★天城越ゆ春の夕日の杉間より 正子
○今日の俳句
ゆさゆさと百の牡丹も風のまま/黒谷光子
風が来て、百ほどの牡丹の花を揺らす。大きく富貴な花が、花の重みをもって揺れると「ゆさゆさ」となる。「ゆさゆさ」「風のまま」は、牡丹をより自然に捉えている。(高橋正子)
○山躑躅(やまつつじ)
[山躑躅/東京白金台・自然教育園]
★つつじいけて其陰に干鱈さく女/松尾芭蕉
★百両の石にもまけぬつつじ哉/小林一茶
★近道へ出てうれし野の躑躅かな/与謝蕪村
★つつじ野やあらぬ所に麦畑/与謝蕪村
★死ぬものは死にゆく躑躅燃えてをり/臼田亜浪
★山つつじ照る只中に田を墾く/飯田龍太
★山躑躅そこを明るく道ありぬ/稲畑汀子
★けもの道明るく照らす山躑躅/minmin4221
★山の子となって遊べば山躑躅/高橋正子
★新緑をすずしくさせて山躑躅/高橋正子
ヤマツツジ(山躑躅、学名:Rhododendron kaempferi)はツツジ科ツツジ属の半落葉低木。高さは1-5mになり、若い枝には淡褐色の伏した剛毛が密生する。葉は互生し、葉柄は長さ1-3mmになる。春葉と夏葉の別があり、春葉は春に出て秋に落葉し、夏葉は夏から秋に出て一部は越冬する。春葉は長さ2-5cm、幅0.7-3cmになり、卵形、楕円形、長楕円形、卵状長楕円形など形状や大きさに変化が多く、先は短くとがり先端に腺状突起があり、基部は鋭形、葉の両面、特に裏面の脈上に長毛が生える。夏葉は春葉より小型で、長さ1-2cm、幅0.4-1cmになり、倒披針形、倒披針状長楕円形で、先は丸く先端に腺状突起があり、基部はくさび形、葉の両面に毛が生える。
花期は4-6月。枝先の1個の花芽に1-3個の花をつける。花柄は長さ3-4mmになり、花冠の筒はやや太く、色は朱色、まれに紅紫色、白色があり、径3-4cmの漏斗形で5中裂する。花冠の上側内面に濃色の斑点があり、内面に短毛が散生する。雄蘂は5本。花柱は長さ3-4cmになり無毛。果実は果で長さ6-8mmの長卵形で、8-10月に熟し裂開する。
北海道南部、本州、四国、九州に分布し、低山地の疎林内、林縁、日当たりのよい尾根筋、草原などに生育する。日本の野生ツツジの代表種で、日本の野生ツツジでは分布域がもっとも広い。
◇生活する花たち「かきつばた・踊子草・おへびいちご」(東京白金台・自然教育園)

●小口泰與
わなわなと越ゆる畝間の小蝶かな★★★
山肌の春剥落のそこかしこ★★★
種蒔や浅間南面襞さだか★★★
●祝恵子
塔も見え東屋も見えツツジ咲く★★★
ポピー咲くネモフィラ配し風の丘★★★
たけのこのヒョロヒョロ伸びて囲われて★★★
●多田有花
風吹くもやむも続きぬ春落葉★★★
藤の花緑の色の整いぬ★★★
頂に座りしふたり春惜しむ★★★
●桑本栄太郎
<山陽新幹線で山口へ>
見上げれば青空映し若葉山★★★
<お宮参りの山口大神宮>
宮参りのうから笑顔や五月晴れ★★★★
お宮参り、おめでとうございます。一族揃って、笑顔でお宮参り。折しも五月晴れ。五月晴れに祝福されたみどり児の健やかな成長が思われる。(高橋正子)
<菜香亭にて昼食>
若葉吹く庭を眺めつ昼餉かな★★★
●小川和子
踏み入れて蕗の群れいる野に出でぬ★★★
水辺へと黄菖蒲の映ゆ閑けさよ★★★
芍薬に一期一会の珠の色★★★
●黒谷光子
灯篭の傍に石楠花咲き揃う★★★
鐘楼へ石段上がる松の花★★★
一八の白の仄かに夕まぐれ★★★
●下地鉄
青芝にわれ寝そべれば犬もまた★★★
サルビアの汚れて赤の濃さかな★★★
水音に逃げ足速し島水鶏(くいな)★★★
●藤田洋子
朝毎に松は芯立て空へ伸ぶ★★★★
松の芯は、20センチも、30センチも伸びてその生命力には目を見張る。朝毎にその勢いを見せてくれて、清々しい元気をもらう。(高橋正子)
一面に風音しきり麦畑★★★
穂を長く大麦畑匂い立つ★★★
●高橋秀之
道頓堀ネオンに映る春時雨★★★
空焼ける夕暮れ時は夏隣★★★
初蝶や飛行機の音響く朝★★★
●小口泰與
雛菊や勉強机ま新し★★★★
入学したばかりの一年生の机。幼い者の机ながらに、一人前の気概が見えるが、庭には雛菊が咲いて可愛らしさも一入。(高橋正子)
たんぽぽや山の雪形くっきりと★★★
つばくろや京漬物の届きたり★★★
●下地鉄
家鳩のくんくんつつく代田かな★★★
ミニ薔薇を髪にかざして少女往く★★★
昼顔の汚れ洗われ又よごれ★★★
●多田有花
幼子の最初に覚えチューリップ★★★★
幼子が最初に覚えた花がチューリップ。「さいたさいたチューリップの花が」の歌も思い出される。たどたどしい口調がチューリップの花の可愛らしに相応しい。(高橋正子)
手水舎の水音とどく八重桜★★★
坂道に木陰の並ぶ夏隣★★★
●小西 宏
メーデーや機械に刈らる春紫�惷★★★
父さんが脛を絡げてザリガニ捕り★★★
春の鴨赤き足もて着水す★★★
●高橋秀之
潮風に吹かれる護岸夏近し★★★
春の波ゆるやかに寄す防波堤★★★
メーデーの朝赤々と組合旗★★★
★森奥のたんぽぽ大方は絮に 正子
鮮やかに飾っていた黄のたんぽぽが森の奥へ入るともう大方はふわふわっとした絮になって居る。辺りの木々は若葉が輝き、初夏に向う季節の移ろいと森の爽やかな情景が浮んで参ります。 (佃 康水)
○今日の俳句
宮島桃花祭御神能祭
春風を袖に孕みて能舞えり/佃 康水
厳島神社の能舞台は特別なもの。海を渡ってきた春風が能舞台を吹く。能衣装の袖に孕む風が風雅に動きのある新鮮さを呼んでいる。(高橋正子)
○花にら

[花にら/横浜日吉本町]
★足許にゆふぐれながき韮の花/大野林火
★おもてより裏口親し韮の花/水野節子
★天日を豊かに受けて韮の花/久我達子
★花にらはいつも樹のそば垣のそば/高橋正子
花にらは、春の季節感があるが、俳句の季語ではない。夏の季語の「韮の花」とは違う。ハナニラ(花韮、学名:Ipheion uniflorum (Lindl.) Raf.)は、APG植物分類体系第3版でヒガンバナ科(APG植物分類体系第2版ではネギ科古い分類のクロンキスト体系ではユリ科)に属するハナニラ属の多年草。イフェイオン、ベツレヘムの星とも呼ばれる。原産地はアルゼンチン。日本では、明治時代に園芸植物(観賞用)に導入され、逸出し帰化している。葉にはニラやネギのような匂いがあり、このことからハナニラの名がある。野菜のニラ(学名Allium tuberosum)とは同じ科の植物であるが、属が違うのであまり近縁とは言えない。球根植物であるが、繁殖が旺盛で植えたままでも広がる。鱗茎から10-25cmのニラに似た葉を数枚出し、さらに数本の花茎を出す。開花期は春で、花径約3cmの白から淡紫色の6弁の花を花茎の頂上に1つ付ける。地上部が見られるのは開花期を含め春だけである。
◇生活する花たち「山躑躅・武蔵野きすげ・あやめ」(東京白金台・自然教育園)

●小口泰與
にわたずみ跳ぶや落花を浴びてをり★★★
夕闇を避けあい歩む花見かな★★★
若芝に背を摺る犬や青き空★★★
●小西 宏
朝のコーヒー鶯の来て声頻り★★★
ひばり高く野に静かさのいや増せり★★★
工場からラジオ流れる五月の風★★★
●多田有花
よく晴れて夕餉明るき日永かな★★★★
日永のうれしさは、夕餉どきが明るいこと。夕餉が終わってもまだまだ気持ちのよい時間がある。「よく晴れて」なら、なおさらのことその気持ちが強まる。(高橋正子)
境内に八十八夜の子らの声★★★
よく太り春の筍積まれおり★★★
●河野啓一
牡丹の花に手を添え眺めける★★★
菖蒲湯の菖蒲葉先のまっすぐに★★★
紙細工小さく可愛い鯉幟★★★
●佃 康水
山藤や大樹絡めて咲きのぼる★★★
菩提樹の早やも可憐な花蕾む★★★
満々の池の淵まで花空木★★★
●川名ますみ
盆栽の青梅二つ大きかり★★★
薄紅のつつじの包む公園に★★★
戻りきし丘に伸びやか月朧★★★
★八十八夜のポプラに雀鳴きあそぶ 正子
八十八夜、まさしく陽光あふれ、若葉が目に沁みる頃。ポプラのそよぎ、雀の囀り、その軽やかな明るさ、心楽しさに、春から夏への確かな季節の歩みが快く伝わってきます。(藤田洋子)
○今日の俳句
子が発ちし八十八夜の月明り/藤田洋子
「八十八夜の月明かり」の美しい抒情に、旅立つ子を送り出す母の一抹の寂しさが添えて詠まれた。(高橋正子)
○八十八夜
★磧湯(かわらゆ)の八十八夜星くらし/水原秋桜子
★きらきらと八十八夜の雨墓に/石田波郷
★逢ひにゆく八十八夜の雨の坂/藤田湘子
★旅にて今日八十八夜と言はれけり/及川 貞
★八十八夜都にこころやすからず/鈴木六林男
八十八夜(はちじゅうはちや)は、雑節のひとつで、立春を起算日(第1日目)として88日目、つまり、立春の87日後の日である。21世紀初頭の現在は平年なら5月2日、閏年なら5月1日である。数十年以上のスパンでは、立春の変動により5月3日の年もある。
あと3日ほどで立夏だが、「八十八夜の別れ霜」「八十八夜の泣き霜」などといわれるように、遅霜が発生する時期である。一般に霜は八十八夜ごろまでといわれているが、「九十九夜の泣き霜」という言葉もあり、5月半ばごろまで泣いても泣ききれない程の大きな遅霜の被害が発生する地方もある。そのため、農家に対して特に注意を喚起するためにこの雑節が作られた。八十八夜は日本独自の雑節である。
この日に摘んだ茶は上等なものとされ、この日にお茶を飲むと長生きするともいわれている。茶の産地である埼玉県入間市狭山市・静岡県・京都府宇治市では、新茶のサービス以外に手もみ茶の実演や茶摘みの実演など、一般の人々も参加するイベントが行われる。
「♪夏も近づく八十八夜…」と茶摘みの様子が文部省唱歌『茶摘み』に歌われている。
昭和7年(1932年)『新訂尋常小学唱歌 第三学年用』
茶摘/文部省唱歌
一、
夏も近づく八十八夜、
野にも山にも若葉が茂る。
「あれに見えるは
茶摘ぢやないか。
あかねだすきに菅の笠。」
二、
日和つづきの今日此の頃を、
心のどかに摘みつつ歌ふ。
「摘めよ、摘め摘め、
摘まねばならぬ、
摘まにや日本の茶にならぬ。」
○花蘇芳(はなずおう)

[花蘇芳/横浜日吉本町]
★いとしめば紅よどむ蘇芳かな/松根東洋城
★風の日や煤ふりおとす花蘇芳/滝井孝作
★花よりも蘇芳に降りて濃ゆき雨/後藤比奈夫
★街中の水に空ある花すおう/和知喜八
★花すおういつも縁側より見えて/高橋正子
ハナズオウ(花蘇芳、Cercis chinensis)は中国原産のマメ科ジャケツイバラ亜科の落葉低木で、春に咲く花が美しいためよく栽培される。高さは2-3mになり、葉はハート形でつやがあり、葉柄の両端は少し膨らむ。早春に枝に花芽を多数つけ、3-4月頃葉に先立って開花する。花には花柄がなく、枝から直接に花がついている。花は紅色から赤紫(白花品種もある)で長さ1cmほどの蝶形花。開花後、長さ数cmの豆果をつけ、秋から冬に黒褐色に熟す。和名紫荊はその花の紅紫色が、あたかもスオウ染め汁の色に似ているからである。
花蘇芳の紅紫色は古典的。よい色である。ハート型の葉も魅力。空の青色に似合う。生家には土塀のそばに一本の蘇芳が咲いた。子どもの目にはその花は少し暗く思えたが、つやつやとした絹地のように映った。
ハナズオウ属は北半球温帯に数種が分布する。地中海付近原産のセイヨウハナズオウ (C. siliquastrum) は落葉高木で高さ10mほどになり、イスカリオテのユダがこの木で首を吊ったという伝説からユダの木とも呼ばれる。このほかアメリカハナズオウ (C. canadensis) などが栽培される。
◇生活する花たち「三葉躑躅(みつばつつじ)・葱坊主・繁縷(はこべ)」(横浜日吉本町)

★黄菖蒲に薄き汗かくころとなり 正子
春も終わりに近づき、うっすらと汗ばむこの頃、水辺ではは黄菖蒲が咲き始めました。明治の頃にヨーロッパから入ってきて野生化した花だといわれますが、花菖蒲と違っていかにも薄暑にふさわしい風情です。「黄菖蒲」を配してすっきりとこの季節を詠まれた味わい深い御句と思います。(河野啓一)
○今日の俳句
春深し小枝に小鳥来てとまる/河野啓一
「春」のただなかに身を置いている自分と、小枝に飛んできた小鳥に自分を重ねているような、静かな楽しさがある。「春深し」の実感。(高橋正子)
○錦木の花

[錦木の花/東京深川・芭蕉記念館]
★錦木の花や籬にもたれ見る/高浜虚子
★苔の香や錦木の花散り溜まる/織田烏不関
★川風に錦木の花うすみどり/高橋正子
★新緑の中なる花もうすみどり/高橋正子
ニシキギ(錦木、学名:Euonymus alatus)とはニシキギ科ニシキギ属の落葉低木。庭木や生垣、盆栽にされることが多い。日本、中国に自生する。紅葉が見事で、モミジ・スズランノキと共に世界三大紅葉樹に数えられる。若い枝では表皮を突き破ってコルク質の2~4枚の翼(ヨク)が伸長するので識別しやすい。なお、翼が出ないもの品種もあり、コマユミ(E. alatus f. ciliatodentatus、シノニムE. alatus f. striatus他)と呼ばれる。
葉は対生で細かい鋸歯があり、マユミやツリバナよりも小さい。枝葉は密に茂る。 初夏に、緑色で小さな四弁の花が多数つく。あまり目立たない。 果実は楕円形で、熟すと果皮が割れて、中から赤い仮種皮に覆われた小さい種子が露出する。これを果実食の鳥が摂食し、仮種皮を消化吸収したあと、種子を糞として排泄し、種子散布が行われる。紅葉を美しくするために西日を避けた日当たりの良い場所に植える。 剪定は落葉中に行う。よく芽をつける性質なので、生垣の場合は強く剪定してもよい。 栽培は容易。名前の由来は紅葉を錦に例えたことによる。別名ヤハズニシキギ。
○生活する花たち「西洋おだまき・卯の花・錦木の花」(東京深川・芭蕉記念館とその近辺)

●小口泰與
桷散るや沼の小魚ライズせり★★★
産土の山つらなりて霞かな★★★
海棠のしべに雫や朝ぼらけ★★★
●多田有花
空青く地に赤く咲きチューリップ★★★
囀りの途切れず続き森陰に★★★
トレイルランナー木陰に休み夏近し★★★
●河野啓一
レンゲ畑青きを覆い淡い雲★★★
白い雲耀く空や五月来る★★★
今日よりは五月愉快に日々のこと★★★★
●黒谷光子
鯉のぼり程よき風をはらみおり★★★
川沿いに竿を並べて鯉のぼり★★★
笑う山迫りて列車トンネルへ★★★★
●小西 宏
水満てる春田ふくらみ白き雲★★★★
水が満たされ、苗代作りが始まろうとする春田。水を満たして春田はゆたかに膨らんで見える。空には白い雲が浮き、春の過ぎ行く田園は、豊作を予感させて麗らかである。(高橋正子)
孫等みな五月生まれよハナミズキ★★★
紫のほのかに敷くや藤の花 ★★★
●下地 鉄
浜百合や手をふる母の遠きかな★★★
葉桜の揺れて美空の数のゆれ★★★
【原句】道端の雫の美しき昼顔花
【添削】道端の雫の美しき花昼顔★★★
●川名ますみ
首都高に車次々風光る★★★
山吹と石垣を越え小さき社祠★★★
おぼろ月散歩の丘をあざやかに★★★
★聖書繰る野の青麦を思いつつ 正子
作者は青々とそよぐ麦畑を心にうかべつつ聖書を開かれたのでしょう。御句に接し、私もまた、新約聖書.ルカによる福音書.6章1節、などのページを繰りました。(小川和子)
○今日の俳句
青紫蘇を水に放ちてより刻む/小川和子
青紫蘇をしゃっきりと香りよく、細く切るためには、水に放して、いきいきとさせて刻む水と紫蘇の出会いが涼しさを呼び起こしてくれる。(高橋正子)
○母子草(ははこぐさ)

[母子草/東京・深川芭蕉記念館裏の隅田川土手]
★老いて尚なつかしき名の母子草/高浜虚子
★語らいは遠き日のこと母子草/古市あさ子
★拔け道にしつかり根付く母子草/植木里水
★ほんわりと子を抱くかたち母子草/高橋正子
★ほうこ草ほうこ草と呼びし祖母/高橋正子
ハハコグサ(母子草、学名: Gnaphalium affine)は、キク科ハハコグサ属の越年草である。春の七草の1つ、「御形(ごぎょう、おぎょう)」でもあり、茎葉の若いものを食用にする。冬は根出葉がややロゼットの状態で育ち、春になると茎を伸ばして花をつける。成長した際の高さは10〜30cm。葉と茎には白い綿毛を生やす。花期は4〜6月で、茎の先端に頭状花序の黄色の花を多数つける。
中国からインドシナ、マレーシア、インドにまで分布する。日本では全国に見られるが、古い時代に朝鮮半島から伝わったものとも言われる。人里の道端などに普通に見られ、冬の水田にもよく出現する。
かつては草餅に用いられていた草であった。しかし、「母と子を臼と杵でつくのは縁起が良くない」として、平安時代ごろから蓬に代わったともされているが、実際には、出羽国秋田や丹後国峯山など、地方によっては19世紀でも草餅の材料として用いられている。もっとも、古名はオギョウ、またはホウコである。新芽がやや這うことから「這う子」からなまったのではとの説もある。ハハコグサの全草を採取し細かく裁断して日干しし、お茶にする。咳止めや内臓などに良い健康茶ができる。これには鼠麹草(そきくそう)という生薬名があるが、伝統的な漢方方剤では使わない。
○生活する花たち(新緑の東京隅田川)
「スカイツリー(浅草水上バス乗り場より)・日本橋(水上バス船上より)・清洲橋(水上バス船上より)」

●小口泰與
渓流を釣り上がりしや山つつじ★★★
雨上がりさえずり高き牧の朝★★★
鳥達の森に逃げ行く黄砂かな★★★
●井上治代
山あいに夢のじゅうたん芝桜★★★
広き田にちらほら咲けるれんげ草★★★
庭の隅なんと小さき母子草★★★
●河野啓一
新緑の窓辺に座して烏鷺かこむ★★★
雨上がり街路樹みんな若緑★★★
ひなげしの色載せ丘のゆれており★★★★
丘一面に咲きそろったひなげしの花。丘は一面にひなげしの花を載せている。そよ風が吹けば、丘ごと揺れる。目に安らかな快い明るい景色である。(高橋正子)
●桑本栄太郎
黄金週間テニスコートの音弾む★★★
青柳の名もなき橋に風を呼ぶ★★★
<京都市内散策>
著莪の花木陰に風の高瀬川★★★
●黒谷光子
ふる里の草餅提げて弟来る★★★
石楠花の満開の前いもうとと★★★
石楠花も牡丹も写し帰りゆく★★★
●下地 鉄
若夏のカーテン透く柔陽かな★★★
残照の風に戯る茅花かな★★★★
百合の花影を揺らして今日も咲く★★★