4月27日

●小口泰與
山風の鶏も飛ばすや春炬燵★★★
初雷に耳を峙つチワワかな★★★
火の山の雪解まだらや桜散る★★★

●河野啓一
街の風歩道に沿うて山法師★★★
介護士のシャツひらひらと夏近し★★★
山裾を抜け行く箕面の若葉風★★★

●黒谷光子
石楠花に牡丹に明るき寺の庭★★★
石楠花の満開に虻飛び交える★★★
牡丹の蕾もあしらい供花とする★★★
供花の花はこの季節たくさんあるけれど、それらの花に混ぜて牡丹の蕾を一つ添える。咲いた牡丹ではなく、「蕾」というのが供花に相応しく、ほかの花をも活かした優しい心遣い。(高橋正子)

●桑本栄太郎
葉桜の木陰うれしき散歩かな★★★
近づけば数多飛び込む蝌蚪の紐★★★
たんぽぽの花の石垣埋めにけり★★★

●古田敬二
蓬摘む指先ふるさと香りけり★★★
鶯の鳴きけり矢作の川向う★★★
いたどりの矢作の川へかたぶきぬ★★★

●高橋秀之
軒先に手のひらサイズのこいのぼり★★★
雲ひとつなき空青く夏近し★★★
春風に草木が揺れて影も揺れ★★★

4月27日(土)

★囀りに子の片言の鳥を呼び  正子
春の喜びの様々な姿の中にも、小鳥たちの囀りの声はとりわけ明るい色を添えてくれます。その声の来る方を必死に探し、天真爛漫に片言で呼びかける幼子の表情は微笑ましい限りです。お子さんの成長のお姿と春到来の輝きが合わせ表現されており、読者の心も豊かに温もります。(小西 宏)

○今日の俳句
蒲公英の花せめぎあい光りあい/小西 宏
蒲公英が明るい日差しの中に、びっしりの咲いている様子。一つ一つの花は可憐でありながら、せめぎあうほどの花の力。せめぐだけでなく、また、互いに光りあっている。確かな目である。(高橋正子)

○新緑

[新緑/東京日本橋・日本橋川、日本橋、首都高速、三越本店(水上バス船上より)] 

★新緑の丘越え白き道一筋/桂信子
★新緑や湖沼三百抱く原/水原春郎
★新緑や階を明るく地下茶房/鷹羽狩行
★新緑を来て教会に突きあたる/小澤克己
★新緑やうつくしかりしひとの老/日野草城
★新緑や濯ぐばかりに肘若し/森 澄雄
★新緑やまなこつむれば紫に/片山由美子
★新緑やたましひぬれて魚あさる/渡辺水巴
★子の皿に塩ふる音もみどりの夜/飯田龍太

新緑(しんりょく)とは、春から初夏にかけて、冬枯れの木々が芽吹き鮮やかな緑色になる現象。木の種類や場所、地域によって異なるが、日本では主に毎年3月から6月にかけて起こる。また、常緑樹でも新緑はあり、落葉樹のそれより約1ヶ月遅く迎える。例えば、お茶の葉は5月あたりに出る新芽が原料である。また紅葉と違い、その年の気候に関係なく素晴らしさが味わえる。

○生活する花たち
「卯の花・おだまき・スカイツリー」(東京浅草・隅田川水上バス乗り場近辺)

4月26日(金)

★明け初めし空の丸さよ柿若葉  正子
だんだんと明るくなり始めた夜明けの空、まろやかに澄んだ空気に包まれて、萌え出た柿の新葉がいっそう柔らかにみずみずしく感じます。やがて訪れる若葉の輝く明るい季節が思われます。(藤田洋子)

○今日の俳句
春光につつまれし身のときめきよ/藤田洋子
この句を読むと、もの静かで明るい若い母親の姿が浮かぶ。うす紫の丸いヨークのセーターが、春光の中で、肩までの黒髪に映えていた。(高橋正子)

○石楠花(しゃくなげ)

[石楠花/横浜日吉本町・金蔵寺]      [石楠花/横浜箕輪町・大聖院]

★石楠花や朝の大気は高嶺より/渡辺水巴
★空の深ささびし石楠花咲きそめぬ/角川源義
★石南花や水櫛あてて髪しなふ/野沢節子
★ほぐれんとして石南花の大蕾/岡田日郎
★石楠花の頃は過ぎたり咲き残り/清崎敏郎
★石楠花の色濃くなりぬ朝の雨/緒方 輝

 シャクナゲ (石楠花、石南花) は、ツツジ科ツツジ属 (Rhododendron) 無鱗片シャクナゲ亜属、無鱗片シャクナゲ節の総称である。主に低木だが、高木になるものもある。また、日本ではその多くのものがツツジと称される有鱗片シャクナゲ亜属のものを欧米では Rhododendron と呼んでいるので注意が必要である。ただし、有鱗片シャクナゲのなかでも、ビレア(マレーシアシャクナゲ)の仲間は、カワカミシャクナゲのように、日本でもシャクナゲと呼んでいる。
 Rhododendron としては主として北半球の亜寒帯から熱帯山地までのきわめて広い範囲に分布し、南限は赤道を越えて南半球のニューギニア・オーストラリアに達する。特にヒマラヤ周辺には非常に多くの種が分布する。いずれも派手で大きな花に特徴がある。花の色は白あるいは赤系統が多いが、黄色の場合もある。
 シャクナゲは葉にロードトキシンことグラヤノトキシンなどのケイレン毒を含む有毒植物である。摂取すると吐き気や下痢、呼吸困難を引き起こすことがある。葉に利尿・強壮の効果があるとして茶の代わりに飲む習慣を持つ人が多く存在するが、これはシャクナゲに「石南花」という字が当てられているため、これを漢方薬の「石南(オオカナメモチ)」と同一のもの(この2つに関連性はない)と勘違いしたためであり、シャクナゲにこのような薬効は存在しない。シャクナゲは常緑広葉樹にもかかわらず寒冷地にまで分布している。寒冷地に分布する種類のなかには、葉の裏側を中にした筒状にして越冬するハクサンシャクナゲなどがある。日本にも数多くの種類のシャクナゲが自生しているが、その多くは変種であり、種のレベルでは4種または6種に集約される。このほか、園芸用品種として数多くの外国産のシャクナゲが日本に導入されており、各地で植栽されている。

○生活する花たち「都忘れ・おだまき・卯の花」(東京浅草)

4月26日(金)

●小口泰與
通り雨楓の花に朝日かな★★★
フロントのガラスを占むる落花かな★★★
たんぽぽや窓明け放す丸太小屋★★★★
丸太小屋は草原にあるのか。窓を開け放すと地に低く咲くたんぽぽが見える。アメリカの草原を思わせるような光景だが、日本にもあるのだろう。(高橋正子)

●河野啓一
鶯の声絶え間なし明日香村★★★
斑鳩に遠き鐘の音春は行く★★★
鯉のぼり風呑みこんで宙に浮く★★★

●迫田和代
朝日浴び周りを明るく白躑躅★★★
葉桜を川面に浮かべゆったりと★★★
夏近し木陰の口笛冴えた音(ね)を★★★★
木陰で口笛を吹く人がいる。きれいな冴えた口笛の音色に、木陰がすずやかだ。夏も近い。(高橋正子)

●佃 康水 
 ひろしま菓子博2013
菓子博の途切れぬ列へ若葉萌ゆ★★★
川風へ応へ名残りの花揺れる★★★ 
牡丹の崩れ一ひら書に挿む★★★  

●黒谷光子
佛器みな光らせ迎う法然忌★★★
八朔も餅も供物に御忌法要★★★
三幅の絵伝を掛けて法然忌★★★

●多田有花
沖は晴れ頂過ぎる春時雨★★★
チューリップ数多の風姿を見せて咲き★★★
春の森万の色して風に揺れ★★★

●桑本栄太郎
園児等のつなぐ手つづき野遊びへ★★★★
園児たちが手をつないで、次に来る園児も手をつないで、みんなで野原へ遊びにゆく。可愛らしく、のどかな光景。(高橋正子)

甘き香の青空見上げ藤の棚★★★
吹き抜ける風に羽音や虻の昼★★★

●小西 宏
スカイツリーの脚線うらら川下り★★★
燕交う夕暮の空四分して★★★
肩寄せて苺つぶして語りし夜★★★★

●川名ますみ
初蝶の横切るを待ち発車せむ★★★
水木咲くほどに水面へ枝近し★★★
春風や髪に挿さりし花の蘂★★★

4月25日(木)

 小石川植物園
★たんぽぽの草の平らに散らばりぬ  正子
草萌え、草青むころは未だ寒さが残って居り、たんぽぽは高く抜きん出て咲いているのでは無く、地へ這う様にして低く咲いています。恰も野に散らばっているかの様に見え、緑と黄のコントラストが美しく活き活きとそして広々とした野の情景が目に浮びます。(佃 康水)

○今日の俳句
初蝶の野川越えしを見とどけり/佃 康水
初蝶を見たうれしさ。初蝶の危うそうな飛び方に、野川を越えてゆくまでを見届けるやさしさがこの句にはある。(高橋正子)

○木香薔薇(もっこうばら)

[もっこうばら/横浜日吉本町]

★夕風や白薔薇の花皆動く/正岡子規
★薔薇深く ぴあの聞ゆる 薄月夜/正岡子規
★朝晴れて木香薔薇に滴あり/819maker
★木香バラ気高く庭を囲いをり/819maker
★黄モッコウお印の所以悟りけり/光賢
★近づいて 木香薔薇の 薫り嗅ぐ/isamu
★棘なしの蔓薔薇咲いて溢るる日/ROSE・MARRY
★手折りしは刺なき薔薇の黄木香/senior21

 モッコウバラ(木香茨、木香薔薇、学名:Rosa banksiae)は、中国原産のバラ。黄モッコウ(ロサ・バンクシア・ルテア)は秋篠宮家第一女子・眞子内親王のお印である。
学名は植物学者ジョゼフ・バンクスの夫人にちなむ(命名はウィリアム・エイトン)。
 常緑つる性低木。枝には棘がないため扱いやすい。花は白か淡い黄色で、それぞれ一重咲と八重咲があり、直径2-3cmの小さな花を咲かせる。開花期は初夏で一期性。黄花の一重や白花には芳香はある。一般的にモッコウバラといった場合には、黄色の八重咲を指す。性質は強健で、病気も普通のバラと比べると少ない。成長も早く、けっこう大きくなるので地植えにはそれなりのスペースが必要とされる。野生種の起源は不明である。ノイバラの台木に接ぎ木してもよいが、挿し芽でも簡単に増やすことができる。花芽の形成時期が8月末までに行われるため、それ以降に剪定をすると、翌年の開花数が少なくなってしまう。基本的には剪定はしない。行灯仕立てで販売されることがあるが、上述のように成長は極めて速く大きくなるので栽培は難しい。また、白花は黄花より開花が若干遅く、芳香性を持ってはいるが黄花ほど多花性は無い、成長も黄花に比べるとやや遅い。
 庭園などで、アーチやフェンスなどに用いる。生育が早く、大量に花をつけるため、大きなモッコウバラの開花時は圧巻である。バラの短所である棘がなく、病気、害虫にも強くバラとして理想的な性質を持っているが、一方、一期咲であること、黄花の八重咲に芳香がないこと、白と黄色しか花色がない事などの短所もある。

◇生活する花たち「藤①・藤②・石楠花」(横浜箕輪町・大聖院)

4月25日(木)

●小口泰與
うぐいすや桃源郷の朝ぼらけ★★★
連翹の花に雨粒ひとならび★★★
嬬恋の星あふれけり犬ふぐり★★★

●古田敬二
枝先へ来て尺取りの道迷う★★★
夕陽射すやまぶき色を増しにけり★★★
夕陽射す青梅枝に太りだす★★★

●河野啓一
朝の陽を透かし銀杏の浅みどり★★★★
草若葉きらりと光る虹の球★★★
蔦若葉浜風受けて伸びしかな★★★

●桑本栄太郎
饒舌と云うこと莫れ揚ひばり★★★
大橋のさみどり透きし春灯かな★★★
陸橋の人の行き交い春ともし★★★

●多田有花
八重桜散るやや日輪の暑き中★★★
花水木咲き初む街路の明るさに★★★
湯に放つ南部若布の緑かな★★★

●小川和子
花冷えや車両軋ませ電車着く★★★
夕永し「正常値です」と医師の声★★★
夕さりの月影淡し春の月★★★

●下地鉄
白々と夜の明け染むる夏は来ぬ★★★
ゆったりと消えて又現る卯波かな★★★
卯波現れサーファー握る拳かな★★★★
卯波が寄せて来て、波に乗る絶好のチャンス。拳を握り、波に乗り出す瞬間の闘志。力強い若さだ。(高橋正子)

●黒谷光子
つややかに葉を反らしつつ射干の花★★★★
裏庭は人目も付かず射干の花★★★
うす雲の退くを待ちおり春の月★★

●藤田洋子
真っ直ぐな銀杏並木のみな若葉★★★★
真っ直ぐな銀杏並木の整然とした若葉に、気持ちが爽やかになる。「真っ直ぐな」に読み手の背筋も伸びる思いだ。整然としたなかにも「みな」という柔らかな音の語があって、若葉の柔らかさを感じさせてくれる。(高橋正子)

街筋に銀杏若葉の風溢る★★★
若葉して銀杏並木の高々と★★★

●小西 宏
 深川芭蕉記念館近く、川舟番所跡
葉桜に潮の香ながる小名木川★★★
 清洲橋の眺め
春風のケルンにも似て隅田川★★★
 隅田川船上にて
春行くや鴎は澪に身を任せ★★★

4月24日(水)

 小石川植物園
★やわらかに足裏に踏んで桜蘂  正子
地面に降り敷いている桜蘂を踏むとふんわりとした絨毯のような感触が足裏につたわります。なんとなくうれしくなるひとときです。(井上治代)

○今日の俳句
チューリップ一万本の赤うれし/井上治代
一万本の赤いチューリップに、思わず微笑みと嬉しさがこみ上げてくる。チュ-リップと言えば、まずは赤、その可愛らしさ、あどけなさを素直に受け止めているのがよい。(高橋正子)

○花水木

[花水木/横浜日吉本町(左:2010年4月27日・右:2012年4月29日)] 

★一つづつ花の夜明けの花みづき/加藤楸邨
★アパートは新装アメリカ花水木/林翔
★松屋通りアメリカ花水木の盛り/宮津昭彦
★花水木街へ海光真直に/有馬朗人
★三郎の忌日埋めゐし花水木/高島茂
★女子寮に皿洗ふ音花水木/皆川盤水
★花水木手を空へ向け深呼吸/中村忠男
★独り居に慣れて明るき花水木/広木婦美
★定年はやがてくるもの花みづき/日下部宵三
★待ち合わす銀座の角の花水木/高橋正子

 ハナミズキ(花水木、学名:Benthamidia florida)はミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木。北アメリカ原産。別名、アメリカヤマボウシ。ハナミズキの名はミズキの仲間で花が目立つことに由来する。また、アメリカヤマボウシの名はアメリカ原産で日本の近縁種のヤマボウシに似ていることから。
 ミズキ科の落葉小高木。樹皮は灰黒色で、葉は楕円形となっている。北アメリカ原産。花期は4月下旬から5月上旬で白や薄いピンクの花をつける。秋につける果実は複合果で赤い。庭木のほか街路樹として利用される。栽培する際には、うどんこ病などに注意する。またアメリカシロヒトリの食害にも遭いやすい。
 日本における植栽は、1912年に当時の東京市長であった尾崎行雄が、アメリカワシントンD.C.へ桜(ソメイヨシノ)を贈った際、1915年にその返礼として贈られたのが始まり。この話は、1981年海底版の日本の中学生向け教科書「NEW PRINCE」中3版でもエピソード的に取り上げられた。なお、2012年に桜の寄贈100周年を記念して、再びハナミズキを日本に送る計画が持ち上がっている。
 ハナミズキの深刻な病害であるハナミズキ炭疽病の感染地域では、感染によってハナミズキの街路樹が枯死すると、ハナミズキ炭疽病に抵抗性があるヤマボウシまたはハナミズキのヤマボウシ交配品種に植え替える病害対策が行われることがある。

◇生活する花たち「いちはつ・藤・梨の花」(横浜市緑区北八朔町)

4月24日(水)

●小口泰與
外つ国の人も交りて花莚★★★
雪解けの山襞迫り指呼の間に★★★★
竹秋や利根の流れの滔々と★★★

●黒谷光子
山門へ溢るる馬酔木見上げつつ★★★
九体佛御座す明るき春障子★★★★
傍らに木椅子おかれて藤の花★★★

●小西 宏
我が家にも蜜蜂の来て躑躅突く★★★
景借りし隣家の庭に春惜しむ★★★
花韮の薄き青ゆれ夏近し★★★★
韮の花は、白く初秋に咲くが、花韮は韮に似た葉ではあるが、花は星型をして春に咲く。白い花もあれば、薄い青色の花もある。花韮が咲き満ち、風に揺れると夏も近いと感じる。光と風はもう夏めいているのだ。(高橋正子)

●河野啓一
樟若葉見上げて高きうす茜★★★
送迎車緑の雨の中を行く★★★
青竹に鯉泳がせし頃のこと★★★

●多田有花
噴水がとどく青空夏近し★★★
鍋で炊く春筍のご飯かな★★★
春荒の部屋で読みつぐ探検記★★★

●桑本栄太郎
さえずりの北京語めける梢かな★★★
饒舌は吾の十八番よ揚ひばり★★★
夕暮れの赤の哀しきすいばの穂★★★

●下地鉄
微かなる泰山木の花落ちて★★★
風吹けば花のかおりの泰山木★★★
卯波はや遠くに海の蒼さかな★★★

4月23日(火)

 隅田川
★都鳥春の空より羽音させ  正子
この「都鳥」はユリカモメのことですね? 東京湾にはミヤコドリも冬鳥としてって来るそうですので。ユリカモメであれば、四月ごろは夏羽に入れ替わる時期で、頭が黒くなり始めているころでしょう。換羽し始めたユリカモメの羽音に夏の接近を感じておられます。(多田有花)

○今日の俳句
春光や今日一片の雲もなし/多田有花
あまねく春光が差す「今日」。空には一片の雲もない。「今日」という日のうららかな春の日を詠んで、古いようだが、新しい感覚。(高橋正子)

○黄菖蒲

[黄水仙/横浜市都筑区・北山田公園(左:2012年5月5日・右:2012年5月1日)]

★片隅に菖蒲花咲く門田哉/正岡子規
★花菖蒲夕べの川のにごりけり/桂信子
★かへり来し命虔しめ白菖蒲/石田波郷
★黄菖蒲の 黄も生き生きと 川の原/遊雀
★黄菖蒲や小川の道を辿りきて/819maker

 黄菖蒲は日本のものかと思っていたが、帰化植物ということだ。生まれたときから、生家の裏の小さい池に黄菖蒲が咲いた。生家は明治時代に建て替えられて、裏庭の西に榎があり、その下に池があった。榎は大きくなりすぎたのであろう、枝や幹は大きく切られていたので、日は差し込んでいた。池の水が淀みがちで湿気が上がるので、かなり前に埋められ、榎も切り倒されている。子どものころは、雨の日などに、裏の縁側から黄菖蒲を眺めて、黄色い色に目を止めていた。

★黄菖蒲に薄き汗かくころとなり/高橋正子

 黄菖蒲(帰化)と似たものに菖蒲、花菖蒲(栽培) 、それにアヤメ、カキツバタ、シャガ、イチハツ(帰化、栽培)アイリス、ジャーマンアイリス等があるが、見分けるのが難しい。菖蒲を除き、これらのすべては、黄菖蒲と同じアヤメ科アヤメ属の植物だが、菖蒲だけは、ショウブ科(サトイモ科に分類する体系がある)のショウブ属に属する。
 黄菖蒲(学名: Iris pseudacorus )は、アヤメ科アヤメ属の多年草。帰化植物。花茎の高さは60-100cmになる。葉は幅2-3cm、長さ60-100cm、剣形で中脈が隆起し明瞭で、縁は全縁。花期は5-6月で、アヤメやノハナショウブと同じ、外花被片が大型の広卵形で先が下に垂れ、内花被片が小型で直立した、黄色の花を咲かせる。外花被片の中央に茶色がかった模様がある。西アジアからヨーロッパ原産の植物で、明治頃から栽培されていたものが日本全国の水辺や湿地、水田脇に野生化している。観賞用に栽培されているハナショウブには黄色系の花がないため、その貴重性から重宝されたが、湖沼や河川などへの拡散が問題となっている。環境省は「要注意外来生物」の一種として警戒を呼びかけている。

◇生活する花たち「あおいすみれ・錨草・山吹草」(東京白金台・自然教育園)

4月23日(火)

●小口泰與
廃校の庭に咲きたる桜かな★★★
桜鯛夕映えのせし水面かな★★★
電柱の天辺占むや鴉の巣★★★

●迫田和代
天からの流れるように藤の花★★★
夏近しピッチの芝に水を撒く★★★
雲もなし漆のよるの朧月★★★

●河野啓一
創造の歓び葉桜並木かな★★★★
樟大樹長者の風情若葉して★★★
里山の夕陽にゆれて柿若葉★★★

●桑本栄太郎
ぼつてりと雨に散りけり八重桜★★★
濃く淡く峰の谷間や山笑ふ★★★
平らかに又あでやかに花みずき★★★

●小西 宏
スカイビルに姿映して金盞花★★★
口腔に軽き音立て春キャベツ★★★
未来へか濁世へか孫入学す★★★

●黒谷光子
三椏の花の天蓋磨崖仏★★★★
三椏の黄色い花と形は、仏との取合せで、曼荼羅図を飾る花のようにも思える。早春の花、三椏の花を天蓋として飾られた磨崖仏に親しみがもてる。(高橋正子)

磨崖仏めぐる鶯の声の中★★★
水音の絶えぬ山路や磨崖仏★★★