3月9日(土)

●河野啓一
庭桃を惜しまず剪りて雛祭り★★★★
庭に桃の花が咲き、喜び、嬉しく思っている。大切な庭の桃の花ではあるが、雛祭りとなれば、惜しまず剪って飾る。雛のため、小さいころの愛嬢のためにでもあろう。(高橋正子)

花菜活け日差し明るき子供部屋★★★
囀りの飛び交う丘を透かし見る★★★

●迫田和代
里の駅一本の道草萌ゆる★★★
一つだけ和紙からはみ出る雛あられ★★★
丘に咲く水仙の香に惹かれ★★★

●小口泰與
大木の根方の雪の解けにけり★★★
まんまるの雪解の根方青き空★★★
榛名富士いただき春の利根河原★★★

●桑本栄太郎
青空のあお極め居り野梅かな★★★
木々の枝と葉の煌けり春日照る★★★
山里も嶺も煙るや黄沙降る★★★

●多田有花
咲き初めし椿に蕾たっぷりと★★★
下萌に防火点検消防士★★★
観梅の人と語りし真昼かな★★★

※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。

3月8日(金)

★海に向き伊豆の椿の紅きなり   正子
伊豆半島は海に向かって開いています。その伊豆に咲く紅き椿は海の広がりと相俟ってきれいなことでしょう。 (高橋秀之)

○今日の俳句
水鳥の羽ばたきの音春空へ/高橋秀之
冬の間も生きいきと暮らしていた水鳥が、北へ帰る日も近いのか、羽を広げ羽ばたきの音をさせる。春空へ向けて力強い羽ばたきである。(高橋正子)

○グランサム椿

[グランサム椿/東大・小石川植物園]
 
  小石川植物園二句
★香港の気風にみちて白椿/高橋正子
★了りつつ蕊の黄ゆたかな白椿/高橋正子

グランサム椿(グランサムツバキ、学名:Camellia granthamiana)はツバキ科ツバキ属の常緑小高木である。原産地は香港の九竜半島である。中国名を「大苞白山茶」という。日本へは昭和時代の中期に渡来した。樹高は3~8メートルくらいである。枝を疎らにつける。葉は楕円形で、互い違いに生える(互生)。葉の縁にはぎざぎざ(鋸歯)がある。葉の質は厚くて光沢があり、葉脈の部分がへこむ。開花時期は11~2月である。花の色は白く、花径が10~15センチくらいあり大輪である。茶(チャ)の花と似た感じで、黄色い雄しべは500本以上ある。花柱(雌しべ)の先は5つに裂ける。花びら(花弁)は7~10枚くらいで、咲き進むと花びらの先は反り返る。1955年に香港で見され、名は当時の香港総督アレキサンダー・グランサム (Alexander Grantham) 総督に由来。

○先月、2月14日の小石川植物園。いろんな万作が咲きみちていた。榛の花も咲いていた。万作の花を見ながら歩くと、榛の木へ至る道すがら、黄色い蕊の大きな白い花が目に入った。深緑の葉が、葉脈の筋が白い花をより魅力的にしている。なんの花だろう。ヨーロッパの花に違いない。近づくと「グランサム椿」と名札がある。決して椿の花の印象ではない。椿のように花が半開きではないのだから。おおらかに堂々と。威風堂々と。2月なのに、もう終わりかけている。そのはずで、花期は11月から2月とのことだから。この日、忽然と目の前に現れたグランサム椿の花に魅了され、一瞬は、「一体私はどこにいるんだろう。」とさえ思った。発見されたのは1955年でまだ新しい。

○昨日、確定申告用の書式を国税庁のホームページからダウンロードして確定申告書を書き上げた。今年は、なんなく書けて、今日郵送した。この書式がダウンロードできるようになって、随分楽になった。所得税の確定申告に必要な書類は何と何であるか、初めに知って、書類ごとに分けて保管していればよいのだが、このことに気付いたのは、電子申告ができるようになってから。それまでは、やたらと神経を使って申告書を書いていた。

○日経のおとなの「OFF」4月号鉄道特集を買ってきてもらった。0系新幹線がひよこのように、かわいらしく、懐かしいこと。東海道新幹線が時速200キロで走ったのは、東京オリンピックの年だったか。あれから40数年、50年近い。

◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)

3月8日(金)

●河野啓一
駅前の大樹もそよぐ春の風★★★★
春の午後図鑑開くや鳥の名を★★★
庭先を孕み雀の歩きゆく★★★

●古田敬二
初黄蝶の踊れば踊るわが心★★★
初黄蝶二人を巡り踊りけり★★★
春風の竹の中から聞こえけり★★★

●小口泰與
白梅のつぼみの数の雫かな★★★
白梅や朝な夕なの風厳し★★★
山風とともに冷気や名草の芽★★★

●下地鉄
梟の声遠きリズムの春霞★★★
蕗の薹汽笛にゆれる浜辺かな★★★
百本の水菜束ねて一握り★★★★
水菜は長く伸びた細い茎をもつ菜である。今は生でサラダにも利用される。百本ほどを束ねて一握りになったが、百本、一握りが一人分であろうか。何気ないようだが、味わいがある。(高橋正子)

●多田有花
妻恋の雉幾たびも鳴きおりぬ★★★
春の陽を返すソーラーパネルかな★★★
尾根をゆく身に吹き来るは春の風★★★

3月7日(木)

●小口泰與
まんさくや鈍色の雲ひろごれり★★★★
寒さの残る、鈍色の雲のひろがり。その下に、まんさくが黄色いリボン状の花びらをくるくる巻くように咲く。味わいのあるコントラストである。(高橋正子)

紺碧の赤城や利根の雪解水★★★
かわたれの瀬音ごうごう雉の声★★★

●多田有花
初蝶や陽に翅広げ止まりおり★★★
地にありて瞬く群青いぬふぐり★★★
ゆったりと山路を歩く暖かし★★★

●桑本栄太郎
ひと時の矜持なりしか野梅咲く★★★
霞立つ輪郭のみやビルの街★★★
光るのものすべて輝き春きざす★★★

●黒谷光子
春耕の土くろぐろと光り合う★★★
窓越しの春光を背に聴講す★★★
我が庭も隣りの庭も黄水仙★★★

●河野啓一
燦然と朝日を反しクロッカス★★★
子ら寄りて春の小川のほとりかな★★★
花芽色刷いて桜樹遠霞★★★

●小西 宏
鶯の初音小さき窪の空★★★
笹薮に何か音するる暖かさ★★★
犬お出かけ春のセーター腰に振り★★★

3月7日(木)

★春の雪解けし水田に水光る   正子
私は山国の棚田を想像した。待ちに待った春の到来だが春の雪が積もった。それでも真冬とは違い解けるのも早い。雪解け水が棚田に広がる。春の光がその水田に跳ね返りきらきらとまばゆく輝く。心躍る春の明るい風景である。 (古田敬二)

○今日の俳句
菜花摘む昼餉のパスタに足るほどに/古田 敬二
一人か二人の昼餉であろう。少しあれば足りる菜花である。茹でられて色鮮やかな菜花は春の彩りとして楽しめる。「足るほど」の慎ましさがいい。(高橋正子)

○白藪椿

[白藪椿/東大・小石川植物園]

★白椿昨日の旅の遥かなる/中村汀女
★咲き出でて汝こそ真処女白椿/林翔
★白藪椿空の高さに花の白/高橋正子
★藪椿も白藪椿も大樹なり/高橋正子

白藪椿(シロヤブツバキ、学名:Camellia japonica form. leucantha)は、ツバキ科ツバキ属の常緑高木である。分類上は藪椿(ヤブツバキ)の型の1つとされている。本州から九州にかけて分布し、山地に生える。樹高は5~10メートルくらいである。樹皮は灰白色を帯びる。葉は細長い楕円形で、互い違いに生える(互生)。葉の先は尖り縁には細かいぎざぎざ(鋸歯)がある。葉の質は硬く、表面は濃い緑色で艶がある。開花時期は2~4月くらいである。花の色は白く、花弁は5枚である。平開はせずに半開きのものも多い。

○小石川植物園/2008年4月19日のオフ句会報より
 今回の吟行地は、文京区白山にある「小石川植物園(東京大学大学院理学系研究科附属植物園)」です。6万平米もの広大な土地に、桜の広場、薬草園、広葉樹の森、針葉樹の森、日本庭園などがあり、傾斜地、泉水地などの地形が自然のままに、活かされています。そして、学術的にも由緒ある植物や養生所時代の井戸などの遺構が残されており、日本最古の植物園としての趣も豊かです。
 前日は強い雨で、今朝もやや冷たく強い風が残っていましたが、園内は、葉桜のなかを散り抜ける残花、ちょうど満開の八重桜、タンポポやすみれなどなど、四月らしい華やかな色彩に溢れていました。散策にはたっぷり2時間はかかろうかという広さ。脇道に入ると山を行くような奥深さがあり、都会の真中にいるのを忘れてしまうほどです。思い思いに吟行を楽しんだのち、11時前には正門に集まり、七句投句をしていただきました。今回は、宇都宮の笠間淳子さんと、大阪からは高橋秀之さんがご参加くださいましたので、11名のにぎやかな句会となりました。ご体調のすぐれないところをご主人様とおいで下さった大給圭泉さんは、ご投句と写真撮影までをご参加くださいました。
 句会場は、信之先生が見つけて下さった茗荷谷駅前のイタリア料理店「ラ・クローチェ」で、カジュアルな雰囲気とおいしいお料理が魅力的なお店です。みのるさんのご発声で乾杯のあと、量り売りのワインを楽しみながら大いに盛り上がりました。お食事と会話の合間にそれぞれ選句をし、正子先生の選の発表がありました。その後、すぐ近くの「ジョナサン」に場所を移し、臼井愛代さんにより、それぞれの選が発表され、各句に先生やみなさんからのコメントが寄せられました。3時半ごろ散会。茗荷谷の駅よりそれぞれ家路につきました。
★どの藤も花咲きはじむ時が来る/信之
★たんぽぽの草の平らに散らばりぬ/正子

○小石川植物園/2008年5月5日の日記より
 全国こども俳句協会の設立総会が、江東区の芭蕉記念館で9時半より行われ、設立総会小石川植物園を吟行。藤の花は大方終わり。ハンカチの木の花(苞)が、散り始めていた。散るさまは、空からハンカチが振られて落ちてくるよう。一枚ひろってみると、やわらかな白い葉っぱのような苞である。そばにガク空木の白い花が満開。むんむんとした匂いを放つ。ジャーマンアイリスの豊満な花がよく咲いている。日本庭園は黄菖蒲が花時。ニワトコの花は終わり、青いちいさな実がついていた。
 植物園の入園券を売るお店で、山と渓谷社のはっぱの本を買う。お店と言っても品物はほとんどないので、袋にはいった人形焼を申し訳に買って、はっぱの本に添えて、秀之さんにお子さんへのお土産にしてもらった。
 追記:句会でニュートンの林檎の詠んだ句があり、話がそれに及ぶ。何故ニュートンの林檎の木が小石川植物園にあるのかと。答え「それは、植物園が東大のものだからですよ。元の木は枯れて、その子孫がこの植物園にあるわけですよ。買ったんだよ。」ちなみに、ハンカチの木は中国からの贈り物。
★ハンカチの花の降り来る立夏の空
★銀杏大樹青葉の青という力
★盛り上がる新緑空へまでゆかず

○小石川植物園/高橋正子の俳句日記より
先日2月14日に小石川植物園に行った。園内を巡り、売店で柚子茶を飲んでもう帰ろうかと思ったところ植物園で作業をしている男性に出会って立ち話を少々した。一旦別れ、歩いているとまた出会って「下にユキワリイチゲの蕾がちょうど出たところだよ。神社の下の小さい池がある辺り。」と東北訛りで教えてくれた。神社は太郎神社、小さな沼池は榛の木が生えているところと見当がついた。危うく見逃すところだったが、言われた所に行くと、榛の木の生えている少し上に名札が立ててあるのに気付いた。近づくと、紫がかった三つ葉の葉に似た叢に小さな白い蕾が見える。名札がなければ、発見は難しいところだった。一輪だけが咲きかけていた。白い小さな蕾が葉に浮くように、どれも向こうを向くか横向きであった。沼に足を滑らせないように気をつけて、写真を撮った。
★雪割一華へ浅春の陽が燦々と/高橋信之
★榛の木の根方一華の蕾みたり/高橋正子

▼小石川植物園
http://www.bg.s.u-tokyo.ac.jp/koishikawa/

◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

3月6日(水)


●小口泰與
朝の陽の雲に映えけり梅の花★★★
木の間より日矢いつぱいのクロッカス★★★
夕映えや朱の交じりいる猫柳★★★

●小川和子
畦を占む草あおあおと紫雲英咲く★★★
三月の息吹みなぎる桜の枝★★★
毛氈に座し紅梅を振り仰ぐ★★★

●多田有花
啓蟄の山一息に巡りけり★★★
豪快に地球の上でぶらんこを★★★
ラジコンカー春の広場を旋回す★★★

●下地鉄 
リハビリに一念発起龍の玉★★★
わが影にくつろぐ今日の春日かな★★★★
「わが影にくつろぐ」が楽しい。わが影の映る春の日は、ほんとうにのどかな気持ちになる。(高橋正子)

潮風にうたれてつよし芝桜 ★★★

●河野啓一
啓蟄を過ぎてようやく街に出る★★★
杖つきて吾も出たきや虫のごと★★★
紅梅の満開なるを知らざりし★★★

●桑本栄太郎
春塵のままに市バスの車窓かな★★★
古家と云えど風情や梅屋敷★★★
春日さすバスの車窓の空の青★★★

3月6日(水)

★枯れしもの沈め春水透き通る   正子
春は降雨が多くなり、河川も水かさを増し、それが冬の間に枯葉を沈めたせせらぎを流れ、その上に明るい日差しが照ると、冬涸れの後だけに、豊かに勢いづく感じがすます。 (小口 泰與)

○今日の俳句
まんさくや浅間南面斑なり/小口 泰與
浅間山の南面は雪が解け始めたところもあるのだろう、斑になっている。その山を背景に春を先駆けるまんさくが咲いている。色彩的にも美しい早春の景色である。(高橋正子)

○椿

[椿/横浜日吉本町]

★赤門を入れば椿の林かな/正岡子規
★飯食へばまぶたに重き椿かな/夏目漱石
★十本に十色の椿わが狭庭/稲畑汀子
★咲き出でて汝こそ真処女白椿/林翔
★虚子の忌の風たをやかな椿山/皆川盤水
★侘助や波郷破顔の大写真/水原春郎
★またひとつ鉦に落ちけり藪椿/言水
★一日を陽を見ぬ谷戸の藪椿 鈴木卓
★藪椿かがやく電車停まるたび/小島みつ代
★城垣の石の番号藪椿/大塚禎子
★侘助や茶釜に湯気の立っており/多田有花
★慎ましき白き椿の初あらし/高橋信之

★侘助へ寺の障子の真白かり/高橋正子
★日表も葉影も侘助うす紅/高橋正子
★庭の樹の間に咲けり初あらし/高橋正子

 ツバキ(椿)は、ツバキ科ツバキ属の植物、学名Camellia japonicaであり、日本原産の常緑樹。野生種の標準和名はヤブツバキ。国内外でヤブツバキや近縁のユキツバキから作り出された数々の園芸品種、ワビスケ、中国・ベトナム産の原種や園芸品種などを総称的に「椿」と呼ぶが、同じツバキ属であってもサザンカを椿と呼ぶことはあまりない。照葉樹林の代表的な樹木。花期は冬から春にかけてにまたがり、早咲きのものは冬さなかに咲く。「花椿」は春の季語であるが、「寒椿」「冬椿」は冬の季語。海柘榴とも表記する。花が美しく利用価値も高いので万葉集の頃からよく知られたが、特に近世に茶花として好まれ多くの園芸品種が作られた。美術や音楽の作品にもしばしば取り上げられている。
 日本のツバキはヤブツバキ、ユキツバキ、ワビスケ。
ヤブツバキ(原種)は、南西諸島から青森県夏泊半島まで分布している。これはツバキ属の自生地の北限である。西日本にはほぼ全域に分布しているが、東日本では温暖な地域に自生している。
 ユキツバキ(雪椿)は、花糸が黄色 ユキツバキの学名はCamellia rusticana (シノニム:Camellia japonica var. decumbens/Camellia japonica subsp. rusticana)。上記のヤブツバキとは別種、またはヤブツバキの豪雪地帯適応型変種、あるいは亜種という見解があり、ヤブツバキに比べ、枝がしなやか、花弁が水平に開く、等の特徴がある。花の変異が多く八重咲きの品種改良に大きく貢献した。別名サルイワツバキ。ヤブツバキとの交雑系統を「ユキバタツバキ」と呼ぶ。
 ワビスケ(侘助)は、中国産種に由来すると推測される「太郎冠者(たろうかじゃ)」という品種から派生したもの。「太郎冠者」(およびワビスケの複数の品種)では子房に毛があり、これは中国産種から受け継いだ形質と推測される。一般のツバキに比べて花は小型で、猪口咲きになるものが多い。葯が退化変形して花粉を生ぜず、また結実しにくい。なおヤブツバキの系統にも葯が退化変形して花粉を付けないものがあるが、これらは侘芯(わびしん)ツバキとしてワビスケとは区別される。 花色は紅色~濃桃色~淡桃色(およびそれらにウイルス性の白斑が入ったもの)が主であり、ほかの日本のツバキには見られないやや紫がかった色調を呈するものも多い。少数ながら白花や絞り、紅地に白覆輪の品種(湊晨侘助)などもある。 名前の由来としては諸説あり、豊臣秀吉朝鮮出兵の折、持ち帰ってきた人物の名であるとした説。茶人・千利休の下僕で、この花を育てた人の名とする説。「侘数奇(わびすき)」に由来するという説。茶人・笠原侘助が好んだことに由来する説などがある。

◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)

3月5日(火)

★身を固く春雪吹くを帰り来る   正子
一度暖かくなってから寒の戻りによる、春の雪は殊更寒く感じます。ましてや吹雪ともなれば、尚更です。戻り寒の身に沁みる情景が「身を固く」との措辞により、巧みに表現され大変共感致します。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
春潮や水面輝きふくらみぬ/桑本 栄太郎
瀬戸内海の春潮は、水面がゆったりと膨らんで寄せてくる感じがするのは事実。このやわらかな膨らみに日の輝きが加わると「春潮」も実にゆたかな潮となる。(高橋正子)

○ノースポール

[ノースポール/横浜日吉本町]

★ノースポールの真白き花に四月来ぬ/高橋正子

 ノースポール(North Pole、学名:Leucsnthrmum paludosum Syn. Chrysanthemum paludosum)は、キク科 フランスギク属の半耐寒性多年草である。しかし、高温多湿に極端に弱いため、国内では一年草として扱われている。「ノースポール」はサカタのタネの商品名であるが、種苗登録などはされていないため、一般名として定着している。旧学名またはシノニムの「クリサンセマム・パルドーサム」と表記されることもある。12月から翌6月にかけ、白い花を咲かせる。名の由来は、花付がよく株全体を真っ白に覆うように見えるところが北極を連想させることによる。
 原産地はアフリカのアルジェリア周辺ないしはヨーロッパ。地中海沿岸に広く分布している。日本へは1960年代に入って輸入された。 草丈は15cm-25cmほど。まだ寒い12月ごろから初夏までの長期間、マーガレットによく似た白い花を付け、矮性でよく分枝し、芯の管状花は黄色。今日では冬のガーデニングにはなくてはならない存在にまでなった。
比較的強健で、こぼれ種でもよく増え、雑草混じりの場所などでもよく育つ。しかし、市販品のタネから育てるときは、タネの数が少ないので、浅鉢にまき、覆土しないか、タネが隠れる程度に覆土して、鉢底から吸水させる方がよい。蒔き時は東京付近で9月中旬から10月上旬、日のよく当たる場所を好み、乾き気味に管理する。過湿は根腐れの原因となる。日本では6月頃までよく咲くが、暑くなると急速に枯れてしまう。
 パンジーやヴィオラなどとともに、春先から初夏までの庭を彩る主役をつとめる。とくに、性質のよく似た植物で黄花のクリサンセマム・ムルチコーレと一緒に植えると、コントラストが美しい。(Wikipedia より)

○「金蔵寺の裏山に咲きかけていたのだが、ヒアシンスだろうが、それにしては咲くのがちょっと早いが、この写真を見てくれ。」を信之先生に言われた。炊事の途中なので話だけ聞いて、「それはヒアシンスです。裏山の階段の始まるところでしょう。」と自信をもって答えた。濡れた手を拭いて写真を見ると、確かに開きかけたヒアシンス。四国から横浜に引っ越して6年半。普段歩いているところの植物は、ほぼ頭に入った。このヒアシンスある場所も覚えている。そのほかにも、ゆきのしたのある場所、木苺のある場所、ミモザのある家、辛夷の大きな木がある家なども頭に入っている。引っ越した当初は、こういった植物が記憶に、あるいは心にないので、毎日の暮らしが心もとない感じであった。子ども時代に野山や近所を駆けまわって遊んだときも、花や木の実のあるところをいつの間にか覚えていた。故郷の景色はそのようにして形成された。6年半の間にようやく今住むところの景色が心に形成されようとしている。近所を随分歩き回ったので。

◇生活する花たち「紅梅・赤花満作・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)

3月5日(火)

●小口泰與
目配せで枝のうぐいす知らせけり★★
春浅しビルの狭間の風迅し★★★
つんつんと土を割りをるチューリップ★★★

●河野啓一
孫娘顔見せるとや春うらら★★★
麗らかに鳥声を聞く散歩道★★★
豊漁の船帰り来る春の海★★★

●小川和子
靴裏に下萌の岸やわらかし★★★
河面射す日の眩しさよ春の岸★★★

春耕のまだ始まらぬ田の広き★★★★
裏作やあるいは冬の間手入れをしないでいた田畑は、だだっ広く思える。しかし、耕しが始まるころになると、田畑も息づいてくる。その広さを感じとったのがよい。

●佃 康水
母と子の手波を添えて雛流す★★★
切り鋏音を弾ませ菰外し★★★
啓蟄や錆付く鋏磨き込む★★★

●桑本栄太郎
朝日さす在所の嶺の霞みけり★★★
さくさくと終えて家路や納税期★★★
お~い雲よ吾も連れゆけ春きざす★★★★

●黒谷光子
啓蟄の菰巻解かる城の松★★★
菰巻を解かれ蘇鉄の奔放に★★★
プリムラの鉢届けらる誕生日★★★

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3月4日(月)


★花菜の束一つが開き売られたり   正子
売られている花菜はふっくらとした蕾なのでしょう。その中の一つは開いている、さ緑の豊かな葉の中に淡い黄の菜の花の蕾と花、いろいろな花の中でも一番に自然の春を感じられたことと思います。(黒谷光子)

○今日の俳句
春の川村の真中を光りつつ/黒谷 光子
のどかなで平和な村。村の真ん中を緩やかに光りながら流れる春の川は、皆の生活の中に愛される川。「村の真中」であるのがいい。(高橋正子)

○木瓜の花

[木瓜の花蕾/横浜日吉本町(2013年2月13日)]_[木瓜の花/横浜日吉本町(2011年3月27日)]

★初旅や木瓜もうれしき物の数 子規
★黄いろなる真赤なるこの木瓜の雨 虚子
★岨道を牛の高荷や木瓜の花 鬼城
★一と叢の木瓜さきいでし葎かな 蛇笏
★花ふゝむ木瓜にひかりて雨ほそし 悌二郎
★日のぬくみ吸うて真つ赤に木瓜の花 淡路女
★木瓜の朱いづこにかあり書を読む 青邨
★浮雲の影あまた過ぎ木瓜ひらく 秋櫻子
★つれづれに夕餉待たるる木瓜の花 草城
★木瓜紅く田舎の午後のつづくなる 多佳子
★木瓜咲くや漱石拙を守るべく/夏目漱石
★草木瓜に日はあたたかし道の縁/高橋正子

 中国原産の落葉低木。日本には江戸中期に渡来したといわれる。平安時代の説も。四月ごろ葉に先だって花を開く。深紅色のものを緋木瓜、白色のものを白木瓜、紅白雑色のものを更紗木瓜という。実は薬用。実が瓜に似ており、木になる瓜で「木瓜(もけ)」とよばれたものが「ぼけ」に転訛(てんか)したとも、「木瓜(ぼっくわ)」から「ぼけ」に転訛したも言われる。
 木瓜は、棘がある。四国砥部の我が家の門扉近くには緋木瓜が植わっていた。その隣に蝋梅、その隣に白山吹、白椿と並んでアプローチを飾っていた。日当たりがよかったので、正月ころからぼつぼつ咲き始めた。子供のころは、紅白がまだらになった更紗木瓜と緋色より薄い紅色の木瓜をよく見た。更紗木瓜については、なんでこのような色具合にといつも思っていたが、そういう咲き方するもののようだ。今はどうか知らないが、春先の花展で、さんしゅゆ、万作の花と並んでよく使われた。秋にひょっこり花梨を少し小さくした、枝に似あわず大きな実がついていることがあった。花梨もバラ科なので樹高は違うが木瓜と似たところがある。

○きのうは雛祭だが、わが家は四国から引っ越して来てからもずっと月遅れで雛を飾っている。本当に桃の花が咲くときに雛を飾る予定。でも、夕餉はちらしずしと菜の花のお吸い物。夕飯を済ませてから、日吉の東急や商店街に買い物に。花冠発送用の封筒、ロルバーンの手帖を文具店で、東急の中の美容室で髪を切る。美容室の待ち時間に「入門 近代日本の思想史」(田恂子著)を立ち読み。解りやすくて面白いので、買うことにした。文庫本ながら1400円。高いがしかたあるまい。このごろは、この手の本は女性の書いたものが、丁寧でわかりやすい。髪を買った後、林フルーツで雛祭のフルーツケーキを買う。8時近いので割引となって4個で1145円。

◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)