5月2日(木)

●小口泰與
にわたずみ跳ぶや落花を浴びてをり★★★
夕闇を避けあい歩む花見かな★★★
若芝に背を摺る犬や青き空★★★

●小西 宏
朝のコーヒー鶯の来て声頻り★★★
ひばり高く野に静かさのいや増せり★★★
工場からラジオ流れる五月の風★★★

●多田有花
よく晴れて夕餉明るき日永かな★★★★
日永のうれしさは、夕餉どきが明るいこと。夕餉が終わってもまだまだ気持ちのよい時間がある。「よく晴れて」なら、なおさらのことその気持ちが強まる。(高橋正子)

境内に八十八夜の子らの声★★★
よく太り春の筍積まれおり★★★

●河野啓一
牡丹の花に手を添え眺めける★★★
菖蒲湯の菖蒲葉先のまっすぐに★★★
紙細工小さく可愛い鯉幟★★★

●佃 康水
山藤や大樹絡めて咲きのぼる★★★ 
菩提樹の早やも可憐な花蕾む★★★
満々の池の淵まで花空木★★★

●川名ますみ
盆栽の青梅二つ大きかり★★★
薄紅のつつじの包む公園に★★★
戻りきし丘に伸びやか月朧★★★

5月2日(木)/八十八夜

★八十八夜のポプラに雀鳴きあそぶ  正子
八十八夜、まさしく陽光あふれ、若葉が目に沁みる頃。ポプラのそよぎ、雀の囀り、その軽やかな明るさ、心楽しさに、春から夏への確かな季節の歩みが快く伝わってきます。(藤田洋子)

○今日の俳句
子が発ちし八十八夜の月明り/藤田洋子
「八十八夜の月明かり」の美しい抒情に、旅立つ子を送り出す母の一抹の寂しさが添えて詠まれた。(高橋正子)

○八十八夜

★磧湯(かわらゆ)の八十八夜星くらし/水原秋桜子
★きらきらと八十八夜の雨墓に/石田波郷
★逢ひにゆく八十八夜の雨の坂/藤田湘子
★旅にて今日八十八夜と言はれけり/及川 貞
★八十八夜都にこころやすからず/鈴木六林男

 八十八夜(はちじゅうはちや)は、雑節のひとつで、立春を起算日(第1日目)として88日目、つまり、立春の87日後の日である。21世紀初頭の現在は平年なら5月2日、閏年なら5月1日である。数十年以上のスパンでは、立春の変動により5月3日の年もある。
 あと3日ほどで立夏だが、「八十八夜の別れ霜」「八十八夜の泣き霜」などといわれるように、遅霜が発生する時期である。一般に霜は八十八夜ごろまでといわれているが、「九十九夜の泣き霜」という言葉もあり、5月半ばごろまで泣いても泣ききれない程の大きな遅霜の被害が発生する地方もある。そのため、農家に対して特に注意を喚起するためにこの雑節が作られた。八十八夜は日本独自の雑節である。
 この日に摘んだ茶は上等なものとされ、この日にお茶を飲むと長生きするともいわれている。茶の産地である埼玉県入間市狭山市・静岡県・京都府宇治市では、新茶のサービス以外に手もみ茶の実演や茶摘みの実演など、一般の人々も参加するイベントが行われる。
 「♪夏も近づく八十八夜…」と茶摘みの様子が文部省唱歌『茶摘み』に歌われている。
昭和7年(1932年)『新訂尋常小学唱歌 第三学年用』

茶摘/文部省唱歌
一、
  夏も近づく八十八夜、
  野にも山にも若葉が茂る。
  「あれに見えるは
  茶摘ぢやないか。
  あかねだすきに菅の笠。」
二、
  日和つづきの今日此の頃を、
  心のどかに摘みつつ歌ふ。
  「摘めよ、摘め摘め、
  摘まねばならぬ、
  摘まにや日本の茶にならぬ。」

○花蘇芳(はなずおう)

[花蘇芳/横浜日吉本町]

★いとしめば紅よどむ蘇芳かな/松根東洋城
★風の日や煤ふりおとす花蘇芳/滝井孝作
★花よりも蘇芳に降りて濃ゆき雨/後藤比奈夫
★街中の水に空ある花すおう/和知喜八
★花すおういつも縁側より見えて/高橋正子

 ハナズオウ(花蘇芳、Cercis chinensis)は中国原産のマメ科ジャケツイバラ亜科の落葉低木で、春に咲く花が美しいためよく栽培される。高さは2-3mになり、葉はハート形でつやがあり、葉柄の両端は少し膨らむ。早春に枝に花芽を多数つけ、3-4月頃葉に先立って開花する。花には花柄がなく、枝から直接に花がついている。花は紅色から赤紫(白花品種もある)で長さ1cmほどの蝶形花。開花後、長さ数cmの豆果をつけ、秋から冬に黒褐色に熟す。和名紫荊はその花の紅紫色が、あたかもスオウ染め汁の色に似ているからである。
 花蘇芳の紅紫色は古典的。よい色である。ハート型の葉も魅力。空の青色に似合う。生家には土塀のそばに一本の蘇芳が咲いた。子どもの目にはその花は少し暗く思えたが、つやつやとした絹地のように映った。
 ハナズオウ属は北半球温帯に数種が分布する。地中海付近原産のセイヨウハナズオウ (C. siliquastrum) は落葉高木で高さ10mほどになり、イスカリオテのユダがこの木で首を吊ったという伝説からユダの木とも呼ばれる。このほかアメリカハナズオウ (C. canadensis) などが栽培される。

◇生活する花たち「三葉躑躅(みつばつつじ)・葱坊主・繁縷(はこべ)」(横浜日吉本町)

5月1日(水)/メーデー

★黄菖蒲に薄き汗かくころとなり  正子
春も終わりに近づき、うっすらと汗ばむこの頃、水辺ではは黄菖蒲が咲き始めました。明治の頃にヨーロッパから入ってきて野生化した花だといわれますが、花菖蒲と違っていかにも薄暑にふさわしい風情です。「黄菖蒲」を配してすっきりとこの季節を詠まれた味わい深い御句と思います。(河野啓一)

○今日の俳句
春深し小枝に小鳥来てとまる/河野啓一
「春」のただなかに身を置いている自分と、小枝に飛んできた小鳥に自分を重ねているような、静かな楽しさがある。「春深し」の実感。(高橋正子)

○錦木の花

[錦木の花/東京深川・芭蕉記念館]

★錦木の花や籬にもたれ見る/高浜虚子
★苔の香や錦木の花散り溜まる/織田烏不関
★川風に錦木の花うすみどり/高橋正子
★新緑の中なる花もうすみどり/高橋正子

 ニシキギ(錦木、学名:Euonymus alatus)とはニシキギ科ニシキギ属の落葉低木。庭木や生垣、盆栽にされることが多い。日本、中国に自生する。紅葉が見事で、モミジ・スズランノキと共に世界三大紅葉樹に数えられる。若い枝では表皮を突き破ってコルク質の2~4枚の翼(ヨク)が伸長するので識別しやすい。なお、翼が出ないもの品種もあり、コマユミ(E. alatus f. ciliatodentatus、シノニムE. alatus f. striatus他)と呼ばれる。
 葉は対生で細かい鋸歯があり、マユミやツリバナよりも小さい。枝葉は密に茂る。 初夏に、緑色で小さな四弁の花が多数つく。あまり目立たない。 果実は楕円形で、熟すと果皮が割れて、中から赤い仮種皮に覆われた小さい種子が露出する。これを果実食の鳥が摂食し、仮種皮を消化吸収したあと、種子を糞として排泄し、種子散布が行われる。紅葉を美しくするために西日を避けた日当たりの良い場所に植える。 剪定は落葉中に行う。よく芽をつける性質なので、生垣の場合は強く剪定してもよい。 栽培は容易。名前の由来は紅葉を錦に例えたことによる。別名ヤハズニシキギ。

○生活する花たち「西洋おだまき・卯の花・錦木の花」(東京深川・芭蕉記念館とその近辺)

5月1日(水)

●小口泰與
桷散るや沼の小魚ライズせり★★★
産土の山つらなりて霞かな★★★
海棠のしべに雫や朝ぼらけ★★★

●多田有花
空青く地に赤く咲きチューリップ★★★
囀りの途切れず続き森陰に★★★
トレイルランナー木陰に休み夏近し★★★

●河野啓一
レンゲ畑青きを覆い淡い雲★★★
白い雲耀く空や五月来る★★★
今日よりは五月愉快に日々のこと★★★★

●黒谷光子
鯉のぼり程よき風をはらみおり★★★
川沿いに竿を並べて鯉のぼり★★★
笑う山迫りて列車トンネルへ★★★★

●小西 宏
水満てる春田ふくらみ白き雲★★★★
水が満たされ、苗代作りが始まろうとする春田。水を満たして春田はゆたかに膨らんで見える。空には白い雲が浮き、春の過ぎ行く田園は、豊作を予感させて麗らかである。(高橋正子)

孫等みな五月生まれよハナミズキ★★★
紫のほのかに敷くや藤の花 ★★★

●下地 鉄
浜百合や手をふる母の遠きかな★★★
葉桜の揺れて美空の数のゆれ★★★
【原句】道端の雫の美しき昼顔花
【添削】道端の雫の美しき花昼顔★★★

●川名ますみ
首都高に車次々風光る★★★
山吹と石垣を越え小さき社祠★★★
おぼろ月散歩の丘をあざやかに★★★

4月30日(火)

★聖書繰る野の青麦を思いつつ  正子
作者は青々とそよぐ麦畑を心にうかべつつ聖書を開かれたのでしょう。御句に接し、私もまた、新約聖書.ルカによる福音書.6章1節、などのページを繰りました。(小川和子)

○今日の俳句
青紫蘇を水に放ちてより刻む/小川和子
青紫蘇をしゃっきりと香りよく、細く切るためには、水に放して、いきいきとさせて刻む水と紫蘇の出会いが涼しさを呼び起こしてくれる。(高橋正子)

○母子草(ははこぐさ)

[母子草/東京・深川芭蕉記念館裏の隅田川土手] 

★老いて尚なつかしき名の母子草/高浜虚子
★語らいは遠き日のこと母子草/古市あさ子
★拔け道にしつかり根付く母子草/植木里水
★ほんわりと子を抱くかたち母子草/高橋正子
★ほうこ草ほうこ草と呼びし祖母/高橋正子

 ハハコグサ(母子草、学名: Gnaphalium affine)は、キク科ハハコグサ属の越年草である。春の七草の1つ、「御形(ごぎょう、おぎょう)」でもあり、茎葉の若いものを食用にする。冬は根出葉がややロゼットの状態で育ち、春になると茎を伸ばして花をつける。成長した際の高さは10〜30cm。葉と茎には白い綿毛を生やす。花期は4〜6月で、茎の先端に頭状花序の黄色の花を多数つける。
 中国からインドシナ、マレーシア、インドにまで分布する。日本では全国に見られるが、古い時代に朝鮮半島から伝わったものとも言われる。人里の道端などに普通に見られ、冬の水田にもよく出現する。
 かつては草餅に用いられていた草であった。しかし、「母と子を臼と杵でつくのは縁起が良くない」として、平安時代ごろから蓬に代わったともされているが、実際には、出羽国秋田や丹後国峯山など、地方によっては19世紀でも草餅の材料として用いられている。もっとも、古名はオギョウ、またはホウコである。新芽がやや這うことから「這う子」からなまったのではとの説もある。ハハコグサの全草を採取し細かく裁断して日干しし、お茶にする。咳止めや内臓などに良い健康茶ができる。これには鼠麹草(そきくそう)という生薬名があるが、伝統的な漢方方剤では使わない。

○生活する花たち(新緑の東京隅田川)
「スカイツリー(浅草水上バス乗り場より)・日本橋(水上バス船上より)・清洲橋(水上バス船上より)」

4月30日(火)

●小口泰與
渓流を釣り上がりしや山つつじ★★★
雨上がりさえずり高き牧の朝★★★
鳥達の森に逃げ行く黄砂かな★★★

●井上治代
山あいに夢のじゅうたん芝桜★★★
広き田にちらほら咲けるれんげ草★★★
庭の隅なんと小さき母子草★★★

●河野啓一
新緑の窓辺に座して烏鷺かこむ★★★
雨上がり街路樹みんな若緑★★★

ひなげしの色載せ丘のゆれており★★★★
丘一面に咲きそろったひなげしの花。丘は一面にひなげしの花を載せている。そよ風が吹けば、丘ごと揺れる。目に安らかな快い明るい景色である。(高橋正子)

●桑本栄太郎
黄金週間テニスコートの音弾む★★★
青柳の名もなき橋に風を呼ぶ★★★
<京都市内散策>
著莪の花木陰に風の高瀬川★★★

●黒谷光子
ふる里の草餅提げて弟来る★★★
石楠花の満開の前いもうとと★★★
石楠花も牡丹も写し帰りゆく★★★

●下地 鉄
若夏のカーテン透く柔陽かな★★★
残照の風に戯る茅花かな★★★★
百合の花影を揺らして今日も咲く★★★

4月29日(月)/昭和の日

★牡丹の百花に寺の午(ひる)しじま  正子

○今日の俳句
水底へその影伸ばし葦芽吹く/古田敬二
葦の芽吹きは、その水と芽の緑との出会いが美しい。早春の芽吹きの中でも、水からの芽吹きはまた一味違って、きらめくものがある。水底へ影が伸びるのを確認できるほど澄んでいる水もよい。(高橋正子)

○町内会
午後2時からの<日吉本町西町会定期総会>に信之先生は出席した。町内会の班長を引き受けているからである。出席者、委任状を合わせ3000名ほどで総会が成立する大きな町内会である。会場は、近くの駒林小学校体育館で、閉会は、午後4時前であった。

○深川の花たち(卯の花、苧環、立浪草)
 4月25日、8月の花冠創刊30年祝賀会の下見に出かけた折に、深川芭蕉記念館の前の民家で、鉢植えの卯の花、苧環、立浪草を写真に撮らせてもらった。細々草花を植えて楽しんでいるが、お役所が鉢植えを置く以外は植物を植えないようにということで、寂しいものだとこぼしていた。歩道のフェンスに蔓バラを絡ませてこの季節にはバラが道路を飾っていたのだが、それもダメで、通りは躑躅がちらほら咲くだけのつまらない通りになったということだ。「でもさ、ほおずきの種がこぼれて生えているけどね。」と笑っていた。買えば一本700円するからねとも。三社祭もそろそろ。やがてほおずき市もあることだろう。深川のよい日和であった。

  深川
★卯の花は白を咲かせて川風に/高橋信之
★深川に日は明るかり白苧環/高橋正子

○空木(うつぎ・卯の花)

[空木(卯の花)/東京深川・芭蕉記念館前] 

★押しあうて又卯の花の咲きこぼれ/正岡子規
★卯の花の夕べの道の谷へ落つ/臼田亜浪
★卯の花や流るるものに花明り/松本たかし
★卯の花曇り定年へあと四年/能村研三
★卯の花のつぼみもありぬつぼみも白/高橋信之
★卯の花の盛りや雷雨呼びそうに/高橋正子

★卯の花の白きを門に置きし家/河野啓一
卯の花の白さを門に配しているのがいい感覚だ。「置きし」は、画を描いているような、絵具を置くような、詠み方で、光景を絵画的にしている。(高橋正子)

 ウツギ(空木、学名:Deutzia crenata)はユキノシタ科の落葉低木で、ウノハナ(卯の花)とも呼ばれる。樹高は2-4mになり、よく分枝する。樹皮は灰褐色で、新しい枝は赤褐色を帯び、星状毛が生える。葉の形は変化が多く、卵形、楕円形、卵状被針形になり、葉柄をもって対生する。花期は5-7月。枝先に円錐花序をつけ、多くの白い花を咲かせる。普通、花弁は5枚で細長いが、八重咲きなどもある。茎が中空のため空木(うつぎ)と呼ばれる。「卯の花」の名は空木の花の意、または卯月(旧暦4月)に咲く花の意ともいう。北海道南部、本州、四国、九州に広く分布し、山野の路傍、崖地など日当たりの良い場所にふつうに生育するほか、畑の生け垣にしたり観賞用に植えたりする。

○生活する花たち
「白おだまき・卯の花・立浪草」(東京深川・芭蕉記念館とその近辺)

4月29日(月)

▼4/29

●古田敬二
淡き色八重のかさなり山笑う★★★
木の芽採る見上げる空の眩しかり★★★
京都から帰る子に炊く菜飯かな★★★

●小口泰與
木苺の花や冷気は赤城から★★★★
山桜ほろほろ散るや川速し★★★
三山も白に染まりし凍返る★★★

●河野啓一
筍はリレーのごとく手渡され★★★
子鹿らと遊ぶ子の手に鹿せんべい★★★
スラリ立つあやめの蕾春深し★★★

●黒谷光子
蒲公英の絮飛ぶ構え風を待つ★★★
蒲公英に残されし絮二三本★★★
石楠花や苗木を求めし昭和の日★★★

●多田有花
過ぎ去ればすべて美し昭和の日★★★
春惜しみ古墳の陰に語らいぬ★★★
藤房の下がり初めにし山となる★★★★

●桑本栄太郎
股旅の映画を観たり昭和の日★★★
小でまりの花や背丈を青空へ★★★
流れゆく車窓はるかに蓮華草★★★

●佃 康水
ハンカチの花は夕日へ高く振り★★★★
ハンカチの花は、ヤマボウシのように萼が花のようになっている。ヤマボウシよりも大きく、さながら白いハンカチのようである。高木となって聳え、夕日にさよならを言うように風にそよぐ。その様子を新しい感覚で詠んだ抒情のある句。(高橋正子)

振り付けて発つゴンドラへ山若葉★★★
唐楓落花に山路薄みどり★★★

●高橋秀之
春の青空が葉と葉の合間から★★★
変り種自転車漕ぐ子昭和の日★★★
蒲公英の一輪通路脇に咲く★★★

4月28日(日)

★やわらかに繁りしはこべを鶏の餌に  正子
子供のころに鶏のえさを取ってきて刻んで与えたことを思い出しました。確かに柔らかく、ひよこ草だと呼んでいたようです。(祝恵子)

○今日の俳句
花主と見上げふさふさ藤の房/祝恵子
「花主」は、風流。原句は、「見上げておりぬ」であったが、藤の房の観察をもう一歩進めて、「ふさふさ」と添削した。ふさふさとした藤房の豊かさが感じられる。(高橋正子)

○新緑の隅田川クルーズ(浅草・日本橋めぐり)
 4月25日、花冠創刊30周年記念大会(祝賀会)の大会会場の芭蕉記念館へ会場費の支払い、宿泊のパールホテル両国、吟行コース(隅田川水上バス、浅草)の下見に出かけた。信之先生、小西宏さんと私の3人。深川の芭蕉記念館で午前11時に小西さんと待ち合わす。今回は、三田線で神保町まで乗り、神保町で新宿線本八幡行で森下までの路線を使った。待ち合わせ時間より早く着いたので会場費の支払いを済ませ隅田川の川土手に出ると、すでに宏さんが散策中だった。ベンチで小休憩後、すぐに水上バスに乗るために両国に移動。両国の水上バス乗り場から浅草(二天門)まで水上バスで移動。運賃300円。浅草の水上バス乗り場からは、川の向こうに東京スカイツリーが麓のあたりから聳える姿が見える。宏さんの話では、パリのエッフェル塔の美しさにはかなわないそうだ。総武線の浅草駅の近くの大衆中華料理店でランチ。美味しくて安い。中華料理店からは浅草寺の伝法院通りが近い。私は二人を店に置いて、伝法院通りの店を見に行った。甘納豆の店、佃煮の店、手ぬぐいや小物の店を見つけた。甘納豆と、燕の模様の手ぬぐいを買った。15分もかからず引き返した。水上バスは13時45分発。かわせみという船。船長は20代の女性。制服の腕に金線が四本入っている。機長さんも四本だそうだ。定刻、水上バスに乗ると、エンジン音の大きいこと。今日のコースは、日本橋を通る。浅草を出発、隅田川の橋やスカイツリーを見ながら下る。いつもの見慣れた景色だが、春の川風がここちよい。隅田川から日本橋川に入る。日本橋川の上は首都高速が走っている。巨大な橋脚や鉄骨、低い橋の下を巧に運転して日本橋の船着場に到着。日本橋と、三越本店が見える。鉄骨ジャングルからは、三越の金色のマークと新緑がまぶしく目に映る。そこを折り返し、隅田川にもどり浜離宮へと川を下る。浜離宮から折り返して両国まで乗った。両国で下船。宏さんとはここで別れ、
パールホテルへ予約の確認に行く。部屋を増やし、シングル12、和室一部屋とした。両国から帰えった。

★卯の花の真白し伝法院通り/高橋正子
★川風にとべらの花の匂いけり/高橋正子
★春の雲浮かべて東京スカイツリー/高橋正子

○とべらの花

[とべら/東京深川・芭蕉記念館裏の隅田川土手]

★沖晴れてとべらの花を叩く雨/藤田あけ烏
★海桐咲く甘き香放つ凪の浜/hanazuki1119
★奄美季語とつとつ知るや花とべら  綾子 
★塩炊きし時代もありき花とべら   凡太
★花とべら海人は半日野良にあり   克彦
★山羊飼女とべらの香り切り落とす  和江
★波立つは海豚のしぶき海桐咲く   末雄
★切崖を生き抜く子山羊花海桐    ゆうと 
★釣り糸の絡みつきたる花海桐    ゆうと
★釣人の分け入る路に花海桐     ゆうと
★川風にとべらの花の匂うなり/高橋正子

 トベラ(扉、海桐、Pittosporum tobira)はトベラ科トベラ属の常緑低木。東北地方南部以南、韓国、台湾、中国南部までの海岸に自生する。主に枝の先に葉が集まって着く。葉は倒卵形、互生、主脈は白っぽく、葉全体はつやのある緑色で、周辺部がやや内に巻くように、葉全体が反っている。5月頃芳香のある白い5弁の花をつける。果実は熟すと3裂し、赤い粘液が付着した種子を多数露出し、これが鳥のくちばしなどに粘着して運ばれるといわれる。
 海岸では海浜植物などの草本につづく海岸性森林の最前線に位置し、低くて密な群集を形成する他、海岸林の中では高木層を形成する場合もある。また、潮風や乾燥に強く、つやのある葉を密生することなどから観賞用あるいは街路樹として道路の分離帯などに栽培される。雌雄異株。
 野生状態ではあまりトベラを食樹とする昆虫は大量発生しないが、都市に植樹されたトベラには、新芽に虫えいをつくるトベラキジラミというキジラミ科の昆虫がしばしば大量発生して、排泄物の甘露にすす病菌が発生しているのを見ることが多い。
 枝葉は切ると悪臭を発するため、節分にイワシの頭などとともに魔よけとして戸口に掲げられた。そのため扉の木と呼ばれ、これがなまってトベラとなった(学名もこれによる)。属名のピットスポルムはPitta(樹脂)とSporos(種子)に由来し、これは上記のように熟した果実から粘液が付着した種子が露出するのが特徴的なことから付けられたものである。

○生活する花たち
「母子草・とべらの花①・とべらの花②」(東京・深川芭蕉記念館裏の隅田川土手)

4月28日(日)

●小口泰與
うぐいすや白き遠嶺のまだらなり★★★
山梨の花や妙義に雲一朶★★★
初雷や未だ目覚めぬ百日紅★★★

●祝恵子
夏近しバチを響かせおさらい会★★★
水替えて水に挿しおりチューリップ★★★★
水中にあるチューリップの葉や茎は、清涼感さえある。花もよいが、「水」と取り合わせたチューリップもまたよい見所がある。「水」の語の繰り返しが効いている。(高橋正子)

風に乗る百数匹の鯉のぼり★★★

●藤田裕子
山独活の香を手に残し酢みそ和え★★★
月朧庭ひそやかな時もてり★★★
山風を大きく捉え鯉幟★★★★
鯉のぼりは建てられた場所の風を孕んで泳ぐ。山があれば山からの風を捉えて大きく膨らみゆったりとそよぐ。その自然体がおおらか。(高橋正子)

●多田有花
春昼の玄米菜食ごはんかな★★★
護摩焚きの森に響くや春深し★★★★
森に囲まれた寺。護摩が焚かれ弾ける音が春深い森に響く。森の木々、森の小さな生き物にもその音は響き伝わる。護摩を焚く音が春の森に響くのがよい。(高橋正子)

風そよぐ木陰を歩き夏隣★★★

●河野啓一
新緑に向かい浮き浮き車の列★★★
山つつじ当麻寺なる曼荼羅浄土★★
春夕日二上山に西方浄土★★★

●下地鉄
吹く風の色も香りも新樹かな★★★
雲海や機窓に富士の靈姿かな★★★
集落を森へとつなぐ鯉のぼり★★★

●桑本栄太郎
鉢植えのパンジー飾る園の門★★★
肺奥へ馴染み入りけり若葉風★★★
風紋の吹き抜けそよぐ春の波★★★

●藤田洋子
山晴れて筍掘りの鍬の音★★★
掘りたての筍重ね芳しき★★★
山里に風のあふるる竹の秋★★★

●高橋秀之
ぶらんこの順番待つ子が後押しす★★★
ぶらんこが揺れている間にさようなら★★★
ぶらんこの横をボールがコロコロと★★★