★★★
紅梅の枝も蕾も紅の濃き★★★
薄氷のままに蹲踞黄昏るる★★★

●小口 泰與
うららかやボートの色の新たなり★★★
利根川の波荒ぶるや蕗の薹★★★
雪間より日の出の紅や春炬燵★★★

▼2/11

●古田 敬二
梅一輪見知らぬ人と愛でにけり★★★
逢いたくて来た道帰る梅一輪★★★

耕せし畑に踊る春霰★★★★
耕し終えた畑に、急に春の霰が降ってきて、土の凹凸に当たってか、跳ねて踊る。「踊る」霰の様子が見える。(高橋正子)

●桑本 栄太郎
天地(あめつち)の日差しうらうら建国日★★★
風止みてよりの陽射しや春の雲★★★
雲ながれ天に流るる春の星★★★

●多田 有花
<加西市鎌倉山登山>
石仏を辿り早春行者道★★★★
小さき山連なる先の海霞む★★★
風花や法起菩薩の頂に★★★

●小口 泰與
嬬恋の川の流れも春べかな★★★
春光や山麓の牧ひろびろと★★★
忽然と風音変わり凍返る★★★

▼2/10

●古田 敬二
どの枝も膨らむ蕾目覚めけり★★★
野良をゆくしなやかな黒恋の猫★★★
あぜ道の小さき星よイヌフグリ★★★

●小西 宏
竹林の青深く揺れ春の風★★★
浅き春ひよどりの声空に流る★★★
丹沢の春霞なる青き峰★★★

●桑本 栄太郎
横風の陽射しの中を春の雪★★★
朝日射し枝に花咲く春の雪★★★
ほつほつとほほに春雪夜の家路★★★

●多田 有花
川を生む山の重なり春初め★★★
啄木鳥の奏でし音に春動く★★★

汲まれたる桶それぞれの薄氷★★★★
木桶に汲まれた水であろう。どの桶にも桶の木肌を透かして薄く氷が張っている。一つの桶でなく、「それぞれ」の桶があってリズミカルな面白さがある。(高橋正子)

●河野 啓一
雲二つ結べる春の飛行機雲★★★
冴え返る長き歴史や建国日★★★
縁薄いバレンタインの贈りもの★★★

●小口 泰與
春めくや越後駄菓子のはっか糖★★★
名にし負う会津駄菓子やうららけし★★★
長閑さや飴の中から当りくじ★★★

2月11日(月)


★菜の花に蛇行の川の青かりし   正子
蛇行している川に沿い、菜の花が群れ咲いています。菜の花の黄色と川の水の青色が、とても鮮やかで春の穏やかな美しい景が広がっています。また、微風に揺れる菜の花、静かな川の流れ、春の音も聞こえてくるようです。(藤田裕子)

○今日の俳句
まんまるい蕾もろとも花菜漬け/藤田裕子
まんまるい、黄色も少し見える蕾もろとも漬物に付け込むには、心意気がいる。日常生活が身の丈で表現された句。(高橋正子)

○芽柳

[芽柳/横浜・四季の森公園(2012年1月26日)]_[芽柳/横浜・四季の森公園(2012年3月22日)]

★古川にこびて芽を張る柳かな 芭蕉
★ほつかりと黄ばみ出でたり柳の芽 暁台
★芽柳のおのれを包みはじめたる/後藤比奈夫
★芽柳や鶏飼ふ艀菜をきざむ/皆川盤水
★芽柳の色となりつゝ風と合ふ/稲畑汀子
★芽柳や傘さし上げてすれ違ふ/満田春日
★退屈なガソリンガール柳の芽/富安風生
★芽柳や声やはらかく遊びをり/遠藤千鶴羽
★東京の石神井恋し柳の芽/清水淑子

 めやなぎ(芽柳)とは、早春、芽の出始めた柳。芽吹き柳。芽張り柳。[季]春。《―の奥たのもしき風情かな/鬼貫》(三省堂 大辞林)
 ヤナギ(柳、英語: Willow)は、ヤナギ科 Salicaceae ヤナギ属 Salix の樹木の総称。世界に約350種あり、主に北半球に分布する。日本では、柳と言えば一般にシダレヤナギを指すことが多い。落葉性の木本であり、高木から低木、ごく背が低く、這うものまである。葉は互生、まれに対生。托葉を持ち、葉柄は短い。葉身は単葉で線形、披針形、卵形など変化が多い。雌雄異株で、花は尾状花序、つまり、小さい花が集まった穂になり、枯れるときには花序全体がぽろりと落ちる。冬芽は1枚のカバーのような鱗片に包まれ、これがすっぽりと取れたり、片方に割れ目を生じてはずれたりする特徴がある。これは、本来は2枚の鱗片であったものが融合したものと考えられる。果実はさく果で、種子は小さく柳絮(りゅうじょ)と呼ばれ、綿毛を持っており風に乗って散布される。 なお、中国において5月頃の風物詩となっており、古くから漢詩等によく詠み込まれる柳絮だが、日本には目立つほど綿毛を形成しない種が多い。
 日本では、柳といえば、街路樹、公園樹のシダレヤナギが代表的であるが、生け花では幹がくねったウンリュウヤナギや冬芽から顔を出す花穂が銀白色の毛で目立つネコヤナギがよく知られている。

◇生活する花たち「満作・赤花満作・犬ふぐり」(横浜・四季の森公園)

2月10日(日)

★梅の香を息に吸い込みあるきけり   正子
梅が開き始めました。春が来るのとあい前後して開き始め、春の進展に伴って花の数を増していく梅は早春を代表する花です。香りも素晴らしく、その春の息吹といえる香を吸い込んで歩けば、いきいきとしてきます。 (多田有花)

○今日の俳句
沖よりも甍の光り春めけり/多田有花
海の沖を眺めると、冬の沖とは違って春めいて思えるだが、それよりも手前に眺める甍の光りの方が強く、遥かに春めいているのだ。日本の甍は、その季節、その日の光りを偽ることなく反射させる。今、春めいた陽光を反射させている。(高橋正子)

○菜の花


[菜の花/伊豆河津(2011年2月22日)]   [菜の花/横浜日吉本町(2013年2月3日)]

★菜の花や月は東に日は西に/与謝蕪村
★菜の花の遥かに黄なり筑後川/夏目漱石
★家々や菜の花いろの灯をともし/木下夕爾
★菜の花の暮れてなほある水明り/長谷川素逝
★菜の花に汐さし上る小川かな/河東碧梧桐
★寝足りたる旅の朝の花菜漬/稲畑汀子
★咳こもごも流転身一つ菜種梅雨/目迫秩父
★白鷺の飛びちがへるに菜種刈る/木村蕪城
★菜殻火に刻々消ゆる高嶺かな/野見山朱鳥
★うしろから山風来るや菜種蒔く/岡本癖三酔

 菜の花(なのはな、英語:Tenderstem broccoli)は、アブラナまたはセイヨウアブラナの別名のほか、アブラナ科アブラナ属の花を指す。食用、観賞用、修景用に用いられる。アブラナ属以外のアブラナ科の植物には白や紫の花を咲かせるものがあるが、これを指して「白い菜の花」「ダイコンの菜の花」ということもある。
 菜とは食用の意味であり、菜の花とは食用の花の意味である。在来種アブラナや、セイヨウアブラナの花序や若芽が利用され、最近はコウタイサイなど中国野菜由来の新品種も登場している。食用生産が多いのは香川県、高知県、千葉県、三重県など。大別して、蕾の目立つ頭頂部をまとめたタイプと、掻き取った脇芽(蕾が無い)を袋詰めにしたタイプが主流となっており、前者は在来種アブラナ系、後者がセイヨウアブラナ系とされる。セイヨウアブラナは固く筋っぽくなりやすい反面、在来種より苦みが少なく甘みが強い特徴がある。野菜としては足が早いほうなので、保存する場合は加熱してから冷蔵するのが望ましい。 ビタミンCやミネラルが豊富な緑黄色野菜であり、アク(シュウ酸)はホウレンソウの20分の1以下なので、調理にあたっては茹ですぎないことがポイント。2~3月だけ出回る旬を残す野菜だったが、近年は予冷技術により出荷時期が延びてきている。また、寒咲花菜のように初冬から出荷されるものもある。
 春、一面に広がる菜の花畑は壮観で、代表的な春の風物詩でもある。現代の日本では、菜種油採取用のアブラナ畑はあまり見られなくなったが、その他のアブラナ属の野菜も黄色い「菜の花」を咲かせるため、その種子採取用の畑が菜の花畑として親しまれている。このため、栽培されている作物はまちまちで、千葉県では早春のアブラナのほかに野菜類(カブやハクサイ)が、青森県横浜町では油用のセイヨウアブラナ、信州の菜の花畑はノザワナがそれぞれ5月に開花する。主産地の広大な菜の花畑は観光資源となっていて、例えば飯山市では連休中に見ごろとなるよう、ノザワナの播種日を調整している。切り花用として利用されるものは、チリメンハクサイや改良品種で、葉が白っぽく縮れている。ただしこれは食用にも利用されるため、栽培時期や方法の違いによって出荷先が変わるだけともいえる。セイヨウカラシナは、丈夫で川原や荒れた土地にも繁茂するため、河川敷や堤防、空き地に播種し、菜の花畑を作るケースがある。

◇生活する花たち「福寿草・菜の花・紅梅」(横浜日吉本町)

2月9日(土)

★春浅し立ちたる草の鳴りづめに   正子
未だ冬の気配の残る春の初め、風のやや冷たさにも、「鳴りづめ」の草の音を通して誘われる快さがあります。風に鳴る草々の有りように、浅春の季節感が感じ取れます。(藤田洋子)

○今日の俳句
街筋の昼月ほっと梅開く/藤田洋子
街筋の空を見上げれば、白く透明感のある昼の月が浮かんでいる。昼月を遠く梅が開いて、昼月と梅との美しい出会いがある。(高橋正子)

○八朔
八朔は、晩柑類の代表といってもよかったが、最近は伊予柑におされてあまり人気はないようだ。食べた後、ほんの少し苦みが残るが、果汁が少なめで、果肉がしっかりして手を汚さず食べやすいのが取り柄。
子供のころ庭に一本八朔の木があって、ひと冬、家族、主には子供のおやつとして食べるだけ十分あった。驚くべくたくさんの実がついた。収穫した八朔は、りんご箱にもみ殻を入れたなかに保存し、蔵に入れられた。土蔵の冷暗所に保存されていたわけだ。もみ殻がつかないように、セーターの袖をたくし上げ箱に腕を入れて掴み出す。お菓子がほとんどない時代。(チョコレートは高校生になって友だちにもらって初めて食べたくらいです。)遊んでいる途中、喉がかわくと家に帰って八朔を持ち出し、友達と食べたりした。よその家には伊予柑に似た私たちが「だいだい」と呼んでいた果物があったので、友達が家から持ち出してきて食べた。これはどこの親たちにも内緒のことであったが。ところがある日、あれほど実を付けて元気だったのに、突然にこの八朔の木が枯れた。その一日で枯れたわけではないだろうが、「ある日突然に」という印象だった。根もとから掘り起こされて燃やされたが、家の没落がいよいよ目に見えて始まるかのようだった。八朔の味のように、いまだにかすかな苦さを覚える。

★八朔を蔵より出せば日が当たる/高橋正子

○黄水仙

[黄水仙/横浜日吉本町]           [ラッパ水仙/横浜日吉本町]

★突風や算を乱して黄水仙/中村汀女
★横濱の方にある日や黄水仙/三橋敏雄

黄水仙(きずいせん、学名:Narcissus jonquilla L.)は、ユリ科 スイセン属で新エングラー体系ではヒガンバナ科の多年草。南ヨーロッパ原産。石灰岩地の丘陵や草地などに生え、高さは10~30センチになる。葉は深緑色で細い。春に花茎を立てて、香りのよい黄色の花を横向きにつける。江戸時代に渡来して観賞植物として栽培される。学名からジョンキル水仙とよぶ場合もある。

白い水仙は冬の季語、黄水仙は春の季語。おなじ水仙と呼ばれても咲く季節が違う。有名なワーズワースの詩の「ラッファディル」は、ラッパ水仙。春が来ると一面に群れ咲くラッパズイセンを子どものころは、異国への憧れとしてよく想像したものだ。父が若かったころ、私たが子どもであったころ、庭にラッパ水仙が咲いた。戦後のことであるが、このラッパ水仙が咲くのが非常に嬉しかった。今になって思えば、父は花が好きであったようだ。ペチュニアを「つくばね朝顔」と言っていたころ、ほどんど誰もそれを植えていないころペチュニアが咲いていた。糸水仙というのもあった。青葡萄の棚もあったし、種なし葡萄のデラウエアも門先のポールに昇らせていた。そういう思い出と共に蘇る生家のラッパ水仙である。

★父は若しラッパ水仙咲かせいて/高橋正子

◇生活する花たち「福寿草・菜の花・紅梅」(横浜日吉本町)

2月8日(金)

★梅の花遠きに咲きて白さ満つ   正子
春が来て梅林がにぎやかになってきました。まだ遠くに白梅が咲き始めた頃かもしれませんが、遠目にも華やかな白い花色が満ちており、心なしか清らかな白梅の香もただよってくるように想われます。 (河野啓一)

○今日の俳句
水音して箕面連山春浅し/河野啓一
「水音して・・春浅し」の感覚がいい。箕面連山を行くと、ころころと水音が絶えずしている。自然に身を入れると、確かに春が来ている。(高橋正子)

○伊予柑
伊予柑は、愛媛県の「宮内」というところに原木があるらしい。正月があけ、蜜柑に酸味が抜けてくるころいわゆる晩柑類が出始める。八朔や伊予柑などがそうであるが、以前はもっと遅く2月の半ばごろから3月にかけて出荷されていたように思うが、今はもっと早くなった。柑橘らしいよい香りと果汁がたっぷりある。果汁が多すぎて手を汚すこともしばしばだが、風邪気味のときなど風邪が抜けそうでうれしい。春一番が吹き、戸外はうすら肌寒いが空は明るい。以前は国立大の入試や、卒業式のあったころ。歓喜や落胆、別れ、また祝など悲喜こもごもの、ニュアンスのある季節。料峭の空気感と合わせて食べれば美味しさのニュアンスも増すというもの。
 
★風吹ける一日伊予柑香らせ食ぶ/高橋正子

○菫(すみれ)

[菫(すみれ)/横浜市都筑区緑道ふじやとの道]

★山路来て何やらゆかしすみれ草 芭蕉
★一鍬や折敷にのせしすみれ草 鬼貫
★居りたる舟を上ればすみれ哉 蕪村
★奥山や人住あればすみれぐさ 暁台
★にくまれし妹が菫は咲にけり 一茶
★山路来て品よく菫の花並ぶ/高橋正子
★降り積もる落葉のなかにすみれ草/高橋正子

スミレ(菫)は、スミレ科スミレ属の植物の総称であるが、狭義には、Viola mandshurica という種の和名である。なお、類似種や近縁種も多く、一般にはそれらを区別せずにスミレと総称していることが多い。種名としてのスミレ(Viola mandshurica)は、道ばたで春に花を咲かせる野草である。深い紫(菫色)の花を咲かせる。地下茎は太くて短く、多数の葉を根出状に出す。葉は根際から出て、少し長めの葉柄があって、少しやじり形っぽい先の丸い葉をつける。花は独特の形で、ラッパのような形の花を横向きかやや斜め下向きにつける。5枚の花びらは大きさが同じでなく、下側の1枚が大きいので、花の形は左右対称になる。ラッパの管に当たるのは大きい花弁の奥が隆起したもので距(きょ)という。花茎は根際から出て、やや立ち上がり、てっぺんで下を向いて花のラッパの管の中程に上側から着く。平地に普通で、山間部の道ばたから都会まで、都会ではコンクリートのひび割れ等からも顔を出す。山菜としても利用されている。葉は天ぷらにしたり、茹でておひたしや和え物になり、花の部分は酢の物や吸い物の椀ダネにする。ただし他のスミレ科植物、例えばパンジーやニオイスミレなど有毒なものがあるため注意が必要である。

◇生活する花たち「蝋梅①・蝋梅②・芽柳」(横浜・四季の森公園)

2月7日(木)

 東山・法然院
★春寒し木を打ち人を呼び出せり   正子

○今日の俳句
にぎわいを芽木に残して目白飛ぶ/藤田裕子
目白の季語は、その繁殖期である夏とする歳時記、また秋とする歳時記がある。実際に人里でよく見られるようになるのは秋の終わりごろから。椿のころはよく庭に来る。芽木のころも丁度このころ。チリチリという小さな声ににぎわう芽木は、早春のあかるさに満ちている。(高橋正子)

○パンジー

[パンジー/横浜日吉本町(2013年1月30日)]_[パンジー/横浜日吉本町(2012年2月19日)]

2月6日(水)

★おしばなの紅梅円形にて匂う   正子
早春の冷たい空気の中に色も香も清々しい五弁の梅の花が開いた。本の間に挟み、押し花にした紅梅は美しい円形を成し、尚且つ馥郁とした香りを放っている。梅の花をこよなく愛でられている作者の温かい心情が伝わって参ります。(佃 康水)

○今日の俳句
野に覚めし淡きみどりや蕗のとう/佃 康水
「野に覚めし」によって、淡い蕗のとうのみどりが目に強く焼きつく。初めて見つけた蕗の董であろう。驚きと嬉しさを隠せない。(高橋正子)

○福寿草「秩父紅」

[福寿草「秩父紅」/横浜日吉本町]     [福寿草「秩父紅」/埼玉県皆野町「ムクゲ自然公園」(ネットより)]

★小さくても昇殿すなり福寿草 一茶
★暖炉たく部屋暖かに福寿草 子規
★一日の温さに開く福寿草/高橋正子
★福寿草紅色がちな花は光り/高橋正子

幻の福寿草「秩父紅」を訪ねて(2010年 02月 27日) 父からの誘いで埼玉県皆野町のムクゲ自然公園というところに行く。西武秩父駅前で午前10時に待ち合わせ、車で皆野町へ。とはいえムクゲは夏の花なので当然いま咲いているわけがない。今日の目的は「秩父紅」というここだけに咲く幻の福寿草。雨模様だったがしだいに晴れてきた。秩父紅は陽が当たらないと開かないそうだ。母がしきりに「わたしは晴れ女だから」と自慢する。ロウバイが咲いている。マンサクも咲いている。その先の山腹に一万株の秩父紅が植わっている。セイヨウミツバチがちらほら来ていた。半透明のデリケートな花弁と華やかな雄しべ。一般種の福寿草は目の覚めるような強烈イエロー。材木に生えていたきのこ。池で鳴いていたカジカガエル。カジカガエルの卵。公園案内所に戻って甘酒と目薬の木のお茶をごちそうになった。ここでは園内のハーブ園で栽培したハーブや、花の種や鉢植えの販売もしている。母は目薬の木のお茶を、私は古代米をおみやげに買い求めた。(ブログ「いったりきたり日記」より)
 フクジュソウ(福寿草、学名:Adonis ramosa)は、キンポウゲ科の多年草。春を告げる花の代表である。そのため元日草(がんじつそう)の別名を持つ。福寿草という和名もまた新春を祝う意味がある。正月にはヤブコウジなどと寄せ植えにした植木鉢が販売される。花言葉は永久の幸福、思い出、幸福を招く、祝福。

◇生活する花たち「福寿草・菜の花・紅梅」(横浜日吉本町)